東映特撮に踊らされる駄目人間の日々のよしなし。 はてなダイアリーのサービス終了にともない、引っ越してきました。
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秋の読書メモ3

古典の罠

 名前は伏せますが、最近読んだとある文章で絶賛されていた、海外の超有名作家の中編のタイトルに聞き覚えが無かったので、そんなに出来が良いのか……と読んでみたところ、確かにタイトルは知らず、中身も間違いなく読んだ事は無い筈なのに、古典としてあまりにも有名で、後世にも類例のあるアイデアだった為に、
 これは、もしかして、あれか……? → これは、まず間違いなくあれだな…… → そうか、これが、あれのオリジンか……
 と、なんとも言いがたい読書体験になってしまい、古典に属するミステリは、読むタイミング次第で大きく変わるなー……と改めて思ったのでありました。
 小説の構成自体、出来が良かったですし、謎解きとしては超有名アイデアに加えて、もう一つのひねりが仕掛けてあって、おお成る程、とは思ったのですが、どうにも、読んでいる途中のノイズが大きくて(笑)

◆『綾辻行人有栖川有栖のミステリ・ジョッキー(2)』
 綾辻行人有栖川有栖による、対談の合間に紹介した短篇(掌編)を丸ごと収録し、その内容について踏み込んで語る対談×アンソロジー第2弾。
 第1弾に続き、両者の語り口の巧さでぐいぐいと読ませ、非常に読みやすく、面白い一冊でした。
 収録作品の中で特に面白かったのは「なにかが起こった」(ディーノ・ブッツァーティ)。後、以前に短編集で読みましたが、「親愛なるエス君へ(連城三紀彦)は、やはり強烈。

◆『深夜の博覧会-昭和12年の探偵小説-』(辻真先
 昭和12年――銀座の夜店で似顔絵描きをしている少年・那珂一兵は、馴染みの夕刊紙記者・降旗瑠璃子に頼まれて、名古屋平和博の取材に挿絵画家として同道する事になる。その地で、満州の大富豪・崔桑炎や、自由闊達な趣味人にして伯爵・宗像昌清らと知り合った一兵だが、瑠璃子の誘拐、伯爵の作り出した奇妙な塔、そして銀座で発見された血まみれの脚……と怪事に次々と巻き込まれていく事に。
 1937年、満州国建国から5年が経ち、日本全体が大いなる熱狂の中を突き進んでいた時代を背景に、当時100万人都市となっていた名古屋で開催された、名古屋汎太平洋平和博覧会に大きなスポットを当てた昭和史×ミステリ。
 これは多分、現実と幻想の境界の話で、かなり面白かったです。
 辻真先作品を読むのは、作家デビュー作『仮題・中学殺人事件』(1972)に続けて2冊目ですが、そこから数えて今作発行の2018年までなんと46年、作家としても脚本家としても数多くのキャリアを積み上げてきた大家だけあって(なお今作発行時点で86歳!)、まずはとにかく文章が達者。
 昭和初期の東京銀座、そして名古屋の喧噪、そこに生きる人々が鮮やかに描写され、背後に「戦争」を抱えた重苦しさが常に漂いながらも、抜群の読みやすさ。
 また、実在の人物や出来事と虚構を混ぜ合わせつつも、ごく一部を除いては予言者的人物を登場させずに、今の視点なら誰でも書けるような説教くさい予見を劇中人物の口を使って語らせる事を避ける意識が窺えたのも、「歴史」を題材にした作品として、キャラクターの思想に後出しジャンケンさせようとしない誠実さが窺えて、読みやすかった部分です。勿論、現代の読者が読みやすいように和らげている部分はあるでしょうし、その点を補う為か、序盤に一部、メタ視点が入ったりはしますが。
 満州の王道楽土、戦前の名古屋、そして一人の男の作り出した虚像の塔――いずれ破裂を運命づけられた幻燈が幾重にも重なって作り上げられた世界の中で、「謎」と「謎解き」が一本の線を貫き、作者の鉄道趣味をあちらこちらにふりかけつつ、丁寧な伏線とその収束は、さすが老練の筆。
 ラストは、映像作品に長く関わっている作者らしい伏線が美しく回収され、昭和史の一幕と絡まり合ったミステリとして、満足の一作でした。
 やはり、ラストが良い作品は良い。
 続けて、“昭和ミステリ”第2弾と銘打たれた、『たかが殺人じゃないか』を読みたい予定。

