東映特撮に踊らされる駄目人間の日々のよしなし。 はてなダイアリーのサービス終了にともない、引っ越してきました。
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脳内整理集計企画(2)

集計再び(脚本家編)

 2018年、はてなダイアリーはてなブログ移行時に、折角だからと、劇場版などを除いて「確実に最初から最後まで見た特撮TV作品」(※当時、集計対象53作品)の監督・脚本をカウントしてみた事があったのですが……

 ■〔閉店阿呆企画1(※脚本家編)〕
 ■〔閉店阿呆企画2(※監督編)〕

 ふと思い立って、その後の約5年間で見た作品を、同様のルールで集計してみました(詳細は、昨日の監督編をご参照下さい)。
 そんなわけで、53+25=78作品分を集計してみた脚本家編。

●脚本家編●
第1位:井上敏樹 323本(18作品) 252(11)+71(7) 2↑

第2位:小林靖子 314本(14作品) 1↓

第3位:曽田博久 266本(12作品) 82(6)+184(6) 8↑

第4位:荒川稔久 251本(11作品) 186(16)+65(5) 3↓

第5位:宮下隼一 159本(10作品) 136(9)+23(1) 4↓

第6位:香村純子 138本(?+4作品) 38(未集計)+100(4) 17↑

第7位:武上純希 123本(9作品) 107(6)+16(3) 5↓

第8位:杉村升 117本(6作品) 83(5)+34(1) 7↓

第9位:上原正三 88本(7作品) 6↓

第10位:長坂秀佳 87本(4作品) 31(2)+56(2) 22↑

 個々の脚本家に対するあれこれは5年前の企画で割と書いたので、この5年間に見て印象に残ったエピソードに触れるのを中心になりますが、堂々第1位は、『ドンブラ』+80年代戦隊のサブライター仕事が加わった井上敏樹小林靖子を逆転。
 00年代後半からは率直に腕に陰りが見えていた井上敏樹が、30年ぶりの《スーパー戦隊》メインライターとして、情報の限定と登場人物の錯綜によって起きる悲喜劇をヒーローフィクションの文法に落とし込むかつての十八番で往年の切れ味を見せてくれたのが嬉しかった『ドンブラ』ですが、それだけに最終盤の失速そして転倒はかえずがえすも残念でした。
 その『ドンブラ』以外から1本挙げると、善悪から切り離したところで「愛」を描き、『ジェットマン』前夜のマイルストーン的エピソードといえるファイブマン』第39話「愛を下さい」(監督:長石多可男が印象的な秀作。
 集計期間に加算の無かった小林靖子はそれでも2位をキープし、そういえば、見よう見ようと思って結局見ていない実写《岸部露伴》シリーズ。
 80年代後半戦隊視聴により曽田先生が3位にジャンプアップし、集計期間中に見たメイン5作品の中では、『チェンジ』『ライブ』が傑作でありました。物量とアベレージの両立、そして好調時の“作品をまとめあげる力”については改めて、時代の偉才。
 80年代中盤以降、鈴木武幸-曽田博久体制における《スーパー戦隊》は、通底するテーマ性として「戦争」「科学」「青春」が濃淡を変えながら三本柱として存在しているのですが、それらを縦横に駆使しながら戦うべき“敵”とは何かをあぶり出す手腕は素晴らしく、特にそれが会心の成功を見たのが『チェンジ』『ライブ』であったと思います(上手く行かなかった例もありますが)。
 『ゴーカイ』『キラメイ』でメインを務めた荒川稔久までが200本越えとなり、4位以下を大きく引き離す形になるのは、納得のメンバー。
 荒川さんのメイン2作は共に良かったですが、それ以外から一本を挙げると、鈴木-曽田-長石-東條体制が確立させた80年代戦隊構文を鮮やかに踏襲しながらジュウレンジャーが戦う理由の本質を描き出した『ジュウレン』第46話「参上!凶悪戦隊」(監督:小笠原猛 )。
 第5位には宮下さんが残り、以前の企画の際にも思いましたが、意外と見ている宮下脚本。『ハリケン』は構成面で難を感じる部分はありつつも、ラストは非常に気持ちよくまとまった一作でした。
 宮下さんには届かずも、『ルパパト』『ゼンカイ』『ゴーカイ』ちょっぴり『ドライブ』で大幅増の香村さんが、ベスト10入り。
 香村さんに関しては今ちょっと複雑な心境なのですが、結局はスタッフワークの産物にしても、『ゼンカイ』で初期から“神様”の仕込みをしていた上で最終盤あの顛末になった事を良しとしているのならば、評価を下方修正せざるをえないな、と。
 そもそも『ゼンカイ』は香村さんの使い方に問題を抱えていたわけですが、第15カイ!「ガチョーン!レトロに急旋回!」(監督:中澤祥次郎)第40カイ!「とーちゃん奪回、ワンチャン一回!」(監督:渡辺勝也といった逸品が出た一方で、ほぼ一人体制の弊害と思われる明らかな出来落ちがあったにも拘わらず、そのままの体制を通してしまったのは、大きな差配ミスであったと思います。
 間違いなく“書ける人”だけに、書く方も書かせる方も使い潰さずに上手く使って欲しいな、と(何度か触れていますが、『ゴーカイ』第13話「道を教えて」(監督:坂本太郎が、定番を活用し、物語の要点をしっかり押さえた上で、落とし穴も鮮やかに回避する、“書ける人”の見本みたいなエピソード)。
 第7位は、円谷系で加算のあった武上さん。絶滅生物と量子力学、作品の主要ファクターを上手く繋げて料理した『ガイア』第8話「46億年の亡霊」(監督:児玉高志)が秀作でした。
 第8位は、『ジュウレン』メインにより100本代に乗った杉村さん。シリーズ構成としては信用していない……が個人的な合い言葉だったのですが、《スーパー戦隊》初参加となった『ジュウレン』では、名悪役バンドーラ様を生み出し、ブライの物語と恐竜のタマゴを綺麗に繋げて取捨選択を失敗せずに最終盤を綺麗にまとめ、お見事でした。
 ガラッと評価が変わる、とまではいきませんでしたが、こういうの見ると、もう少し余裕のある制作環境を用意できていれば、全体のコントロールの利いた名作がもう一つぐらい出てきたのでは……? というIFは(曽田先生ともども)考えてしまうところです(……その場合、シリーズが消し飛んでいたかもしれない、という別のIFも発生するのですが)。
 第9位には上原先生が残り、『キカイダー』&『01』の長坂先生がベスト10入り。
 『キカイダー01』は、70年代前半の作品にしても、用意できない怪人の着ぐるみ・辻褄を粉々に踏みつぶす展開・いつの間にか終了済みになっている重大イベント……などなど、番組としての破綻の度合いが突き抜けており、長坂脚本回でも支離滅裂なものが多いのですが、真のライバル・ワルダー登場後の切れ味は抜群で、色々な意味で忘れがたい一作となりました。
 この5年間で新たに視聴本数ベスト10に入ったのが、近作で活躍する香村さんと、70年代前半2作の数字で飛び込んできた長坂さんというのは、当ブログらしい結果ではありましょうか(笑)
 11位~20位は、以下。

