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晴れた日に胸を張って

仮面ライダー響鬼』感想・第15-16話

◆十五之巻「鈍る雷」◆ (監督:石田秀範 脚本:大石真司
 ギターを持ったマル暴の人、その名をザンキ
 ひとみの従兄・戸田山と並んで、腕時計のような装置を鳴らすと落雷と共に鬼へと姿を変え、響鬼の音叉、威吹鬼呼子と較べると、わかりやすく音楽関係には見えませんが、何かモチーフがあるのでしょうか。……試しにGoogleで「ギタリスト」を画像検索してみたのですが、別にリストバンドをこぞって付けていたりもしませんでした(笑)
 変身発動時の落雷の衝撃により、近づいてきた童子と姫を吹っ飛ばすのは格好良く……格好良く……何故、半裸。
 「鬼め……」
 「――鬼だよ」
 変身完了と共にギターがかき鳴らされ、ヘビーでメタルな感じの二人の鬼は、ギターを地面に突き刺して――素手で殴った!
 …………あ、いや、これが、普通……?
 当たり前のようにギターで殴ると思っていたのでちょっと動揺したのですが、そう、楽器は大切に!
 ……あ、斬った。
 なんだか先端が随分と尖っているな、と思ってはいたのですが、音撃ギターは武器としては“剣”(ないし短槍)のイメージになるようで、そういえば、主人公の基本装備が打撃武器(棍棒)な作品でありました。
 童子と姫と、一対一で組み合う斬鬼と戸田山鬼だが、抗争中に鉛玉を受けて病み上がりの斬鬼は足の踏ん張りが効かず、なんとか一体を撃破するも一体には逃走を許してしまう。
 その頃、イブキ師弟と合同トレーニングに励むヒビキさんは、ちょっとバイクに興味の出るお年頃。
 「いつ見ても、飽きないですよね~」
 「まあね」
 「バイクは夢とロマンを求める男にとっては、欠かせない逸品ですからねぇ」
 イブキ王子にはバイク好き属性が付け加えられ、主人公が運転しないのは如何なものか、という意見でも出てきていたのか、急にバイクのステマを始めました(笑)
 山では、CG落石をサンダーハンドで戸田山鬼が砕くと、ザンキはスピンをかけたギターを投げつけて怪異を粉砕し、ギターの扱いは大体、信頼あるいつもの東映ヒーローに落ち着いてきました。
 童子と姫の撃破も束の間、沢オオガニが現れると斬鬼はギターを振りかぶり、叩き、斬り、突き刺し、バックル部分をギターの胴体にはめると弦となり、各種ギミックのデザインや工夫は今作の光る部分。
 しかし、弦をかき鳴らそうとした斬鬼はまたも膝を付くと暴れるカニに吹き飛ばされてしまい……響鬼の太鼓も大概ではありましたが、標的の懐に取り付き、密着した体勢から敵に背中を向ける音撃ギター、あまりにもロックが過ぎるのでは(笑)
 2回連続でカニを相手に不覚を取りかける斬鬼だったが、筋肉で形勢をひっくり返すと、魔化魍の腹の上でギターをかき鳴らし、なんとか撃破に成功。
 修羅の近接仕様だった弦属性ですが、カニの腹の上をステージに見立てるフィニッシュは、納得感と共に面白い画でありました。
 イブキ師弟は太極拳のような動きでのトレーニングが描かれ、肺活量勝負のラッパ使いはやはり、呼吸法を重視している模様。
 日菜佳は戸田山からの電話にテンション高めで桃色のオーラを放つが、その本題はなんと、ザンキさん復帰早々の引退宣言。
 これに弟子の戸田山は激しく狼狽し、鬼になれたらすぐに鬼ネームが襲名できるわけではなく、独り立ちまでは本名を名乗るようですが、今回はその辺りの事情も含めた、一定の経験を積んだ鬼の師弟の代替わりが主題。
 実力は充分あるようながら、自分に自信が持てずに精神的にザンキ依存の傾向が見える戸田山に対して、後の次狼のイメージもあり前回は強面の印象が強かったザンキは、思ったより物腰穏やか。
 さばさばというか淡々としているのは、自分の人生に一つの区切りを決定した直後という事もありそうですが、心身を鍛え続けなければ第一線に立ち続ける事ができず、限界を感じた時に自ら引き際を決める姿は、プロのアスリートをモデルにしているところもありそうな感じ。
 ……セカンドキャリアが用意されているのかちょっと不安になりますが、とにもかくにも一仕事を終えたザンキと戸田山は、最近、猛士関東支部の鬼たちの間で大流行中の、オロナミンCを飲んでファイト一発!
