東映特撮に踊らされる駄目人間の日々のよしなし。 はてなダイアリーのサービス終了にともない、引っ越してきました。
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狼はそこに居る

牙狼<GARO> -魔戒ノ花-』感想・第19話

◆第19話「組曲」◆ (監督:金田龍 脚本:梅田寿美子)
 「これはあなたの命のスコア。人生の、組曲です」
 夜のオフィスに奇矯な指揮者と場違いな楽団が現れると魔戒のマーチを奏で、その音楽に囚われた男性は楽譜と化すとホラーの餌食に。
 続けて、女子トイレの扉が開くと次々と演奏家たちが出てくるのはトンデモ面白い画となり、〔クラシック音楽とそれを演奏するオーケストラ〕を主題に用いて、アンバランスな映像で超現実的な光景を繰り返し見せてくる手法。
 一転、冴島邸では、窓から差し込む光に美しく照らされながらマユリがレコードの音色に耳を澄ましており、その様子に静かに去って行くゴンザがおいしい。
 場面代わると、飛び降り自殺しようとしている男を前に、指揮者ホラーが重々しくグランドピアノを奏で、遂にその討伐指令が雷牙の下へ。
 「マユリ。残念だけど、音楽会の時間は終わりだよ」
 現場の気配を探っていると、人間の魂を音楽に変えて弄ぶホラーから雷牙とマユリへの招待状が届き、
 「マユリ。前言撤回だ。音楽会の時間だよ」
 は洒落た言い回しとなり、踊り狂う指揮者ホラーの元へ向かう二人だが、マユリがホラーにさらわれてしまう。
 「泣くのよ、叫ぶのよ! これは、死へのプレリュードよ!」
 コンサートホールめいた異空間でマユリを楽曲にせんとするホラーだが、雷牙はあっさり異空間へと侵入。
 「音楽会は終わりだよ」
 ……雷牙の台詞だけ抜くと、音楽会が終わって始まって終わってめまぐるしいですが、この間に、指揮者ホラーを演じるROLLYさんが初期アギトばりに光りながら激しく踊り狂っています。
 雷牙の剣とホラーの指揮棒が火花を散らしてぶつかり合い、割と強いぞ、ルンパッパ。
 いずれもクラシックの楽曲をBGMに、前半は非現実的な幻想の光景を、後半は光と闇の相打つ戦闘をたっぷり見せる構成から、いよいよ指揮者ホラーが魔獣の姿を見せると、剣を振り上げた黄金騎士ガロの指揮により演奏が切り替わるのは面白い趣向で(強者による異空間上書き!)、クラシックアレンジの主題歌インストが黄金騎士を輝かせ、雷牙 吠えろ高く 牙をむいて 譲り受けた その力で 打ち砕け 迫り来る闇を――!
 「これが俺の――黄金騎士ガロの称号を受け継ぐ者の曲だ!」
 変則的な主題歌ブーストを背に、勢いの良い大回転斬りでガロが指揮者ホラーの胴を断ち切ると、指揮者と聴衆の立場が逆転して、喝采のフィナーレ。
 「こ、これが……わたくしの、求めていた……Ahあァ、亞……ブラボーーー!!」
 ホラーの消滅後、残された楽譜の間に石板が挟まっているのも洒落た演出となり、再び冴島邸――
 「また聴いているんだ?」
 「……ああ。……こうしていると、光を感じる」
 だがマユリは、唐突にレコードを止め……
 「雷牙、エイリスの覚醒の時は迫っている。残された時間は多くない」
 ……長らくその設定に誰も触れてくれなかったので、覚えていてくれて良かった!
 それを聞いた雷牙はしかし、何も言わずに再び針を落とし……レコードが回り出すと、窓の外に煌々と照り輝く満月にカメラが向けられるのが良い演出で、“月の光”とは、まさに黄金騎士の事であるのか、と成る程。
 「初めて会った夜も、こんな月だったな」
 「……いいや。こんなに眩しくはなかった」
 なればその“眩しい”とは何を意味するのか、と含みを持たせると、雷牙とマユリの距離の縮まりを示して、月光の奏でる音色の中、つづく。
 後半、ちょっとROLLYが光りすぎ、なところはありましたが、〔クラシック音楽とそれを演奏するオーケストラ〕の主題を徹底し、前半は奇妙な笑いと不気味さの表現に用いていたそれを、ラストシーンで雷牙とマユリの感情の重なりに繋げたのは、とても美しくて良かったです。
 また、“マユリが光を感じるもの”を、“月光になぞらえられた雷牙”と見た時、指揮者ホラーの断末魔の叫びの中に言葉数の少ないマユリの代弁めいたものが浮かび上がってくるのは、面白かったところ。
 初代では、叙情的な映像を挟み込みつつもグロテスク方面の目立った金田監督ですが、今作では第10話「食卓」に続き、ラストの味付けでしっとりとした暖かみを加えてくる、良い演出でありました。
 次回――ビルの街にガロー! 夜のハイウェイにガロー!
 「いいも悪いも、おまえ次第だ!」
 ザ・ル・バ(笑)