東映特撮に踊らされる駄目人間の日々のよしなし。 はてなダイアリーのサービス終了にともない、引っ越してきました。
旧ダイアリー保管用→ 〔ものかきの倉庫〕
特撮作品の感想は、順次こちらにHTML形式でまとめています→ 〔特撮感想まとめ部屋〕 (※移転しました)
HP→〔ものかきの荒野〕   Twitter→〔Twitter/gms02〕

むねんむそう

『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』感想・第41話

◆ドン41話「サンタくろうする」◆ (監督:渡辺勝也 脚本:井上敏樹
 「波乱の末、ドン・ムラサメは犬塚翼の手に渡った。そして私が彼に伝えたのは、一つの真実と、一つの嘘」
 前回ラストのソノニ発言には明らかな悪意が込められていた事がモノローグで補強され、水面下での不穏な蠢動が着々と羽化の日を待つ中、ソノーズの3人は、サンタコスプレに身を包んでいた。
 「クリスマス・イブ――我々脳人には、年に一度しなければならない秘密の義務がある。それは……」
 ――時は数日前に遡り、今年の汚れは今年の内に!
 お互い年末大掃除だ! と雌雄を決すべく激突するドンブラ4人とソノーズ3人は、すっかり決戦の歳末大売り出し。
 その中でもドンモモとバロム仮面の戦いはいつ果てるともなく続き……日没と共にタイムアップ。
 翌日、再び両者が激しく剣を打ち合わせると、残り5人はただのギャラリーと化してやんやと喝采を送り、一応、命がけの死闘を繰り広げているわけなので、ソノーズはともかく、お供たちはネジが外れすぎなのでは。
 ダブルノックアウトでその日も引き分けに終わると、ソノイはタロウに相談があると持ちかけ……
 (やれやれ。遂に脳人まで普通にどんぶらを利用するようになったか)
 前作に続き、次元の交差点にして境界的性質を持つ場として喫茶どんぶらにやってきたソノーズ一行だが、言いよどんだ末に結局相談事を持ち出さないまま退店。困惑したタロウらが後を追うと、「サンタを見た」と主張して嫌な感じのクラスメイトに馬鹿にされる少女からサンタにまつわる情報を真剣に聞き出そうとしており、そこには脳人の深い事情があるのだった。
 「なに? サンタになる?」
 『ドンブラ』世界の人間界におけるサンタクロースとは、年に一度の脳人の職務であった、という接続は面白かったのですが……実態は恐らく「よく肥えさせて良い波動を手に入れる」であり、それとは別にソノイ達の人間観が多少の変化をしているにしても、「日頃のお礼として子供達に夢を与える」は、脳人が人間に対して使う表現としてはマイルドにすぎて違和感がありましたし、中身は人外の性質を持つとはいえ見た目はちょっと奇抜な衣装の一般人の状態で「仕事でサンタやります」発言が、目の前の少女の夢をぐっちゃぐっちゃの合い挽き肉にしている真っ最中に誰もブレーキをかけず、3話ぐらい前に落としたネジが砂丘に埋もれて見つかりません。
 また、最終的に子供の前に堂々と出て行ってプレゼントを渡して回るなら、この世界ではサンタクロースがもっと広く信じられているような気がしてならないわけですが(脳人サンタが幅を利かせすぎて、リアルサンタが落ちぶれたのか……?)……まあ、もはや埋もれた記憶と化したリアルサンタ情報を必死に求めている事から、引き継ぎがまともにされていなかった(ソノシの嫌がらせ?)ようなので、ソノイ達がだいぶイレギュラーな事をしたのかもですが。
 見た目いい大人たちの必死さを前に、少女は、サンタを信じてはいるが、サンタを見たのは嘘、と供述を翻し、一同がっくりとするが、タロウだけは「サンタは居る。街中に溢れている」と発言し、喫茶どんぶらに戻りながら、カブトムシ回以来?になるピュアな部分をアピール。
 「タロウ、あれはね、サンタの格好をして店の宣伝をしているだけだよ。仕事なんだよ」
 「そうか……勉強になった。だが、それとは別に、俺は会った事がある。子供の頃、本物のサンタに」
 タロウは幼い日の思い出を語るが……
 「あのね、タロウ。それはね、サンタの格好をした泥棒だよ」
 「違う! あの方は……」
 「サンタなら――知ってるよ。サンタもある意味ヒーロー。以前、俺とサンタは友人だった……」
 そこで口を挟むマスターどんぶら。
 「ならば教えてくれ! 何処に居る? 本物のサンタは」
 「……教えるのはいいが、変わってしまった……彼は。サンタは今、ヒトツ鬼として生きている」
 『光戦隊マスクマン』のマシン如来モチーフと思われる、不動明王めいた姿のサンタ鬼(人相が邪悪な為に、結果として暴魔大帝ラゴーン様にも見えます)は、扉ワープを使って家屋に侵入しては生理的に嫌な物を配り歩く存在と化しており……サンタクロースの闇は深い。
