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脚本がスクランブル?

超力戦隊オーレンジャー』感想・第3-4話

◆第3話「危機 超力の秘密」◆ (監督:辻野正人 脚本:杉村升
 見所は、前回までは変身すると「オーレッド」呼びだったのに、今回は変身しても「隊長」呼びされる隊長。
 バラノイアは巨大円盤を東京へと送り込むと、透明化能力を持ったバラバニッシュを投下して撤収し、今日も戦闘機からバイクで地上に着陸すると、いきなりマシン獣を轢くたいちょーーーーぉ!!
 しかし、さしもの隊長も突如として透明と化したマシン獣には苦戦を強いられる一方、空では今回もドッグファイトをアピール。
 バニッシュが少年を狙っているのを目にした隊長は、今度は、車で、マシン獣だけを鮮やかに轢いた!
 このギリギリ感が完全に昭和ヒーローな隊長は、そのまま少年を車に乗せて逃走を図り、怪人の着ぐるみで車の屋根の上をぐるぐる転がって撥ね飛ばされたのを表現しているのが、地味に凄い。
 隊長と少年はバラバニッシュの執拗な追撃を受け、今回も、車を一つ派手に転がす大爆発。
 バラノイアの通信妨害により本部と連絡が途絶し、人間的圧力が強すぎて子供の相手があまり得意で無さそうな隊長は、少年を連れて孤立した逃避行を余技なくされる。
 「みんな、一生懸命生きてるんだ。だから、何がなんでも、この地球を守らなくては」
 亡き父親との思い出の石を取り出した少年に向けて隊長が対バラノイアの覚悟を語り、公務員戦隊としての使命感をアピールしていた頃、本部では少年の身元が、3年前、超文明の遺跡の欠片を拾った子供だと判明。
 それこそが超文明の大規模な遺跡発見の契機であり、三浦、およそ3年で、石版に刻まれていた文字の解読から超力システムを再現していた(笑)
 第3話にして、子供ゲストを物語の軸にしようとしたら基本設定にだいぶ無茶が生じましたが、バラノイア兵に追われる隊長と少年の前に、皇子ブルドント率いる増援が現れて大ピンチとなると超力変身!
 そこにメンバーも合流すると斜めの揃い踏みから主題歌バトルとなり、今回は最初から個人装備で大暴れ。
 集団戦が始まったところで、カメラを大きく引いて戦闘の全景をロングで見せると、カット割らずにカメラの移動でそれぞれの戦いを映していき、そこからアップで個別のスポット……という撮り方は、80年代戦隊バトルを意識的に再現しているのかと思われ、私、これが結構好きでして、放映当時に『オーレン』がツボに刺さった理由の一つがわかった気がします。
 戦闘員を蹴散らしていくオーレンジャーだが、少年がバラバニッシュに捕まってしまうと、少年の記憶を読み取り、遺跡の欠片の情報を得る事で超力の秘密を探り出そうとする存外まともな狙いだった事が判明し、いよいよ欠片の情報がバラノイアの手に渡ろうとする寸前、スターライザーの握り部分から奇襲用の飛び道具を放った赤が、痛烈な一撃をバニッシュへと叩き込み、隊長、戦闘スキルが高すぎて、人質が効かない(笑)
 少年を解放したオーレンジャーは、一斉攻撃から合体武器のビッグバンバスターを叩き込んで勝利を収め、バニッシュ撃破のくだりが物凄く雑になりましたが、前半から伏線を張っていた「バニッシュは太陽光線を利用して透明化する」くだりが全く活用されず、攻撃前に赤が太陽を見るシーンもこれといった意味が無かったので、編集段階であれこれカットが発生して存在していた辻褄が溶けて消えてしまった雰囲気はあります。
 隊長は溢れすぎるカリスマでなんとなく少年の心を掴み、今回も部下と共に空を見上げる隊長で、つづく。
 改めて初のメイン回で、70年代ヒーローばりの実質的な人質無効体質を見せつけた隊長ですが、同時に、〔少年と逃避行する隊長・戦闘機で敵と戦う緑青・基地で情報収集を行う黄桃〕と極端なほどの役割分担を行っているのが特徴的なエピソード。
 なにか撮影上の都合があったのかもしれませんが(ラストを除くと、黄桃は基地のシーンだけで撮影が済んでいたり)、今作の特性としての「超力基地(大型支援組織)の存在」を強調して組織要素を押し出す事にはなり、過去3作との差別化は明確になりました。
 また、バニッシュは撃破したが同様の目的で狙われるかもしれない少年を守ってみせると隊長が約束する一方、バニッシュを破壊された事で記憶読み取り作戦は不可能になった、とバラノイア帝国が歯がみする光景が描かれて、従来作にありがちだった「この場合、一度撃退しただけでは根本的解決にならないのでは……?」問題の穴埋めに挑むのですが、記憶を読み取るマシン獣は二度と生産できない、というマシンの利点を活かせない問題が新たに発生してしまっており、開発にレア素材が必要だったのか、バラバニッシュ。
 透明化と記憶読み取り能力の関連性も薄く、謎多きマシン獣でありました。

