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仮面ライダー6.5号

仮面ライダーアマゾン』感想・第19-20話

◆第19話「出動、ガランダー少年部隊!!」◆ (監督:塚田正煕 脚本:鈴木生朗)
 東京の地下鉄網に隅田川の水を流し込み、大東京を地下から沈没させる地下鉄大洪水作戦を進めるガランダー帝国は、狭い隙間に入り込んで作業させる為に子供たちを大量に拉致して洗脳しており、児童労働問題がストレートなモチーフに。
 「子供たちとは戦えない。オヤジさん、どうすればいい」
 真夜中の街で子供たちを発見する大介だが、黄色い目玉シールを貼り付けられ従者の服を着た子供たちに囲まれ困惑している内に行方を見失ってしまい、「既に事件は始まっている」系の導入はアクセントとして面白くなりました。
 一方、子供達の一部がアマゾンに目撃される不手際を叱責されたフクロウ獣人は、計画の前倒しと、その為の新たな労働力確保をゼロ大帝に命じられ、ワンマン上司の横暴により、無理なスケジュールと仕様の変更を強制される、典型的なプロジェクト失敗パターン……!
 やむなくフクロウ獣人は校外学習中の子供たちを襲うと、フクロウの術により盲目にしてさらっていくが、それをモグラ獣人が目撃。リツ子に急を報せるに際し、フクロウ獣人に首を絞められて息も絶え絶えの教師をちゃんと運んでくるのが、偉い。
 怒りの大介は現場へと駆けるが、そこに背後から襲いかかるフクロウ獣人。
 クチバシと手足は鳥のそれながら、鳥型怪人にしては珍しく翼を強調しないデザイン(背後から見ると翼というより蓑をかぶっているように見える)の為、黄色い瞳を爛々と輝かせた毛むくじゃらの塊が不意に飛びかかってくるのが、さしづめ“鬼”のようで、インパクト大。
 大介の視覚を術で奪ってフクロウ獣人は姿を消し、便利な薬草で大介が目の治療中、子供たちを捜しに地下へと向かう今日のモグラは、やる気満々。そろそろ本格的に、人間社会で上手く生き延びる為には、より友好的な姿勢を見せる必要があると考えているのかもしれません。
 ……まあ、それ抜きでも大介-マサヒコラインに友誼は感じているようですが、もう一つぐらい、マサヒコ×モグラの友情の深まりを感じさせる挿話があっても良かったかなとは思いつつ、あまりやると、マサヒコのほだし系無敵ヒロイン度が上がりすぎるしマサヒコ×アマゾンの関係性と重なりすぎるのは限界があったところでしょうか……そこに代入するほどリツ子さんの存在には重きが置かれていないのが、正直なところですし。
 片思いの構図が強めにありつつ、さらわれた子供たちの作業現場を発見するモグラだが、急ピッチで進められた工事が成果を出し、隅田川の水を地下鉄に注ぎ込むガランダーの作戦が、まさかの部分的成功。
 地下鉄車両が濁流と落盤に呑み込まれる被害が描かれ、モグラに運ばれてきた担任の先生が物凄い顔色で絶叫して動かなくなったけど大丈夫だったの?! とか、些細な事になってしまいました。
 「全ての地下道をはじめ、東京の地下街が崩れ去るまで、時間の問題です」
 「よろしい。だが完全に成功するまで「おめでとう」の言葉は、控えておこう」
 やればできるじゃないかゼロ大帝くん、と支配者から「いいね」が届き、いよいよ東京地下鉄壊滅まであと僅かの時、作戦の中枢ポイントにアマゾンが突入。完全なる崩落は妨げるも、子供達が瓦礫の下に埋まってしまう結構大変な事態になるが、モグラが救出を請け負って、アマゾンはフクロウ獣人と激突。
 ロケットフクロウクローを受け、またも視覚を封じられたアマゾンは、一方的な攻撃を受けて珍しくピンチとなるが、その時、不思議な事が起こった。
 ナレーション「アマゾンライダーは、ギギの腕輪に、全精神を集中することにより、腕輪の持つ、謎の能力を起こし、視力を回復させるのだ」
 え、えーーーー?!(笑)
 何が凄いって、ナレーションさんのメタ視点からも「謎の能力」扱いなのが凄いのですが、V3先輩26の秘密よりも出鱈目な、闇のインカ科学99の秘密により、特殊スキル《状態異常からの回復ターン数-3》が発動。
 反撃に転じたアマゾンは、顔面に連続で蹴りを叩き込み、怯んだところにパンチ、そして頸椎に肘を叩き込んで弱らせたフクロウ獣人を真上に放り投げての、空中スピン大・切・だーん! は格好良く、強敵フクロウ獣人は首がスパーンと落ちる最期を迎えるのであった(血しぶきの代わりに、羽毛が降り積もる演出も秀逸)。
 「またしても! アマゾンライダーめ……!」
 支配者はいいねを取り消し、ゼロ大帝くん、減俸!