カレーでなければ生き残れない

20年ぶりの『龍騎』メモ・第29話

(※サブタイトルは本編中に存在しない為、筆者が勝手につけています。あしからずご了承下さい)
◆第29話「共闘」◆ (監督:石田秀範 脚本:井上敏樹

  • 冒頭からくどめの石田ギャグ。
  • 編集長がどうしてもと頼まれて持ってきた見合い話(断るの前提)を、経験の為に「してみようかな」とか言い出す令子さん、「あなたは遊び半分に見合いをして……相手の気持ちを考えていない。傷つく男だっているんです」と見合い相手から率直に指摘されて、ぐうの音もでない!
  • 「……ごめんなさい」……そして、普通に遊び半分だったと認めたぞこの女。
  • それ以来、なにやら誰かにつけられている気がする、とこぼす令子をガードする真司が夜道で組み付いたのは……北岡に花束を頼まれていた吾郎ちゃん。
  • 弁護士事務所で誤解が解けた後、本命のストーカーは別に?! と慌てて令子のマンションに向かった真司と北岡は落ちていた令子の鞄を発見すると、今度はばったり秋山と遭遇し、実に井上敏樹らしい展開。
  • 真司と蓮の罵り合いに思わず北岡が割って入り、「……なによ?」「……いや、まさかおまえが喧嘩を止めるとはな」は鮮やか(笑)
  • 一応、職業は弁護士です!
  • 破談になった見合い相手が怪しい、と島田を囮に再び偽の見合いを持ちかけると、令子救出まで3人はひとまず共同戦線を張る事になり、全編を彩る、実にくどい時の石田監督。……後、実際に令子さんが失踪している以上、既に完全な警察案件なのでは(まあ、そこを不問に付す為に、今回はあまり深く考えないで下さい! というサインを演出側で出しているわけではありますが……)。
  • ところで以前からの問題なのですが、北岡が令子さんに執心なのが、そういう方がなにかと話に都合がいいから、以上の説得力を劇中で感じられないのは、ギャグ回としても苦しいところ……北岡の好みどんぴしゃならそれはもう仕方ないのですが、ギャグ回を利用して蓮にズカズカ踏み込ませる事で、既成事実化を押し進めようとしている感じもあり。
  • 囮作戦に失敗するどころか島田まで姿を消してしまい、今度は優衣が囮になるが、見合い男のアリバイが証明され、浮かび上がる新たな容疑者。
  • 「どうすんだ?! あのおばさんがやられちまって、令子さん達がどこにいんのかもうわかんないぞ?!」……身近な人間を第一に心配する心情は素直なものとして、ミラーモンスター被害者が出た直後にその言いぐさは、さすがにギャグの勢いで自分を見失いすぎではないか、真司。
  • イノシシ顔のアーマーを、取り外して盾としても使うミラーモンスターは面白く、その防御力に苦戦している内に更にセミのモンスターが出現。
  • 見合い現場でその気配を感じていた龍騎が、セミが島田を狙っているなら追いかければ監禁場所に辿り着ける筈! というのは頭脳プレイとして面白く、以前の島田誘拐事件や、浅倉立てこもり事件のように、現実の犯罪がミラーワールドの介入で不可解な展望を見せるのは、今作における面白いアプローチの一つ。
  • それはそれとして、令子さんはいったい何日、監禁されていたのか……割り切ったギャグ回なのですが、令子さんを助ける! と呉越同舟で手を結んでる筈なのに警察に相談している形跡が無い為、むしろ真剣味が疑わしくなってしまったのが困ったところ。あと、蓮は別に令子捜索に協力するほどの義理は無い筈なので、普通に親切。
  • そんな回なのに、龍騎セミをミラーワールドに放り込む → ゾルダが大砲を叩き込む → ナイトがトドメのコウモリスピンキック! の連係攻撃はやたら格好良かったり(笑)
  • 令子と島田も救出され、やったー感出しているけど、イノタテモンスターに、また逃げられているぞ君たち。
  • 一同揃ってムエタイレストランで食事を取っての大団円となり、真夏の箸休めではあるのですが、くどすぎる時の石田ギャグへの耐性を試されるエピソードでありました……苦手。
  • 後やはり、ギャグ回にしても、クライマックスバトル突入時の真司の発言はどうかと思ったところ。

