東映特撮に踊らされる駄目人間の日々のよしなし。 はてなダイアリーのサービス終了にともない、引っ越してきました。
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俺が爆上げな楯になる

『爆上戦隊ブンブンジャー』感想・第5話

◆バクアゲ5「警察屋はくじけない」◆ (監督:渡辺勝也 脚本:山口宏)
 「阿久瀬錠、監視業務、始めさせていただきます!」
 ISAとの取引により、届け屋に出向となった阿久瀬は、ただの連絡係ではなく、是非ブンブンジャーの一員になりたいと自ら志願。
 「自分も、皆さんのように、格好良く人々を守りたいんです。子供の頃からヒーローに憧れていました。悪い敵を格好良くバッタバッタとやっつけてみせますので、よろしくお願いします!」
 前回、ブンブンジャーの活躍にキラキラした眼差しを送っていた阿久瀬は、“格好良く”を連発し、その表層的で浮ついた言動に、大也のテンションメーターは爆下がり。
 「……無理だ」
 「え?」
 「今の君には無理だと言った」
 にべもない不採用宣告にショックを受けた阿久瀬が基地を出て行く中、大也は黙々と新たなブンブンカーの整備を続け、
 「てっきり後輩が出来ると思ったのになーー」
 「おまえにしては珍しいな」
 気に入ってたんじゃなかったの? と、大也の意外な反応に未来と射士郎が戸惑う一方、前回のアピールが新聞記事にもならなければ取材も来ない事に不満たらたらの三下トリオは、潜り込んでいたダーツバーでダーツマシンをクルマ獣へとイグニッションし……メキシカン風の帽子にダーツの矢を羽根飾りのように刺したダーツグルマー、目玉に線が入っていて怖い。
 大也が整備中のブンパトカーに視線を向ける中、すっかりその気になっていた阿久瀬は川を見つめて黄昏れていた。
 「俺の何がダメなんだろう。……ヒーローになるには、まだまだ実力不足なのか……?」
 そこへ響いてきた悲鳴を聞きつけると、ダーツグルマーが市民に美しくレッツダーツを強要しており、外した者はピコピコハンマーに殴られ続けたり強制足つぼマッサージを受ける羽目になったりと、地味だが確実に痛い嫌がらせでギャーソリンを回収中。
 ハシリヤン出現を大也に連絡した阿久瀬は、「すぐに行くから早く逃げろ」と言われるも、助けを求める市民の叫びに思わず飛び出すと、代打を申し出……ダーツを……クルマ獣の目に投げた(笑)
 奇襲でダメージを与えた阿久瀬は、罰ゲームを受けていた人々を逃がし、囮になって別方向に走り出すが回り込まれ、顔面へのパンチに膝蹴り。更に思い切り投げ飛ばされた阿久瀬の口の端から血がこぼれると立ち上がれないほどのダメージを受け、ギャーソリン回収の目的もあって前回に続いてややお笑い成分が強めかと思いきや、妨害する者はきっちり“殺しにくる”事で、クルマ獣(ハシリヤン)の凶悪な面を改めて明示。
 前回のサウナグルマーは、ずっと続けていればそれは死の危険が高まるものの、映像上は完全にギャグに寄っていたので、今回は逆に、クルマ獣のそれだけではない部分を強調してくれたのは、良かったです。
 「私の邪魔をするヤツは……消えていただきます!」
 ダーツの一投で阿久瀬が殉職寸前、止めに入った大也たちがブンブンチェンジ。
 「あ~、美しきかなブンブンジャー。あなたがたもご一緒に、ダーツを楽しみましょう~」
 ダーツなんかするか、とばっさり拒絶する桃だが、怪人の挑発に乗ってついついダーツを投げてしまうと見事に外し……罰ゲームは金だらい、が問答無用で次々と頭上から落ちてきて行動不能に陥り、戦隊ヒーローの鬼門、お笑いテリトリー系怪人でした(笑)
 「成る程、そういうルールか」
 早くもそれを察した青は、ギャグ時空には呑み込まれない意志を込めて銃弾を叩き込むが、それも回避されて的の端にあたると「アウト」と判定され、罰ゲームののパイが次々と飛んでくると不条理ダメージを受けて倒れ、残るはブンレッドただ一人。
 無限の罰ゲームを止めて二人を助けるにはダーツグルマーのゲームに乗るしかなく、レッド渾身の一投は大当たり……するがその結果、赤に与えられたのは王様の椅子、ならぬ、大当たり賞のびりびり椅子。
 強制拘束からの電撃ダメージ、更にダーツミサイルを投げつけられたブンブンジャーは大ダメージを受けて地面に倒れ、見るからにギャグ怪人というほどではないですが、一見お笑いの中に死を招く危機がある、歴代ヒーローもつまづいた落とし穴にはまってしまう。
 「ブンブンジャー、格好悪いですねェ、おほほほほ!」
 「卑怯! 理不尽! ……でも、負けてたまるかぁぁぁ!!」
 「だな……ここからが勝負だ」
 「危険を承知で選んだ道。ははっ、さあ、面白くなってきた!」
 「……く……俺は……!」
 ヒーローは常に格好良く敵を倒すばかりではなく、劣勢で地面にはいつくばっても決して諦めようとしない3人の姿に歯を食いしばる阿久瀬は、ダーツグルマーが繰り出した、必殺の威力の巨大ダーツの発射を、絶叫と共に体当たりで阻止。