 その頃ヒビキさんは、明日夢母と偶然スーパーで遭遇し、突然のお宅訪問をしていた。
 主人公がジャージ姿で特売チラシについて力説している間、ザンキ突然の引退宣言に揺れるたちばなには更なる一報が入り、
 「裁鬼が出ずっぱりで酷く体調を壊してるから、厳しい感じだって」
 やっぱり、働かせ過ぎなんじゃないですか!!
 裁鬼が担当していた魔化魍ヤマアラシ。弦の使い手が必要と、事務局長がザンキに連絡を取って急遽助っ人に回って貰うが、その裁鬼さんは童子と姫に苦戦中。
 第5話のシフト表、第12話の履歴書、と面白情報で個人的に注目していた裁鬼さん、とうとう登場するもいきなり苦戦の真っ最中となりましたが、響鬼をベースに放射状に角を増やした、みたいなマスクと茶系統の渋いボディの色合いが、大変格好いいデザイン。
 だが絶不調の裁鬼労働基準法より前に体調不良に足を取られ、童子と姫に追い詰められたところに迫り来る巨大魔化魍……車を回して現場近くまで辿り着いたザンキと戸田山は、民家を悠々と越える背丈まで成長したヤマアラシの姿を目の当たりにし、さ、裁鬼さんが担いで運ばれてるーーー?!
 童子と姫に挟み込まれ、巨大ヤマアラシと向き合うザンキと戸田山は鬼となるが、膝に爆弾を抱えながら斬鬼魔化魍を討てるのか。戦いの行方や如何に、でつづく。
 全編通してヒビキの鬼化がなく(鍛え回のようなイメージ上の響鬼も無し)、魔化魍バトルはギター師弟を主軸に描かれヒビキが日常パートを担当する趣向なのですが……そうなってみると明日夢くんは、ヒビキの日常パートに登場する知り合いの高校生にしかならず、退院してリハビリ中にしても、ここまでのこだわりとは打って変わって出番も大幅に少ないのですが、これはもしかしてそろそろ、「明日夢くんのドラムの腕を見込んだアメリカの高校から特待生で迎えるから是非ステイツに来ないかとエアメールが届く」のでしょうか?!
