東映特撮に踊らされる駄目人間の日々のよしなし。 はてなダイアリーのサービス終了にともない、引っ越してきました。
旧ダイアリー保管用→ 〔ものかきの倉庫〕
特撮作品の感想は、順次こちらにHTML形式でまとめています→ 〔特撮感想まとめ部屋〕 (※移転しました)
HP→〔ものかきの荒野〕   Twitter→〔Twitter/gms02〕

映画を撮らなきゃ生き残れない

仮面ライダーウィザード』感想・第14-15話

◆第14話「帰って来た映画監督」◆ (監督:舞原賢三 脚本:香村純子)
 うめき声をあげてベッドから起き上がったワイズマン(シルエット)の姿が、白地に紫の突起があしらわれた異形の姿へと変貌すると、その体内から魔宝石らしき青い石塊が生じ……え、ええっ?! 魔宝石、ワイズマンの尿管結石だったの?!
 「さて……おまえの誘う先は絶望か、ふふふふ、それとも……」
 一方、晴人とコヨミは街を散策中で、コヨミちゃんのファッションショータイム。
 結局、衣装の大幅イメチェンは行わなかったコヨミに晴人はさりげなく帽子をプレゼントし(メタ的な圧力のお陰でしょうが、センスはまとも)、「ありがとう」と笑顔を向けられると、気取った仕草で「どういたしまして」と返す際に目が若干泳いでおり…………そうか君は、女性に対する軽い調子も、全てロールプレイだったのか。
 凛子視点における「ああ見えて晴人くん……実はいっぱいいっぱい」なの、(うおお、勢いで多分年上のお姉さんを「ちゃん」付けで呼んでしまったぜ! 何してくれてんの俺?! このままずっとこの距離感で生きていけるの俺ぇ?!)と、内心でダラダラ冷や汗をかいている疑惑が急浮上。
 そんな晴人の靴を、ワイズマンの結石摘出シーンを見ていた謎の使い魔――ケルベロスっぽいの――が引っ張り、知らない使い魔の後を追いかけていく晴人とコヨミだが、ファントム騒ぎに別行動となって晴人が目にしたのは、メデューサに襲われる青年。
 「魔法使いになったのか……」
 晴人の事を見知っているらしき青年が呟く中、ウィザードはメデューサと激突。サンダーブレスを受けたメデューサが謎めいた笑いを残して姿を消す一方、犬に連れられたコヨミは深い森の中に入り込み、面影堂には劇中で初めての客が訪れていた!
 大学時代、自主制作映画に参加していたという女優の卵・千鶴は映写機に興味を示し、「監督が行方不明」になって映画は未完成のままになったと説明した直後、晴人がメデューサから助けて連れてきたゲートらしき男(まあ冒頭で、明らかに不自然な怪力を見せてはいるのですが)こそが、行方不明になっていた当の監督・石井と判明。
 なんだか、その場その場で微妙に話を合わせているっぽい石井は、「映画は俺の命だ!」と言い出すと、映画を完成させるからと面影堂を飛び出していき……よく見ると、王蛇ルック(笑)
 使い魔に導かれるまま採石場の中に入り込んでいたコヨミが、コウモリに驚いて被っていた帽子を落としてしまうと大事そうにはたく姿が意地らしく、ここしばらくスポットが無かったところから、正ヒロインの力を見せつけてきます。
 またこの後、手にした帽子に要所要所でカメラを向ける事により、帽子と指輪が同時に強調されるのは、舞原監督の心憎い演出。
 ワイズマンの部屋に辿り着いたコヨミが空のベッドと巨大な魔宝石を目にすると、コヨミを導いたケルベロスもまた白い魔法使いの放ったものである事が示され、いつもどこかでコヨミを見守っていそうな気がしてきた白い魔法使い、現在のところ、外星人第0号とマスターどんぶらとユグドラシルを足して2で割ったぐらいの胡散臭さ。
