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ダークに育まれし者たち

人造人間キカイダー』感想・第20話

◆第20話「冷酷アオタガメのドクロ計画!!」◆ (監督:畠山豊彦 脚本:長坂秀佳
 貯水場に現れるダークロボット・アオタガメ、サブタイトルでは冷酷と謳われていますが、頭部だけ緑色で絶妙にコミカルなカラーリングといい、吸血器官の解釈が針ではなくひょっとこ口だったりで、既にどう見ても可愛くて困ります。
 「なんだアレは?!」
 「俺だ。ダーク破壊部隊・アオタガメ
 久々に会った高校の同級生、みたいな様子で近づいてきたアオタガメは、貯水池の占領を宣言すると、2本の角を飛ばして職員を殺害。
 足を潰された所長は用水路に転落した事で難を逃れるとジローに助けられ、流れてくる水を分析したジローは、僅かな毒の成分を検出する。
 「僕はもう少し辺りを調べてみます。あなたはうちへ帰って、この毒の解毒剤を研究してください」
 脂汗を流しながら地面に倒れている男性に向けて、「まず自力で家まで帰れ」「それから解毒剤を研究しろ」と笑顔でのたまうジロー! 良心回路のメンテナンスが必要なのではジロー?! 悪魔の笛は聞こえていないのよジロー?!
 そろそろジローが、お荷物はみんな処刑したいと思います! と言い出さないか不安になってきた頃、家出博士と光明寺姉弟は至近距離でニアミスし、甲斐甲斐しくおにぎりを差し出して前回の失点を挽回しようとする半平。水を求めている内に所長親子と知り合いとなり、解毒剤の原料になる草を採りに向かう途中で一同タガメ部隊に追われていると、一本杉のてっぺんにジロー参上。
 次作『01』で何度か使われた書き割り登場……かと思ったら、ギターを弾く指がちゃんと動いており……カット割ってません、と証明するようにカメラがゆっくり寄っていくのですが、どうやって撮影したのでしょうか、これ。
 一本杉から飛び降りたジローは、投げ槍アンドロイドマン軍団を相手にスピーディなバトルに突入し、飛び交う槍! 折れる槍! 突き刺さる槍!
 ひょっとこ顔のタガメクローに首を挟まれるも脱出したジローは、空中きりもみチェンジするが角による突撃でダメージを負い、今回のダークロボは、とにかくやかましく喋り続け自己主張の激しい、クマバチやカメレオンに似た路線。
 チェーン付きの角を飛ばす必殺技、アオタガメ鎖鎌ァ! をキカイダーに跳ね返されたタガメは、角を失い、顔面に鎖の巻き付いた間抜けな姿になると這々の体で逃げ出し……もうこれは完全に、可愛い。
 前回と同じく本部のギルが作戦の進捗を問うシーンを描かれ、人間の思考力を奪いダークの命令に従うだけの人形とする毒液を貯水池にばらまいた事を自信満々に報告するタガメだったが……
 「思いのままに操れるだと? ふん、聞いて呆れるわ! 水道の水を飲んだ人間どもがどうなってるか、自分で確かめてこい!」
 「はは?!」
 貯水池への毒物投入ミッションを果たしたかと思っていたタガメだが、肝心の毒の成分が薄すぎて腹痛を起こす程度の効果しか発揮していない大失態。ギルが用意していた追加の毒液をえっちらおっちら貯水池まで運ぶと再び流し込む羽目になり、ジローはジローで特にこれと出会って阻むわけでもない、なんとも間の抜けた展開に。
 一応それで稼がれた時間に、所長が懸命に解毒剤を完成させたのだ、と持っていくのですが、サスペンスの都合が乱反射した末に、自宅に割と本格的な研究施設を持つ貯水施設の所長が解毒の為に山で薬草を煎じ詰める(なお右足を骨折している……筈)という、〔重要施設の責任者・キーアイテムの研究者・地元の言い伝えに詳しい医者(など)〕諸々の役割が悪魔合体した、得体のしれない存在が錬成される事に。
 施設では、水道被害を訴える住人が所長息子を責め立てており、少年をかばったミツ子がそれに巻き込まれた時、響き渡るギターの音色。
 「やはり人類は、滅ぼすべき存在だな。とうッ!」
 感じの悪い主婦たちめがけて放たれるデンジエンド!
