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君が選ぶ道は

仮面ライダー響鬼』感想・第37-38話

◆三十七之巻「甦る雷」◆ (監督:坂本太郎 脚本:井上敏樹
 「憎しみを忘れるな。憎しみがおまえを強くする」
 魔化魍ノツゴは地中に姿を消し、シュキは拾ったあきらに某副隊長みたいな事を言葉をかけ……


 「本当に彼女の事を思うなら、ビーストを憎みなさい」
 「その憎しみを、力に変えるの」
 「それでいいの。その憎しみが、戦う力になる。……あたしはずっとそうしてきた」

 …………うん、大体、副隊長ですね!!(『ウルトラマンネクサス』)
 それはザンキさんも、
 「あの人には近づくな。二度とな」
 と言うわけです。
 トドロキの変身アイテムを奪ったまま、父母の仇とノツゴを追うシュキが呪術により野の草花を式神に変えて放っていると、そこに現れる烏帽子コンビと和服コンビ。
 「おまえは鬼なんかじゃない。むしろこちら側に属するものだ」
 「来ますか? こちら側に」
 「断る。私ほど鬼である鬼はない。おまえらとは違う」
 「……あっそ。ならば――死ね」
 烏帽子コンビをけしかけられたシュキが一当たりして逃走すると、烏帽子姫に踏みつけられた童子Mパワーに覚醒し、最終盤へ向けて脅威を増していく魔、といった趣向なのでしょうが、正直、これまで何度も見た顔+仮装めいた衣装はレギュラー仇役としての脅威感に欠け、やるならもっと大幅なモデルチェンジぐらいは欲しかったところ(台所事情からシンプルに手が回らなかったのかもですが……)。
 一方、吉野の宗家からは鬼祓い――シュキへの抜け忍狩りの命がイブキに下され、シュキは10年前、ノツゴの弱点を突く為に、弟子であったザンキごと魔化魍を討とうとして鬼の資格を剥奪された過去が明らかに。
 ザンキの胸の古傷は、その際に朱鬼の一撃によってつけられたものであり、大技が竪琴アローなのは、やはりビジンダーが入っている気がします(笑) (※別に必殺技ではないが、ビジンダーが手持ち装備の竪琴で矢を放つシーンが2回ほどある)
 まあ、ハープ(リラ)系×矢の組み合わせは目新しいアイデアというわけではありませんが、そういえば近年、世にハープボウの供給はあるのだろうか、とちょっと調べてみたら、『FF14』と『エルデンリング』に出てくる模様。
 そして、『快傑ズバット』に、楽器×矢の武器が出てきていたような……と思って確認してみたら、
 尺 八 ボ ウ ガ ン
 でした。
 日本じゃあ二番目だ!!
 「鬼であるって事は鬼であっちゃいけない。そうヒビキさんが言ったんだ?」
 明日夢と京介は、本日もなんだかんだと一緒に帰宅しており、ヒビキの言葉に難しい顔で考え込む明日夢に対して、からかわれたのでは? とコメントした京介は、ヒビキの弟子として鬼になる、と堂々宣言。
 そのヒビキは、自分の中の「憎しみ」とどう向き合うべきなのか、先達から正反対のアドバイスを受けて迷えるあきらの人生相談を受け付け中。
 「ま、誰もがみんな、一度はぶつかる壁なんだよね。……でもな、みんな自分自身、答を見つけてるんだ。思いっきり悩みながら」
 「見つかるでしょうか。私にも、答が」
 「勿論だよ。あきらもここまで頑張ってきてるんだし」
 続けて、宗家を張る使命にしても実質的に「組織の為に人間を殺せ」と命じられたイブキさんからも人生相談。
 「おまえが自分で答を出さないと、あきらの為にも。おまえが出した結論が、プラスになるといいな。おまえと、あきらの為にも」
 「……ヒビキさんなら……どうしますか?」
 「さあな。ただ一つ言えるのは、鬼の仕事ってのは、綺麗なもんばっかじゃないって事だよ」
