東映特撮に踊らされる駄目人間の日々のよしなし。 はてなダイアリーのサービス終了にともない、引っ越してきました。
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振り向くな 切り裂け 闇を貫くまで

牙狼<GARO> -炎の刻印-』簡易感想1

●第1話「業火-HELL FIRE-」
 「教えてやる。俺は貴様らホラーを封印する者、ヘルマン・ルイス。またの名を魔戒騎士――ゾロ!」

 魔女の火刑、火あぶりの中で産み落とされた赤子、そして銀狼の騎士の出現、により物語は幕を開け、それから17年――魔女とそれに与する者たちは苛烈な魔女狩りにより次々と追い立てられ、王国は更にその猛火を周辺諸国へと拡大。
 民衆の間では密告が横行し、疑心暗鬼が疑心暗鬼を呼ぶ中、実はその魔女の一党こそが古来より悪魔を狩っていた者たちであり、国王にかけられた呪いに始まった一連の魔女狩りの背後には、悪魔と悪魔狩人の暗闘が存在していた……と、娼館で寝物語に語る、濃い胸毛の男。
 ……胸毛が、濃い。
 飄々とした軽薄な女好きを装う(?)、CV:野沢那智……ではなく堀内賢雄の男こそ、17年前に魔女が産み落とした子を手に姿を消した銀狼の騎士であり、娼婦に化けた悪魔――ホラーを魔戒騎士ゾロとして狩る一方、成長した魔女の子、赤毛の少年レオン・ルイスは迫り来る刺客を前に黄金の鎧を身にまとう!
 過去の火刑 → 現在の娼館 → 奇怪なホラーとのバトル!
 と、原典『牙狼』の三点セットである〔エロ・グロ・バイオレンス〕を取りそろえてヒーローの見せ場へと繋げ、今作の黄金騎士ガロは、マントの代わりに背中に輪っかつきの布をはためかせ、鎧が常に炎をまとっているのが特徴的。兜を始め鎧の各所に赤い接ぎ(金継ぎ)のようなものが入っているのは、まだ不完全というイメージもありそうですが、復讐の血涙といったニュアンスも感じられて格好いい。
 「見ろ! あれがおまえの為に母が燃やしている命だ。レオン! 忘れるな!」
 過去の因縁を描く導入編であった今回は、実質的に胸毛の騎士の方が主人公といえる描かれ方となりましたが、中世ヨーロッパ風世界を舞台にしつつ、「父と子」(&その背後で半ば概念女神化した母性)という《牙狼》シリーズの主題を明示してきているのは、2014年放映、シリーズ初のTVアニメという異風が、シリーズとしての正道を進む宣言のようにも感じられます。
 シリーズ史としては、TV第四弾『魔戒の花』の次の作品となりますが、その立ち位置が元々の『牙狼』の立ち位置(特撮ヒーロー作品としては、異風にありながらその魂は正道一直線)と重なっているのは、シリーズ約10年の積み重ねが歴史となっている感もあって、面白いところ。……まあ私は、初代と鋼牙関連の劇場版しか見ていないので、シリーズ全体についての文脈把握は出来ていないのですが。
 刺客を退けたルイス父子が因縁の王国へと馬首をめぐらす一方、王城では後継者たる王子アルフォンソが20歳を迎えて立派な金髪王子に成長していたが、母親から祝いに送られた首飾りには、何故か魔戒騎士の紋章が刻まれているのであった……でつづき、OP映像を見る感じでは中世ファンタジー要素としての“光と影の王子”のモチーフも入ってきそうで、物語がどう繋がっていくのか楽しみです。
 後、主題歌のサビが大変格好良くて、グッと引き込まれるOPでした。
 それはそれとして、声が土師考也の人とか、国の要職に就けてはいけない。

