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飛び出す青春

仮面ライダー響鬼』感想・第35話

◆三十五之巻「惑わす天使」◆ (監督:石田秀範 脚本:井上敏樹
 「ハァッ!!」
 ……本当に、一喝で魔化魍を消し飛ばした(笑)
 アームドセイバー登場編において半ば与太で触れましたが、改めて、音撃の道を究めていくと、行き着くところは自らの肉体そのものを清めの音の発生器官とする、すなわち、声を出しては魔化魍を地に墜とし、地面を踏めば魔化魍の動きを封じ、骨を鳴らせば魔化魍を粉々にする……の境地なのでありましょうか。
 そう、音撃の秘奥――音撃・指パッチン。
 まあ与太はさておき、そこまで行くと、もはや人理を完全に超えた魔の領域に入ってしまいそうであり、本来ならアームドセイバーは「人間には使えない」代物というのは、そういったところでありましょうか。
 「頭を切り換えるんだよトドロキ。鬼の仕事に、私生活持ち込んでどうするんだよ」
 恋煩いからまたも必殺のチャンスを逃したトドロキはヒビキから説教を受け、一般論としても間違ってはいないのですが、なにぶん井上脚本なので、どうしてもヒビキさんの肩の辺りに天堂竜の背後霊がちらつきます。
 俺達は猛士!
 「そうですよ。トドロキさん、ちょっと甘いんじゃないですか。僕たちの働きには、人の命がかかってるんですよ」
 珍しく、イブキ王子もビシッと駄目出しを行い、一応先輩としてフォローしてやらねばなるまいと思ったのか、トドロキのメンタルケアについて話を振るヒビキさん31歳、とうとう日菜佳から、「無神経」をいただく。
 「……なあ、俺って、無神経かな?」
 「いや、そんな事ないと思いますけど。……ただ……」
 「ん? ただ?」
 「青春真っ盛りって……ちょっと古いかなと」
 「……青春独り占めっていうのはどうだ?」
 「…………わかんないですね」
 そして高校生男子からは、感覚が古いと指摘されていた。
 魔化魍はこの路線(色恋沙汰のすれ違いを誘発)で攻めると猛士関東支部を壊滅に追い込めるのではないだろうか、という気がして参りましたが、廃人一歩手前のトドロキから相談を受けたザンキは、ニヒルに笑う。
 「こう見えても俺は、数々の女性を愛してきた男だ。文字通り、鬼のようにな。ふふ」
 …………「愛されてきた」のではなく「愛してきた」の時点で、一方通行で駄目なのでは?
 自称・色男なザンキ師匠のアドバイスを受けてたちなばにアタックを仕掛けたトドロキは、時代錯誤な衣装と決め台詞のコンボで華々しく玉砕し、ザンキさん、ギャグだけで撤収。
 街には羽を生やしたバイオミンミンマーク2が出現し、デザインからは、幼虫→成虫のニュアンスだと思われますが、冒頭で幼虫が消し飛ばされた後、羽化を経由するわけでもなくいきなり成虫が登場し、前回今回と、魔化魍の扱いは、とことん雑。
 先行した響鬼の応援に威吹鬼轟鬼も向かうが、烏帽子童子と姫に足止めを受けたのに加えて、香須実が見知らぬ後ろ姿の男と親しげにしている様子を目撃した威吹鬼までがスランプに陥り、全員、海落ち。
 「おまえ、なんか変わったぞ」
 「いつまでも子供ではいられない。おまえも、早く成長しろ」
 魔化魍サイドでは、おふざけじみた言動が消え、鬼に対して殺意を燃やす烏帽子姫の変化が描かれ……身なりの良い男女の暗躍と、童子&姫のパワーアップは前期から少しずつ進められていた要素ですが、顔かたちは同じにしても「キャラクターとして戦いを繰り広げてきた敵幹部」とは言いにくい為、烏帽子童子&姫に鬼が苦戦していても特に面白くならないのは、苦しいポイント。
 童子&姫の、魔化魍出現の先触れ的存在が常に同じ顔かたちをしている事で怪異性を出す、という見せ方は面白かったと思うのですが、烏帽子になってからの「継続的な強敵」としては魅力不足で思い入れが持てない、のが正直。
 バイオミンミンが夏の魔化魍のように分裂増殖を開始する一方、学校で京介とひとみが一緒に居るところを目撃した明日夢は、思わず逃げるように回れ右。
 追いかけてきたひとみから、ラブレターは友人の代理で渡したものだと定番中の定番であった事を説明されると、それを聞いた途端にホッとして相好を崩すも慌てて虚勢を張り、急に壁に背中を預け、ちょっと横向きに話しかけるのが、絶妙な思春期晩生男子感で、今までの君のリアクションとしては瞬間最大風速を叩き出したよ……!