 仕掛けとしては、明日夢ザンキの立場が病み上がり繋がりで重ねられているのですが、そうすると今度は、「家で転がっている明日夢」と「魔化魍との戦いに挑むザンキ」のギャップが大きすぎて、今作定番の釣り合いの悪さが目立ち、今回段階では「明日夢くんがリハビリを行う」わけでもないので、“いっけん差が大きいがそれぞれの立場においては等価”さえ成立していません。
 やや繰り返しになりますが、明日夢くんを一方の主人公と置きながら、「喪失」や「回復」「獲得」の展望、別の言い方をすれば明日夢くんにおける「魔化魍との戦い」にあたる要素が設置されていないのが今作の大きな難なのですが、猛士パートの戦いが激化していくにつれて、それを担保に明日夢パートのスローペースが許されるという以上に、明日夢パートとの乖離が広がってしまっており、高校一年生と社会人という大きな立場の違いはあるものの、その隙間を跳躍出来るのがフィクションの機能と考えた時に、“敢えて”それをしない事にこだわっている今作においてもはや、「明日夢パートと猛士パートを対応させる意味そのものが消滅寸前」になっているのは、早めに一考してほしいところです。
 あと今回、戸田山から電話を受ける日菜佳をピンクの証明で照らすのはやり過ぎだったと思いますし、やたらな接写や体の一部のアップを繰り返し、不快感スレスレを狙った映像で笑いを取りに来るのは、苦手な演出でした(ただ、次回は良かった)。

◆十六之巻「轟く鬼」◆ (監督:石田秀範 脚本:大石真司
 注目ポイント1は、猛士関東支部には、忘年会がある。
 注目ポイント2は、「顔だけ変身解く」のは鬼のスキル。
 斬鬼ヤマアラシを戸田山鬼に任せて童子と姫に立ち向かい、まずは裁鬼を救出する戸田山鬼だが、ギターを弾けないまま魔化魍の逃走を許し、童子も逃走。
 裁鬼は病院に直行し、斬鬼は膝が限界で、急遽ソロデビューの決定する戸田山だが、一人で戦う事に自信が持てず、だらしのない発言を繰り返す。
 「よしわかった。……いいか戸田山、俺とのこの2年間の事……全て忘れろ」
 これザンキさんはザンキさんで、だいぶ戸田山を甘やかしていたのでは疑惑が浮上する中、ヒビキと明日夢は散歩に繰り出し、久方ぶりに長めの語らいタイム。
 「正直言って、少年を弟子にする気ないんだ」
 「……はぁ」
 「少年も、鬼になる気ないだろ?」
 「……はい。すいません」
 「……でもまあ、少年は自分なりに鍛えようとしてるわけだし」
 率直に、メタ的なフォロー意識を感じるのですが、ヒビキがやたらと明日夢を肯定し、まあそれは、明日夢のペース(明日夢の自分なり)でもちゃんと認めてくれる存在、としてのヒビキさんなのでしょうし、ここではヒーローが、ヒーローのメタ的役割としての“理想的なメンター”としての機能を果たしており、「特別な存在でもなく、劇的な事なんてそんなに起こるわけもないが、ちょっとずつ良くありたいと前進していく少年と、それを認めてくれるヒーロー」の関係は確かに美しいのですが、「それを極端に圧縮して劇的な打ち上げ花火にしてみせる」ヒーローフィクションの技法とは真っ向から対立しているといってもよく、新しい事をやろうとする挑戦は挑戦として、積み重ねてきた技法との間に、もう少しバランスのいい落としどころを探れなかっただろうか、とはどうしても思うところ。
 これはこれで悪くないと思う部分もありますし、今作的な“美”の先に何が実るのかへの興味もありますが、個人的な好みとしては、


 「ねえ、俺にも投げられるようになるかい? ドラゴンボール
 「ああ、大きくなったらな。好き嫌いしないで何でも食べて、たくましい体になったらね。その時になったら、必ず俺が教えに来よう!」

(『電撃戦隊チェンジマン』第9話「輝け!必殺の魔球」(監督:長石多可男 脚本:曽田博久))

 の方にこそ、むしろ強く“美”を感じるのではありました。
 この辺りはホント、手法に対する好みの話となりますが、それはそれとして明日夢くんの照れ半笑いキャラに関しては、もう少し早く、なんとかした方が良かったとは思います!(年上の大人への対応としてリアリティはあるものの、ドラマとしては致命的に面白くないので……)