●第2話「刻印-DIVINE FLAME-」
 「ほんっと魔戒騎士って最低」

 王国の政治的中枢に潜り込み魔女狩りに火を付けた黒幕メンドーサは、元老院付きの元魔戒法師と判明するが、魔戒騎士に憎悪を燃やし王国にホラーを跋扈させるその理由は謎に包まれ…………娼館のツケを経費にしようとごねる騎士とか、禁止って言ってるのに身内同士でタイマン始める騎士とか、俺はクールだから報告書とか書かない、とか言い出す騎士が居て、連日の残業に次ぐ残業、徹夜に次ぐ徹夜に、もうこんな仕事やってられっかーーー!! となったのでは。
 「魔戒騎士……奴らは鼠だ。どこにでも潜り込み、その血を残す」
 あの胃薬と栄養ドリンクに埋もれた日々……を思い出すだけでもはらわたがが煮えくりかえるわーーーっ!! と、半身に黒い紋様を浮かび上がらせたメンドーサは、国王毒殺未遂の容疑をかけて王妃をマッハで排除。
 魔戒騎士の印籠を手にした王子アルフォンソも逃避行を余儀なくされ、“宿命を背負った忌みつ子”と“国を奪われた王子”を同時進行してくる、欲張りな展開。
 「さあ、今は逃げなさい。そしていつの日か、この国を取り戻すのです。あの伝説の、光の騎士のように!」
 王国の過去の伝説に、魔戒騎士が存在している事が示唆される一方、ルイス父子はホラーと渡り合い撃破する魔戒法師エマと出会うと同時に、火刑のトラウマから半身に炎の刻印を宿すレオンの暴走が描かれ、どうやら鎧の金継ぎはこれに対応している模様です。
 女性キャラの初登場回で顔にずっと青あざ(わざと捕まる為に殴られた痕)は、実写では難しそうというかアニメでも大概挑戦的ですが、番犬所の登場など、原典の要素を取りこんでフォーマットを固めながら、つづく。
 ……ところでレオンは、出自といい顔のデザインといい炎の力といい、アニメ『コンクリート・レボルティオ』(2016)の爾朗センパイをちょっと思い出します(笑)

●第3話「契約-ZARUBA-」
 「新たなる黄金の担い手よ。我と契約を為す覚悟があるか?」

 ――因果あるところ、ホラー現れ、人を喰らう。だが、いにしえより、ホラーを狩る者達がいた。鎧を纏うその男達を――魔戒騎士と云う!
 OPの締め、魔戒騎士が並ぶカットで不自然に空間の空いていた左側が臙脂色の騎士で埋まり、ルイス父子は、16年前にさる高名な魔戒法師に修復を依頼していた魔導輪ザルバの回収に向かう。
 「我が名はザルバ。ガロと共に生まれ、ガロと共にあるもの」
 レオンとザルバの契約が成立すると、黄金の鎧から噴出していた炎が落ち着き…………あ、炎出ていた方が、格好良かったのに(笑)
 黄金騎士の鎧とセットで、レオン祖父(先代)-母-レオンと継承されたザルバが《牙狼》の重要なピースとして登場する一方、追っ手から逃走中の王子様は、壁を走っていた(笑)
 ……王子、真面目すぎて、異国から伝わった得体の知れない特訓法とか毎日こなしていたのでしょうか。
 OP映像ではだいぶ人相が悪くなっているので油断なりませんが、今のところ王子に好感が持てるのは、嬉しいポイント。私割とこういう、苦難の中でもキラキラを失わない王子キャラって好きで……出来れば、血と泥にまみれまくっても濁らされる事なく狂気にも近づくようなキラキラを貫き通してくれると素敵なのですが(笑)
 キラキラ王子パワーで一応の一般人としてはトンデモ歩法を使うアルフォンソだが、兵士に擬態していたホラーの一団に追い詰められた時、瞬く間にホラーを屠り、その窮地を救ったの臙脂色の魔戒騎士……女声コーラスのBGMと共に、満月をバックにマントをはためかせた大剣の騎士が印象深く登場したところで、つづく。
 なにやら思惑ありげにルイス父子の後を追っていた糸使いの魔戒騎士エマは、中世ヨーロッパ風ファンタジー世界なのに何故ショートパンツなのだろう……と思っていたのですが、そうか、魔戒法師は足技担当だからか、と納得(笑)

●第4話「儀式-BLOODVILLE-」
 「おまえホラーに取り憑かれてんじゃないだろうな?」

 ホラーの関与しているらしき事件の調査に山村を訪れたルイス父子だが、村はよそ者を徹底的に排除し、独自の儀式と倫理観で心理的に閉ざされており……因習に支配された陰鬱な村・美しい未亡人・少年の抱える不気味な人形、と道具立てを揃えた上で、村では何が起こっているのか、ホラーはどこに存在しているのか、を正調サスペンスで描いた切り口がなかなか面白かったです。
 CV:井上喜久子の圧倒的な説得力が目立ちましたが、少年役にも矢島晶子さんを配しており、ゲストキャストの芝居で圧縮したドラマに説得力を持たせる手法が上手くはまったな、と。
 事件の真相が明らかになった時、少年が復讐の為にすがった人形ホラーは、身勝手な集団の悪意が生み出したものであった、と因果が巡る中で、レオンもまた自らの内に抱える闇と向き合う事になり、全ての物事が綺麗に解決しない割り切れ無さを意識的に残したまま、それでも“生きる”事は続いていく、渋い一編。
 一方、王子を救った臙脂の騎士が鎧を解除したら……中身はほぼ、山賊。
 次回――王子特訓編?
 レオンと王子の双方に「復讐」という要素が内在しつつ、果たして王子と魔戒騎士の出会いは何をもたらすのか。先の繋がりを期待させる布石の打ち方のテンポが良いのは、構成の上手いところ。