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映画『スーパーマリオブラザーズ』感想

 ブルックリンで配管工を営むマリオとルイージの兄弟は、夢はデカいがナリは小さく、独立起業して一旗揚げようと試みるも、周囲からは馬鹿にされ続ける日々。そんなある日、ブルックリンで大規模な水道管の事故が発生。これはチャンス、と水浸しの街に繰り出す二人だが、それこそが思いも掛けない大冒険の始まりだった……!
 以下、ネタバレという程ではありませんが、ストーリー内容と、作品の構造に多少触れるので、ご留意下さい。
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 冒頭、アメコミ映画のボスキャラのように出現するクッパ城に笑いましたが、良くも悪くも全編、実際にあったかどうかは別として“どこかで触れた事があるような”画と展開で構成されており、ままならない日常・感じ悪い奴が出てくる・思わぬトラブルが起きる・シリアスなようでギャグが入る……と整えられた数式のように進行していき、『スーパーマリオブラザーズ』を映画化するにあたって、土台になっているゲームの中から一つの物語を再構成するのではなく、アクション映画の様々なシークエンスのパッチワークにマリオという芯を通して縫い止めた、といったような作り。
 今作が優れているのは、そのパッチワークに関して「それがどうした」と言わんばかりに良い意味で割り切りと開き直りが見えるところで、有名料理店の人気レシピをフル活用し、スーパーマリオという素材で味を統一したフルコースとして提供する事に徹底した、高速のアクションエンタメとして面白かったです。
 勿論、どのレシピを使うのか、そこにどう素材を組み合わせるのか、といった調理が巧くいってこその面白さであり、その部分が良く出来ていたなと。
 今作ならではの見せ方としては、途中途中に2Dアクション風な横スクロール画面が挟み込まれるなどがありますが、これも突然ミュージカルが始まる、の『マリオ』バージョンともいえる手法かな、と。
 ストーリー上の工夫としては、「スーパーマリオブラザーズとは何か」「プリンセス・ピーチとは何者なのか」を早い内に物語の中に落とし込んでくれたのは、スッキリと見やすかったところ。
 基本的には、次から次へと“お馴染みのイベント”が襲いかかってくる映画なのですが、今作のキモは、その“お馴染みのイベント”が、ゲームではなく映画の文法に基づいている事(TVゲームに、映画的アクションのデフォルメを自ら操作するエンタメの側面がある事を考えると面白い循環でもあり)と、その映画的障害をゲーム的理屈で突破していく点。
 ……ダメージを受けると例の音でパワーダウンするのはお気に入り(笑)
 そして、肉弾戦あり、空中戦あり、カーチェイスあり、とバラエティ豊かに詰め込んで、ノンストップで繰り広げられる映画的な論法とゲーム的な論法の激しいセッションの末に、その二つが一つに溶け合うクライマックスに辿り着くのは、お見事でした。
 後ちょっと驚いたのは、思いがけないガチバトルだった事ですが、これも段取りを踏んでいるのが、巧いところ。
 個人的に導入は少しゆったりすぎるように感じ、前半はそこまでノれなかったのですが、カート要素が入る辺りからぐいぐいと引き込まれて(映画全体の加速感も当然、計算されているでしょうが)、後半は文句なしに面白かったです。
 映画エンタメの結晶とゲームエンタメの王者が、CGアニメーションの舞台で幸福な融合を果たした、とでもいった感のある、楽しい一作でした。