◆第4話「怪奇!!鉄人パパ」◆ (監督:辻野正人 脚本:杉村升
 ブルドントは、地球侵略の足がかりとしてまず日本を狙うのが上策、と進言し、順調にスケールが小さくなっていくバラノイア。
 月面から地球各地に空襲可能なのに、四方が海に囲まれている日本は都合が良いも何もあったものでありませんが、バラノイア帝国に必要なのは、有能な悪のコンサルタントです!
 この辺り、前回のオチ同様、一定のリアリティ強化を試みているものの、その仕掛け自体がツッコミどころになってあまり巧くいっていない感ですが、90年代に復活したオール公務員戦隊をどう描くのか、の模索は窺える部分。
 差し出がましい口をきく息子をぽかっと殴ったバッカスフンドはバラクラッシャーを地球に送り込み、巨大な足跡を追う超力戦隊は、交番の警官に駐車違反を見とがめられて、権力で黙らせた(笑)
 ……いやまあこの場合は、戦時下の特務部隊として正しい対応であり、変にこじれさせると職務熱心な筈の警官がかえって感じ悪くなっていた可能性はあるので、隊長が無言で認識票を差し出すと、超力戦隊の存在を把握していてびしっと敬礼を行うのが、ゲスト警官の好感度に繋がって良かったと思います。
 そういえば、チーム移動の足がジープなのも、今作の志向する80年テイストの一貫でありましょうか。
 ビルの地下に潜り込んでいたバラクラッシャーと戦うオーレンジャーだが、取り逃がしたクラッシャーに警官が噛みつかれる不祥事を引き起こし……この時点で警官を超力基地に移送して精密検査を行っていればこの後の事態は防げた疑惑がありますが、クラッシャーの能力により、金属アメーバの侵食を受けた警官は、バラクラッシャーへと変貌すると、次々と子供を誘拐してしまう。
 人の良さそうな巡査からクラッシャーへの変貌シーンはなかなか面白く、ライターの火に反応して同僚巡査を襲ったクラッシャーは、さらった子供達を皮切りに人間マシン獣計画を進めようとするが、事態を知ったオーレンジャーが超力変身。
 実の息子の叫びに正気を取り戻した警官は、体内のアメーバの存在を知って自ら拳銃自殺を図ろうとするもオーレンジャーに止められると、再びクラッシャーへと変貌。だが、弱点の火を突きつけられた事で体内から飛び出したアメーバを光線銃で破壊する事で、バラノイアの作戦は失敗に終わるのであった。
 「おのれバラノイアめ……人間をなんだと思っているんだ。必ず、必ず貴様たちを倒してみせる」
 親子の抱擁を暖かい眼差しで見つめた隊長は、今回は海の彼方を見つめながらバラノイアに怒りを燃やし、とりあえず、これをやればオチがつくメソッドは確立(笑)
 序盤の単発エピソードながら誰がメインというわけでもなければ、巨大ロボ不在とはいえミニマシン獣を倒して爆発する工場から脱出するクライマックス、は《スーパー戦隊》としてはやや変則的な内容でしたが、それもその筈、当時、助監督だった竹本昇氏のXTwitterによると、今回の脚本は、『特救指令ソルブレイン』第3話「父は天使か怪物か」(監督:小西通雄 脚本:杉村升)のリメイクのようなものとの事で、内容はすっかり忘れていた為、視聴後に自分の過去の感想を読み返してみたところ、確かに、話の流れと要点がほぼそのまま。
 (※参考→■〔『特救指令ソルブレイン』感想2/ものかきの倉庫〕
 見るからに鋼鉄! といったバラクラッシャーが、火にあぶられて苦しむ映像的な説得力の弱い展開は、元になったエピソードの
 「熱だ……熱に弱いにちがいない。田代巡査の中に居るアメーバを、熱の力で追い出す!」
 をそのまま使った為だったようで、そういった目線で捉えてみると、爆発炎上する工場から脱出成功するクライマックスは、まさに『ソルブレイン』の十八番(笑)
 実際の事情はわかりませんし、過去の自作脚本をアレンジして用いる例自体は他にもありますが、背景を知ると、当時の《スーパー戦隊》の制作体制にどうにも限界が来ていたのではないか、と考えてしまう一編でした。
 (※なおこの後、1996年~2023年の《スーパー戦隊》において、2年連続で同一のメインライターが起用されたのは、『アバレンジャー』(2003)→『デカレンジャー』(2004)のみの筈)