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爆弾がいっぱい

ウルトラマンコスモス』感想・第37話

◆第37話「フブキ退任?!」◆ (監督:市野龍一 脚本:前川淳 特技監督鈴木健二


 「チームアイズ、民間の総合科学研究機関・SRCの精鋭たちで構成された、救助活動から、怪獣の捕獲・保護、超常現象の調査に至るまで、幅広いフィールドで活躍する、エキスパートチームである」
(第1話ナレーションより)

 「アイズを防衛軍の指揮下に?!」
 対カオスヘッダーの為に、防衛軍はチームアイズを取り込もうとし……もともと今作、民間の総合科学研究機関・SRCの一部署に過ぎないチームアイズが、名称からは国家的組織と思われる防衛軍よりも幅広く強い権限を有しているのを“そういう世界観”として押し通していたのですが、更にそこから、明らかに権限の強いアイズを明らかに権限の弱い防衛軍の下に置こうとする再逆転を持ち出すとさすがに全身から流血が止まらない上に、会議に出席したアイズのメンバーから総スカンでお断りされると話がそれで通ってしまい、いくら万事に緩めの『コスモス』でも、度が過ぎて頭痛が。
 “そういう世界観”として押し通す分にはそれはそれだと思うのですが、乱雑に積み上げた火薬庫をわざわざひっくり返す意味がわからないというか、「防衛軍に異を唱えるフブキがアイズの一員として格好良く啖呵を切る」シーンの代償としては、あまりにも惨劇の規模が大きすぎると思います。
 ……まあ今作に関しては、この辺りは深く考えない方が吉なのでしょうが。
 とはいえ、方針が合わないとはまた別のレベルで防衛軍の事を見下しているとしか思えないアイズメンバーの言行など、ネガとしての防衛軍を描いてアイズの理想を引き立てているつもりが、むしろ防衛軍を雑な悪役に仕立てるほど、アイズが同じレベルの泥沼に落ちているといった副作用も発生しているので、いい加減、なんとかしてほしい部分。
 かくして、「将棋部の部室を野球部の物置に?!」みたいな話し合いが決着した(の……?)後、地上にトカゲ怪獣が出現。
 その背中には、1年前にフブキが打ち込んだ新型ミサイルの不発弾が突き刺さっており、現在は搭載禁止になっているとはいうものの、SRCがとても危険な兵器を開発した上にテスト段階のまま実装していた過去が明らかになり、これは、念の入ったユーモアなのでしょうか。
 「動く……爆弾……?!」
 「もし奴が街に出て爆発でもしたら、大惨事になる恐れがある。なんとしても、市街地には近付けるな!」
 トカゲ怪獣の進行を食い止めようとする中、いっそこの場で怪獣を撃破してしまえば、とトリガーに指をかけたフブキは自らの判断にショックを受けて退職願を提出し…………いや、いつ起爆するかわからない半径500mを跡形も無く吹き飛ばす爆弾を背負った怪獣は、むしろ射殺優先だと思うのですが、その状況でも、ギリギリまで保護を試みる方が“正しい”とされる『コスモス』の世界観は、例えそれが寓意だとしても、やはりどうにも肌に合いません。
 ある意味では、寓意として単純化される事によって、チームアイズにおける
 〔人命 > 怪獣の命 > 市民の家財産〕
 という優先事項が浮き彫りになっているのですが、それもまた単純化された寓意の産物とはいえ、話を重ねるほどに、チームアイズの、他者の家財産に対する無頓着さが引っかかってしまいます。
 住人が避難していればそれでいいってわけではないのでは、的な。
 これならば潔く防衛隊ポジションをオミットして、「怪獣保護優先が当たり前(それに伴うリスクを受け入れるのが当然)の社会」を突き通してしまった方が良かったのでは、と思うのですが、対立項を凄く半端に取り込んで“別の手段”の存在を強調してしまった結果として、〔怪獣の命 > 市民の家財産〕の重大な意志決定が、たった6人のチームの現場判断に全面的に委ねられてしまう危うい状況が剥き身になってしまい、より上部の権限を曖昧に匂わせるフィクションとしての目くらましも機能しにくくなってしまっています。
