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さらっとフィーバー

『バトルフィーバーJ』感想・第31話

◆第31話「激走トラック兄妹」◆ (監督:山田稔 脚本:曽田博久)
 見所は、サロメをナンパする御子(笑)
 (そいつに何年かぶりに出会った。そいつは相変わらず暴れており、そいつの妹は、相変わらず泣いている……)
 一般人の乱闘騒ぎから開幕し、大根二刀流で大暴れしていた太めの男は、謙作の旧友のトラック野郎。
 演じるのは、映画『男はつらいよ』シリーズのレギュラーだった佐藤蛾次郎さんで、今回のエピソードの下地になっていると思われる映画『トラック野郎』シリーズ(1975-1979)が、盆と正月に『男はつらいよ』にぶつける形で公開されていた事を考えるとなかなか変なねじれ具合というか(笑)
 ちなみに『トラック野郎』シリーズは年2本制作して5年で10作公開したそうで、確かに息づく東映の遺伝子。
 トラック妹から、「積み荷そっちのけで街道レースに熱中して、挙げ句の果ては喧嘩」……と、いつ手が後ろに回ってもおかしくないトラック兄の狼藉ぶりを聞かされた謙作は「なんとか兄を真人間にしてほしい」と持ちかけられるも答に窮するが、そんなある日、BF隊は国防省より、時価500億円の金塊の秘密輸送を依頼される。
 こいつは丁度いい、と謙作はトラック兄に金塊輸送トラックの運転手を依頼し……旧友の更生に、500億円と人の命を賭けないで下さい。
 恐らくはエピソードの背景に『トラック野郎』シリーズの存在があった上で、前半における大泉滉をゲストに迎えた第17話に近い、ゲスト俳優ありきの作りだったとは思うのですが、物語としては肝心の、謙作とトラック兄妹の過去の友情が全く描かれないので、見ていてトラック兄の更生を応援しようという気に特にならないのが、大変困った作り。
 その辺りはもしかすると、当時のドラマ構造として妹(名前がまたサチコと来ており)を配した時点で一種の文脈や定跡が発生する思惑だったのかもしれませんが、いつも通りといえばいつも通りにしても、バトルフィーバー隊における一般市民の命の扱いの軽さも度を超えており、終始乗りにくいというか、乗る為の手がかりが見つけられなかったエピソード。
 金塊輸送車を襲う、エゴスの集金人・ゼニクレージー! ……じゃなかった、銭ゲバ怪人の、開いたがま口の中に顔があり、体に入ったラインが¥のマークで、手には100と刻まれたメダル付きの杖を持っているデザインは面白かったですが。
 寛永通宝ボムを受けたコサックがダメージで変身解除する今作では珍しい描写から、トラックの荷台に仕掛けられた特殊な鍵を巡る争いが巻き起こり、人質としてさらわれてしまうトラック妹。一度は鍵を投げ捨てたトラック兄だが、謙作と妹の思いを知って立ち直るとエゴスとの取引に向かい、鍵を入手するや再び妹が捕まってしまうと、トラック兄が抵抗する姿を双眼鏡で確認しながら、その場では助けに入らず、「こんな事もあろうかと発信機付きのブローチを持たせておいた」とアジトまで案内させるのが、暗黒BF仕草。
 国防に、人の心は必要ないのです。
 なお不慮の事故でトラック兄が死亡した場合、妹さんには国防省から多額の賠償金が支払われる手筈になっているので、謙作としてはどちらに転んでも問題はありません。
 銭ゲバ怪人のアジトを突き止め、デコトラで突撃から荷台の上で揃い踏みは今回ならではの画で面白く、銭ゲバ怪人の支援スキル《ファイトマネー》で士気の上昇した工作員を蹴散らすと、久々に直接戦闘を行ったサロメ(相変わらず強い)から妹を救出し、銭ゲバ怪人はペンタフォース!
 銭ゲバ怪人の断末魔の叫びに応えて出現した銭ゲバロボットがトラックの前に立ちふさがるが、妹を助手席に乗せたトラック兄は「500億より重いものを運んでいる」と逃げてばかりいた過去の自分を乗り越えていき、悪魔ロボットは電光剣唐竹割りで成敗。
 ナレーション「一人の男が、今、自分の道を取り戻した」
 と綺麗にまとめようとするのですが、とにかく話に乗りにくい一本でした。
 次回――既に予告の映像が嫌な感じ満載ですが、久々にメインを張れそうな伝に迫る危機で、サブタイトルの、特に珍しくもない単語の組み合わせから生まれる破壊力が凄い(笑)