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俺のギターの使い方

仮面ライダー響鬼』感想・第19-20話

◆十九之巻「かき鳴らす戦士」◆ (監督:高丸雅隆 脚本:きだつよし)
 テンション高く走り回りながら、化けカニに次々とロックを叩き込む轟鬼が大暴れを見せ、開始から約1分で、
 「6月3日、化けカニ通算3匹目、撃破!」
 となる、ちょっと変わった切り口でスタート(後で報告書とわかりますが、日付は『快傑ズバット』ネタ……?)。
 明日夢はたちばなでのバイト初日を迎え、ヒビキはモトクロスバイクで跳ね回り、あきらの前に姿を見せた謎のメーター男については、猛士本部と情報を共有。
 「吉野の予測は……だろうと、いうことだ」
 聞き取りは間違えていないと思うのですが、勢地郎の台詞が「ダロウ」という固有名詞なのか、その前を濁した言い回しなのかちょっと判然とせず(後者だとは思うのですが)、重要な情報部分としては、この時点では明確に決まっていなかったとしても、視聴者に対する煙幕を張りすぎた印象。
 トドロキは報告書(ディスク)を手にたちばなを訪れ、関東支部所属の鬼の皆さん、明日夢くんについて、
 「ヒビキさんに助けられたという少年」
 で、だいたい話が通じる(笑)
 丁寧で礼儀正しいがどこか抜けてるトドロキ、なんだか事務局長と先輩たちのいい玩具にされていそうですが、帰り際に、バイト初日の明日夢の元を訪れたひとみとバッタリ出会って親戚関係が場の一同の知るところとなり、トドロキお兄さん、自分の事は棚に上げて、「ほほう、バイト初日の君の元を、うちのひとみがわざわざ訪れるわけだ、ほほぅ……」と、明日夢くんを見る目が光った……?!
 真面目な話、最近の持田さんはもはや不憫枠になりつつあるので、トドロキお兄さんには是非、「それで、君はうちのひとみとはどういう関係なんだね、あぁん?」と側面支援砲撃を期待したいところです……十中八九、何かやらかしそうなのはさておき。
 魔化魍探索に向かう予定だったトドロキは、仕事について話題になりそうになるとそそくさと出て行き、鬼のスケジュールと猛士組織の存在を考えると、身内や親しい人向けに、鬼ネームと一緒にダミー職業の設定ぐらいはあった方が自然なのですが、各々の才覚で乗り切れ! という事なのでしょうか(笑)
 鬼のなり手不足に歯止めを欠けるべく、猛士に今求められているものそれは、理解あるパートナーを紹介し、職場結婚以外の可能性を広げる、結婚相談所なのではないか。
 「一つ、常に平常心で事に当たるべし。一つ、常に力まず、自然体を心がけるべし。一つ、常に周囲に気を配り、視野を、広く持つべし。一つ、常に笑顔を忘れず、女性には……優しく、接するべし」
 ザンキの教え(?)を車中で復唱したトドロキは日菜佳に強ばった笑顔を向けると出動し……日菜佳×トドロキは今のところ、強引な日菜佳にトドロキが終始受け身の姿が、“好意は持っているが不器用”というより“だいぶ引き気味”に見える為、双方の好感度上昇にあまり繋がっていないのが辛く、もっと爽やかな見せ方でも良かったような……。
 上記した“業務の秘匿性から職場以外の相手との恋愛のハードルが高い環境”の日菜佳が捕まえた獲物を離さないモードに見える上に、トドロキからすると、入社2年目ぐらいの新人の身で支社長(もしかすると本社でも、部課長どころか取締役クラス)の娘に粉をかけられている、ってなかなか難度の高い状況の為に、微笑ましくは見づらいなと……最初に二人の関係を示唆した石田回のピンクフィルター演出で第一印象が良くない、のもありますが。
 まあ、ここまでのトドロキの描写の感じからすると、「日菜佳さんにふさわしい男になってから正式に口説きます」みたいな事を考えていた、みたいになりそうな気もしますが、実は香須実さんに気があったりすると、Standing by ...
