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伊豆の闇鍋

人造人間キカイダー』感想・第28話

◆第28話「赤子を泣かすアカオニオコゼ!」◆ (監督:北村秀敏 脚本:長坂秀佳
 見所1は、キカイダーにやられて画面手前で微動だにせず倒れていたが、アカオニオコゼと、それを追うサイドマシーンが間近に突っ込んできた為、体をひねって道を空けるアンドロイドマンの死体。
 見所2は、旅館の若女将がフレームの外に向けてひょいと放り投げると、川岸で座り込むマサルくんの元まで飛んでいく靴(笑)
 着ぐるみ怪人3体を一斉投入し、良心回路の設計図を巡って善玉サイドと悪玉サイドが死闘を繰り広げる連続活劇! の仕立てで新味を見せてくる一方、全体的に超編集と飛躍した展開が目立つエピソードでしたが、個人的にオコゼの怪人といえば、今作と同期の『超人バロム・1』第1話「悪魔の使い 深海魚人オコゼルゲ」(監督:田口勝彦 脚本:伊上勝)における、
 「よし! お前は、今から深海に棲む醜い魚オコゼのように、悪のエージェント・オコゼルゲになるのだ」
 が忘れがたいインパクトです。
 そんなアカオニオコゼの「オニオコゼ毒吹き矢!」(最初、「どごひあー!」と聞こえて何事かと思いました)を受けたキカイダーは、腐食毒に蝕まれつつもオニオコゼの左腕を切り落とし、これは相討ちだーーーと言いながらオニオコゼは逃走。
 なんとか大家荘まで戻ったジローは、ダークから助けたマサルを迎えに行くようにミツ子に頼むが、ミツ子はジローの修理を優先。ところがそれを目にした半平が、ジローとミツ子が旅館の一室で熱烈に抱擁し合っていると誤解した為に笑い話で済まない厄介ごとの引き金となり、前回今回と、ジローが「そこに隠れていろ」「そこを動くな」と指示すると、碌な事になりません!
 その頃、
 「このダークに、勝ち目は無いのだ」
 「ダークは破滅に追い込まれてしまうのだ」
 とネガティブさに磨きがかかるギルは組織存亡の危機に自発的に陥っており、3クール目にしてとうとう、ヒーローに心を折られかけていた。
 アルマジロとかマンモスとか、最近のダークの作戦行動のじり貧感はどうやら気のせいではなかったらしく、キカイダーの活動により、主力商材であるダークロボットの海外展開に、相当深刻なダメージを受けているものと思われます。
 目刺しともやし以外のものが食べたい……とギルがオニオコゼをせっつく一方、アラキ博士の娘・サエコは大家荘の若女将であり、探しに行く必要など無かった、という驚愕の真相が判明。
 引き続き、僕には完全な良心回路は必要ない・その為に無関係の人を巻き込みたくない、の二本立てでミツ子を止めるジローですが、巻き込まれる巻き込まれないでいえば、「光明寺から設計図が送られてきた時点」でアラキ博士は巻き込まれており、ダークが設計図を探し求める以上、仮に無関係でも次に博士の身内が狙われる可能性の高さは想像に難くないわけなので、ジローが消極的態度を理論武装しようとすればするほど、なんだか言い訳がましくなってしまう事に。
 修理を終えたジローがマサルを迎えに行っている間に、ジローの言葉を全く聞く気のないミツ子はサエコの元へ向かうが、そのやり取りの全てを、部屋の中で巨大サボテン(人間の身長大)に化けた、海綿グリーンが聞いていた!
 前回今回と、背後の巨大サボテン(人間の身長大)の存在に誰一人として触れないのですが、もしかして1970年頃の伊豆の温泉旅館では、室内に巨大サボテン(人間の身長大)の鉢植えが置かれているのは、特に珍しくもない光景だったのでしょうか。
 ……そんなわけは、多分、ない。
 父親が変死したばかりの若女将に詰め寄り、預かった設計図の在処を吐け! とダークの女ぶりを発揮するミツ子だが、そこをオコゼと海綿が襲撃。若女将はどさくさに紛れて、赤ん坊のお守り袋に入っていた設計図を足下に飛んできた靴の中に隠すと放り投げ、設計図の入った靴は、半平に「おまえは姉とジローがいちゃいちゃするのに邪魔だから見捨てられたのだ!」と吹き込まれたマサルの元へ。
 この辺りから、右に左に雑な場面転換が繰り返されて目が白黒するのですが、場面変わると若女将が逃走の為に乗り込んでいたタクシーが突然の急加速。不審を覚えると、タクシー運転手は、私がつけられている……と言い出すヤバい人だった為に、野原の真ん中で放り出されたところをアンドロイドマンに追われる羽目に。
 一方、若女将を追っていたと思われるジローとミツ子は、途中でマサルを見つけると全力で追いかける素振りを見せ、いや今、そんな事している場合ではないよね……? と頬をひきつらせているとマサルは二人から逃げていき、そこで若女将を見かけると、今度はサイドカーの横にミツ子さんを乗せたまま若女将救出に突っ込んでいき、もう、しっちゃかめっちゃか。
 作っている側としては、その後の話の都合を考慮した上で人を動かしているのでしょうが、前段階での行動がいちいちおかしい為に、『キカイダー』標準から見てもかなりわけのわからない事になっています。
 悪魔の笛でピンチになるジローだが、オコゼが赤ん坊を奪い取った事でその泣き声が笛の音を遮り、守るべき存在の叫びと祈りがキカイダーを救う流れは割と格好いいのですが、赤ん坊に負ける笛の音の株価はいよいよ大暴落していきます。
 プロフェッサー・ギルには、世界の可愛い動物ビデオに逃避する前に、まだやるべき事があるのでは。
 キカイダーにより赤ん坊が無事に救出される一方、雷忍ワイルドとか出てきそうなウェスタン村に迷い込んでいたマサル少年はダークの襲撃を受け、事ここまでこじれる大きな要因を作った半平は、ガンマンコスプレでマサル少年を救出して帳尻合わせ。
 恐らく、ロケ地に設置されていたトロッコのレールを利用して、ホバー移動と飛行を表現する映像の工夫は面白く、アカオニオコゼを葬り去るキカイダーであったが、傷心のマサルは設計図の隠された赤い靴を履いたまま、いつの間にか姿を消してしまう。
 今回も背景でこっそり復活した海綿グリーンは、怪紳士(演:潮健児)の姿に変身すると、トラックの荷台に潜り込んだマサルを追ってタクシーを走らせ、そのタクシーの運転手は、なんと光明寺
 ナレーション「ダーク破壊部隊・アカオニオコゼキカイダーに倒された。だが、カイメングリーンは執念深くマサルを狙う。光明寺博士はどこか」
 がギャグになっている飛び道具が放たれて、つづく。
 この時期、伊上勝の降板にともない、長坂さんが名実ともにメインライターになったとの事ですが、切り替わりにともなう制作体制の混乱も多少はあったのか、前回-今回はどちらかというと、伊上さんぽいプロットに長坂さん好みのメロドラマを大量に投入したら、お互いの持ち味が殴り合ってカオスが生まれた、みたいな内容でした(笑)
 次回――今作にしては格好いいサブタイトルで、カイメングリーン上司、いよいよ本気出す。