第11位:藤井邦夫 83本
第12位:扇澤延男 79本
第12位:高久進 79本
第14位:三条陸 78本
第15位:高橋悠也 75本
第16位:横手美智子 72本
第17位:會川昇 69本
第18位:長谷川圭一 67本
第19位:下山健人 54本
第20位:武藤将吾 49本

 メインライター作品無し、で上位に食い込んでいる藤井先生と扇沢さんですが、藤井先生はなんといっても『チェンジマン』におけるテーマ性の汲み取りと補強が素晴らしかったです。
 あと円谷系でだいぶ増えた長谷川さんは、基本的な脚本スキルは高い方だと思うのですが、個人的にピントの合う合わないがハッキリ出がちな感じ。『W』『ガイア』などは合いましたが、『ドライブ』『ネクサス』では全く合わなかったなと。集計対象外ですが、『TDG 超時空の大決戦』みたいなジュブナイル路線は、割と好きかも。
 ……そういえば、『W』『ドライブ』で共に組んだ三条さんも、私の中では信頼度60%(半々よりややプラス)ぐらいだったり。
 この後、鷺山京子、虚淵玄伊上勝浦沢義雄大和屋暁……と続き、25位以下で印象深い名前を挙げると、まずは『ガイア』『コスモス』『ネクサス』の太田愛。『ネクサス』立て直しへの参加、『コスモス』1クール目の問題点を総ざらえ(刃の切っ先が鋭すぎてほぼ無かった事に)、など非常に“見えている”脚本家ですが、1本挙げると、雰囲気キャラだった参謀の好感度を見事に上げつつ“破滅招来体という脅威が存在している世界”における大人の役目と子供の夢の関係を見事に作品世界に落とし込んだ『ガイア』第22話「石の翼」(監督:根本実樹)。
 また、『ゴーオン』で注目していた古怒田健志が『ガイア』でも良い仕事をしており、特に第27話「新たなる戦い ~ヴァージョンアップ・ファイト!~」(監督:児玉高志)が傑作回でした。
 《ウルトラ》系では他に、『ガイア』終盤の第48話「死神の逆襲」(監督:北浦嗣巳)を綺麗にまとめ、『コスモス』でも後半に意欲先を送り込み、『メビウス』「80編」を担当した川上英幸が印象的。
 近年の新鋭では、金子香緒里と下亜友美が『キラメイジャー』でいい仕事をしていたので、今年こそ最前線で使ってほしいのですが……。
 《ライダー》はこの10年以上、積極的に新たな脚本家を取りこんでいますが、個人的には誰も彼もピンと来ず、平均すると一番いい仕事しているのはコラボ仕事人の毛利さんなのでは感もありますが、『ゼロワン』で2本の後、『キングオージャー』のメインライターに抜擢された高野水登が、おお! というものを見せてくれると良いな、と思っております。