間違いなく『ゼルダ』が原因。
5月のざっくり読書メモ
●『盤上の夜』(宮内悠介)
四肢を失い囲碁盤を感覚器とするに至った棋士、完全解が発見された遊戯の王者、霊能力者が奇妙な手を打ち続ける麻雀、未来へ繋がる遊戯を夢見る小国の王子、ゲームを殺すゲームを作り出そうとした男の情念……囲碁、チェッカー、麻雀、チャトランガ、将棋、といった5つの盤上(卓上)遊戯を主題にした、著者のデビュー短編集。
以前に読んだ『彼女がエスパーだったころ』同様、ライターである語り手の“わたし”が、既に起きた事件について関係者に取材しながら、果たしてそこで起きていたのはなんだったのか、を追いかけていく形式を基本とし、サスペンスの作り方が巧み。
各編は独立したエピソードながら緩やかに連動して最後の一編に繋がり、今作の方が抽象的というか、ゲームを通じた抽象と具象をテーマの一つにしている事もあって、総じて観念的な内容。
作品集のフォーマットが同じというだけなので、内容を比較するものではないのですが、個人的には『彼女がエスパーだった頃』の方が、もう少し肉体に寄ったわかりやすさもあって、好みでした。
収録作品で好きなのは、<都市のシャーマン>と呼ばれる新興宗教の教祖が、ある麻雀大会で奇妙な手を打ち続ける「清められた卓」。ミステリの文法も用いつつ、明らかになる真相が鮮やか。
●『遊星小説』(朱川湊人)
ジャンルの境界辺りを攻めてみようシリーズで、初めての朱川湊人。
ファンタジー、ホラー、ちょっとSF、かと思えば割と他愛の無い日常の感傷など、バラエティ豊かなショートショート集。
広い意味では幻想小説集、といったところですが、ジャンルが多岐に渡るショートショートなので、割と面白いものもあれば全くピンとこないものもある、といった感じで、個人的に気に入ったのは、「ゴメンナサイネ」「玉手箱心中」「大銀河三秒戦争」といった、ユーモアがあってちょっとクスリとさせる系。
ショートショート集として面白かったのは、中に何本か、世界観とキャラクターを同一とする作品がある事で、作品集の良いアクセントになっていました。
そういった繋がりがあった上で、それを明確に示したラストの一編がいまいちピンと来なかったのですが、解説を読んで、おお成る程、と思えたので、良い解説でした。
また何か合いそうなのを選んで、読んでみたい。
あと最近は、合いそうかな……と思って読んだSFが全く合わずにちょっとくじけ、しばらく前には、空海について基本的な事を知りたいと思い、とある小説家の書いた初心者向け空海の生涯入門書みたいな本を読んでみたところ、序章で「事実と私の憶測は明確に分ける」と宣言しているのに、中を読んだら全く分かれていない事件などあったのですが、改めてれっきとした仏教学者さんの書いた本を読んで、(勿論学者の書いた本といっても色々とありますが)学者の文章は落ち着くな……と思っております。