『超力戦隊オーレンジャー』感想・第11-12話
◆第11話「服従 愛の冷蔵庫」◆ (監督:小笠原猛 脚本:曽田博久)
「このボロ冷蔵庫ぉ!」
自身の不手際を棚に上げ、冷蔵庫に乱暴な怒りをぶつける人間の姿を見て、「機械への愛が足りない」とか言い出すマシン帝国の皆さんは、もう少し自分たちの基本設定を大事にしていただきたい(笑)
サボテン兄弟回で既にブレ始めてはいましたが、人間の持つ「愛」の感情に対して全否定スタイルだった筈のバラノイアが「マシンへの愛はOK」とか言い出し、早くも文芸設定面の混乱と不徹底が目に付く事に。
「機械への愛がどうあるべきか、思い知らせてやるわ」
ヒステリアはバラプリンターを地上へと送り込み、その瞳に映し出されたものを見た人間は、対象を熱烈に愛してしまうようになるのであった!
「ああ、冷蔵庫、どうしてあなたは冷蔵庫なの?」
冷蔵庫に愛を囁き撫でさする主婦、コピー機に自分の顔をコピーさせ続ける女子高生、愛する三輪車で爆走する暴走族……などなどで、街は大混乱。
今回メインの昌平が、いちはやくマシン獣と接触するとボクシングスタイルを披露するが、応援に駆けつけるや、あっという間に場を持っていく、あちゃあ! ほあちゃぁ! うぉりゃぁぁ!!(笑)
……隊長は、叫び声が強すぎます(笑)
だが、一目合った瞬間に洗脳が発動する愛のプリント攻撃に打つ手無しのオーレンジャーは一時撤収を余儀なくされ、打倒バラプリンターの策を練る事に。
「いずれにせよ、奴らの作戦が扇風機やコピー機、三輪車などで終わる筈が無い」
それは隊長、買いかぶりすぎでは……? と思ったら、
「たわけ。これぐらいの事で喜んでいるようじゃ、人並みですよ」
小躍りして喜ぶブルドントをたしなめるヒステリア(台詞からすると、教育ママのイメージを入れている模様)の作戦には、ちゃんと先があった……!
「機械の中の機械、最高にして万能の機械ならば……」
地球人類が愛する対象をバッカスフンドに差し替える事により一気に地球を支配だ、と嫌がらせレベルのパニック系作戦はあくまで小手調べであり、そこから地球征服作戦にアップグレードしていくのは、曽田先生がさすがの手並み。
かくして作戦の第二章が開幕し、地上へ新たな指示を出しに向かうアチャ、昌平の飛び蹴りを、胸板で跳ね返した!
「さすがはバラノイア一の戦士……!」
……と思ったら、アチャを調子に乗らせようとする作戦でした。
なんだかんだ、片手で昌平を持ち上げるマシンパワーを見せるアチャだが、昌平の口車に乗ると、バラプリンターに拡散させるマシンの偶像を自分にしてしまい……これは、もはや、叛乱なのでは(笑)
人々はアチャを愛し讃えるようになり、ひとまず最悪の状況を回避したとほくそえむ昌平……が今回の作戦を立てたようで、頭脳、というか悪知恵の働くところををアピール。
ところが、冒頭で知り合った少年が母親に邪険にされるのを目撃すると慌て気味に打って出てバラプリンターを陽動し、巨大な鏡を利用して一目惚れ光線を跳ね返し、バラプリンターがアチャを愛するように仕向ける事に成功。バラプリンターに追いかけ回され、熱烈なハグを受けたアチャは、様子を見に来たコチャに頼んで一目惚れ回路を停止させ……特殊能力の無い、ただのマシン獣が誕生してしまう。
今回は生身バトルをふんだんに盛り込み、派手な爆発を挟んで、主題歌に乗せての超力変身で、背後に古代超力文明のシンボルが浮かぶ、新・揃い踏み。
バラプリンターと一騎打ちになると、個人必殺技を二連発で叩き込む緑だが、そのまま格好良く決めさせてくれないオーレンジャー仕様により飛び道具で反撃を受けると、飛び蹴りで加勢に入ったオーレッドがジャイアントローラーで轢き殺し、砲丸コチャ。
意外と多彩なバラプリンターの攻撃に推されるオーロボだが、牛角頭突きを叩き込んで反撃すると、タウラスサンダーからスーパークラウンソードでフィニッシュし、今作におけるオーレッドの存在は、ロボットの必殺剣と対応している事が浮かび上がります(笑)
なんか色々と大雑把な昌平、でオチが付き、どうしてそうなったのかわかりませんが、とりあえず樹里さんの二つ結びは、無理があるのでは…………。
次回――予告の「ミルクじゃない?! おしめか?」が、30年近く経っても脳に刻み込まれていたインパクト。
◆第12話「爆発!!赤ちゃん」◆ (監督:小笠原猛 脚本:杉村升)
見所は、爽やか私服隊長。
近所の主婦に赤ん坊を預けられ、一般市民からの信頼度もばっちりだ!