 「つまりさ……おまえ、俺に頼りすぎなんだよ。おまえ流にやってみろ」
 一方、ザンキさんは戸田山に師匠離れを求め、誰でもないおまえ自身のロックを響かせてみろ、とアドバイス
 弱気だが真面目な戸田山は、受け継いだギターのチューニングから始めると、シャドースイングに励む内に自分の体格にあった握り方を見出し、少しずつだが自分流の音楽を奏でていく……まあこれは本来、もっと早く練習させておくべきだったのではザンキさーん、とはなりますが(笑)
 偵察に放っていたディスクカエルのデータを確認しながら師弟は言葉をかわし、
 「今思うと、俺は、おまえとやってて、楽しかったのかもな」
 は、ザンキ自身の言行にフォローを入れつつ、真摯な姿勢できっかけを掴んだ弟子に対して、それを物陰で確認した師匠から送る言葉として良い台詞でした。
 ディスクカエルが魔化魍の居所を突き止め、いよいよ初陣へと歩き出す戸田山。そこへザンキの引退と戸田山のソロデビューを知ったヒビキから電話がかかり、ザンキと戸田山に明るく話しかけるヒビキの周囲でイブキや事務局長が真剣な表情で黙りこくっているのが、去りゆく戦友への惜別と、死地に赴く後輩への想いを胸に抱えながら、あくまで明るく振る舞うヒビキの内心を示す形になっていて、今回は非常に良い演出でした。
 「戸田山は、戸田山なんだから、頑張れよ」
 ヒビキさんのモットーをもって、“これから歩き出す者”として戸田山と明日夢も巧く繋がって、変身無しでヒビキの主人公性を打ち出す事にも成功し、前回は不満のある出来でしたが、今回後半は、ここまでの『響鬼』の中でもかなり好き。
 ザンキの見守る中、怒濤のパンチを童子に叩き込んだ戸田山鬼は、ギター投擲で童子を撃破するとヤマアラシと激突。
 「戸田山! 俺を真似るな自分流で行け!」
 開眼した戸田山流のスイングでヤマアラシの足を潰すと、動きの鈍ったところにギターを突き刺し、雷電激震! エレキの音色が高らかに響き渡るとヤマアラシを木っ葉微塵に吹き飛ばし、炎-太鼓、風-ラッパ、と来て、雷-ギター、もインパクトのある一撃となり、Thank you。
 メジャーデビューを勝利で飾った戸田山は、「斬鬼」の名跡ザンキさんのものであってほしい、と継承をあくまで断ると、撤収作業中に師匠から「戸田山の“と”を取って轟鬼」と命名され、鬼ネーム、メタ的にはともかく、劇中では割と適当な模様。
 一方、ひとみと川縁を歩く明日夢は、学校に復帰したらブラバンに入るつもりだと語り、ヒビキと明日夢の間で「弟子にする気ない」「鬼になる気ない」と互いの意志が確認された上で、自分なりの歩調をヒビキに肯定された明日夢が、より鍛えていく為の一歩を自ら明確に踏み出して……これはもう、明日夢パートの綺麗な最終回みたいな(笑)
 割と真面目な話として、ヒビキと明日夢が意思疎通を明確にする事によって互いの間の線引きと距離感が定まり、これまでのような内心における(変わってきた気がするぞぉ)といった自己申告ではなしに、踏み出す一歩を言葉で持田さんへと伝えた事によって、ヒーローから切符を受け取った者としての明日夢が具体化もされ、極端に言えば以後、明日夢パートが消滅しても問題が無いぐらいというか、16話をかけてとうとう、“ヒーローと出会った瞬間”に一区切りがついた印象。
 ……まあ次回、「やっぱり辞任するのをやめました」と言い出すかもしれませんし、よく体育会系的と聞くブラスバンド部と合わなくて改めて挫折、みたいな事もあるかもしれませんが。
 ただそれはもう、ザンキから独り立ちした戸田山のように、本当の意味で“別の物語”として語りうるものになっていて、明日夢くんの人生はこれからも続いていき、折々にたちばなに遊びに行ったりヒビキさんにアドバイスを受けたりもするけれど、『響鬼』とは別の、でも、ヒーローから貰った切符は確かに胸にある、という物語として成立しうるかなと。
 (この辺り、私のヒーロー作品観と直結していると同時に、私が『烈車戦隊トッキュウジャー』大好きな理由とも関連している気がします)
 とはいえ人の世に怪異の種は尽きず、次回――童子と姫、街へ。