 一方、晴人と千鶴らが学生時代の映画撮影について盛り上がっている間に逃げ出した石井の前にはメデューサとフェニックスが現れ、追い詰められた石井はリザードマンの正体を現す。
 「勝手に人間を襲い、ゲートを減らした罪は重いぞ」
 メデューサが石井を狙っていたのはファントム内部の粛清であったと明らかにされ、助かりたければ誤解を利用して指輪の魔法使いを抹殺するようにと命令を下されたリザード石井は、罠にかけて晴人暗殺を謀るも立て続けに失敗すると、直接ハンマー。
 「悟史……おまえ、ファントムだったのか!」
 「ふん! その通り。石井悟史なんて人間はとっくの昔に死んでるんだよ!」
 ……そういえば、これを成立させる為にも、やや危なっかしくもコヨミ(ファントム看破能力あり)を単独行動させる必要があったのかと納得。
 リザードマンは半年前に行われた春の大規模絶望感謝祭で誕生したファントムにして、生き残った晴人に襲いかかって白い魔法使いに撃退されたファントムであり、両者の間の思わぬ因縁が判明。
 「おまえ……あの時の!」
 「今日の死体役、おまえに決定!」
 ウィザードとリザードマンはスクラップ場で剣を打ち合わせ、雑な言動と行動の割には結構強いぞリザードマン。
 「あの時おとなしくファントムになってりゃ、化け物の仲間にならずに済んだのにな!」
 「化け物はおまえら、ファントムだろうが!」
 ファントムの側から、魔法使い=化け物の仲間、と意味深な発言が飛び出すと、石井を探していた千鶴がこの戦いを目撃し、更にその千鶴にミサが目を付ける。
 「みーつけた……あの女、ゲートだ」
 満面の笑みを浮かべたミサ(ここまでで一番、印象に残る表情でした!)がメデューサとなると、千鶴を人質に取ったリザードマンを容赦なく攻撃し、ゲートを絶望させようと蛇の髪がうねったところで、つづく。
 ファントム側の内部粛清を目撃した晴人がゲートとファントムを勘違いする変化球に始まり、その「誤解」を軸に騒動が巻き起こるトリッキーな一編かと思いきや、前編の内に石井=ファントムと晴人も知る事になると、“ファントムの人間時代を知るゲスト”の方へと物語の軸がスライドし、伏せていたカードを一枚めくると次の伏せ札に話がスムーズに繋がっていくのは、香村さんの得意技。
 ファントムが素体となったゲートの記憶を保持している事も劇中で明文化され、2クール目に入ったところで、ファントムに関してこれまで触れていなかった要素へと切り込んでいき、次回――もつれあった運命の糸を指輪の魔法使いは如何にして希望へと変えるのか。

◆第15話「ラストシーンの後は」◆ (監督:舞原賢三 脚本:香村純子)
 「練ってんだよ。あの女を、一番効果的に絶望させる、演出プランを。――ほら、俺、映画監督だったからさぁ」
 見所は、並んで学生映画を視聴するファントム3体。
 メデューサの行動から千鶴がゲートと気付いたウィザードは千鶴をなんとか逃がすが、標的が自分に代わった事など知らない千鶴は石井のアパートへと向かい、前回終盤から、あれもこれも説明する暇の無い晴人さん。
 リザード石井は、千鶴を絶望させろとミサから命令を受けており、千鶴の前で石井の正体を暴くに暴けず、本物の石井が既に死んでいる事も口に出来ない晴人は、懊悩の中で千鶴からの信用を失ってしまう。
 「晴人……迷えば迷うほど、彼女を苦しめるぞ」
 「……そうだな。……おっちゃんの言う通りだ」
 コヨミの拾ってきた石で新たな指輪を制作中の輪島が、珍しく正統派メンターポジションな発言を行い、映画のラストシーンの場所に佇む千鶴の元に向かった晴人は、千鶴の本当の心の支えは映画を一緒に作った石井そのものなのではないか、とその本心を確認し、今回はここから先の晴人の“表情の殺し方”が上手く、ある程度芝居の出来る人を選んだ、というだけの事はあります。