 サンタを「ヒーロー」になぞらえる事で今作世界に取りこむのは成る程ですし、サンタという存在が人々からの信仰を失い、棄てられる事により祟りをなすものと化しているのは今作世界の基本原則そのものであるのですが、大衆の支持を失って“堕ちたヒーロー”が悪行に走る姿を描き、それをいたいけな子供の説得により正道に戻させようとする(も失敗)、というこの後の展開は、露悪的な表現が行きすぎた印象。
 長くヒーロー作品に関わっている中で、「ヒーロー」が「ヒーロー」であり続ける事を求められる内に、「ヒーローやってられっか!」という気持ちになるのではないか、という考えが切り離せなくなってくる感覚はあるのだろう、とは推察するのですが、それを実際に婉曲にせよ《スーパー戦隊》でやってしまうと飲み屋の愚痴にしかならなくて、飲み屋の愚痴は飲み屋で済ませておいて欲しい、というのが率直なところ。
 過去にも『ジェット』『ボウケン』『ゴーカイ』など、メタ視点を交えながら「ヒーロー」に対してある種の露悪(ギリギリ)的なスタンスをまぶして描いた作品はあり、アプローチそのものを否定するわけではないのですが、《スーパー戦隊》シリーズの魅力とは、安易な自虐や混ぜっ返しに走らずに、それでも歯を食いしばって「ヒーロー」を描き続ける事にあるのではないか、と外野からは思うのであります。
 その点、“それそのもの”を体現した『激走戦隊カーレンジャー』が1996年時点で出現しているのが、シリーズの凄みであるな、とは改めて(まあそこから数えても25年経っているので、今の時代に何が必要かの模索はしていかなくてはならないのでしょうが)。
 マスターから情報を得たドンブラ&ソノーズ一行は、祟りを振りまくのに適したゴミを集めるリアルサンタ(演じるのは、名バイプレイヤーの螢雪次朗さん)の元を訪れ、何故そこに、いたいけな少女を連れていってやさぐれたサンタを見せつけるのか、ちょっと今日はネジが外れすぎではないか。
 子供たちの歓心を得るためにリサーチを続けた末、逮捕に至るサンタ転落の軌跡を聞いたタロウが、
 「……当然だろうな、それは」
 と、冷静に頷くのは面白かったですが!
 「私の屈辱が……悔しさがわかるか?! そうして私は、ヒトツ鬼に生まれ変わったのだ! 人々に、復讐する為に!」
 かくして、不要の存在と化したサンタは此の世に禍をなす存在へと転じ、サンタにまつわる哀しい現実を飲み込んだ少女は、後ずさり。
 「……あのー、私、失礼します」
 「どうした?」
 「諦めます。サンタさんは居ない。そういう事です」
 「駄目だ。ここは、君の出番だ」
 だが猿原に回り込まれた!
 猿原とはるかは、いたいけな少女の説得パワーを見せてみろ、と少女をうながし、君ら、今回は、本当に邪悪だな……というのもどうもノりにくかった部分。
 やむなく進み出る少女だが、そのお仕着せの説得にコロッと騙されるほどサンタの精神防御は低くなく、ソノイの言葉にも耳を貸す事なく、オーラサンタして逃走。
 「あれは……荒療治が必要だな」
 タロウはおもむろに快盗ビークルと警察ビークルを召喚すると光鬼を追跡させ、ソノーズは独力でサンタ業務に就く事を決断。
 「一言、アドバイスをしよう。サンタに必要なのは、何よりもまず 筋肉 体力。そして――笑顔だ」
 ドンブラザーズと光鬼の戦いが始まる一方、ソノーズはトレーニングに励み、鬼モチーフ原典の「特訓だ!」パロディとは思われるのですが、タロウのアドバイスを聞いてソノーズが当日に体力作りを始める流れには無理があり、キャラの積み重ねによる点の面白さはあるものの、それが上手く連動して面どころか線にさえならない展開が続いて残念。
 ネタの好き嫌い云々を抜きにして、今回はシンプルに出来が悪い。
 メディテーションした光鬼の、死中に活ありサンタパワーの前にドンモモがフェニックスすると金ドラとイヌも戦場に出前され、突然ニンジャブラックとなったイヌが忍法による遠隔攻撃で鬼を撃墜した後にムラサメを召喚すると、え? 一番友好度上げてたの僕じゃないの?!と、金ドラ棒立ち。
 その間にムラサメで光鬼を切り刻む黒だが、32点をいただくとトドメは金モモと金ドラがかっさらっていき、俺こそオンリーワン。
 鬼を祓われたサンタは巨大化しないまま倒れるが、内なるバトルジャンキーの声に導かれるままフォーデストロイするムラサメが巨大化し、トラドラオニタイジンと激突。ソノーズがワープ扉を活用してプレゼントを配り歩く中、オニタイジンはブラックオニタイジン突然のニンジャパワーを受けて倒れると危機に陥るが、一時分裂による回避から包囲攻撃、そして御神輿召喚の再合体でファンタジアし、ここ数話、ふつうに巨大戦が盛り上がらないのは、残念なところ。
 「僕はいったい、なにを……」
 ムラサメは、酔っていて覚えていない、とヒトツ鬼っぽい発言を残して飛び去っていき、このままだとドンブラザーズ最大の敵は、この世のストレスという事に!!
