東映特撮に踊らされる駄目人間の日々のよしなし。 はてなダイアリーのサービス終了にともない、引っ越してきました。
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己を変えて突っ走れ

仮面ライダー(新)』感想・第1-2話

◆第1話「改造人間 大空を翔ぶ」◆ (監督:山田稔 脚本:伊上勝

 誰かが君を狙っている!
 何かがやってくる!
 誰だ? 誰だ! 誰だ?!

 ハングライダーで大空を舞う青年・筑波洋の姿で幕を開け、バイクの集団に囲まれている車を上空から見つけた青年は、付近に着陸を強行すると、問答無用で後ろから蹴りかかった。
 初撃でこれ以上なく昭和ヒーロー属性を見せつけた青年は、白衣の中年男性をさらおうとする黒タイツの集団と格闘になると、山中を逃走。
 「何も知らない方が、君の身の為だ……」
 青年の正義感に感謝しつつも、これ以上は関わらない方がいいと制止して口を閉ざす白衣の男性、第1話で出てくる博士キャラにしては、とても良識的(笑)
 「助けてくれてありがとう。しかし私の事は忘れてくれたまえ」
 無事に黒タイツを撒くと、これ以上青年を巻き込まないようにと白衣の男性はバイクへの同乗を拒否して、ひとり車で姿を消すが……その間に洋の仲間たちが報復として謎の怪人の襲撃を受け、洋がテントに戻ると、地中から突き出した人間の手を発見する、いきなりの猟奇シーン。
 洋は懸命に地面を掘り返すと地中に埋まった無惨な死体を発見し、ブルーシートの上に5人分の遺体を掘り起こして並べる、歴代でもだいぶ凶悪な画の導入。
 「誰が……いったい誰がみんなをこんな目に」
 開幕早々、5人の命の重さを背負い、涙を流して怒りの拳を握る洋だが、5人の死体はその目の前で消滅して殺人の痕跡は消え失せ…………こ、このままだと、大学生集団失踪事件唯一の生き残りとしてブタ箱に放り込まれてしまう!!
 ひょんな事から二重三重に人生の危機に陥った洋の前に、白衣の男性――志度博士の関係者である謎めいた黒衣の女(妙に謎めかした演出で、意図はまだわかりませんが『X』霧子のような見せ方)が姿を現し、洋は博士の隠れ家@日本の「博士」なら当たり前、へと案内される。
 深入りすれば今度は家族が狙われると告げる博士に対して、洋は天涯孤独の身の上を語ると、全国で続発する様々な事件の背後に蠢く影の組織・ネオショッカーの存在を明かされるが、博士の隠れ家を襲う、ネオショッカーの改造人間ガメレオジン。
 カメレオンの顔の意匠がそのまま人間の顔を象っている、といった人と動物の融合した顔面にはインパクトがあり、スーツの奥の生身の目を見せてくるタイプはかえって異形感の薄れる場合もありますが、今回はシンプルに怖い。
 洋は再びさらわれた博士をバイクで追うと、さっそく戦闘員をバイクで轢くイニシエーションを達成。
 博士は、ガメレオジンの攻撃により瀕死となった洋を救う為に改造手術の執刀を自ら申し出、〔悪の組織の管理下×勝手にカイゾーグ×救命の為の緊急処置〕と、シリーズ過去の要素をミックス。
 軍服スタイルの幹部・ゼネラルモンスターは、洋がネオショッカーの優秀な手駒になる可能性を考慮して手術を許可し、手術を終えて覚醒した洋は、戦闘員に囲まれると、わけのわからぬまま超人的なパワーを発揮。
 「おまえも今では俺の仲間となった身だ」
 改造人間であると告げられた洋は、恐らく性能試験の名目で掴みかかってくる戦闘員を殴り倒している内に、打撃の動作から偶然にも変身コードのプロテクトを解除(近年でも行われるリアリズム演出ですが、既にこの時点で存在)し、ベルトの風車にエネルギーを溜めて大きく飛び上ると、その姿は一瞬でネオショッカーの視界から、かき消える!