 それはそれとして、相手からそれとなくアプローチをかけてきている時は実質無反応を決め込み、相手が別の男に目移りしているかもしれないと考えた途端に挙動不審になって嫉妬の炎を燃やすと、これといって特になんのアクションを起こすでもなく僻みモードに入った末に誤解が判明するや「いや全然、気にしてないけどねー」ポーズを取ってトイレに逃げた君の男ポイントは、番組始まって以来最低の数値を記録しているよ……!!
 ……まあ持田さんが、手持ちのたちばな情報を流す代わりに、明日夢のリアクションを引き出すべく京介にそれらしく振る舞ってもらった策士な可能性もゼロではないですが。
 かくして、居なくなって初めてわかる持田さんの有り難みを噛み締め、心境がガラリと明るくなった明日夢の姿に、みどり先生のお言葉を復唱したヒビキは、人の心の持ちようはそう単純に線が引けないと学ぶと、真面目にトドロキの相談に乗り、恋する鰹事件の真相を知る。
 「日菜佳さんが言ったんスよ。光り物がいいって」
 「あのね……女の子が言う光りもんというのは、指輪とかネックレスとか時計とか、そういうのに決まってるでしょ」
 まさかの正解がヒビキさんから引き出されましたが、多分、トドロキの相談に乗ると決めた時点で、色々と予習してきました。
 「無理してレストランなんか行く必要ないんだよ。……おまえはおまえがやれる事をすればいいんだよ」
 ヒビキはトドロキを正面から諭し、前期においてずっと曖昧だった色恋沙汰に、一定の目処をつけておきたい意図はあったのかと思われますが、全体としては横道でドタバタしていた末に『ヒビキ』のド正道に戻ってくるマジック(笑)
 ヒビキのアドバイスに従ったトドロキは、日菜佳の為にうどんを打つと、仲間達の協力で誕生会をやり直し、仲直りに成功。改めて、光り物として指輪をプレゼントし、トドロキ×日菜佳の一件は解決。
 香須実が東京駅で親しげにしていた男は、同窓会に出席する為におめかしていた勢地郎と判明してイブキも廃人の危機を脱したところに、あきらからミンミン軍団出現の報が入り……ここまで来たらもう、テンション絶好調になった威吹鬼轟鬼魔化魍を瞬殺し、「俺も負けてられないな」と装甲した響鬼が最後の一体を撃破する、ぐらい井上ワールドしてしまって良かったような気はするのですが、威吹鬼轟鬼が苦戦する中、響鬼が装甲して優勢を取ると、いつの間にか残り二人も反撃に転じて最後だけ急に一斉フィニッシュを見せるのは、揃っているようで実態は全く揃っておらず、物語の流れにもそぐわない、美しさに欠ける決着となりました。
 ……まあ、アームドセイバーの特質を考えると、発動する事で周囲で戦う鬼の音撃スキル+2、するぐらいのバフ効果もついているのかもですが。レギュラーヒーロー3人中、1人だけ極端に強い強化フォーム持ち、は露骨にやりにくそう。
 あ、装甲響鬼のダブルバチアタックそのものは、格好良かったです。
 男達が魔化魍を撃破していた頃、たちばなでは日菜佳の「光り物がいい」は「お寿司が食べたい」の意味だったとオチが付き、日菜佳のキャラとしてもトドロキへの希望としても納得度の高いところから、それはそれで指輪は嬉しい、は綺麗な着地となり、次回――へ、変身忍者?!
 ……色恋沙汰絡みのやや極端なギャグ×凄く雑に扱われる魔化魍、と前期の作風から一段と離れ、癖の強いチーズみたいな前後編でしたが、あまりにもライティングが極端なのが、個人的に辛かったところ。序盤から戦闘シーンはキラキラ光らせる路線でしたし、過剰なライトアップはこの時期の石田監督の好む手法ではありますが、会話シーンでひたすら、話者の背後からカメラに向けて照明が降り注いでいる、みたいな場面が続くのは厳しかったです。