 特に今回は、防衛軍からの(上下関係のよくわからない)要請を、チームアイズの「理念」をもって(よくわかわらない上下関係に基づき)単独で拒否する様子を描いている為に、その「理念」に基づいた行動の責任がいやが上にも強調されているのですが、その割には、アイズの手にする莫大な権限とそれに伴う責任の重さに対してあまりにも視線が向かず、この人達、怪獣との共存共栄の為に「チームアイズが人類の半分を粛正しようというのだ!」まであと2歩ぐらいの集団だよなーという印象を強めるのでありました。
 怪獣保護の理想を掲げるも様々な思惑の板挟みになりながら一歩ずつ切り拓いていくチーム、ではなく、最初から戦力も権限もやたら大きい組織、にしてしまった事で、かつて『ガイア』において田端らを通して描かれた、エリート防衛チームの抱える負の要素――「その足は地についているのか?」が噴出してしまっている感があり、ラスト、出戻りのフブキを迎えたキャップの「俺は、ここに居る6人で、チームアイズだと思っている」も、いい意味での「チーム一丸」よりも、悪い意味での「不純物を取り除き先鋭化した思想集団」の気配を加速させ、むしろもっと多角的な視点を取り込んだ方が良いと思うのですが!
 勿論この点については、実働部隊のレギュラーメンバーは6人だが、多数のスタッフが存在している、といった曖昧な描写/解釈も可能だったと思うのですが、台詞で「6人でチームアイズ」と言われてしまうと、これまでの様々な蓄積と合わせて悪い意味での「理念先行のエリート意識」としてしか受け止められず、どうにもこうにも、チームアイズに好感が持ちにくくて辛い。
 いつ爆発するのかわからないミサイル問題が解決しないままに、アイズの理念に反する行動を取ったショックからフブキがトレジャーベースを出て行くのも、チームアイズが「責任」よりも「理念」を優先する集団である事を裏付けてしまい、シリーズ従来作における防衛隊ポジションから軍隊色を極力廃した結果、公共に対する責任意識が不透明なまま軍事力を振り回す集団が出来上がってしまったのは、ルート選択のミスを感じます。
 ……この辺り、もしかすると“公の正義”に対するアンチテーゼ、というのが求められていた時代であった可能性はありますが。
 フブキ不在の状況下で、地中に逃げていたトカゲ怪獣が再び出現。ミサイル引き抜き作戦を敢行するアイズだが、カオスヘッダーさんが介入してカオストカゲが誕生し、撃墜されたムサシはコスモスに変身。
 フブキは地上に転がったミサイルの起爆装置を解除しようとするが……え、なに、その、パスワードがわからない、みたいなの(笑)
 爆弾解体のサスペンスを盛り上げるなら、他に幾らでもやりようがあると思うのですが、エラーを繰り返しながら数字だけのパスワードを繰り返し打ち込む展開に目が点。
 「いつ爆発するかもわからないのに」
 「……命を懸けて戦っているんだ。コスモスも、フブキも」
 そして指揮官は、それでいいんですかね……。
 カオストカゲに苦戦するコスモスはイクリプスすると痛烈な飛び蹴りを炸裂させ……コスモスの諦めない姿に励まされたフブキはなんとかパスワードロックを解除するが、信管を外す段階になって、やらかしてしまう。
 「起爆システムが作動! あと30秒で爆発します!」
 「あと、30秒で」
 「全てが、消える……」
 「信じるんだ、フブキを」
 “チームとしての一蓮托生”みたいな雰囲気を出したかったのかもしれませんが、コスモスを援護するわけでも、フブキをサポートするわけでも、市街地の様子に気を配るでもなく、ただただふわふわ飛んでいるだけの4人がとてつもなく間抜けで、ただでさえ瀕死の緊迫感が、もはや息絶える寸前です。
 そして、結局、手動による爆発阻止のタイムリミットサスペンスをやるならば、パスワードがわからない! のシーンはまるまる不要だったのでは、と思うのですが、(個人的な引っかかりポイントが大きい)防衛軍問題を度外視したとしても、怪獣及び不発弾周りの作劇がぐっちゃぐちゃで、惨憺たる出来。
 そもそも、地中で爆発したらOKなわけではない=必死にトカゲ怪獣を追跡している真っ最中の筈、に退職届を出すフブキも、解決には時間が必要だ、とそれを受理するキャップも正気を疑うのですが、やりたい事を優先するあまり、それ以外のディテールを全部ハリボテにしてしまったようなエピソードでした。
 あ、トカゲ怪獣の動きは良かったです。
 次回――赤星昇一郎アワー?