 「……これは……」
 主人公ヒーローの劇中初登場シーンを、水面に映ったもの――鏡を前に初めて己の姿を知る「アウトサイダー」――とする事で、異形への変貌が強調され、姿形は変われども、胸に宿す心は変わらぬ洋は、博士救出の為にネオショッカーの元へと舞い戻る。
 「それがおまえの、本当の姿か!」
 「そうだ!」
 異形と化した洋が大きく啖呵を切る一方、ゼネラルモンスターは、志度博士の施した小細工により、洋の改造手術が(ネオショッカー的に)失敗した事を大首領より伝えられ、下される処分命令。
 「――話し合いは終わりだ。これからは……」
 「これからは?」
 「殺し合いだ!」
 ……は、しばしばネタにしておりますが、個人的に、伊上脚本の中でも、ベスト級に好きなやり取り。
 「そんな姿でどう生きてゆく。死んだ方が身の為だ」
 「……その心配は無用だ!」
 『ストロンガー』終了から約4年ぶりのTVシリーズ、タイトルもシンプルに『仮面ライダー』と銘打っての新規巻き直し作品という事もあってか“引き返せない異形への変貌”が繰り返し強調され、ガメレオジンの舌攻撃を振りほどいた洋は、擬態を見破ると取っ組み合い。
 霧煙る山中で、主題歌インストによる集団戦の末、「スカイキック!」がガメレオジンを捉え、
 「俺の負けだ。しかし、おまえも負けたな……」
 「私も?」
 「ここは、ネオショッカーの処刑場だ。生きて戻れん」
 ガメレオジンは溶けて消え去るが、処刑場に仕掛けられた爆弾により、洋も爆死の危機に陥ったその時、偶然触れたベルトのスイッチがその身を天高く飛翔させ、今度のライダーは大空を自由に飛べるぞ! が、第1話のクライマックス。
 ……まあ、高度や滞空限界はともかく、劇中の描写を見る限り、Xライダーはかなり力強く空を飛んでいるのですが(笑)
 「すまん。君には詫びる言葉もない。私は、元通りの君で生き返らせたかった、そんな姿にしてしまって、私を憎んでくれ!」
 「博士! 元気を出してください。私は、少しも博士を恨んだり、憎んだりません。逆に、今は感謝する気持ちです」
 「感謝?」
 「ネオショッカーの悪を知った今、それと戦える力を与えてくれた事に、感謝します!」
 博士の元に降り立った筑波洋は、超前のめりだった。
 「私は悪を憎みます。ネオショッカーと戦います」
 徹底抗戦を宣言した洋は、博士にも大空を飛べる能力を披露し、
 「筑波くん……君こそ……君こそ仮面ライダーだ!」
 博士の命名により、ネオショッカーに対する怒りを炎のように燃やす、大空を舞う新たな仮面ライダーが誕生して、つづく。
 以前の配信の際に第1話は見ていたのですが、昭和ライダーを一通り視聴した後で見ると、原点回帰と新奇性のバランスをどう取るのかのせめぎ合いや、従来作の要素をどう取り込むのか、といった試行錯誤が窺えて、また違った面白さがありました。
 過去作において『V3』以降はだいぶおざなりになっていた、“異形の改造人間”を改めて軸に据えると、話し合いの余地や異形の姿への視線などで“怪人との同質性”を描き、その間にある究極的な差異としての“悪を憎む心”を、ライダーの個性としての“飛翔”に繋げて示すラストは再始動としての勢いも良く、新たな仮面ライダーがどんな旅路を走っていくのか、見ていきたいと思います。
 ……なんか、このエピソード中ずっと、乗っていたバイクはネオショッカーからの盗品だった気がしてなりませんが、目をつぶる方向で!
 あと、“東映ヒーロー物で第1話に出てくる科学者”にしては、比較的良心の存在が感じられた志度博士ですが、それはそれとして過去にどのぐらいの改造手術の経験があるのか、気になります。
 それから、後年の村上弘明さんは、筆者の好みドンピシャであると、蛇足ながら(笑)

