『爆上戦隊ブンブンジャー』感想・第32話
◆バクアゲ32「地獄の電車ごっこ」◆ (監督:中澤祥次郎 脚本:森地夏美)
ディスレースに敗北し、ぽいっと捨て置かれていた玄蕃は始末屋コンビに拾われて手当てを受け、適当に潜り込んだ整備場で3人が出会ったのは、どこか物寂しげなブルースハープを奏でる――ロールプレイ体質なガタイのいい男。
「「「誰?」」」
むしろ、不法侵入している君たちは誰? な男は、トッキュウジャーの一員・虹野明と名乗り、『烈車戦隊トッキュウジャー』10周年記念コラボエピソードという事で、トッキュウ6号/虹野明が登場。
一方、ブンブンガレージでは相も変わらず突然、「BBG用の新装備」なる概念が登場し……そもそも、BBGってなんでしたっけ……?
……いやまあ、もう何度も書いていますが、今作、“複数目標の全てに本気なヒーロー”をやりたい志はわかるのですが、物語としてはその複数目標が全く連動していかない(多分、設定はあるのでしょうが、劇中で全く描かれない)ので、キャラの行動原理と劇中の諸要素がとっちらかるばかりになっており、玄蕃の母星が大変な事になっているのを知ってハシリヤンから解放しようと思うけどそれはそれとしてだいぶ久々に名前の出てきたBBG(今もって詳細不明)に出場する気満々です! というキャラクターの気の持ち方に、ついていき方かわからない、というのが率直なところ。
私は、“キャラクターを描く”というのは一つには、“優先順位を描く”事だと思っているので、どんなに善良でも立派な心根の持ち主でも物事の優先順位が示されないキャラクターには、フィクションのヒーローといっても人間味を感じられない、というのが正直。
せめて節目節目で選択を突きつけた上で、AもBもなんならCも全部こぼさないのが俺達だ! と乗り越えていくヒーロー像を繰り返し強調してくれればまた話は違ったかもですが、そういうわけではないですし。
目標をたくさん並べて、その全てにこの連中は本気といった狙いが例のごとく例のように口だけになっていて、その本気ぶりを具体的に描いたエピソードなどほぼ皆無なわけですし、選ばないなら選ばないで、“選ばない”事の格好良さを、しっかり描いてほしいわけであります。
阿久瀬からの緊急連絡が悲鳴と共に途切れ、出撃した大也たちが目にしたのは、線路グルマーのフラッシュを浴びる事で、強制的に地獄の電車ごっこに参加させられている人々の姿(含むサンシーター)。
困惑している内にクルマ獣の目が光り、最近すっかり当たり前のように動きますが、“誰よりも身を挺してレッドをかばおうとする男性メンバー”って、戦隊史上でも初ですかね射士郎……『トッキュウジャー』コラボ回で、“ごっこ遊び”の要素を取り出してくれたのは、今回の良かったところ。
「こういう事なんです」
「手が離れない!」
「脚が止まらない……」
阿久瀬・未来・射士郎が、あっという間に戦線離脱して虹の彼方へ出発進行していた頃、もみ合いを虹野に仲裁された玄蕃と先斗は、虹野の行司で相撲を取っていた。
復讐とか仲間の意味とか玄蕃の慟哭とか、割と重要な事を話している気がするのですが、いきなり始めた相撲のせいで、何も頭に入ってきません。
私が忘れているだけかもしれませんが、『トッキュウ』原典で相撲ネタがあった覚えもなく……どちらかというとこれは、『ドンブラ』時空なのでは。
「今行かないと……私には生きる価値が無い」
「……そうか。おまえ、死に場所を探しているんだな」
とにかくディスレースの野郎に、鉛玉を撃ち込まにゃ死んでも死にきれんのじゃぁぁと叫ぶ玄蕃に向けて、往年の決めぜりふから何か含蓄のある事を言おうとする橙色の先輩だが、そこに線路グルマー一行が走ってきて、フラッシュを浴びる玄蕃・ビュンディー・虹野。
「こ、これはお困りがすぎる」
「「「ん?!」」」
玄蕃はさっくりと未来の後ろに連結され、この数話、無駄に険悪な雰囲気にした末の再会の場面は、本当にこれで良かったのでしょうか。
……あまりに気まずすぎて、顔を逸らして無言で通す玄蕃は面白くはありましたが(笑)
「この電車ごっこは、止まったらみんなまとめて、だーい爆発しまーーす」
難を逃れた紫が弓矢で強制停車しようとするも、勝利のエクスプローージョン宣言を前に手出しが出来ずに困っていると、追いついてきた赤がひらめキング。
線路グルマーの足下に線路で環状線を作り出す事で電車ごっこをループに閉じ込め……なにやら凄く勝ち誇っているのですが、根本的な解決にはなっていないのでこの後どうするのかと思っていたら、突如としてトッキュウ1号が登場。
ここからBパートは、乱入したトッキュウ1号がチケットくん乱舞で乗客を降ろすと、『トッキュウジャー』主題歌(大変好き)をバックにひたすら戦闘となり、今回のエピソードで一番驚いたのは、虹野明が変身しないまま終わったこと(笑)
その虹野は、戦いを外野から見つめる玄蕃に、ふんわりとした言葉をかけて去って行くロールプレイを決め、さすがに虹野と出会って玄蕃のお悩み全面解決は避けた結果、役に立つような立たないような曖昧な台詞だけ告げて去って行く人になり、トッキュウ1号に蹂躙された被害者みたい事に。
「見えた。おまえの終着駅!」
トッキュウジャーといえば陽気にマッドで殺意高めなので、線路グルマーは再び環状線に追い込まれた上で、前後を車輪に挟まれての轢殺&斬殺でエクスプロージョン。
巨大戦では、電車酔いでリタイアしたビュンディーに代わってトッキュウオーが投入されると、BBロボと共に巨大線路グルマーを撃破し、総じて、毒にも薬にもならない、いたってノーマルなザ・コラボ回でしたが、どうしてこのタイミングでコラボ回……? は、大いなる謎として残るのでありました。
「俺には見える……おまえらが、夢をかなえるのが」
最後に変身を解除したライトがワンカットだけ登場して去って行き、この10年、一線で活躍する売れっ子となった役者さんだけに、超格好良く成長したライト、に見えるのは、さすが。
『トッキュウ』に関しては個人的に思い入れが強くて色々あるのですが、変に原典のテーゼに突っ込まず、「死に場所」「ごっこ遊び」「イマジネーション」だけ拾って『ブンブン』と組み合わせる、当たり障りの無い作りにしたのは良かったと思います(※褒めているわけではない)。
次回――だいぶ予想外な形の強化。