東映特撮に踊らされる駄目人間の日々のよしなし。 はてなダイアリーのサービス終了にともない、引っ越してきました。
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戦わなければニンジャになれない

忍者戦隊カクレンジャー』感想・第27-28話

◆第27話「無敵将軍の最期」◆ (監督:東條昭平 脚本:曽田博久)
 あいつ最初は俺たちと同じフォルダに入っていたのにな……といつの間にやらサスケと離れ、セットで猫丸に詰め込まれたサイゾウとセイカイは、旅立ちから2週間経ったのでモチベーションを再確認。
 人類石化コンサートの回想映像にサブタイトルを重ねた直後、画面が切り替わると青と黄がジュニアと戦っているのは、回想前の流れとあまりにも繋がらない間を端折りすぎた導入となり、そこに響く不気味な笑い声。
 と同時に風が吹き荒れ雷鳴が轟き、その様相に鵺の説明を始めるジュニア(笑)
 「その昔、京の都を騒がせた、伝統と格式を誇る、妖怪の中の妖怪よ!」
 ジュニア一味さえ吹き飛ばし、落雷と共に降り立ったのは、鷲・蛇・ライオンのモチーフが融合した、ニューモデルの妖怪戦士ヌエ。
 「おわかりかなジュニア。あまりにもおまえが生ぬるいゆえ、この俺が大魔王様の使者として、やってきたのだ」
 戦隊玩具CMでお馴染み玄田哲章声の妖怪は、妖術ツバサミサイルで青と黄を一蹴し、刺さった羽から呪力を注ぎ込まれたサイゾウとセイカイは、徐々に最下級のカッパ・屁のカッパへと存在の変わる妖怪刑を受けてしまう。
 「我が妖術からは逃れられぬ」
 恐るべき敵の出現に巻物どころではないまま、徐々にカッパ体質となっていき、水分不足が致命傷になっていく2人。
 「やっぱり俺たちはカッパなんだ!」
 「天下の二枚目が情けない!」
 そこにヌエが姿を見せると、「最後に生き残れるカッパは一人。戦わなければ生き残れない!」と、互いに殺し合って生き残った方だけが妖怪刑を逃れて人間に戻る事が出来ると宣告。
 戦え……戦え……戦えぃ!
 どうせ俺たちはギャグ担当なんでしょ? と油断していたら殺伐としたカッパバトルに放り込まれてしまった二人は巻物の力にすがろうとするが、地図に示されていた場所はニュータウンとして開発されており、やむなくカッパ化した姿で街へ向かう事に。
 だが巻物は見つからないまま、カッパ化の進行する二人の背中にはとうとう甲羅が生じ、半ば錯乱した状態で、市民に囲まれて散々な嘲笑を浴びて逃げ出した末…………あ、俺、こんな事もあろうかとズボンにナイフ入れてたと気付くセイカイ。
 ナイフを握ったセイカイはサイゾウに襲いかかるが、それをかわしたサイゾウは必死にナイフをもぎ取り、代わりにコンクリートブロックを手に取るセイカイ。
 (サイゾウ……俺を刺せ。そうすればおまえだけは、人間に戻れる)
 実は全ては、自分を犠牲にサイゾウを助けようとするセイカイの演技であったが、ブロックを振り上げるセイカイに対してサイゾウはナイフで反撃する事なく打撃を脳天に受けて昏倒し、パニック状態の果てに、互いの理性と友情を確かめ合う二人。
 「セイカイ、俺たちは死ぬも生きるも一緒なんだよぉ!」
 「ああ! ……俺たち、大切なものを忘れていたようだ」
 良くも悪くも激しやすい2人は号泣しながら手を組み合わせ……そう、思い出すべきは、正しい殺意の使い方。
 「野郎! どこにいるんだ!」
 「おらぁ! 出てこいや!」
 カチコミモードを発動した2人は、殺るなら貴様だ! とヌエに戦いを挑むが、その圧倒的な妖力の前に手も足も出ない。それでもくじけず攻撃を続け、手裏剣と巻き菱のコンボで多少の痛手を負わせるも結局はヌエの一刀に切り伏せられる、が……ジュニアが静観する中、力を振りかざす強者に立ち向かい続ける弱者の姿に肩入れした下忍たちが倒れたカッパに水を提供すると、リポビタンD。
 「「元気! 一発!」」
 立ち上がった二人が反撃のダブルカッパキックを決めるとカッパの呪いが解けて人間に戻り、それはそれとしてスーパー変化から下忍軍団と戦い始めたらどうしようかと思いましたが、最下級の存在であるドロドロが同じく最下級のカッパの奮闘に情が湧いたのだとジュニアの解説が入ると、激怒したヌエが下忍軍団を滅殺。
 「たぁ! 無敵将軍参上!」
 すると突然、これまでにないパターンで無敵将軍が登場。巨大ヌエに完敗して姿を消すも、サイゾウとセイカイがそれでもスーパー変化して巨大ヌエに戦いを挑む気概を見せると地下から巻物が飛び出してくるので明らかに茶番劇なのですが、茶番が茶番であった説明が無いまま今回が終わる上、巨大ロボの敗北に何のドラマ性も与えられていないので、ただサブタイトルの回収の為だけに負けに出てきたみたいな事に。
 ……茶番としても酷いけど、茶番で無かったのならより酷いので、どう転んでも酷いという。
 奥義の巻物を手にした黄と青は、ゴッドクマードとゴッドロウガンに乗り込み、どうやら人型はサルだけの模様。
 「熊と狼か……妖怪サーカスに売り飛ばしてやる!」
 「黙れヌエ! 絶望からは何も生まれないんだ!」
 「どんな時も希望を捨てずに戦う事を、俺たちは学んだんだ!」
 希望を捨てずに戦っていたら助けてくれたのは敵戦闘員、という点が無視されるので試練の内容もあやふやになり、ゴッド狼の回転尻尾アタックとゴッド熊の地割れ攻撃を受けたヌエが巨大な裂け目に飲み込まれて姿を消すと、青と黄は勝利宣言を行い、ジライヤに向けエールを送って、つづく。
 無敵将軍の扱いも雑の極みでしたが、妖怪刑を受けた事により一般市民から袋だたきに近い扱いを受けたサイゾウとセイカイが、倒すべき敵の側に共感されて助けられるも、そこから改めて戦う理由を見つめ直すわけでなく(それは「試練」として描かれず)、刺激的な要素を入れるだけ入れて特に踏み込まないまま終わる中途半端な内容で、だいぶ残念な出来。
 個人的に、戦闘員ポジションに個性を与えたり、人間味を付け加えるのがあまり好きではないのもありますが(結局、普段は無慈悲な殺戮対象にするわけですし)、物語としてクライマックスで回収されるわけでもないのなら、ドロドロの加勢抜きで、カッパの特殊能力で逆転を収める機転の勝利とでもした方がスッキリしたような。
 曽田先生は80年代戦隊では、憎しみの連鎖を止める事を意識する戦隊メンバーや、本当の“敵”とは何か? を主題の一つとした敵味方の枠を捉え直すタイプの作品も書いていますが、市民からの嘲笑やドロドロからの援助の描写を見るに、今回の刑の対象とされた河童という妖怪に、村落共同体から見た異人だったり、時に被差別階級の由来が見える点についての意識が無かったとは思いにくく、虐げられる者としての今作初期にあった妖怪コンセプトを利用しながら東條監督とのタッグでもっと際どい事をやろうとしたら、上からストップがかかったりしたのかもですが。
 次回――コスギ父子共演スペシャルで、サブタイトルが大変メタ。