◆第2話「怪奇! クモンジン」◆ (監督:山田稔 脚本:伊上勝

 ナレーション「仮面ライダー・筑波洋は改造人間である。人類の自由の為に、悪の秘密結社・ネオショッカーと戦うのだ」

 見所は、第2話にして、自宅に怪人の襲撃を受ける筑波洋。
 ゼネラルモンスターも来ちゃう。
 なお「仮面ライダー」という言葉は総体を示す意味合いが非常に強いので、この感想では今後、洋ライダーについては「スカイライダー」の呼称を用います。
 「ネオショッカーに忠誠を誓い、困難に立ち向かうか」
 「誠意を持って、任務を尽くします」
 「よし。堅い話は抜きにして、まず、腕試しだ」
 ゼネラルモンスターが配合する素材を選んで誕生した、新たな改造人間クモンジンが、改造人間の素材となる人員の確保を命じられる一方、洋との出会いにより自由の身となった志度博士は、水面下でネオショッカーと戦う秘密組織・志度ハングライダー倶楽部の会長に収まっていた。
 「しかし全く驚きですね。会長がその昔、大空に憧れた飛行少年だったとはね」
 監禁生活のストレスから解放された反動か、博士あらため会長はにこやかに洋や女性メンバーと談笑しており、てっきり第1話か2話で死ぬと思っていたので、しれっと足抜けに成功しているのが驚きです!
 後、女性メンバーの一人は、前回の謎めいた黒衣の助手でしょうか……もはや完全に別人なのですが、こちらもストレスから解放された反動なのか、或いは重度のロールプレイ体質なのか。……死人が出ていそうなのを見越して、喪服を思わせる黒衣で洋の様子を窺いに行ったのなら、人間性には凄く問題を感じますが!
 ハングライダーを使っての、空からネオショッカーのアジト探しが空振りに終わる一行だが、帰路、車を飛ばしていた青年が怪人にさらわれる場面に遭遇。
 「おまえの運命は俺が握っているのだ」
 「殺したければ殺しなよ。生きてても大して面白い事も無さそうだしよ」
 「まだ若いくせに、そういう考え方はよくない」
 何やら事情があってやさぐれている青年はクモジンに説教され、前回のガメレオジンに続き、ネオショッカー怪人は、やたらと台詞回しに人間味が与えられています(笑)
 これも、洋(仮面ライダー)とネオショッカー怪人が“同質の存在”である事を強調する仕掛けなのでしょうが、青年の救出に向かった洋が初めての「変身!」を行って高い所にヒラリと立つと、「あれが人間か。俺達の仲間だ」とクモジンが誤解する姿で更に強調し、印象的な一ひねり。
 スカイライダーは新入りのクモジンの誤解を利用すると、平然と先輩面する頭脳プレイで、アジトまでご案内。
 「ほぅ……化け物が二つか」
 「黙れ! おまえもいずれは、こうなる身の上だ」
 囚われの青年が、スカイライダーも一緒くたに「化け物」呼ばわりするのもしっかり外さず、“仮面ライダーの本義”の再構築を図る、巻き直し作品としての明確な意識を感じるアプローチ。
 (現行『ガヴ』と色々重なるので、今見ると、2倍面白いパイロット版かもしれません)
 スカイライダーは卑劣な裏切り行為で青年を救出すると…………ほ、他に捕まっている人たちは、放り捨てたぞ(笑)
 背景のそれらしさ程度の意識しか無かったのか、或いはまだヒーロー成り立ての未熟さを示す意図もあったのかもですが、さすがにこれは、よろしくなかったような。
 コメディリリーフルポライターは今回も怪人と接近遭遇しては気絶し、どうやら、服部半平と同じ、魔界忍法・笑劇時空(自身の周囲にコメディ時空を発生させる事によって、本来なら必然的な惨劇を回避するが、代わりに色々なもの失う)の使い手です。
 そして、助けを求めてきた弟の元に青年を送り届けた勢いで、玄関からお邪魔してくる仮面ライダー(笑)
 ひとまず正体を秘密にしておきたかったにしても曰く言い難い変な画のシーンを挟み、ミッション達成した洋は帰宅。だが怒りのクモジンの奇襲を受け、屋上から落とされそうになる大ピンチに、改めて就職を持ちかけてくるゼネラル・モンスター。
 「ネオショッカーの目的は一体なんだ?!」
 「この世界は、今のままでは人間が増えすぎ、食べ物のが不足して、飢え死にで全滅するのだ。そこで、われわれ優れた者が生き残る為に、人口を三分の一に減らす。駄目な奴らを、消してしまう事にしたのだ」
 「人間誰しも生きる権利はある! 僕はあくまでネオショッカーと戦う!」
 「やれやれ。折角のワシの厚意を断るとはな。せめて、ワシの手で処刑してやろう。君は――死刑だ」
 ネオショッカーは、古式ゆかしい選民思想に基づいて人類の口減らしを目標とする組織と判明し、ステッキからの火炎放射を受けた洋は屋上から転落するも、空中変身からのセイリングジャンプで緊急脱出。
 先行したクモジンを追うも一歩遅く、人質として弟がさらわれてしまい、明らかになる青年がやさぐれていた理由、まさかの、三浪
 ……これは多分、野球でスポーツ推薦を取り損ねて、一度レールを踏み外したが最後、努力を裏切られた被害者意識も手伝ってリカバリーの仕方がわからなくなって深みにはまったタイプだな……という感じですが、そのゲストの背景が、筑波洋のパーソナルと紐付けられるわけでもなんでもない事もあり(兄弟が如何にもな貧乏アパート暮らしなのに対し、天涯孤独の身の上といっても、洋は割と良さそうなマンション住まいだったり)、ライダー説得に重みもなく兄弟のドラマの方はどうにもノりくくも物足りない内容で、ドラマ的な面白みがあるのは、やたらめったら人間くさいクモンジンの方。
 スカイライダーは、OPで2回使われているライダーブレイク――バイクによる体当たり――で壁をぶち破って工場へと突入すると、少年を救出。クモジンはスカイキックの直撃によりあっさり消滅し、兄弟は無事に再会すると共に、死中に活ありメディテーション体験をした兄は、再起への第一歩を踏み出すのであった。
 ……敢えて言えば、OP・EDの歌詞でもニュアンスが強調されている「命懸けで生きる」が、青年と仮面ライダーの間で共有されましたが、プロデューサーの平山さんなりの中で、新たな仮面ライダーを象徴するテーゼだったりしたのかもしれません。
 次回――クモと来たらコウモリだ!