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とりあえず『ギンガマン』

星獣戦隊ギンガマン』感想・第48話

◆第四十八章「モークの最期」◆ (監督:長石多可男 脚本:小林靖子
 「地球魔獣による、汚染だ……地中の汚れが、地上にまで、広がってきてしまったんだ」
 木々や河川などが毒々しい紫色に染まる現象が各地で起こり、地球魔獣の脅威が潜在的なものから実質的なものとして迫り来る中、注目は、樽爺コーチから貰ったスカーフを大事そうに傷跡に巻き直すヒュウガ。
 明らかに何かが芽生えてしまっているのです、これはいわゆる、ストックホルム症候群というやつなのか。
 その樽爺は、打倒ゼイハブの必殺スパイク修得の為に砕くように命じている漆黒の鉱石――星の命――を丁寧に磨いており、ヒュウガはその背に思わず声をかける。
 「砕けという割には、大事そうだな」
 「ふん!」
 星の命とは、魔獣ダイタニクスが喰らった星を宝石に変えたものであり、その1つを大事そうに保有していたとなると樽爺の背景が自ずと浮かび上がってきますが、ううむ、そう来るか……。
 順調にイベントCGを回収していく2人だが、シェリンダの放っていた密偵ヤートットに隠れ家を発見されてしまい、切り札であるミサイル魔人を出撃させたバットバスが、「一度黒騎士と戦いてぇんだ」と自ら出撃。
 背中の巨大ミサイルに成長エキスを詰め込み魔獣を探すミサイル魔人と一当たりしたギンガマンだが、突如として苦しむと変身解除。地球魔獣による星の汚染が、そこから生まれる星の力であるアースにまで波及し、汚れたアースがギンガマンにとって毒同然となってしまったのだった!
 地球魔獣急成長作戦の相次ぐ失敗で苛立ち始めた船長ではありますが、ギンガマンにダイタニクスを倒させ、地球に魔獣を根付かせた時点で、水源に毒を投げ込んだようなものであり、仮に作戦が順調に進まなくても、やがては地球という肉体に毒が回りギンガマンの弱体化に繋がる、というもう1つの策が発動しているのが実に周到。
 大宇宙を荒らし回り、様々な星を滅ぼしてきた(星の守護者達と戦ってきた)という経歴に説得力を持たせます。
 物語上では地球1つの戦いながら、その端々で3000年前(封印)以前の、宇宙での暴虐というバルバンの背景と繋げているのは今作の面白い所の1つであり、またそれが、バルバンにとってのアンチ存在である星獣という存在の説得力を補強しているのが巧妙。
 毒素と化したアースに肉体を蝕まれ、弱りながらもリョウマ達がバルバンを追う一方、ヒュウガと樽爺はバットバスのトラップによる奇襲を受け、ヒュウガは洞窟から投げ出されて崖を落ち、樽爺は洞窟の中に生き埋めになってしまう。
 「爺さんよぉ、ここをおめぇの墓場にしときな!」
 斥候からの情報があったとはいえ、あのヒュウガを相手に爆弾トラップを成功させ、目論見通りにヒュウガと樽爺を分断するバットバス、有能。
 ところがこのアクシデントにより、モークがヒュウガを発見し、リョウマ達に連絡。ある意味、アースを捨てた事で難を逃れたヒュウガへの救援要請を提案するが、リョウマは互いの目的の為に選んだ道を信じ、それを制止する。
 「俺たちは俺たちで、全力でバルバンを倒す。それが今の兄さんへの、俺たちの応え方だ!」
 「早く行こうぜ。バルバンと地球魔獣は絶対ぶっ潰す!」
 「うん。行くぞ!!」
 選んだ道を全うする事で、互いの信頼に応える――ヒュウガから完全に独り立ちしたリョウマの言葉に、どこに出しても恥ずかしくない戦士へと成長したヒカルが即座に続き、物理的な距離はありながらも、6人が共に戦っているという見せ方が実にお見事。
