東映特撮に踊らされる駄目人間の日々のよしなし。 はてなダイアリーのサービス終了にともない、引っ越してきました。
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原始科学が光って唸る

『バトルフィーバーJ』感想・第42話

◆第42話「電気人間愛の火花」◆ (監督:広田茂穂 脚本:曽田博久)
 「むぅん我が子よ、おまえの使命は、人間どもをことごとく電気人間に変えてしまう事にある」
 「父上、わかりました」
 高圧電流を触媒として、メカメカしい見た目の電気怪人(パーツの組み合わせの結果が、ちょっとモゲラっぽい)が誕生し、ストロボモチーフと思われる瞳が時々強いフラッシュを放つのが、凝った作り。
 電気怪人は電気人間を生み出す為の実験を実地で繰り返し、パトロール中の京介は、河川敷でダンスに興じる若者たちに、しれっと混ざっているサロメを発見。こちらもさらっとダンスに混ざりながらサロメを問い詰める洒落た演出で、踊り合いから殴り合いに突入しようとしたその時、正体を現した電気怪人の不意打ちを受けた京介は高圧電流の直撃を受けて敢えなく川流れ。
 あわやBF隊から二人目の殉職者が出そうになるが、辛うじて下流の川岸に流れ着いた京介は、その身に強い電気を帯びた電気人間と化してしまい、不幸な運命の悪戯から、一人の少年を傷つけてしまう事に。
 京介に怯えて逃走しようとして転倒、頭を強打した少年は意識不明のまま入院し、その姉から一方的になじられるのは時代を考えると当然ながら今見るとちょっと古めかしい筋立てではありますが、二人の兄は、電気怪人による実験の犠牲者となって死亡したフェンシング選手であり、冒頭の惨死事件と残された妹弟のドラマに京介を接続。
 BF基地では京介の隊内に蓄積された余計な電気を抜き取ろうとするが上手く行かず、前回今回と、誠がチーム内における“機械に詳しい”ポジションに落ち着き、ドリルミサイル博士の護衛を任されていたのは、実際に助手として兵器開発を手助けできるからでもあった模様。
 ……まあ前回も今回も、大仰な機械はどちらも効果を発揮していないので、スキルレベルの方には疑問符が付きますが……!
 少年の見舞いに向かった京介が、姉からけんもほろろな応対を受ける中、街に電気怪人が出現してBF隊と一当たり。
 電気には電気だ、とフランスが取っ組み合いを挑み……電力勝負で押し負ける電気怪人。
 「電気怪人が痺れてるわ」
 「電気人間が怪人に触れると、ああなるのか」
 君たち、仲間が怪人と同類以上の攻撃をしているのに、冷静だな(笑)
 ――君は、電気エネルギーを操るバトルフランス。そしてエゴスを倒すのだ。
 青系統で剣使いであり、過去の系譜からは電気属性の資格を持つフランス、このままエレキフランスとしてリノベーションする方向性も浮上してきましたが、電気人間の体では女性と手を繋ぐ事もできず伊達男キャラとしてのアイデンティティが崩壊し、純然たるコメディリリーフになってしまうのだ!
 京介が根本的存在意義の崖っぷちに立たされる中、エゴスの目論み通りに、巷では電気人間が増殖し、人々の間に広がっていく疑心暗鬼と不和。
 「その調子で、人間同士の愛や友情、信頼などを引き裂いてしまえ」
 未知なるものを恐れ、忌避する、人の持つ差別意識がストレートに盛り込まれると、京介が少年を危篤状態に追いやった危険な電気人間として投石を受け……もしかして今回、後の『超獣戦隊ライブマン』第14話「ナベ男勇介の叫び」(監督:長石多可男 脚本:曽田博久)の下敷きになったエピソードでしょうか。
 「バトルフランス……徹底的に苦しめてやる」
 サロメは物陰でほくそ笑み、国防ヒーローが罠に嵌められて人々の糾弾を受ける流れは、マリアの結婚式爆破回と重なり気味になりましたが、上原正三テイスト(社会的弾圧と風刺性重視)の曽田アレンジ(そこから抜き出したテーゼの寓話的再構築)とでもいった感があり、それこそ『ライブマン』第14話では、《スーパー戦隊》としても曽田脚本としても、今回より遙かに洗練された出来映えになっているのですが、70年代後半~80年代前半における、戦隊作劇の変質プロセスが窺えるような気もします。
 京介への投石を制止しようと割って入ったBFメンバーが、病院関係者との取っ組み合いになると、関係者の中にカットマンが紛れ込んで煽動工作を行っていた事が明らかになり、少年を乗せた救急車を追う京介の前には、電気怪人が立ちはだかる。
 「エゴスの使命は人を苦しめ、互いに憎しみ合わせる事! この男を憎め! 呪え!」
 京介が串刺しの危機に陥る中、少年の姉もまた電気人間にされてしまい、フィーバーする間もなく戦闘員に小突き回される京介だが、その姿を見るに堪えかねた姉――心の動きは明確には説明されないのですが、行間を埋めるならば、自身も電気人間にされた事により、電気人間となって理不尽な暴言を浴びながらも、自分たちに真摯に向き合おうとしてくれた京介の真心に気付いた……といったところでしょうか――が思わず飛び込み京介の上に覆い被さると、電気人間と電気人間がスパーク!
