細かいネタを掘り下げていくとキリがなくなりそうなので、かいつまむ感じで。
『非公認戦隊アキバレンジャー』感想・第1-2話
◆第1話「痛さは強さ」◆ (監督:田崎竜太 脚本:荒川稔久)
シロクマ宅配便……じゃなかった、佐々木ポンポコデリバリーの配達員・赤木信夫29歳は、スーパー戦隊が大好きで重度の妄想癖を持つ、脱線爆走自転車男。
仕事中に中古ショップに並ぶお宝を目に留めて、
(どうする? 高いが安い)
は、世のあらゆる道に通じる至言(笑)
『デカレン』のパロディに始まりグレートファイブの玩具が登場する背後では、公式のBGMや挿入歌が平気な顔で流れてきて、ただのパロディでは無い事の示し方が強烈……ですが、カードを手に店の入り口をくぐった男はそこで、戦隊ロボ玩具と二次元美少女との狭間で妄想に揺れ、ずっきゅーん。
……あ、グレートファイブ、捨てた。
(君と出会えて、良かった。せめてこの走り方で去ろう……)「オヨブー必殺走り!」
……酷い(笑)
放映当時に見ていたらこの辺りで耐えられなくなっていた気もしますが、その後も妄想を繰り広げ続ける赤木の前で車を降りる、謎の女。
「赤木信夫さんね。あなた、アキバレンジャーになって、人類の平和の為に、戦わない?」
「……アキバレンジャー?」
赤木は謎の女から怪しすぎる勧誘を受け……
原作:八手三郎
って、出てしまいました。
「俺を……新戦隊のレッドに?!」
謎の女・葉加瀬博世に勧誘を受けた赤木は、他のメンバー2人と共に表の顔は戦隊コスプレカフェへと連れて行かれ、OPにも侵食していたあおいたん……まさかの変身ガジェットだった。
スタッフにどこかで見たような名前が並ぶ本家本元による非公認戦隊において、戦隊に充当するヒーローの変身ガジェットが美少女フィギュアというぶっ飛び具合は、ローカルヒーローやパロディマンガなどに向けて公式からの挑戦状を突きつける気概に溢れすぎて、第1話最大の衝撃でした(笑)
葉加瀬に促されるままに変身を果たした3人は、どこかで見たような倉庫の中で性能試験を受けるとあっさりと力に溺れていき、通信が届くと、銃型の変身ガジェットがぱかっと開いて、美少女フィギュアの顔と体が出てくるのは、ちょっとグロい(笑)
かくして誕生するアキバレンジャー、だが……
「つまり……貴方たちはまだ、非公認戦隊」
目指せ、TV化されて公認!
ところがアキバレンジャーが戦うべき肝心の敵は葉加瀬にも正体不明。言葉を濁すその態度に、本当に敵は存在しているのか若干疑わしげになってくるが……あ、本当に、怪人出てきた。
「よくぞ現れてくれた! このまま敵が出なければ、公認への道は閉ざされていたところだ!」
3人が変身すると、舞台はいきなり山の中に変わり、青が理解できないまま赤の音頭でアキバレンジャーがポーズを決めると、背中で、爆発起きた。
「非公認? スーパー戦隊じゃない、パチモン?」
「パチモンっていうな!」
敵は、邪団法人ステマ乙。その再開発部長、マルシーナ。露出過多の軍服風衣装は《スーパー戦隊》のパロディというよりもやや古い海外ポルノグラフィの定番みたいな印象ですが、何か代表的なネタ元があるのでしたっけかこれ。
社畜戦闘員を蹴散らすも、女子高生の入っていないセイタカアワダチソウみたいな名前の怪人に苦戦するアキバレンジャーだったが、衣装が寒かったマルシーナが怪人に後を任せてそそくさと帰宅すると、幹部の「後は任せた」は超鉄板の敗北フラグだと赤が怪人に突きつけ……こ、これが、知識チート……?!(多分違う)
勝負はスペックではなくフラグで決まるアキバレンジャーのルールにより怪人を打ち破る3人……そして巨大戦は、無かった。
とにもかくにも、なんだかよくわからないがステマ乙に支配されていたお店は元に戻り、秋葉原の平和は守られた! と意気揚々とひみつきちに戻る3人だが、そこで葉加瀬から、3人の戦いは「全て妄想だった」と告げられて……つづく。
この手の現実が不確かな世界観は、面白いというより怖いのですが、アキバレンジャーが公認されて大人気の世界の妄想映像が流れていくEDは、ちょっと染みました(笑)
次回――どこかで見覚えのある人も妄想の産物なのか。良い子は見ちゃダメ。
◆第2話「再起する痛魂が喚ぶ赤き妄想のフルブラスト」◆ (監督:田崎竜太 脚本:荒川稔久)
「妄想の海に浮かぶ街・秋葉原。そこに、痛さは強さだと信じ、脳内だけで戦う、3人の戦士が居た。彼らこそ――」