 終わってみると、この後ヒビキさんの出番がない(今回は装甲無し)ので、主人公のそれっぽい出番を作る都合があったのかと思うのですが、結局どちらに対しても「答は自分で見つけるしかない」と言っているだけなので(それそのものは間違っていないのですが)、だいぶふんわりとお茶を濁したような感じに。
 迷えるあきらは、ザンキ接触したシュキに弟子入りを志願し……凄くざっくり言うと、グ・レ・た。
 後期と前期で、明確に作品スタンスの変わった部分の一つが「聞き分けのいい良い子を、周囲の大人達が可愛がる」路線へのネガティブ(というか、それで少年サイドのドラマを作れるのか?)な視線であり、京介投入により明日夢に“子供の世界”が与えられるのに続いて、あきらの前にはドロップアウトした先輩が現れて悪い遊びを教えてくる形に。
 何人もの鬼を育ててきたシュキ(先代「斬鬼」もシュキの弟子だったみたいな感じでしょうか)は、呪力によってアンチエイジングしており、式神を生み出したり竪琴を召喚するといった、これまでの鬼とは一線を画する出鱈目スキルは、
 「昔の鬼は皆、こういう力を持っていたものだ」
 と、力技で理由付け。
 (これは賭けだ、あきら。おまえが自分で答を見つけろ)
 不良ロードに足を踏み入れたあきらの後を追うザンキだが、シュキの前には鬼祓いの覚悟を決めたイブキが立ちはだかる。
 「こっちへ来い、あきら。君には鬼の陰の領域に踏み込んで欲しくないんだ。あきら……来るんだ!」
 「嫌です!」
 あきらは師匠に明確な反抗を見せ、鬼vs鬼、一触即発の場面にノツゴが出現すると、威吹鬼と朱鬼は変身。
 「待っていたぞ、この時を」
 「やめろ!」
 あきら捕食の危機に、あきらを助けるのではなく竪琴アローを構える朱鬼だが、そこに駆け込んできたザンキが決死の変身を行い、BGMも噛み合って超格好いい。
 斬鬼があきらを救出すると、弱点を突き損ねた朱鬼は普通に戦うが、ノツゴの糸に絡め取られると、今度は自らが喰らわれる危機に。
 「今だ、やれ! 私もろとも」
 だが朱鬼は、大口開けたノツゴを自分ごと倒せと斬鬼に向けて叫び、ノツゴを倒す為なら弟子を見殺しにする事も厭わないのではなく、ノツゴを倒す為なら自分自身を含めた誰が犠牲になっても構わない、のは面白かったところ。
 「馬鹿め。これが、鬼の仕事だ!」」
 倒すのではなく助けようとした斬鬼が弾き飛ばされると、朱鬼はマジカルアローを自分に向けて放つ凄絶な自爆攻撃でノツゴに大ダメージを与え、ひっくり返ったノツゴの懐に飛び込む斬鬼
 「――音撃斬! 雷電斬震!」
 10年越しの師弟攻撃の前に今度こそノツゴは消し飛び、斬鬼は致命傷を負った朱鬼を看取り、激しい雨に打たれながら道に迷い続けるあきらの姿で、つづく。
 …………イブキさん、サソリに吹っ飛ばされただけでしたね!
 今作の土台にあたる要素ながら、これまで抽象的な部分の多かった“鬼”について、憎しみに囚われるあまり鬼の道を外れた存在(シュキ)を鏡面に、“鬼になる”とは何か? を掘り下げようとしたエピソードでしたが、復讐テーゼ・あきらの問題・イブキの問題・ザンキ師弟の過去・負の感情と鬼(「怒りの欠落」へのエクスキューズ)……と処理したい要素を盛り込みすぎて広く浅くになってしまい、全体的に消化不良。
 特に、鬼と憎悪を主題に置き、あきらとの対比にしても女性の鬼が出てくるとなれば、能の演目「鉄輪」などを思い浮かべるところで、そういった日本の古典的な「鬼」像(の一つ)に対し、敢えてその名を冠した今作における「鬼」との差異をどこに置くのか、ぐらいは踏み込んでくれるのかと期待したので、先に引いた要素もあるものの、肩すかしといった後編でした。