 守る事と戦う事、やるべき事は魔化魍退治……の筈なれど、報告書の最後に何故かソロライブを収録している轟鬼ディスクアニマルの消耗がやたら激しい轟鬼……あいつ何かやらかしているのでは? と響鬼&香須実が新人チェックもとい陣中見舞いに向かう事にする一方、たちばなをザンキが訪れ、祝・再登場。
 早速ザンキ明日夢の再会が描かれ、これまであちこちにばらまいてきた布石が、たちばなを「ホーム」として急速に繋がっていくのが気持ちいい……というよりも、急に定跡に沿い始めた話運びに困惑が先に立つのが正直。
 第16話で一つの区切りを付け、明日夢くんの立ち位置も変わっているから……といえばそうなのですが、どちらかといえば今作がこれまで“敢えて”避けてきた手法――明日夢とヒビキの「運命の出会い」から、明日夢を猛士組織に近いところに引っ張り込んで、次々に関係者と接触させる――を用いて、駆け足でそのやり直しを行っている感があり、言ってしまえば路線修正の雰囲気が濃厚に漂ってきます。
 そもそも第16話の一区切り自体がその一貫だった気配もありますが、「明日夢がたちばなでバイトを始める」カードは高校生になってからではないと切れないにしても、そこに至る明日夢の心情を以前から組み立てていたわけでもなく、明日夢の環境変化にともない伏せ札をオープンにするが、それが次の伏せ札に繋がる面白さが生まれるというより、今回-次回と、目に入る片っ端から伏せ札を開いていく一方で、新しいデッキからカードを配り直しているような感触。
 そのあおりを受けて、複数人物が持田さんに隠し事をしている状況が生まれましたが、それで明日夢とひとみの間がぎくしゃくする……というには悲しいかな、二人の間にそこまでの関係性が醸成されていませんし、総じて今作、伏せ札の有効活用が出来ていないのが、短所の一つ。
 ……これを機会に持田ひとみヒロイン力強化計画が始まるなら、それはそれで歓迎したいですが。
 そんなこんなで、たちばなが急速に作品全体の中枢化していくのと合わせて、日菜佳によるヒビキさん情報の横流しや、イブキの勘違いなどを引っ張りだして、明日夢くんについて「彼は見てるとついつい、そんな感じになっちまう」とか、「明日夢くんにとって、ヒビキさんと会った事は、なんていうか、運命的、ていうか」まで言い出して、“なぜ明日夢が今の立ち位置に居るのか”について急ピッチで補強工事が行われるのですが、これについては本来、物語の中で説得力を持たせるべき部分を、1クール半かけても巧く出来ず、全て台詞でブーストする他なかった感。
 勢いが良すぎる男トドロキが式神ディスクを派手に地面にばらまいていた頃、しばらく湯治をしていたというザンキは引退後の進路について話し合っており、
 「一応、君の希望どおり、猛士結婚相談所をやってもらう事になりそうだ」
 ……じゃなかった
 「一応、君の希望どおり、トレーナーをやってもらう事になりそうだ」
 と、引退した鬼に、しかるべきセカンドライフの道があってホッとしました(笑)
 丁度良いので事務局長は、報告書に収録されていた轟鬼ソロライブについて相談を持ちかけ、「この轟鬼の行動にはどんな意味があるのか……」を真剣な表情で検討する二人は面白かったです(笑)
 そのトドロキは、川辺に現れた童子と姫から家族連れを守り、
 「こっから先は、一歩も通さん!」
 カニ童子と姫を前に変身するとVの字斬りで勢いよく討ち滅ぼし、熱意と実力は確か、の筈だったが……背後から化けカニの強襲を受けて、つづく。
 初見の監督でしたが、今作前年の実写版『セーラームーン』などに参加していたとの事。

◆二十之巻「清める音」◆ (監督:高丸雅隆 脚本:きだつよし)
 カニのハサミにぷちっと潰されそうになる轟鬼だが、鍛えた筋肉で脱出に成功。
 ギターをぐさっと突き刺すと、力技でカニを持ち上げての演奏で勝利を収めるが、謎のメーター杖の男は、粉砕された化けカニのパーツを集め、新たな童子と姫を誕生させる……。
 その頃たちばなでは、明日夢に探りを入れるひとみが、
 こ、この男、クラブ無い日に全部バイト入れてるの?!