伊豆の闇鍋

人造人間キカイダー』感想・第28話

◆第28話「赤子を泣かすアカオニオコゼ!」◆ (監督:北村秀敏 脚本:長坂秀佳
 見所1は、キカイダーにやられて画面手前で微動だにせず倒れていたが、アカオニオコゼと、それを追うサイドマシーンが間近に突っ込んできた為、体をひねって道を空けるアンドロイドマンの死体。
 見所2は、旅館の若女将がフレームの外に向けてひょいと放り投げると、川岸で座り込むマサルくんの元まで飛んでいく靴(笑)
 着ぐるみ怪人3体を一斉投入し、良心回路の設計図を巡って善玉サイドと悪玉サイドが死闘を繰り広げる連続活劇! の仕立てで新味を見せてくる一方、全体的に超編集と飛躍した展開が目立つエピソードでしたが、個人的にオコゼの怪人といえば、今作と同期の『超人バロム・1』第1話「悪魔の使い 深海魚人オコゼルゲ」(監督:田口勝彦 脚本:伊上勝)における、
 「よし! お前は、今から深海に棲む醜い魚オコゼのように、悪のエージェント・オコゼルゲになるのだ」
 が忘れがたいインパクトです。
 そんなアカオニオコゼの「オニオコゼ毒吹き矢!」(最初、「どごひあー!」と聞こえて何事かと思いました)を受けたキカイダーは、腐食毒に蝕まれつつもオニオコゼの左腕を切り落とし、これは相討ちだーーーと言いながらオニオコゼは逃走。
 なんとか大家荘まで戻ったジローは、ダークから助けたマサルを迎えに行くようにミツ子に頼むが、ミツ子はジローの修理を優先。ところがそれを目にした半平が、ジローとミツ子が旅館の一室で熱烈に抱擁し合っていると誤解した為に笑い話で済まない厄介ごとの引き金となり、前回今回と、ジローが「そこに隠れていろ」「そこを動くな」と指示すると、碌な事になりません!
 その頃、
 「このダークに、勝ち目は無いのだ」
 「ダークは破滅に追い込まれてしまうのだ」
 とネガティブさに磨きがかかるギルは組織存亡の危機に自発的に陥っており、3クール目にしてとうとう、ヒーローに心を折られかけていた。
 アルマジロとかマンモスとか、最近のダークの作戦行動のじり貧感はどうやら気のせいではなかったらしく、キカイダーの活動により、主力商材であるダークロボットの海外展開に、相当深刻なダメージを受けているものと思われます。
 目刺しともやし以外のものが食べたい……とギルがオニオコゼをせっつく一方、アラキ博士の娘・サエコは大家荘の若女将であり、探しに行く必要など無かった、という驚愕の真相が判明。
 引き続き、僕には完全な良心回路は必要ない・その為に無関係の人を巻き込みたくない、の二本立てでミツ子を止めるジローですが、巻き込まれる巻き込まれないでいえば、「光明寺から設計図が送られてきた時点」でアラキ博士は巻き込まれており、ダークが設計図を探し求める以上、仮に無関係でも次に博士の身内が狙われる可能性の高さは想像に難くないわけなので、ジローが消極的態度を理論武装しようとすればするほど、なんだか言い訳がましくなってしまう事に。
 修理を終えたジローがマサルを迎えに行っている間に、ジローの言葉を全く聞く気のないミツ子はサエコの元へ向かうが、そのやり取りの全てを、部屋の中で巨大サボテン(人間の身長大)に化けた、海綿グリーンが聞いていた!
 前回今回と、背後の巨大サボテン(人間の身長大)の存在に誰一人として触れないのですが、もしかして1970年頃の伊豆の温泉旅館では、室内に巨大サボテン(人間の身長大)の鉢植えが置かれているのは、特に珍しくもない光景だったのでしょうか。