◆三十八之巻「敗れる音撃」◆ (監督:田村直己 脚本:米村正二
 「ハッキリ言って……君は必要ないんだ」
 屋上でやけっぱちのようにホイッスルを吹き鳴らしていた明日夢くんに突然の戦力外通告
 久々にブラバン要素が取り上げられたと思ったらこの仕打ち!
 「……ホイッスルもいまいちだし」
 だが、ぐうの音も出ない!
 京介の「鬼になる」宣言から目を逸らそうと部活に打ち込もうとした矢先、補欠を合宿に連れて行く余裕が無い、と宣告されてしまった明日夢は、動揺するあまり、どさくさまぎれに持田の手を握った……!
 明日夢は持田をたちばなに誘い、それを耳にして自転車で激走する京介は……
 「よっ。またヒビキさんに、慰めてもらいにきたのか」
 「……違うよ!」
 先回りしていた(笑)
 君は、これぐらい面白い方が色々と安心できるよ……!
 京介の茶々入れもあって、部活での戦力外通告について明かした明日夢は、元ブラバンの部長だった過去が生えてきたみどりの指導による、補欠強化合宿への参加を強制され、他の補欠部員を集めるように指示されるが……参加者は、ゼロ。
 「……どうやら君には、補欠のみんなをまとめる力もないようだね」
 それは勿論そうだろうとして、そもそも「補欠は合宿に参加できません」を部長が一人一人に言って回るのは非効率にすぎるので、普通は部活動の際に言うと思うわけですが……つまり:合宿に参加できないのは明日夢くんだけなのでは。
 その頃、烏帽子コンビに襲われていた登山者をヒーロー登場で助けた響鬼は、見た目リザードマンな魔化魍と激突。
 だがリザード魔化魍にはアームド拡声も太鼓の一撃も通用せず、威吹鬼轟鬼が参加してのトリオ音撃さえ無効化され、やむなく3人は一時撤収。
 ヒビキは、音撃の効かない魔化魍への対策を求めてみどりの元を訪れ、“これまでにない非常事態”と“それはそれとして日常”の噛み合わせがさすがに悪すぎるのですが、悩める若者たちは霧の中を右往左往し……
 人生相談1!(香須実さんが結構酷い)
 「言いづらいんだけど……イブキくんって、挫折とかって、した事ないんじゃない?」
 「……挫折?」
 「なんていうか、泥にまみれた事がないっていうか……いつも涼しげに、上から見てるっていうか……」
 「僕が……上から?」
 人生相談2!(ヒビキさん野生に帰る)
 「自然には、全てのものに、響きがある。その響きを、体に刻むんだ。そうすると、無心になれる。無心になれた時、俺は俺のリズムを取り戻す事が出来るんだ」
 人生相談3!(ザンキさんは大人)
 「おまえはもう……師匠だろうが!!」
 あきらの心を開く事ができず、特に理由もなく宗家の跡取りだからと鬼になった自分(ダークすぎる環境に無自覚なタイプ)に師匠の資格なんてない、と弱音をこぼすイブキを鉄拳制裁で叱るザンキさんは凄く格好良かったのですが、さすがに前回からずっと、人生相談が多すぎでは。
 一進一退を繰り返す明日夢は、ヒビキのアドバイスを実践して雑念を取り払おうと森の中に向かい、そこに声をかけた持田さん、「そろそろ帰らないと」と伝えて本当に帰っていくだけで、あんまりな扱い。
 ザンキとイブキのやり取りを遠目に見ており、(俺も……俺もザンキさんに殴られたいっス……!)と、熱意余ってザンキ復帰を懇願したトドロキは、
 「今のおまえは殴る価値もない」
 と告げられ、後期に入って、亡き父を超えようとする京介、実父の足跡を追った明日夢魔化魍に対する憎しみとの折り合いに迷うあきら……と少年たちが“未来へ進む為の過去”がクローズアップされているのですが、トドロキについてはそれが「ザンキに対する精神的依存」と置かれる形に。
 一方、音撃の効かない魔化魍は、アームドセイバーの分析により音撃を相殺する波動を放っているのかもしれない、とみどりが分析するが、直後、つまりデストロン魔化魍だったスピーカーリザードが合宿先の学校にカチコミを仕掛けると、更に烏帽子コンビも出現。
 捕獲された明日夢とみどりは校庭を引きずられていき、イブキはたまたまあきらを目撃するも踏切に阻まれ、音撃の通用しないまま響鬼鉄板焼きの危機で、つづく。
 この後『カブト』でメインライターを務める米村さんと、『ファイズ』に参加していた田村監督が初登板し、「怪人に攻撃が通用せず一時撤退を選ぶヒーロー」「怪人サイドが積極的にヒーローを狙って襲撃」「巻き込まれる関係者」と、“従来の特撮ヒーロー物ではままあるが『響鬼』では避けていた事”が一気に持ち込まれ、後期でもある程度は守っていた『響鬼』こだわりのスタイルが、大挙スクラップ置き場行き。
 また、ラストの戦闘シーンが「学校」を舞台にしているのも、間接的なスタイル崩しといえますが、他はともかく「怪人に攻撃が通用せず一時撤退を選ぶヒーロー」に関しては、“多少攻撃が通用しにくかろうが負傷して血が出ていようが魔化魍を追い続ける鬼”という今作のヒーロー像をあまりに大きく崩してしまい、そこは踏みとどまってほしい部分でありました。