◆第28話「超大物・来日!!」◆ (監督:東條昭平 脚本:杉村升
 さすがに地底で生きていたヌエは不死身を宣言すると、狼と熊に手も足も出なかったトラウマから、その矛先をジライヤに向ける。
 巻物探しの途上、モブ妖怪に襲われていた子供たちを助けようとしたジライヤは、救援に駆けつけたサスケと共に、さらわれた子供達を追跡して、ウェスタン村風味な伊香保グリーン牧場へと辿り着き……伊香保伊香保といえば、忍者の里!!(※『人造人間キカイダー』第17話「アカクマバチ恐怖の人質計画」参照の事)
 20年越しのコラボが実現し、子供の救出の為に酒場に乗り込んだサスケとジライヤだが、スーパー変化しようとしたジライヤは突然、黒い道着の男・ガリに襲われる。
 80年代、アメリカにNINJAブームを巻き起こしたショー・コスギがジライヤの師匠ガリ役で出演した親子共演アクション巨編で、
 「攻撃こそ、最大の防御だと教えたのを、忘れたのか!」
 大変、前のめりな師匠でした。
 猛虎魂を感じるアーマーに身を包んだガリは、警察官であった父を妖怪に殺されていたジライヤにとって、武道の師であると同時に親代わりの存在でもあり、妖怪に与する恩人の豹変が理解できず、手も足も出せないまま一方的に攻撃を受ける事になるジライヤ。
 「人間は変わるのだ! どんな聖人君子でも、ひょんな事から間違いを起こし、堕落して悪魔になる。それが今の私だぁ!」
 ……あれ今この人、自分の事をかつて「聖人君子」だったと言ったよ?!
 思い出のペンダントも踏みにじられ、茫然自失のジライヤにトドメが迫ったその時、突然現れて、ライフル銃をぶっぱなすサスケ(笑)
 危うく、勝利のVサイン……いや、標的が1人だから、勝利のサムズアップが出てしまうところでしたが、五代雄介、こういうの知ってるか? 古代ローマから伝わる、誰だって命は一つ、の仕草だ(サムズアップ!)。
 ジライヤが無抵抗のまま、怒れるサスケがスーパー変化までしてしまい、父子共演を強調する為にジライヤはスーパー変化させない前提だったのでしょうが、《スーパー戦隊》としては、だいぶいびつな事に。
 ガリへと躍りかかるニンジャレッドだが、分身の術を破られ、飛び道具も跳ね返され、完敗。
 「これでわかったかぁ! 人と人の絆など、なんの役にも立たないことが!」
 「うわぁ!」
 「私が憎いか? 憎ければ立ち上がってこい。COME ON!」
 ガリが身につけた鉄の爪こそ、父を殺した凶器だと気付いたジライヤが怒りの反撃を入れると、両者の飛び蹴りが交錯して、つづく。
 ショウ・コスギが出演してくれる事になったら、サイゾウとセイカイは1話にまとめて切り詰め、前後編を用意する判断はわからくなもないですが、わからなくないにしてもどうかとは思いますし、その時点で既に個人の試練の名目が倒壊しかけていたとはいえ、変身要員としてサスケが大っぴらに乱入する事で、木っ葉微塵に粉砕。
 第24話でそれなりに劇的なターニングポイントとして描かれた“再会を期しての別離”を、制作サイド自ら溶鉱炉に放り捨ててしまった事への引っかかりが大きく、終始ノリにくいエピソードでありました。
 『カクレンジャー』をちゃんとやった上での親子共演スペシャルならお祭り感も含めて楽しめますが、『カクレンジャー』をぶっ壊した上での親子共演スペシャルなので優先順位に疑問が生じ、スペシャルゲストありきの作りなので、放映当時と30年後では印象が変わってくるタイプのエピソードかとは思いますが……。