 「憧れだけでヒーローになりたいなんて! 俺は何もわかってなかった!」
 「ぬぅ、人間ごときが! 身の程を! 知りなさい!」
 「錠くん!」
 ダーツグルマーに振りほどかれ、足蹴にされる阿久瀬だが、ブンブンジャーにトドメを刺そうとするクルマ獣に、決死の組み付き。
 「自分は、ただの、警察官だ!」
 「うるさいヤツですね……!」
 激しい打撃を受けながらも阿久瀬はクルマ獣に食らいつき続け、関係者とはいえ生身の人間が滅多打ちになっている間、ブンブンジャーが地面でずっとピクピクしているのはちょっと気になりましたが、もしかすると、クリーンダメージ自体が初であり、パラメーターが回避に偏りすぎて打たれ弱いのかもしれません。
 「……警察官の使命は……人々を守る事!」
 「ほざきなさい!」
 「……だから、ブンブンジャーを! 俺が守る!!」
 基本設定の整理が優先されすぎて、やや消化不良になっていた前回でしたが、「ヒーローを呼ぶ声」を、改めて阿久瀬の信念と行動に繋げ、たとえブンブンジャーでなくても人々を守ろうとする事は出来るし、逆に一方的に助けを呼ぶばかりではなくブンブンジャーを守る事だって出来る筈、とする事で、阿久瀬(ここでは、一般市民の“可能性”代表でもある)がただ「ヒーローに憧れる者」から「共に戦っていこうとする者」へとギアチェンジ。
 「……そう来たか」
 あ、ツボに入った。
 「爆上げだな!」
 阿久瀬の叫びが大也の胸の太鼓に響いたその時、調達屋が駆けつけると倉庫の中に鞄を放り込み、中に入っていたのは、ブンブンチェンジャーグッズ。
 ……前回、現場の玄蕃が通信に使っていたのが色違いのチェンジャーに見えたのですが、今回出てきたチェンジャーが同じタイプに見えるので、どうやら玄蕃は既にチェンジャーを手にしている模様。現在ブンブン活動に参加していない理由は不明ですが、もしかすると、“二人目”だったりするのかもしれません。
 「今の君なら使える!」
 「……ハイ!」
 口元の血をぬぐった阿久瀬は金色のチェンジャーを手にすると立ち上がり、チェンジャーがやたら低い声でブンブンブーン!(メタ的には、玩具の差別化なのでしょうが)
 「ブンブンチェンジ!」
 大きく腕を回してスイッチを入れるとチェンジャー上部のパトランプが回転し、左肩にショルダーアーマーの付いたブンブラックが誕生、赤青桃とは違う斧タイプの武器でダーツボンバーを跳ね返してクルマ獣を吹き飛ばすと、倒れていた3人も復帰する。
 「……無茶苦茶なヤツだ」
 「ヒーローも守っちゃう警察官、格好良すぎ!」
 未来、基本的にはポジティブ脳天気タイプの立ち位置でありますが、なんか“褒め方が巧い”というか、単細胞でもなければ厭味でもない所に巧く収まっていて、女優さんのトーンも合っているのでしょうが、好感の持てる部分。
 ……元から素がこうだとすると、周囲に勘違い男を量産していそうで、第1話の状況に至った遠因を見る気もしないではないですが(笑)
 他のメンバーは大丈夫そうですが、阿久瀬巡査が引っかからないかどうかは、ちょっと心配になります。
 「使命感爆上げの警察魂……惚れた! 君は警察屋だな!」
 「ハイ!」
 そのネーミングはちょっとどうかと思うけど、本人が満足そうなので、まあ、いいか。
 倉庫の外に吹っ飛んだダーツグルマーを追った4人のブンブンジャーは、今回はタメずに流れ出した主題歌をバックに高い所で名乗りを決め……阿久瀬錠巡査、すっかりその気になって念入りに準備してきた名乗りポーズが無駄にならずに済みました。
 「気分ブンブン、ブン回せ!」
 「「「「爆上戦隊! ブンブンジャー!!」」」」
 一旦横を向いたところは、ポーズが完全にそうなので『高速戦隊ターボレンジャー』オマージュだと思われ、あまりやりすぎて内輪ウケになるのは好みませんが、00年代以降のみならず、80~90年代の車戦隊要素も意識してくれているようなのは、嬉しいポイント。
 Bパート開始から長尺の主題歌バトルに、工場を舞台に広い画角を使っての集団戦、と今回のバトルシーン自体が80年代オマージュぽくはあり、その中にドローン撮影(?)を組み込むなど、なんとなく、2024年最新技術を用いての《スーパー戦隊》リマスターみたいな狙いも感じます。
 「格好つけちゃっても~~う!」
 こちらも体勢を立て直したダーツグルマーが戦闘員をけしかけ、“名乗り”とは何かといえば「スイッチの切り替え」であって、ここまで苦戦や泥臭さも見せていたヒーローが、怪人の台詞も巧く絡めつつ、ここからは“格好いい”の時間だぜと持っていたのは、今回の鮮やかだったところ。
 「ブンレッド、くたばりなさ~い」
 「言った筈だ! 守ってみせると!」
 乱戦の中、背後から赤を狙うダーツグルマーだが、ブンブンジャーにおけるカバーリング担当だった黒が阻止すると、連続で放たれるダーツを次々と斧で弾き…………あ、あれ、この人これ、「護り屋」なのでは……?(笑)
 ……え、あれ、ちょっと待って、元・警官…………?