 「……千鶴ちゃん、今度こそファントムを倒して……君の希望を守る。だから……ごめん」
 晴人はスリープで千鶴を眠らせると凛子と瞬平に預け、絶望の鍵としてフィルムを手にスキップしながら現れたリザード石井の前に仁王立ち。
 「悪い夢は――終わりにしよう」
 赤ザードでグール軍団を蹴散らし、青ザードで車攻撃を打ち破ったウィザードは、新たな指輪でWDウィザードへと姿を変え、青金黒のカラーリングは、今までのDシリーズでは一番格好いいかも。
 これは《平成ライダー》シリーズ全般に思う事ですが、今年はこれ! よりも、この年はこんな事をしていたのか……という視点の方が、ライダーデザインについては落ち着いて楽しめるような気がします(笑)
 海中に逃げるリザードマンに対して殲滅モードを発動すると背中から尻尾が生えてきて……成る程、各エレメントが、頭・翼・尾、とドラゴンのパーツを担当している模様。そうするとグランドは爪とかで、2クール目の締め辺りで一人4身合体とかするのでありましょうか。
 「フィナーレだ」
 WDウィザードは尻尾の一撃で海を割ると、続けて凍結ブレスで水面ごとリザードマンを凍らせ、氷上滑走からの尻尾の一撃によりファントムを粉々に砕き、圧倒的な力と空中での回転数で、苦い戦いに幕を下ろすのであった。
 ……それにしても2エピソード続けて、大変楽しそうに描かれる腐れ外道ファントムでありました!
 ファントム、人間の姿も取れるけど心理面は完全に人外の魔性なので相当えげつない言行でOKな上、前後編で時間をかけ好感度も気にしなくていいのが、香村さんの筆をやけにノらせているように見えます(笑)
 晴人は、大学の映研で目を覚ました千鶴に、急遽アメリカに飛んだ石井から預かったといって完成したフィルムを渡すと、石井のメッセージまで偽造して希望を守る為の苦しい嘘を貫き続け、勝利の後ながら、ひたすら苦々しげに真実を飲み込み続けるその表情が印象的。
 「……いつかはちゃんと伝えなきゃいけないと思う。…………でも今は……」
 「……いいんじゃない。人に希望を与えるのは、現実だけとは限らないわ」
 「…………うん」
 当面の問題解決の為に、主人公が虚構を守る事を選ぶ、という選択は、この10年でもあまり記憶に無いですが、晴人が“スタイリッシュで格好いいヒーロー”の仮面を被っているように、『ウィザード』という物語は、「希望を守る為に虚構を演じる」事に対して、肯定的であるのかもしれません。
 そしてそれもまたここでは、ヒーローの戦い方の一つ、と置かれているのかなと。
 前回の宣言通り、晴人の精神的負担を減らそうとする凛子さんの言葉は、人の世のシビアな裏表に触れる機会の多い“刑事らしさ”もあり、ピュア担当の瞬平とは差別化が進むと良いなと思うポイント。
 当時の外部的な要因により、ヒーローフィクションの作り手サイドにおける「フィクションの意味(力)とは何か」についての自問自答がにじみ出している部分も多少感じられますが、別の観点としては、ヒーローにもまた、正解のわからない問題がある事が示されて、つづ……く前に、よく見るとだいぶとんがった感じだったワイズマンが外出先から病室へ戻ると、あ、あれ?! ベッドが荒らされてる?!
 「……やるじゃないか。ふっふっふっふふ……はははは……はははははは……!!」
 何故か高笑いを始めるワイズマン、犯人はコヨミで、よくよく考えると正ヒロインが、持ち主不明の宝石を勝手に持ち帰ってきた案件(自然産出と捉えるのはあまりに不自然)であり、次に警察のご厄介になるのは大穴だったコヨミなのか。
 次回――クリスマスといえば赤、赤といえばパトカ……じゃなかったフェニックス再来。