東映特撮に踊らされる駄目人間の日々のよしなし。 はてなダイアリーのサービス終了にともない、引っ越してきました。
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エゴスが来たりて5人は踊る

『バトルフィーバーJ』感想・第32話

◆第32話「ふるさと殺人村」◆ (監督:竹本弘一 脚本:上原正三
 サタンエゴス様はエゴスの戦闘員カットマン達の恨みのパワーを集め、生理的嫌悪感を誘うムカデまみれの映像から、誕生する新たな御子……にかかる、強烈すぎるサブタイトル。
 トンボを追いかけて道に飛び出したマサルを轢きかけた伝は、すんでのところで車を停めると、虫を探して駆け回る子供たちの姿に懐旧にふけ……ったところから何故いきなり、ケニアが網で焼いている“なにか”のアップになるのか(笑)
 「ケニア、いい加減にしろよホントぉ。折角の香水が台無しだよ」
 「どうだ? ミミズの黒焼き」
 マリアさんは背後で我関せずですが、これは先代(ダイアン)だったら今頃、問答無用で曙の脳天に銃弾が突き刺さっていたかもしれません。
 そのマリアも美容に良いと水を向けられると顔を背け、九官鳥元帥から野蛮人発言が出たところに戻ってきた伝に届く、幼馴染みからの手紙。
 伝の故郷・吹雪村で、10年に一度行われる奇祭・水汲み祭。神人に選ばれた男が三日三晩、泉の水を汲み続ける事により10年間の村人の健康と村の豊作を祈願する祭に合わせ、クラス会の誘いを受けた伝は、メンバーに背中を押されて故郷の村へ。
 村長や幼馴染みら(クレジットの位置からすると、友人男を演じるのは、若かりし日の遠藤憲一さんでしょうか……?)に、立派なシティボーイになった伝が、蛍光グリーンの車で村の入り口まで乗り付けてきやがったぜ、と暖かく迎えられた伝は、祭り太鼓を任されてフィーバーし、そういえば踊りの名手のリズム感はこうして養われていたのかもしれませんが、その夜……
 「すぐに殺しても、殺されたカットマンの恨みは晴れんわい」
 村長らは、伝を神人に選び、祭儀で疲弊させようと何やら不穏な密談をかわしており、気配に気付いた伝が跳ね起きると、村長はミミズ怪人で幼馴染みの女はサロメの変装であり、伝の故郷には既にエゴスの魔手が伸びていたのだった!
 幼馴染みをはじめエゴスと入れ替わり済みだった村人10人あまりを人質に取られた伝は、神人に選ばれたので三日ほど帰れないと本部への伝言を強要され、隙を突いて逃走を図るも失敗。
 あくまでの村の祭りになぞらえる形で伝を苦しめようとするエゴスにより薬で喉をつぶされる一方、
 「祭りと言えば、ケニアの祭りを思い出すぜ!」
 盛り上がる四郎と京介はフィーバーしだし、意図的な対比にしても感じ悪くなりそうなものですが、まあバトルフィーバー隊だしな……とさして好感度の下落に繋がらないのが、積み重ねてきた信頼の賜物。
 一方の伝は作中二回目の水責めを受けると、何も知らない村人たちに助けを求める事も出来ないまま、31話分の恨みとばかり心身共に執拗にいたぶられ、水桶を担ぎながら落ちくぼんだ瞳でふらつき歩く姿が鬼気迫る様相を呈し、軽い気持ちで最近ちょっと目立たないなと触れていたら、とんでもないメイン回、来ちゃった。
 「地獄もまだほんの一丁目だぞ」
 「ばーかめ」
 飲まず食わずの責め苦に弱り果てたかと思われた伝だが、ミミズ怪人とサロメが場を立ち去るや否や、監視に残った戦闘員を軽々と蹴散らすと闇の中を疾走し、窮鼠猫を噛むといった一瞬の表情の切り替えが格好いい。
 しかし愛車には既にミミズ怪人らが先回りしており、救援要請は失敗……するが、それと全く関係なく、浴衣姿で吹雪村に遊びに来る、京介・曙・ケイコ・トモコのBFメンバー(笑)
 それでこそ、BF隊!
 いよいよ祭も最高潮、心身共に絶望のどん底にあるバトルジャパンを始末して復讐劇もクライマックスとワクワクしていたら、観光気分のBF隊が近づいてくるのを目にして、
 (え?!)
 (何こいつら?!)
 とギョッとして足を止めるミミズ村長と変装サロメが最高でした(笑)
 口の聞けない伝だが、咄嗟にまばたきで京介へと暗号を送り、京介はエゴスと人質の存在を把握。エゴスの目をそらす為に、曙と二人で太鼓をフィーバーし、
 「お喜び下さいサタンエゴス様、バトルジャパンの苦しみをよそに、仲間の阿呆どもはご覧のとおり」
 「これでエゴスの復讐の恐ろしさを思い知るであろう」
 と、無警戒を装うと、眠り薬を飲んだフリをして逆にサロメを拘束。本物の村長らの元に案内させて人質の救出に成功……と思いきや、サロメに一杯食わされて、人質もろとも洞穴で爆殺の危機に。
 曙は奥の手(通信機を破壊?)を用いて本部へとSOSを送ると、待機していたコサックとアメリカが駆けつけて時限爆弾を解除し、当時の作劇も手伝って、エピソードによってメンバー個々の出番の差が大きい今作ですが、休暇中に陥った伝の危機に、メンバーが徐々に揃っていって逆転勝利に至るのは面白い構造になりました。
 「復讐の剣。地獄へ落ちろ!」
 人質の村人らが無事に救出される一方、伝の身には処刑の刃が迫っていたが、仲間達の助けが間に合うとすかさずフィーバーし、まだ余力を残していた。
 「我がふるさとを汚す虫けらども! 正義の鉄拳を受けてみろ!」
 流れと啖呵は割と格好良かったのですが、続くアクション+個別名乗りのカットが、日光の量が変わりすぎて映像の繋がりが悪く(なんとなく見覚えがあるので、過去映像の切り貼りでしょうか)、やや盛り上がり損ねたところに、ミミズロボットが登場。
 ジャパンが一人でBFロボを操縦すると、画面奥と手前でスケールの違うバトルが同時に展開する、後年の竹本昇監督が好むような画となり、映像の工夫は工夫として、5人揃わないとペンタフォースで怪人を倒せない縛りはどうするのかと思ったら……
 「ジャパン! ペンタフォースだ!」
 「OK!」
 コックピットからスクラムする文字通りの離れ業により、ジャパンがロボ内部からバトルスティックをぽいっと放り投げると異次元ペンタフォースが組み上がって兄貴は消し飛び、残るミミズロボットは電光剣で一刀両断。
 衝撃的などんでん返しの結末となって殺人村の呪われた因習に幕が下ろされると、助けられた村長らから本物の神人に選ばれた伝は一目散に逃走し、劇中の描写がかなり苛烈だった事もあり、コミカルに振ったオチで、つづく。……コミカルといえば、行動は陰湿で見た目はグロテスクながら、「水」と「ミミズ」のかけられた御子のネーミングは、サタンエゴス様のねじれたユーモアを感じさせるものでありました(笑)
 前のメイン回は石川編だった気がするジャパン、つまるところ2回連続メイン回水責めとなりましたが、失敗はしたものの2度の脱走を試み、最後の最後まで余力を残して逆転の隙を窺っていた姿勢がプロフェッショナルヒーローとして素晴らしく、ただ助けられるだけにならなかったのが、良いエピソードでした。
 次回――コサック……!