 「……モグラ
 「ん?」
 「今度は本当によくやってくれた」
 「いーえ、そんな褒められちゃ照れちゃうよ~」
 紛う事なき今回のMVPだったモグラですが、解放された子供たちの姿を見ると手を振って迎え……ようとして思いとどまり、
 「俺を見てビックリさせちゃいけねぇからな」
 とアウトサイダーの悲しい自意識を纏いながらねぐらに戻っていくと、そのタイミングで丁度反対側から人が歩いてきており(多分、完全に撮影と無関係の通行人)、その人が、ビックリしそうです!
 それはそれとして大介は笑顔で見送らずに、もう少しモグラの心情に気を配る一言ぐらいあって良いのでは……と思ったら、モグラが去った後、子供達の笑顔を一身に受ける大介(日向と日陰として割とえぐみが生まれる対比)が、
 「みんなアマゾンのお陰よ」
 「いや、今度だけは、モグラのお陰だ」
 と、気遣いを見せたのは、良かったところ。……「だけ」はちょっと気になりましたが(笑)
 藤兵衛によると、地下鉄は明日には完全復旧する事になり、凄いぞ『アマゾン』日本の土木テクノロジー……『X』日本と世界観が繋がっていると考えれば、その分野にもやはり、表に出しにくい実験を繰り返しているトンデモ科学者がひしめいているという事であり、正義の心を人為的に作ってはいけない。
 次回――も、モグラーーーーー!!
 まさかの、1話まるまる死亡フラグだったとは……。

◆第20話「モグラ獣人最後の活躍!!」◆ (監督:塚田正煕 脚本:伊上勝
 山田養豚御一行様の東京観光バスツアーがガランダーの猛毒キノコパウダーに襲われ、それを目撃する少女。口封じに消されそうになる少女だがモグラが助けに入り、従者を相手にはちょっと強気だが、少女には怖がられるのが切ない。
 「モグラ、なにを苛めてんだ」
 そこにやってきた大介の反応もちょっと酷い。
 ガランダー帝国は東京カビ全滅作戦を進めており、実験成功の報告に対して、「報告はそれだけかな?」と目撃者の抹殺に失敗した一件を厭味ったらしく突きつけるゼロ大帝、部下に「偉大なる支配者」と呼ばせていたり、ミスの指摘の仕方が陰湿だったり、感情的かつ厳罰主義だったりと、器の小ささと恐怖政治の悪い面ばかりが体現されており、この人は、本当にダメだな……。
 ……色々と反省する事もあったのでしょうが、この時代では、デストロン首領の寛容さは際だって目を引きます(笑)
 だが、ベンチは無能でも科(化)学班は割と有能なガランダー帝国(その科(化)学班がデストロンにあれば……!)、作戦は順調に進行して団地を覆い尽くす猛毒のカビが住人を皆殺しにし、前組織との差別化意識もあってか、ガランダーは結構、大規模な被害を出す路線。
 作戦を指揮するのは、悪夢のピエロとでもいった風貌のキノコ獣人……キノコ……獣人……で、厚ぼったいまぶた(ピエロの化粧風味)をキノコの傘で表現するなど、獣人ぽいかは別にして、秀逸なデザイン。
 猛虎魂を感じる柄のマフラーを巻いたマサヒコが、団地集団蒸発事件と、赤ん坊が一人だけ生き残っていた事を大介に伝え、被害一家の赤ん坊の存在がやけに強調されると思ったら、次の展開への布石でした。
 「動くな! アマゾン、動いてみろ。キノコ獣人が赤ん坊を殺す!」
 (あの赤ちゃんが居ては、手も足も出ない)
 なぜ、その赤ん坊だけが生き残ったのか……赤ん坊をさらおうとするキノコ獣人と大介が鉢合わせし、さすがに問答無用の噛みつき攻撃を躊躇する大介だが、しばらく攻撃を受けている内に野生に火がついてしまい、アーマーゾーン!!
