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ベータカロテンの足りていないアイツ

ウルトラマンブレーザー』感想・第9話

◆第9話「オトノホシ」◆ (監督:越知靖 脚本:植竹須美男
 スカードでは、アースガロンMod.2強行投入の代償として、デスマーチに次ぐデスマーチが続く中、何故か無言でヤスノブをじーーーっと見つめるゲントの左目が青く光り…………アレが、筋肉の秘密……?
 おもむろにヤスノブの手にした野菜ジュースを奪い取ったゲントは噎せ返って我にかえり……ここまで、無言ながら害は無さそうに描かれてきたゲントとブレーザーの共生関係ですが、そ、そろそろ不備が表に出てきた……?!
 「……疲れてるんじゃないですか」
 「……いやー……そんな事ないと、思うけどな~……」
 考え込んだゲントの視界には、いつの間にやら宇宙空間、そしてブレーザーのような形をした光の塊が浮かび上がり……ブレーザーと意思疎通を試みるゲントだが、巧く行ったのかどうかよくわからないままメダルだけが熱く輝き、今作ここまでには無かったアプローチ。
 一方、10年前にアンリが知り合った演奏家・ツクシと3人の仲間達が宇宙を見上げる中、地球に巨大隕石が墜落。
 「始めよう……これが……最後のコンサートだ」
 弦楽三重奏+ピアノのカルテットが不気味な旋律を奏で始めると、隕石が割れて中から見覚えのある怪獣が飛び出し、それに伴い伴奏のメロディは聞き覚えのある音楽のアレンジへと変わり……う、うーん……私の、苦手なパターン。
 「司令部より通達。目標を以後、ガラモンと呼称するそうです」
 「ガラモン? なんか古くさい名前ですね」
 も、ニヤリとするよりも、この10年あまりの《ウルトラ》シリーズの悪い病気がまた顔を出したといった印象。
 ……最後まで見ると今回のこれは、メタ前提による懐古ネタとか内輪ネタというよりも、旧作の素材を借りる事でいつもの『ブレーザー』と違うタッチの事をやりますよ、というコードであった事はわかるのですが、とはいえ個人的にはあまり印象の良くないまま進行する事になりました。
 楽団の演奏に合わせて暴れ回る怪獣に隊長とヤスノブの乗ったアースガロンは翻弄され、音楽と巨大怪獣の映像を結びつける、といった
イデアそのものは嫌いではなく、いっそ、『トムとジェリー』みたいに、ひたすら伴奏に乗せてバトルと周辺のドタバタを描く、なんて映像は見てみたかった気はします。
 現場でキャッチされた音波の波形から、その音楽が怪獣を操っているのでは、と気付いたアンリが、更にメロディに聞き覚えのある事を思い出すのは、父親の影響で音楽好きというアンリの特性とも繋がって良かったのですが、それにしても、頻繁に挿入される演奏シーンの尺配分は長すぎ。
 数日前にツクシから届いたチケットに思い至ったアンリがコンサート会場に走る中、怪獣の体当たりを受けたアースガロンはコックビット部分の装甲を突き破られて沈黙し、ヤスノブ、あわや殉職の危機。
 気絶したヤスノブを退避させた隊長はブレーザーへと変身し、リバーサルアッパーから奉納の舞いキャンセル真空飛び膝蹴り。
 アンリが会場に飛び込むと演奏を止めぬままにツクシは、自分たちが60年前、略奪の為に地球に派遣されたセミ型宇宙人である事を明かす(メンバーの名前は全員、セミモチーフ)。地球にガラモンを呼び寄せ、山賊の限りを尽くす筈だった4人は地球で聞いた「音楽」に魅了されて仕事そっちのけでカルテットを結成してしまい、ガラモン起動から延々と伴奏が流れ続ける、根本のアイデアは嫌いではないですが、何故ここでセミカルテットのMV風シーンがやたらと長いのか。
 「しかし、時は来てしまった」
 のところで、それまで水面に映っていた演奏する4人の姿が氷に閉ざされる演出なんかは良かったのですが、どうにも随所で、《ウルトラ》である事よりもゲストの存在が優先されているような作りが、スッキリと楽しめません。
 一方ブレーザーさんは、ウルトラの鉄パイプも効かねぇ?! と、凄く普通にピンチに陥っていた。
 「なんで私にチケットを送ってきたんですか?! 私に止めて欲しかったからじゃないんですか?!」
 セミ星人たちに食い止められながらも、遂にアンリの放った銃弾がツクシの演奏を止めるとガラモンの動きも止まり、窮地を脱したブレーザーさんは両手に小さく出した八つ裂き虹輪をチェーンソーのように使う割とえげつない攻撃で怪獣を粉砕。
 音を楽しむ心を持った地球を破壊せずに済んで良かった……とアンリに別れを告げたツクシの言葉と共にステージの幕が下りると、そのまま白黒画像のED(今回使用された『ウルトラQ』のアレンジテーマ)に突入するのも面白いといえば面白いのですが……とにかく、やたらめったら苦戦するブレーザー&アースガロンと、やたらめったら大きな扱いを受けるゲスト(東儀秀樹)のバランスが悪すぎて、変化球にしても飲み込みにくいエピソードとなりました。
 もしかしたら私の知らないところで、東儀秀樹さんがシリーズの大ファンを公言していたり、シリーズ過去作に関わっていたのかもですが、著名音楽家(役者業は以前からやっているとの事)のゲスト出演が中心になって、ウルトラマンを踏み台にしたオンステージのようになってしまったのは、残念でした。
 意図でいえば真の主役は「音楽」ではあり、ウルトラマンに勝てないものを地球の文化が倒した話ではあるのですが、そこで道化を演じる事になったブレーザーを実質完封するのが過去作怪獣というのもどうも据わりが悪く、こういう話こそ、オリジナル怪獣でやってほしかったところでもあります(なんとなく、放映された形になるまでに紆余曲折あったような雰囲気ではありますが……)。
 次回――いよいよ物語はゲント隊長の家庭の秘密に触れる?!