 ……そんなわけは、多分、ない。
 父親が変死したばかりの若女将に詰め寄り、預かった設計図の在処を吐け! とダークの女ぶりを発揮するミツ子だが、そこをオコゼと海綿が襲撃。若女将はどさくさに紛れて、赤ん坊のお守り袋に入っていた設計図を足下に飛んできた靴の中に隠すと放り投げ、設計図の入った靴は、半平に「おまえは姉とジローがいちゃいちゃするのに邪魔だから見捨てられたのだ!」と吹き込まれたマサルの元へ。
 この辺りから、右に左に雑な場面転換が繰り返されて目が白黒するのですが、場面変わると若女将が逃走の為に乗り込んでいたタクシーが突然の急加速。不審を覚えると、タクシー運転手は、私がつけられている……と言い出すヤバい人だった為に、野原の真ん中で放り出されたところをアンドロイドマンに追われる羽目に。
 一方、若女将を追っていたと思われるジローとミツ子は、途中でマサルを見つけると全力で追いかける素振りを見せ、いや今、そんな事している場合ではないよね……? と頬をひきつらせているとマサルは二人から逃げていき、そこで若女将を見かけると、今度はサイドカーの横にミツ子さんを乗せたまま若女将救出に突っ込んでいき、もう、しっちゃかめっちゃか。
 作っている側としては、その後の話の都合を考慮した上で人を動かしているのでしょうが、前段階での行動がいちいちおかしい為に、『キカイダー』標準から見てもかなりわけのわからない事になっています。
 悪魔の笛でピンチになるジローだが、オコゼが赤ん坊を奪い取った事でその泣き声が笛の音を遮り、守るべき存在の叫びと祈りがキカイダーを救う流れは割と格好いいのですが、赤ん坊に負ける笛の音の株価はいよいよ大暴落していきます。
 プロフェッサー・ギルには、世界の可愛い動物ビデオに逃避する前に、まだやるべき事があるのでは。
 キカイダーにより赤ん坊が無事に救出される一方、雷忍ワイルドとか出てきそうなウェスタン村に迷い込んでいたマサル少年はダークの襲撃を受け、事ここまでこじれる大きな要因を作った半平は、ガンマンコスプレでマサル少年を救出して帳尻合わせ。
 恐らく、ロケ地に設置されていたトロッコのレールを利用して、ホバー移動と飛行を表現する映像の工夫は面白く、アカオニオコゼを葬り去るキカイダーであったが、傷心のマサルは設計図の隠された赤い靴を履いたまま、いつの間にか姿を消してしまう。
 今回も背景でこっそり復活した海綿グリーンは、怪紳士(演:潮健児)の姿に変身すると、トラックの荷台に潜り込んだマサルを追ってタクシーを走らせ、そのタクシーの運転手は、なんと光明寺
 ナレーション「ダーク破壊部隊・アカオニオコゼキカイダーに倒された。だが、カイメングリーンは執念深くマサルを狙う。光明寺博士はどこか」
 がギャグになっている飛び道具が放たれて、つづく。
 この時期、伊上勝の降板にともない、長坂さんが名実ともにメインライターになったとの事ですが、切り替わりにともなう制作体制の混乱も多少はあったのか、前回-今回はどちらかというと、伊上さんぽいプロットに長坂さん好みのメロドラマを大量に投入したら、お互いの持ち味が殴り合ってカオスが生まれた、みたいな内容でした(笑)
 次回――今作にしては格好いいサブタイトルで、カイメングリーン上司、いよいよ本気出す。