 離れていても心は一つ、というのは定番ですが、それを兄弟として戦士としての信頼と行動という形で具体化する事で、ギンガマンらしく示しています(なおゴウキの成長は、前回あたりからさらさらした髪型に窺えます)。
 アース汚染の影響により深刻なダメージを受けながらも雄々しく前を向いて進み続ける5人だが、その姿に居ても立っても居られなくなったモークは独断でヒュウガとコンタクトを取り、5人を心配する気持ちはあってもその示し方がわからず、かつては「冷たい」とも評されたモークの情緒の変化、そして積み重ねてきた戦士達との関係も活きます。
 「頼む、彼らを助けてやってほしい」
 「……リョウマ達が、そう言ったのか?」
 「いいや。彼らは、自分たちで切り抜けるつもりでいる」
 「そうか。……モーク、俺も行くつもりはない」
 互いに星を護る戦士として認め合うが故に、ヒュウガもまた勝利へ向けて自分の選んだ道を進み続ける事をモークに告げ、絆もあれば情もあり、勝利の為にそれを切り捨てるかどうかの葛藤は既に遠く乗り越え、全てを手にしたまま「バルバンと同じにならない」形で、勝利への道を邁進するギンガマンの“強さ”、ここに極まれりといった感。
 高寺Pによる今作のコンセプトは「王道」にあったそうですが、その象徴ともいえそうな今作の“強いヒーロー”像が、リョウマ達とヒュウガを分断した事で互いをより鮮やかに引き立て、濃厚に結実したのは終盤の激震が絶妙にはまってくれました。
 「君たちは、どこまで強いんだ……」
 6人の戦士としての覚悟をまざまざと感じ取り、瞑目するモーク。
 (ブクラテス、死ぬな。俺はまだおまえに聞きたい事がある)
 そしてコーチの元へ急ごうとするヒュウガだったが、その前にバットバスが立ちはだかり、シーンとしては久々の騎士転生!
 一方、長らく地中を蠢いていた地球魔獣が遂にその顔を地表に覗かせると、噴出する毒液によりトンネル内部で車を溶解させ、ダイタニクスといい地球魔獣といい、今作の巨大魔獣はどこか円谷ノリ(笑)
 ギンガマンより早く魔獣の元へ辿り着いたミサイル魔人はエキス発射の準備に入り、星を蝕む汚染、そして迫り来る破滅を止める為、モークは地中の汚れをその身に集める事で、5人を支援しようと決断する。
 「私も、星を護る一員だよ」
 たとえ星獣剣の戦士ではなくとも、星を護ろうとする想いは同じ……全身が紫色に染まっていき、生い茂っていた緑の葉が次々と枯れ落ちながらもモークは毒素を吸収し続け、万事に有能なモークらしく出鱈目なキャパシティを見せつけるのですが、用法としては起死回生の奇跡に近いながら、大地に根ざし、全ての木々と繋がる、樹木というモークの特性が最後まで活かされているのも実にお見事。
 身動きできない、という最大の弱点を除くとサポートキャラとしては極めて有能なモークでしたが、折につけ樹木である事の長短を描く事でバランスを取っていたのは良く、穏やかな語り口で戦士達を見守る後見役として、良いキャラでした。……なんか今作は、樹とか樽とか、開始当初からは予想もしなかったキャラに、思い入れが生まれているな……(笑)
 「貴様等どこまで邪魔する気だぁ?!」
 「おまえたちを倒すまでだ!」
 かつての黒騎士とオコゼ魔人の、


 「てめぇ……なに考えてやがる?!」
 「3000年の間、貴様等バルバンを倒す事だけを考えていた」
 というやり取りを彷彿とさせますが、凄く、ギンガマンです!
