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ドスを握りしめ 一つになった アイツ

ウルトラマンブレーザー』感想・第12話

 「なぜ、敵前逃亡した?!」
 宇宙電磁怪獣ゲバルガに完敗を喫したスカードに対する参謀長のお説教タイムから始まり、あのままアースガロンが戦闘を継続していた場合、行動不能のまま味方の誘導ミサイルを浴びて、貴重なアースガロンと運用人員がまとめて蒸発していた可能性は高く、参謀長から滲み出る、やはり無能なのではこの人……? 感。
 「その結果が、気がついたら10㎞離れた山中に居た、か?」
 ただ、それを言われると、ぐうの音も出ません!
 「ですからそれは、ウルトラマンが助けてくれて……」
 そして、隊長がロスト地点から離れたところで発見される問題についての、言い訳が判明(笑)
 「あのような得体のしれないものにすがってどうするんだ!」
 それも言われると、ぐうの音も出ません!
 「おまえたちが単独で撃破した怪獣が一体でもいたのか!?」
 ぐうの音も……ぐうの音も出ないけど……予算と人員を、よこせ。
 「……スカードの運用を疑問視する声も出ているんだ」
 だから、予算と人員を、よこせ。
 整備スタッフの存在などは描かれているので、スカード全体ではもっと多くの所属が居る中で、最精鋭の分析・実働部隊という事なのではありましょうが、参謀長が自らお説教に来て、直立不動で聞いている隊員が5人という画はどうしても間が抜けます。
 まあ、これ以上増やすとスポットが当てきれずにキャラの描写が散漫になる……という計算は納得できるので、バランスの難しいところではありますが(説教シーンの話とは別に、専属のお留守番役ぐらい居てもいいよな……とは思いますが)。
 OP明けると特に誰も愚痴ったりはしていないので、軍人社会とはこんなもの、という扱いのようですし、人類vs怪獣においては守れなければ生き残れないのが現実ではありますが、メタ的には苦戦を強いられる為に存在する防衛隊ポジションだけに、直接の上官は現場に当たりの厳しくない人にしてくれた方が、ストレスは少ないな、と思うところ。
 参謀長も、理解はしつつ敢えて活を入れている解釈が可能な範囲ではありますが、《ウルトラ》シリーズの構造からすると、悪し様に振る舞う偉い人そのものが、必要だろうかというのが個人的には。
 活動を再開したゲバルガが、フィールドを広げる事で通信施設を介してネットワークをクラッキングしていく中、電磁パルスを放つ開口部こそが付け目、と分析したスカードでは、以前に回収したガラモンの素材を利用した、長さ約20メートルの槍を打ち込む作戦を立て、宇宙からの脅威と戦う中で、手に入れた「道具」が地球人類の闘争能力を高めていくのは面白いアプローチ。
 「よくこの短期間でこれだけのお膳立てが揃いましたね」
 「……偉い人の根回しが効いてるんだろうな」
 「なるほど、偉い人の」
 とフォローが入り、参謀長、株価回復(実働部隊の人員はともかく、予算はそれなりに回してくれているのかもしれない)。
 参謀長に無能ムーヴを突き進まれると辛かっのたでこれは良かったですが(作戦運用能力はともかく、スピーディな寝業の冴えについては、パイロット版で描かれていますし)、それなら尚更、参謀長を怒鳴る人に描く必要性は薄かったように思いますし、前回-今回と、軍隊の偉い人=怒鳴る人、という描写は、寓意にしても安易な戯画化に過ぎるし、作風からすると無駄に感じ悪くなって、ちょっと引っかかったところ。
 改めてスカードから参謀本部に、宇宙電磁怪獣攻略作戦が具申されると承認される一方、ゲントはロッカールームでブレーザーメダルを見つめ……メダルをロッカーに置いていく事を決断。
 ……まあ、基本的に呪い属性のアイテムなので、気がつくとポケットの中に戻っていそうではありますが(笑)
 かつての部下たちとの共同戦線から3年前の出来事を思い出すのはスムーズで、特殊部隊の爆弾起爆に合わせて、威勢のいいWANDABAがBGMとしてかかり出すのは、格好良い流れ。
 地上部隊が爆弾と狙撃の組み合わせでゲバルガを誘導すると、無効を承知で敢えて打ち込んだミサイルに反応した怪獣が電磁パルスを放とうとした瞬間、巨大レールガンから発射されたガラモンスピアが発射口に深々と突き刺さる!
 「EMP発生器官の破壊を確認!」
 言ってみれば、超固い物を超パワーで投げつけて怪獣を貫くのは『ブレーザー』らしさを感じ、そこから俯瞰の映像に切り替えて、怪獣が歩いてきた跡=瓦礫の山を広域で見せるのは、怪獣とは何か、を示す良い画。
 そこに打ち込まれた本命の誘導弾により爆炎に包み込まれるゲバルガ、だが……
 「目標健在。アースガロン、攻撃開始!」
 最後はステゴロじゃ! とアースガロンはゲバルガに殴りかかり、そーれ、フック、アッパー、バルカン砲!(あれ?)
 「アースファイヤ・発射!」
 やっぱり最後はチャカじゃ! と口からビームを放つが、電磁シールドに阻まれて、アースガロン、転倒。
 部下の危機に飛び出したゲントは、思わずポケットに手を入れるもメダルを置いてきた事を思い出すと突貫を仕掛けるが、範囲放電に巻き込まれて地面を転がり……その脳裏に響き渡る、謎の声。
 「なんだ? ……これ……俺の、声?」
 続いて、最近のブレーザーの不可解な行動が映像として浮かび上がると、クマの親子が可哀想案件はさておいて、辿り着いたのは、一つの記憶。