……から、昌平と待ち合わせして「二人でTVゲームやろう」と約束していた事が判明し、意外と哀しいオフでした。
……こ、これもまた、人心掌握術!
ところが、預けられた赤ん坊が泣き出すと、超音波が発生して、周囲の物が次々と爆発!
なんと、バッカスフンドの送り込んだマシン獣・バラベイビー(CV:田の中勇が強烈なインパクト)の能力により、赤ん坊の泣き声が密かに広域破壊兵器に変えられていたのだ!!
守るべき対象としての赤ん坊が破壊の元凶となったら? という作戦の目の付け所の良さに、派手な爆発の描写でしっかりと説得力も持たせた良い掴みで、後、ちょっと、私服隊長、格好良すぎるんですが。
バラベイビーと一当たりするも逃げられてしまった上、赤ん坊が泣くと、高層ビルも次々木っ葉微塵!! と、良い具合にヒートアップ。
これで人間は赤ん坊を排斥して自滅の道を歩む筈……と考えるバッカスフンドだが思惑通りには行かず、むしろ赤ん坊を泣かさないように官民一体で懸命に赤ん坊を守り続けるその姿に、困惑。
「愛か。人間どもの言う愛というものがここまで妙ちくりんなものとは……」
“人の心”がバラノイアの思惑を乗り越えると共に、それを通して人間とバラノイアの間にある断絶を改めて描き、これはメインライターがいい仕事。
バッカスフンドはバラベイビーに強硬手段を命じ、泣き叫ぶ赤ん坊による大爆発が次々と起こる中、赤ん坊の一人がさらわれ、石油コンビナートの近くに放置されてしまう。
いたいけな赤ん坊を、東京を壊滅させる兵器に変えようとする邪悪なバラノイアのもくろみを阻止するべく、立ち上がった勇者の名は、ミルクとおしめを手にした隊長――星野吾郎!
「ちょっと待て ここから先は 通さない アチャ」
「赤ちゃんが 泣いたら最後 この世は地獄 字余り コチャ」
「ふざけるな!」
立ちふさがるバラノイアを緑青黄桃が足止めしている間に赤ん坊の元へと急ぐ隊長は、度重なる妨害によりベビーカーが落下してしまうと、超力変身から空中キャッチ。そこに戦闘機から直接攻撃を受けるが、炎の鳥と化して赤ん坊を守り抜くと着地を決めるのは、実に名シーン。
メインテーマ的に用いられる『虹色クリスタルスカイ』アレンジが流れ出すのも絶妙に決まり、赤ん坊を抱き抱えた隊長に皆が駆け寄っていくのが、ザ・隊長。
暖かいミルクで赤ちゃんが機嫌を直すと仕切り直しの戦闘となり、戦闘機部隊をキングスマッシャーで撃墜すると、バラベイビーの超音波攻撃に苦しめられるも秘剣・超力ライザーから超高速ビッグバンバスターを叩き込んで撃破し、絶好調時の隊長に不可能はありません(笑)
巨大戦では、ソードの刀身を用いてバラベイビーの光線技を反射してからファイナルクラッシュで一刀両断し、ラストは平和の戻った街で、上手いこと言って締めようとした参謀長が赤ん坊に泣かれるオチがついて、つづく。
隊長×赤ちゃんのギャップの面白さに始まって、インパクト抜群の怪人と、作品テーゼと繋げた巧妙にして破壊規模の大きな敵の作戦から、不動の隊長中心が良し悪しではあるものの“『オーレンジャー』らしい”格好良さに鮮やかに集約されて、今回は面白かったです。放映当時から好きなエピソードだったのですが、改めて、『オーレン』序盤の名作回。