 激しい放電現象の後、見つめ合う二人の姿にEDテーマの重々しいイントロが重なって、「正味10分程度の険悪な関係の解消」が「1クールほど惚れた腫れたのすれ違いを繰り返してきた二人の運命の再会」みたいな事になり、あまりの飛躍になんか凄く、ぶっ飛んで面白いシーンに(笑)
 「助かったぞ。電気人間同士が接触した時、体内の電気が、空中に放電されるんだ」
 「な、なんと?!」
 他者と触れ合う事を禁じられた電気人間同士が手を取り合う時、人が人を思いやる心がエゴスの邪悪な企みを打ち砕くのだ、と京介はダッシュ変身から反撃に転じ、更にそこに加わるBF隊!
 4人がロープで電気怪人の動きを封じると、フランスの投げサーベルを突き刺して弱らせたところにペンタフォースが炸裂し、断末魔の叫びに応えて電気ロボットが出現。
 いけ電気ロボット! 10まんボルトだ!
 ピッ○ー!
 バトルスピアで打ち据えるも、電気ロボットの強烈な放電攻撃に苦しむBFロボは操縦不能に陥り、大変珍しい苦戦シーン。
 「凄いエゴス電気だ!」
 どさくさ紛れにケニアがまた新たな概念をねじ込むと、
 「電気なら必ず吸い取れる筈だ」
 コサックは前半の自分の大科学実験の正当化を試み、
 「そうだ、ジャパン、電光剣だ!」
 困った時は将軍だ!
 「そうだ。電光剣は電気を吸い込み、その威力を増す!」
 BFロボが電光剣を抜き放つと白刃が全ての電気を吸い取って無効化し、鉄山流の前に敵は無い!!
 唐竹割りが電気ロボットを一刀両断すると、京介は危篤状態を脱した少年を改めて見舞い、姉弟に渡そうとずっと抱えていた袋の中身をようやく取り出すと、それは、かつて京介が手にしていた優勝トロフィー。
 「これは、君たちの兄さんが目指していた大会の、優勝トロフィーだ。2年前の大会で、僕が獲ったもんだ」
 え、それ、励ましになるの……?!
 ここまで、比較的面白かったのですが、最後の最後で、フェンシング要素を拾おうとした京介の奇行が、何もかもを爆破解体してスクラップをブルドーザーで押し流していき唖然。
 慕っていた兄が優勝できないまま死んだ大会のトロフィーを既に持っているので渡すって、生きる糧として復讐の炎を植え付けようとしているようにしか見えないのですが、少年を励まそうとしたフェンシングゆかりのアイテムは、一緒に入れていたサーベルだけで良かったのでは……?(笑)
 それから後日談として、「どうした?! 貴様の憎しみはそんなものか? そこから這い上がって、自分の力で僕に傷を負わせてみろ、この無様な負け犬が!」と少年を叩きのめ……じゃなかった無事に快復した少年にフェンシングを教える京介の姿と、電気人間たちの治療成功が語られ、
 ナレーション「そして、電気人間同士の間には、小さな、愛の芽生えた者も、居るという」
 と、ゲストヒロイン推し度がやたら高いエピソードだったのですが、京介との淡いロマンスの萌芽が示唆されて、つづく。
 次回――BF隊を狙う暗殺者の影に、ケニアがシリアス。