 「みんな……転生するんだ……」
 そしてここで響く声により、モークもまた、離れていても一緒に戦っている事が示されるのが、ギンガマンというチームの一つの到達点として、鮮やかでした(モークの元には、勇太くんとボックが寄り添ってもいる)。
 「行くぞ!」
 「「「「「銀河転生!!」」」」」
 一身に星の汚れを引き受け、急速に弱っていくモークの鼓動、命尽き果てていく象徴としての落葉を繰り返し交えながら熾烈な戦いが繰り広げられ、追い詰められながらもギンガマンは起死回生のバイクアタックで魔人を撃破。
 巨大化した魔人のバルカン射撃をものともせずに突進し、今日は根性入っているかと思われたギンガイオーだったが、振り下ろした獣王剣をさくっと受け止められ……いつも通りでした。
 ギンガイオーに組み付いたミサイル魔人は作戦失敗の責任を取って自爆を敢行しようとし、その捨て身の攻撃に対して「フェイント攻撃を得意とする」フェニックスが緊急出撃。飛び蹴りから逆に魔人を押さえ込んだ所に獣王斬りが炸裂し、バットバスの切り札も、ギンガマンの前に敗れるのであった……!
 「モーク! 大丈夫なのか?!」
 「リョウマ、すまない……どうやら君たちと、最後まで戦う事が、出来そうに、ないよ……」
 「モーク!」「ば、ばか! なに言ってんだよ?!」「モーク!」
 空が夕焼けに染まる中、乗馬倶楽部へと必死に駆ける5人だが、モークの命は既に尽きようとしていた。冒頭、弱ったモークにアースを流し込んで消耗を和らげていた5人を真似て、毒々しい紫色に染まってしまったモークの幹にそっと触れる勇太。
 「モーク……僕にもアースがあればいいのに!」
 「……感じるよ……勇太。君の、優しい気持ちを。きっとそれが、君のアースなんだよ。ありがとう……」
 戦う力だけではない、星を護る力にも色々な形がある事をモークは勇太に伝え、勇太の優しさがモークを救うと共に、人間の感情を理解できるようになったモークもまた勇太を救う、という1年間の積み重ねも実に手堅く、きっちりとこういうやり取りを収めてくれるのが素晴らしい。
 「リョウマ……ハヤテ……ゴウキ……ヒカル、サヤ……戦いは辛くても、きっと終わる。君たちとヒュウガなら、終わらせられる。……私は、確信したよ」
 「モーク! もうすぐ帰る! 帰るから!」
 「みんな……」
 5人の存在を感じ、勇太とボックに看取られながら、キラキラと黄金の光に包まれていくモーク…… 
 「一緒に居る間……楽しかった…………」
 最後の最後、戦いを離れ、“生きていた”自分の想いを告げたモークの姿は光の粒子と化し、戻ってきたリョウマ達が目にしたのは、床に僅かに残った落ち葉と、勇太の手の中に残った、小さな緑色の種だけ。
 ギンガマンの戦士としての在り方、勇太の持つアース、地球汚染の脅威……これまでの蓄積をたっぷりと踏まえた上で最終決戦へと繋がっていく要素を、モークを中継点として劇的に描き、最後までその存在を使いきったモーク、リタイア。いってみれば、マザーコンピューター@ファンタジー仕様というキャラでしたが、半ば超然とした便利キャラの長所も短所も、“樹木”という特徴にこだわって描写する事でキャラクターとして成立させていたのが、物語を通して良かったです。
 納谷六朗さんの抑制の効いた声と演技も、時に激しやすいギンガマンと好対照となって上手く噛み合い、物語に欠かせない調和をもたらしてくれました。
 かくして、絶体絶命のギンガマンを救い、知恵の樹・モークは倒れた……一方、執念で洞窟を脱出し、愛弟子を探す樽爺だが、
 「その必要は無い」
 「……シェリンダ!」
 その胴体をシェリンダの剣が貫く!
 (ブクラテス……)
 バットバスの妨害をくぐり抜けた黒騎士はコーチの姿を求めて必死に駆けるが、果たして樽爺の生死や如何に?! モークの最期が半ば吹き飛ぶ勢いの衝撃のオチで、次回へつづく。
 というか我ながらどうして、樽爺の生死をこんなに気にしているの?!
 次回――いよいよ迫り来る最終決戦! 伝説は今、最終章を迎える!!