 …………そういえば、遠い昔の記憶なので詳細は定かではないのですが、実写版『悪魔くん』(たぶん白黒)に、ストレスによりどんどん巨大化する敵が出てきて、最終的に「温泉」で倒した覚えがあり、つまり、最終的に『純烈ジャー』と接続する……のか?
 スーパー銭湯もまた、ある意味ヒーローなのかもしれない……と、怨念を強制的に浄化され、一人寂しく隅田川を見つめるサンタの前に現れたのは、タロウ。
 「昔……あんたはイブの夜に、俺の元に来てくれた」
 はるかに「サンタの格好をした泥棒」と断じられた一件は、配るプレゼントが足りなくなったサンタが、タロウに玩具の寄付を求めてやってきたのだと明らかにされ(この時点でだいぶ力が落ちており、神霊の属性を持った異常児であるタロウに引きつけられたのでしょうか)、その時にゲームで遊んで貰った事が、タロウにとっては大切な思い出なのであった。
 「あの日以来俺はずーっと、小遣いを貯めてはプレゼントを集めてきた。また、あんたが来た時に渡す為に。あんたはこの世に必要なものだ」
 大きな袋を担いだタロウのピュアな一面が可愛げとして描かれ、タロウにより、その存在を認められる(許される)サンタ。
 「あんたは、生まれながらのサンタだ。……それとも、ヒトツ鬼に戻りたい、とでもいうのか?」
 タロウに至近距離で凄まれ、甦る暴力のメモリーに立ち上がったサンタは、改めてタロウに祀られる事により神霊としての位置づけを変え(『常陸国風土記』における夜刀の神など、古今の神話に見られる事例を今回はかなりストレートになぞっているといえるでしょうか)、「やってみるか、もう一度」と幸うサンタに復帰。
 「あんたには、その格好が一番似合ってるよ」
 「ありがとう」
 そして聖夜に鐘は鳴り響き、さすがに二週連続で戦闘中だけの出番はあまりにもと思われたのか、いつの間にか東京に戻っていたジロウはバイト中の姿を描かれ、犬塚は抜き身のムラサメを手に独り歩み、国際警察機構の名の下に職務質問を受けるまで、あと3分。
 空を見上げたはるかが野暮なツッコミを入れて、つづく。
 ラスト、サンタに頭を撫でられたタロウが、照れくさげになりながら、唇の端をほんのちょっとだけ持ち上げるのは良い場面となり、世に祟りをなすものと化していたサンタが、誰か(今回はタロウ)にその存在を認められる事により平穏を得る、『ドンブラ』ど真ん中の構造の中で、サンタとの出会いが「荷物だけではなく幸運を運ぼうとする」タロウの人格形成に少なからぬ影響を与えていた事が明かされる辺りは良かったのですが……エピソードとしては、単発のギャグ頼りになってしまい、各要素の連動性に欠けていたのが残念。
 また、最近はほとんど溶けたアイスのようになっていたとはいえ、ドンブラザーズとソノーズの関係は、プライベートではわかりあえる部分があっても、理念的には敵同士、のせめぎ合いにこそドラマが生まれるのに、さすがに馴れ合いすぎな上、決闘の安売りもじゃれ合いと化してしまったのは残念でした。
 ここまですると逆に、軟着陸の準備と見せて……実はそんな余地は全くありませんでしたー! とやってきそうな気さえしてきますが、さすがに今回は、総合的に緊張感が足りなすぎたな、と。
 で、何故か一週前倒しとなったクリスマス回(カレンダーはイブどんぴしゃなのに)から年内ラストは予告の限りでは扮装コメディのようで、あまりハードルを上げないでおこうかと思いますが……うーん……これ、何かスケジュール管理で致命的なミスが発生して、急遽1話増える事になって現場が阿鼻叫喚? とかなってたりしないですよね……?