 と、恐るべき情報を手に入れていた。
 私は一体何を鍛えるべきなのかと、ひとみが帰った後、忙しくなってきた店内で明日夢は茶碗を割ってしまい、成り行きでヘルプに入った際にお客さんに感謝されたのも後押しになって接客業を始めた明日夢くんが、トントン拍子に上手く行ってしまうのではなく、早めに軽い失敗に落ち込むというのは入って良かったところ(まあ、たちばなは基本的に客層は良さそうですが)。
 その失敗にしても原因の大半は、初心者にいきなりお盆二枚持ちさせる日菜佳にありますが、片付けが終わった後、店内がまだ混雑している風なのに、明日夢くんに地下の猛士ルームを紹介する勢地郎、魔化魍関連の業務が忙しい時は店を君一人にお願いするかもと言い出す勢地郎……薄々思ってはいましたが、基本的にこの一家、たちばなの経営が雑。
 ……勿論、人命のかかった業務が優先なのはわかるのですが、その割には意地でも臨時休業などの処置を取らないのは、概ね笑いへの導線にしても、何故そこで無茶を通すのか、みたいな疑問は湧きます(笑)
 お茶ときび団子がリーズナブルな価格で滅茶苦茶美味しい、とか何か強みがあるのでしょうが、それでなくても職業不詳の若い男複数が頻繁に出入りしているし、地元では割と不審がられていないかちょっと心配になってきました(だからバイトの募集にも人が来なかったのでは……?)。
 一方、ヒビキ&香須実は道の駅で陣中見舞いを物色中で、
 「実際ザンキさんだって……ていうか、ザイツハラさんだって、別に今でも……鬼ではあるわけだし」
 とザンキさんの苗字が飛び出し、個人的仮称「財津さん」、当たらずとも遠からずでした(笑)
 まあ、ギター弾きでイニシャル「Z」だったら「財津」ぐらいの適当な連想だったのですが。
 「アレのわけは、俺的にはその……その戦った場所を、清めてるつもりなんスよ」
 そのザンキの陣中見舞いを受けたトドロキはソロライブについて説明し……こういうところで変にキャラを崩しはしない作品ですが、本人的にはかなりまともな理由でした(正直、上はちょっとテンションが上がって……から、下は日菜佳へのメッセージぐらいだと思っていて、すまないトドロキ)。
 「俺は……俺流でやってただけなんス。…………はは、でもやっぱ、そんなんじゃ駄目なんスね。これからは、戦った後に不安が残らないよう、もっともっと、自分の音撃を鍛えます」
 弟子の異常行動が真面目さと熱意のちょっとズレた出力だと知ったザンキは黙して語らず、トドロキのいい所は、すぐに三下モードで自己否定に入って場を誤魔化す一方、決してそのまま後退はせずにそれをすぐ前へ向かって進むエネルギーに変えていくところで、ザンキさんが気に入っている理由も納得というか、嫌いになれないキャラクター。
 ヒビキも陣中見舞いに合流するが、敵はレア魔化魍のアミキリ?
 空を飛び、鋭いタケノコハンドで攻撃してくるアミキリ童子と姫に向けて、轟鬼は手にしたギターを……投げたーーーーー!!
 童子と姫は粉砕するが、海中から、カニとエビのキメラに昆虫系の羽までついたアミキリが出現。轟鬼がなんとか尻尾を掴んで飛行を妨げているところに響鬼が応援に駆けつけると、新武装の音セイバーで羽根を切り落とし、落としたギターはザンキさんがパスする連携プレイで、雷電激震。
 アミキリは粉々に吹っ飛び、座り込んだ轟鬼、顔だけ変身解除、成功。
 「おい……やらなくていいのか?」
 ザンキ轟鬼に、偉い人の誤解を招いたが間違った事をしていたわけではない、と清めのソロライブを薦めると、トレーナーではなくトドロキのサポーターとなると告げ、トドロキ歓喜のソロライブ。
 「なんスかあれ?」
 「……あいつなりの鬼らしさってとこだな」
 で、つづく。
 前編は、騒がしく、気合いが空回り気味で、日菜佳を相手には微妙な対応が続き、熱意も実力もあるが何かやらかしているのではないか……と不安を誘ったトドロキが、全てトドロキなりの真っ直ぐさ故の行動だった、と逆転するのが上手くはまり、第15-16話に続いてトドロキメイン回は、前編はいまいちだが後編は面白い、という形になりました。
 響鬼威吹鬼も積み重ねた戦歴があって、最初からプロフェッショナルな戦いぶりを見せるキャラだったので、轟鬼については独立したばかりでどこか危なっかしい面を取り上げるのも上手いスポットの当て方となり、最終的に形は違えど師弟コンビ復活、も綺麗に収まって良かったです。