 ……の代わりに、工事現場で見るようなヘルメットを被り、しごく真剣な表情の半平が、コード進行のちょっと怪しいギターの音色を響かせる、のは大変面白かったです(笑)
 「お待ちなさい奥様方。義によって服部半平、ミツ子殿の助太刀をいたす!」
 ジローばりのジャンプを決めようとする半平だが着地に失敗し、先に放り投げたギターで追撃の自爆ダメージを受け、なんかもう、前回の最低な所業の数々は、このシーンで許せるような気がしてきました(笑)
 一方、解毒剤を一杯に詰めたドラム缶を貯水池まで運ぼうと山道を転がしていた所長は、山中をフラフラしていた光明寺と遭遇。
 冒頭のジローの無茶ぶりに始まり、計算ミスで毒液を再投入しにいく悪の組織、山で薬草を煎じている所長、その所長の自己申告だけなので盛り上がりのないタイムリミットサスペンス、と出来が良いとは言いがたい筋の中に、突然凄く面白いシーンが飛び込んできて困ります。
 父を探して山中に入り込んだ少年は解毒剤投入を阻止しようとするタガメに追われ、ジローは無害を主張しようとして毒水をたらふく飲んで正気を失った半平とすれ違い(そして、まあいいやと放置し)、光明寺はアンドロイドマンを見ると一目散に逃げ出すザ・光明寺で、所長親子が追い詰められたその時、タガメの後頭部に叩きつけられる真っ赤なギター。
 弦の響きも高らかに、ギターが今作史上最大の高低差を飛びましたが、大事な設計図が入っているんじゃないのか、その中。
 崖の上から投げつけたギターの打撃音をゴング代わりにアンドロイドマンを蹴散らしていくジローは悪魔の笛に苦しめられるが、薙刀持って突撃してきたアンドロイドマンを鉢合わせさせることにより爆発音で笛の音をかき消すと、スイッチオン。
 キカイダーがサイドマシーンでアンドロイドマンを蹴散らしていく一方、気絶した所長と逃げ出した光明寺に代わり貯水池までドラム缶を転がしていった少年の前には、毒水の影響でダークの意思に従う半平が立ちはだかり、ダークに生まれし者は、ダークに帰れ。
 キカイダーはアオタガメとの一騎打ちに突入し、とにかくタガメが色々喋りちらかしているのですが、バックで主題歌(歌詞入り)が流れている事もあり、残念ながら半分ぐらいは何を言っているのやら聞き取れず。
 水門開放のタイムリミットが迫る中、貯水池では少年に襲いかかる半平をミツ子とマサルが必死に押しとどめ、その背後で、光明寺がドラム缶を押しているミラクル(笑)
 成り行きは強引極まりないのですが、フラッと出てきては途中でフェードアウトするのが定番だった光明寺が、最後まで問題解決に関わるセオリー破りが完全な盲点となって、これはしてやられました。
 誰も気付かぬ内に光明寺が解毒剤を貯水池に流し入れる大活躍を見せると、ミツ子さんは拾った棍棒を迷走する半平の後頭部に叩きつけ、ダークに生まれし者は、ダークに帰れ!(打撃武器が、半平が持ち込んだギターだったら最高だったのですが、惜しい)
 キカイダーがダークロボと戦っている間に、ゲストと仲間たちがバイオテロを未然に防ぐ変化球で、ダブルチョップを受けながらも粘っていたタガメは、大車輪投げで角を折られるとデンジエンドの直撃を受け、最後までやかましいまま大爆死。
 ミツ子の一撃を受けて貯水池に落下した半平(ここまでやる事で、さすがに前回の悪行の禊ぎは済ませたといった感)は、解毒剤入りの水を飲んだ事で正気に戻り、生死不明になっていた所長も無事に合流して、ゲスト父が放り投げられなかったのはホッとしました(笑)
 「父さんがやったの?!」
 「いや。多分、あの人だろう……」
 「あの人?」
 でミツ子の視点の動きに合わせて、ぽつんと転がるドラム缶が映し出されるのは、格好いい演出。
 「うん。優しそうな人だった。ちょっと……学者タイプのな」
 あ、今、オブラートに包む言葉を選んだ。
 「学者タイプ……まさか」
 「父さんだよ、きっと俺たちの、父さんだよ」
 ゲスト父子の再会から光明寺博士の痕跡に繋げ、それを聞いていつの間にか姿を消すジロー、と今作の定石を活用しながら、今作にしては綺麗にまとめたオチで、大枠はぐちゃんぐちゃんながら、ところどころいつにない面白さが光るエピソードでありました。