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むっちゃ自由なアイツ

ウルトラマンブレーザー』感想・第4話

◆第4話「エミ、かく戦えり」◆ (監督:辻本貴則 脚本:継田淳
 見所は、怪獣に反応してむっちゃ自由に飛び出してきた変身リングを慌てて隠すゲント隊長。
 「いや食い止めるってどうやって?!」
 「…………こ、これで!」
 拳銃は最後の武器だ!
 言い訳ばかり上手くなっていく人生ですが、切り札は隊長権限だ!!
 「我が社の製品が、再び街を救った」
 3ヶ月前から突如として街中に出現しては、ドローンから散布された薬品を浴びると液状に溶けて消滅する軟体怪獣レヴィーラ。
 強靱な肉体再生能力を持ち、神出鬼没の怪獣は、大手化学企業ノヴァイオが製造していた新型殺菌剤・FK1が有効と判明して以降は、出現の度にその散布により撃退。被害は最小限に食い止められる一方、徐々に薬品への耐性を高めている事が明らかになっており、抜本的な撃破手段の確立が急がれていた。
 同時に、怪獣とノヴァイオの開発商品との間に類似が疑われた事から、スカードは潜入捜査のプロフェッショナルであるエミ隊員を、社長秘書としてノヴァイオに潜り込ませる……。
 「世の中に偶然なんてありません。裏を返せばどこもかしこも真っ黒」
 「まあ、そう言うなよぉ」
 「実感です。私、17歳からこの世界に居るんで」
 第3話までを物語世界の土台作りに用いた『ブレーザー』、今回から個別の隊員にスポットを当てていくようで、トップバッターはバズーカデビューを飾ったエミとなり、謎の怪獣とその特効薬の背後に潜む闇を探るスパイアクション風味付けで展開。
 「金? 金だと? ……ふふ、はははははは! 私が欲しいのはリスペクトだ。私を讃える民の声だよ。ははは、曽根崎浩は日本のいや、世界の救世主になる。防衛隊ごときに埋もれていては絶対にかなわかった夢だ。――凄いぞ俺。ふふはは、ヤバいぞ俺。最高俺!」
 ゲントと組んで一芝居打ったエミは、ノヴァイオ社長・曽根崎が事態の黒幕だった事を突き止め、防衛隊の機密資料を利用して怪獣を作り出した目的が、金でも無ければ生命倫理を無視した科学の暴走でもなく、醜悪な自己愛の産物だったのは、一ひねりといったところ。
 自分大好き・自作自演による願望充足・やたら高いテンション、といった辺りは、辻本監督も参加していた『ルーブ』の悪役・愛染社長へのセルフオマージュ風味も感じますが、常に薄ら笑いを浮かべていたり無意味に顔を寄せてきたりする気持ち悪さは印象的となり、ゲストがなかなか好演でした。
 今回も無言変身した隊長は、ブレーザーとなると威嚇の舞いから真空飛び膝蹴りを放ち、らっせっせーらっせせー、と怪獣を攻め立てるが、液状化による変則的な移動に苦戦。
 モデルになったクリオネよろしく、頭部をがばぁっと開けて迫る怪獣に、(うわ、ちょ、きもい、まじきもい、生理的にムリなんですけどーーー?!)と逃げ腰になった所を、エミ発案によるアースガロンの液体窒素投げに助けられ、エミに対する曽根崎の「冷凍睡眠してやる」という脅しが、怪獣撃破の一応の布石に。
 ……まあ、「冷凍睡眠」が飛び出してくる事そのものが少々強引だったのですが、この世界では既に確立した技術だという事ならば、隊長妻子が冷凍睡眠状態で病気の治療を待っている、とかもありそう。
 ブレーザーは、凍り付いた怪獣をウルトラジャベリンで粉砕し、切羽詰まった時の解決手段はウルトラマンだけど、現状ブレーザーが滅茶苦茶強すぎる事はなく、適度なサポートが入っての勝利、という形は上手くバランスを取れました。
 怪獣と共に曽根崎の野望は崩壊し、地に落ちた愛用のイヤホン(とそこから流れる曲)、燃え落ちるスクラップブック……から、エミ隊員がゲント隊長の「家族へ」と花をプレゼントして最後は渋くまとめ、エミ隊員ならゲントの家族については把握済みと思われますが、そこに込められたニュアンスについては謎のまま、つづく。
 なお話の都合により隊長は、ピンクのガーベラの花言葉を把握している30代男性となりましたが、切り札は隊長権限だ!!
 立ち上がりの土台作りが終わり、監督・脚本も代わってのキャラ回でしたが、基本はさくさく楽しめる娯楽活劇を重視する方向性のようで、あれこれ緩いけど、それも含めて『ブレーザー』世界といった観。
 スカードを少数精鋭チームとする事による、現場指揮官であるゲント隊長は「むっちゃ自由やん」と動き回り、いざとなれば隊長命令で誤魔化せるので、むしろ従来シリーズの主人公たちよりも変身の融通が利く事になっているのは、巧妙な設定といえば巧妙な設定だし、制約が生む面白さが弱いといえば弱いし……といった感触で、個人的にはもう少し、隊長個人の掘り下げ(芯になっている情念の部分)が欲しいところなのですが、この作りだと、キャラ回のラストに持ってきて前半の一山まではお預けになりそうでしょうか。
 作品としては今のところ、オリジナル怪獣は嬉しいし、飄々としてどこか抜け目のないキャリアのある主人公のアプローチは面白みがあり、どこが悪いというわけではないけれど、もう一つ響いてくるものもない、といった感。