 ――「隊長、俺達はいいんで、逃げて下さい」
 ――「言っただろ。全員、無事に帰還する」

 (……俺を、帰還させようとしたのか? あの時……)
 ブレーザーは、ゲントが他者の命を気遣うからこそ、時に怪獣に背を向け、時に無謀とも思える突貫を行う事を“理解”するに至っており、ウルトラヤクザ魂が注入されておらず、戦いに背を向けて逃げ出した士道不覚悟だったのではなく、ゲントの命を助けようとしたからこそ戦場を離脱していた、というのは納得の落としどころ。
 ただそれだけだと、(え? あれ、俺これ、部下扱い……?)となりかねないところでしたが、そこから更に記憶は遡り、3年前――前後に何があったのかはまだハッキリしないものの、ゲントはブレーザーと自分が、互いに命を救おうと手を伸ばし合っていた事を知り、同格に近い同調と置かれる事に。
 ブレーザーも……命を、救おうとしてたのか。――俺と同じじゃないか)
 ここまで来ると、冒頭で参謀長に「なぜ、敵前逃亡した?!」と感じ悪く言わせていたのは、ゲントのブレーザーに対する不信感の中心を他者に代弁させていた事がわかって納得でき、理解困難とばかり思っていたブレーザーの本質に、命を救おうとする想いがある事を“理解”したゲントは、テルアキとヤスノブを救う為、3年前と同じように左手を伸ばして光を掴み、その腕にデュエルディスクが生じると、ロッカーを強引にこじ開けて飛来したメダルを掲げた右手で掴み取る!
 「……行くぞ、ブレーザー


◆第12話「いくぞブレーザー!」◆
(監督:武居正能 脚本:足木淳一郎)

 「るぅぅぅぅぅおおぅ!」
 ウルトラヤクザの盃を受けているのかはともかく、やはり生粋のウルトラハンターだったブレーザーさん、ゲントとブレーザーの不協和を描いたエピソードとして、微妙な“テーマ違い”を強引に回想シーンには入れた具合の親子怪獣回はアレ、子供は狩りの獲物ではないという判断だったとしか思えません(笑)
 再びゲントと一つになったブレーザーは、吠え声も高らかにゲバルガへと掴みかかってアースガロンを助け、突き刺さったままの槍をぐりぐりと押し込むのが、えげつないハンター殺法。
 だがゲバルガは、ブレーザーの残虐レッドファイトにも耐えて体勢を立て直すと、投げ飛ばし、踏みつけ、放電回転攻撃を繰り出し、ゲバルガの攻撃に何か既視感があると思っていたのですが、『スト2』のブランカだ(笑)
 しゃがみ対空キックでローリングアタックを弾き返したブレーザーは、最後は相撲じゃ! とぶちかましからがっぷり四つに組み合うと、激しい放電に耐えながらガラモンスピアに手をかける……すると、インナーゲントの手の中にガラモンメダルが生じ、手にした槍が、一振りの剣へと変化。
 以前にニジカガチ回で、怪獣の力を吸収する固有能力を発揮しているので(これはこれでやや唐突ではありましたが)、宇宙由来の材質を怪獣の電磁エネルギーを纏った武器に変換するのは強化装備の入手方法としては納得度が高く、人類の投げ槍からウルトラマンの武器へ、と上手く繋がりました。
 そして戦いの真っ最中、手に入れたナタに、神への感謝の祈りを捧げるのが、凄くブレーザーさん(笑)
 狩る狩ります狩ろう、とウルトラのナタを手に入れたブレーザーは、放電攻撃を切り裂くと歓喜の咆哮をあげ、そこから握りをがっちゃんこがっちゃんこするのは、如何にも玩具のギミックを見せる都合にはなってしまいましたが、ゲバルガのお株を奪う電撃の波動でバリアーを破壊すると、雄叫びが電光石火の一撃を呼び、まさしく雷鳴一閃、ゲバルガを一刀両断してハンティング・コンプリート。
 心なし「しゅわっ」が明瞭になり、これまでとちょっと違う姿勢でブレーザーは飛び去っていき……結局トドメはウルトラマンが持っていったけど、怪獣は倒せたからまあ良かったんじゃないか、と参謀本部は和やかにミッションを終了し、アースガロンは解体処分を免れるのであった。
 「セカンド・ウェイブ、退けました」
 司令の退室後、参謀長は何者かと謎の通話を行い、「ファースト・ウェイブ」が第1話だとすると、やはりスカードの強引な設立の背後には何か秘密がありそうで、3年前の事件とも繋がってきそうな感じでありましょうか。
 「もーちょっとお互いを知っていかないとな」
 ブレーザーとの友好度も上がり、怪獣も無事に撃破し、意気揚々と帰還した隊長を待ち受けていたのは、まるで台風が通り過ぎた後のようなロッカールームの惨状と、壁に空いた大穴、でつづく。
 お互いの行動の中心となるもの、について通じ合った隊長とブレーザーですが、だからといってこの異邦の超人に対して、簡単に理解し合えたとは思わない隊長の姿勢は好感が持て、2クール目にどういう形で盛り上げていくのか楽しみです。
 テンポ良く進行する人類vs宇宙怪獣の激しい攻防、不協和音を乗り越えて繋がりを強めるゲントとブレーザー、それに合わせた強化装備の無理矢理出てきた感も薄く、1クール目の締めとして満足のいく前後編でした。
 次回――何故か予告が微妙に不穏ですが、総集編……風味……?