 「アマゾンライダー?!」
 高い所に飛び上がったアマゾンは、動揺するキノコ獣人の顔に、蹴りを三発、入れた。
 赤ん坊をアマゾンに奪還されたキノコ獣人は、多少の生き残りが出てもドンドン毒カビを撒いてしまえと方針を転換し、更なる被害が出る中、殺人キノコカビの入手を請け負うモグラ(病院の床に穴が)。
 ステルスミッションを目論むもキノコ獣人に見つかったモグラは、全面的土下座外交でガランダー帝国に服従を誓い、へっへっへ、今ならあっしが、アマゾンの野郎にそのカビを植え付けてやりますぜ、と三下ムーヴで切り抜ける事に成功すると、まんまとカビの詰まったカプセルを入手。
 道中もう少し、「アマゾンらに邪険にされてやさぐれるモグラ」とか「ガランダー帝国から裏切りの誘いを受けるモグラ」とかあれば、いよいよこのタイミングで裏切るのモグラ?! みたいな面白さが出たかもしれませんが、もはやそういったサスペンス全く無しなのは、ちょっと惜しく感じた部分。
 「くふふふふはは、やったぜやったぜ、ははっ。俺もたまにゃあ世の中の為んならなきゃな、うん。ふふん、キノコ獣人も馬ぁ鹿なやつだぜ」
 ところが世の中、そうそう上手く事が運ぶわけもなく、監視していたキノコの攻撃を受けたモグラは、決死の反撃も虚しく全身に毒カビを受けると辛うじて地中に逃れ、病院の床にまた穴が。
 「モグラ! しっかりしろ、モグラ!」
 「て、手に入れたぜぇ、カ、カビを……」
 息も絶え絶えのモグラは、自身の体に浴びたカビを提供する事でミッションを成功させ、敵として登場してから約1クールに渡るレギュラーキャラ最後の勇姿なのですが、わけもわからないまま、人外と平然と喋る人たちに言われるがままに、人外から殺人カビを採取する状況に巻き込まれている病院の先生の心情が気になってちょっと入りにくい!
 「……マサヒコ、モグラを……尊敬するかい?」
 「うん!」
 「……立派よ、モグラさん」
 「ありがとよ。初めて、褒めてくれたねぇ……」
 ゲドンに切り捨てられ、アマゾンに助けられ、アマゾンと友達になり、やがて人間たちに“仲間”と認められたモグラ獣人は、解毒剤の完成を見届け、キノコ獣人のカビ工場の場所をアマゾンに伝えると、絶命。
 ……やはりここでも、成り行きのわからない空気に巻き込まれて一緒になって最期を見届ける事になっている病院の先生(&看護婦)がどうしても気になり、もう少し何とかならなかったものか(笑)
 モグラに代わって貴様を倒す!」
 ジャングラーを駆り、キノコ工場へと怒りのカチコミをかけたアマゾンは、殺人キノコカビの運び出しを阻止。モグラへの哀悼の絶叫からキノコ獣人に強烈な一撃を打ち込むと、続けて放った十文字の大切断により顔がばっくり裂けたキノコ獣人は、最期を遂げるのであった。
 モグラ獣人の活躍と犠牲により東京カビ全滅作戦は失敗に終わり、東映特撮名物:勝手にお墓(今回はこれしかありません)が、珍しく石(表に回るとモグラの顔モチーフ)で作られ、大介らが備える花と一緒に捧げられる一枚のプレート――
 「勇気の士(ひと) モグラ獣人の墓」
 君もまた、仮面ライダーだ!
 ガランダー帝国との決戦に向けた推進剤の意図もあってか、コメディリリーフにして有能な(有能すぎる)アシスト役だったモグラ獣人が壮絶な殉職を遂げる事となりましたが、前回今回のモグラの扱いを見ると、作っている側に「モグラ獣人に鉱脈がある」事が見えてはいたが、あまりそこを掘り下げると、「大介のお株が奪われてしまう」意識もあったのかな……とは。
 人間社会との距離感や、アウトサイダーの悲哀など、今作立ち上がりに大介が持っていた主題は、そのままモグラ獣人にスライド可能だったので、“大介で竜頭蛇尾に終わった主題をモグラ獣人で掘り下げる”方向はあっても良かったのかなとは思うのですが、そこはなんとなく散りばめるだけで終わる形に。
 まあ、やったらやったで未練がましくなってしまったかもですが、そんなわけで2クール目に入ってからは、初期大介の持っていたテーゼを隠し持っているのがなかなか面白く、使い切れなかった要素の惜しさも含めて、割と嫌いではないキャラでした。
 最後、石にかじりついてでも人間社会の片隅で生きていたいというよりも、どうせ畳の上では死ねない獣の身、どこかで潔くパッと散りたいみたいな雰囲気が漂っていたのは、当時のドラマ性というか、ヤクザ者なりの美学、みたいなニュアンスでもあったでしょうか。
 モグラ獣人の勇気を胸に、戦えアマゾン! 次回――アマゾン躍り食い?!