 やっているアクションが、だいたい楯先生に見えてきたブンブラック、第1話の「――届け屋さ」に対する脱線で触れましたが、主要スタッフにマンガ『闇のイージス』(原作:七月鏡一 作画:藤原芳秀)好きが居るのでは疑惑が、私の中で更に大きくなっていきます(笑)
 『闇のイージス』及び『暁のイージス』は名作!
 同コンビの『ジーザス』も名作!
 ……楯先生大好き人間の発作はさておいて、武器を斧モードから剣モードに変えた黒は、ダーツ返しから必殺の一撃を叩き込んで一人でダーツグルマーを倒してしまい、チェンジャーと基本武装が赤青桃と違う点も含めて、ほぼ追加戦士のような扱いの初登場回となりました
 本日もヤルカーがギャーソリンをたいらげていくと、新型のブンブンパトカー1(黒)と2(青桃)が発進してその後を追い、黒の武装は四角い感じのハンドルに変形。
 西部警察なバーチャルトラップによりパトカーの集団が現れると、スパイクに変形してヤルカーをハイウェイ空間から弾き出し……なんか段々、ヤルカーへの扱いが酷くなっていきます(笑)
 この辺りはもしかすると、『トムとジュリー』的というか、カートゥーン的な酷さ(面白さ)を狙っているのかもですが。
 巨大ダーツグルマーに対して、ブンブンパトカーを腕と武装に変形させ、二丁拳銃で人相の悪いブンブンカーロボポリスが誕生し、君は人のために死ねるか
 「バンバン撃ちタイヤ!」
 ……「作りタイヤ」って何事かと思っていたのですが、武装に合わせて「○○たい」のところが変わるのかと納得すると共に「撃ちたい」……「撃ちたい」……ま、まあ、東映警察ロボだと思えば、深く納得は出来ますが。
 「ふっ、新しい俺達の力、見せてやる!」
 ブンロボポリスは、ダーツ攻撃を次々と二丁拳銃で撃ち落とすと横っ飛びを見せ、もう完全にデカレンジャーロボなのはやや新鮮味を欠きますが(とはいえ『デカレン』も、20年前ではありますが……)、シリーズ従来作の人気要素を適度にスパイスとして加えつつ、最新の戦隊の味付けとブレンドしていくのは、今作全体の狙いではありそうでしょうか。
 「無駄な抵抗はやめろ!」
 爆上げマグナムが火を噴きまくると、ダーツグルマー、人々の安心と安全を脅かした行為により、デリート許可。永遠にダーツ禁止の刑が執行され、SupercoolにPerfect。
 「届いた積み荷は、まさかの新メンバーか」
 阿久瀬がブンブラックになった事が細部に報告されて「届け」要素は回収され、早くもカレーを食べたい人になっている細部さん(禁断の宇宙スパイス……?)が表情を取り繕って、つづく。
 細部さんは正直前回、実質初登場で場の主導権を握って引っ張っていく役回りは苦しいところがあったので、今回ぐらいの出番で徐々に馴染んでいってくれれば……と思うところです。
 第5話で早くも二人目の脚本家の登板となりましたが、もしかするとメインの冨岡さんの慣れた、メインライターが全体の流れを見つつ4~5人の脚本家でローテを組む、4クールアニメ的な作りにする可能性もありそうでしょうか。
 今回担当の山口宏さんも主にアニメ畑でキャリアの長い方ですが、きっちりとした作りで、前回をしっかりと受けつつ、不満点をある程度までは解消してくれた新メンバーの誕生編となり、主題歌バトル大好き人間としては、長めのAパートからバトル・バトル・バトルのBパートも巧くまとまっていて良かったです。
 こうなると「《スーパー戦隊》を書いてみたかったけど、これまで縁の無かったベテラン大挙参戦」路線は路線で見たい気がしてきますが、金子さんや下さんも是非見たい。後、この流れなら、古怒田健志さんの久々の戦隊参加も見たい。
 それから、前回今回とキーワードそのものは頓知めかして組み込んだのが面白かったものの、3話連続でお仕事要素が無いと特色が薄くなるので、一段落したところで次回は「届け屋」のお仕事も見たいところです。
 その次回――いきなり性格反転ネタ?