「非公認戦隊!」
「「「アキバレンジャー!!」」」
「これは……あなた達が妄想の中で戦っている間の、現実を捉えた、監視カメラの映像よ」
酷すぎる(笑)
全ては、悪の存在を感じて妄想が発生した時、萌え萌えずきゅんを通じて3人が妄想を共有できる、重妄想の産物に過ぎなかったのだ。
果たしてこの戦いに意味などあるのか……真っ当にショックを受けた赤木はひみつきちを飛び出していき、地下駐車場で座り込んでいたところ、赤座伴番と遭遇。
「……あなたは、アキバレッド、赤木信夫さん! スーパー戦隊全員があなたに期待してるんです! 満場一致! 英雄豪傑! あなたは希望の星です!」
……この番組、何が怖いって、『海賊戦隊ゴーカイジャー』最終回の2ヶ月後にスタートしているのが恐ろしいですね……。
赤木を褒めちぎるバンは当然のように妄想で、赤木が目にした赤座伴番は、イベント出演の為にSPDの制服に身を包んでいた、さいねい龍二その人……というのは個人的にはアウト寄りでしたが、まあ、立ち上がり、そういうスタンスの番組、という宣言とは取れます。
一方、アキバレンジャー継続を決めたアキバブルー/青柳美月と、アキバイエロー/萌黄ゆめりあは、新たな悪の気配に妄想発動すると、ステマ乙の目的は、秋葉原渋谷化作戦と聞き出すが、敵の敗北フラグを読み取れずに怪人に完敗。
妄想解除で二人を助けた葉加瀬は、アキバレンジャーにはやはり赤木の妄想力と知識量とフラグ構築能力が必要だと痛感すると一計を案じ、万世橋から萌え萌えずきゅんを川に放り捨てようとした赤木の前に姿を見せる、(金で雇われた)デカレッド。
赤木は(金で雇われた)デカレッドに導かれるままにジェスチャーでメッセージを伝えられ……OPのインスト、流すな(笑)
これも所詮、自身の生んだ妄想に過ぎないとエマージェンシーの誘惑を断ち切ろうとする赤木だが、ひとつ非道な悪事を憎む(金で雇われた)デカレッドから怒りのドロップキックを路上で受けると目が曇りもとい目を覚まし、妄想復活。
今度こそ3人揃って重妄想したアキバレンジャーが、葉加瀬より受け取った痛車すなわちマシンイタッシャーに乗り込んで非公認変形するとフルCGのトランスフォーマぽいイタッシャーロボが完成し……なんだか微妙に、“公式で出来ない事”が“公式の先取り”になっている部分があるような(笑)
しかし、アキバレンジャーの妄想力はまだ格好いいロボ戦を展開するところまで高まっておらず、変な踊りをしながらロボは早退。
仕切り直しで妄想転位したアキバレンジャーは……これは、『ゴーカイvsギャバン』の凄くいいシーンで使われたところでは(笑)
嫌な侵食をしてくる非公認戦隊は、社畜を軽々と蹴散らすも、今回も怪人に苦戦するが、再起する痛魂は諦めない。
「俺は公認様の期待に応えるんだぁ!!
絶叫したレッドがナパームダッシュを決めると、何故か妄想空間にデカレッドが現れ……そう、コラボ回だった。
あまりの妄想力に葉加瀬も困惑する中、ダブルレッドのダッシュ飛び蹴りが炸裂するとデカレッドはDマグナムを横っ飛びで連射し、非公認妄想、好き放題。
「後は本当の相棒たちとやれよ。――“大それた力”、使ってみろ!」
……荒川さーーーーーん!!
というか公式ーーーーー!!
デカレッドは巨大な手錠に姿を変えて、デカレンジャーの“大いな……じゃなかった、“大それた力”デカワッパーを身につけるアキバレッド、凄く普通に、強化装備を妄想で、入れてきました(笑)
「公認の力を、非公認が使っていいのか?!」
「いいのだ」
デカワッパーで動きを封じた怪人に必殺の萌えマグナムが炸裂してアキバレンジャーは勝利を収め、全ての戦いは痛車の中で完結するが、現実でも海賊版DVD事件の犯人が逮捕されているのは、今作のいいところ(そして微妙に怖いところ)。
「あり得ないとまでは言えないけど、本当にデカレッドが出てくるなんて……どーいう事なの~?」
なにやら葉加瀬の予測を超えた現象が起きている事が示唆されながら、つづく。
……たぶん個人的には、時間が適度に色々な要素を薄めた今だからこそ、適度な距離感で笑って見られるタイプの作品、といった感じですが、それはそれで良いタイミングであった、という事ではあり、この妄想の行き先を見届けたいところ。
現在ちょっと視聴作品が多いので、感想はこのぐらいの密度で進められればというつもりです。