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たちばなにオフは無い

仮面ライダー響鬼』感想・第7-8話

◆七之巻「息吹く鬼」◆ (監督:石田秀範 脚本:きだつよし/大石真司
 今作ここまでの見せ方だと、明日夢の試験と響鬼の戦いを重ねるぐらいやりそうだったのに、冒頭いきなり合格発表で困惑。
 しかも前振りゼロからギャグっぽい見せ方で始まるので、途中まで夢オチかと思っていたら現実のようで……え、あれ、6話ほど浮き沈みを繰り返していた明日夢少年の鬱屈は、前回のカニとの戦いの前の人生相談で解決なの……?!
 まあ、霧が晴れたら一直線という意図だったのかもしれませんが、それにしても明日夢にとって相応に劇的な場面である合格発表を夢オチまがいのコメディ寄りの演出で見せるのは悪手だったと思いますし、それがまたダラダラと長い上、ミュージカルの残骸みたいなシーンに繋げられるので、割と本気で、少年は一体いつベッドの中で目を覚ますのだろうかと考えてしまいました。
 第1-6話までにおいて、明日夢の「受験」について割かれていた重量から考えても、その「解決」の描写としてバランスが大変悪く、演出・脚本の両面で、持ってくるところを間違えた印象。
 早速たちばなへ向かう明日夢だが、生憎とヒビキは山に籠もって筋肉を苛めている真っ最中。
 「人助けする人になるって事は、そんだけハードな生き方って事なんスよね~。鍛え抜かれた心と体を、更に鍛えて鍛えまくって、初めて鬼になれるっていう」
 そんなヒビキが受験の結果を大変気にしていたと聞かされると明日夢は満面の笑顔を浮かべ……ヒビキさんに連帯保証人になってほしいと頼まれたり、羽毛布団を月賦で買ってほしいとお願いされたり、銀行口座の名義を貸してほしいと言われたら、二つ返事で承諾しそうでちょっと怖い少年よ気をつけろ、その女はあわよくば労働力の確保を狙っているぞ。
 ことヒビキが絡むとブレーキを失いがちな明日夢は、たちばな妹に吹き込まれた情報を頼りにヒビキの籠もる山へと向かい、なんだか段々、この番組は鉄道を撮りたいの? みたいな気がしてきました(笑)
 鬼になる力を衰えさせない為、鍛えに入って巨大な太鼓を叩きまくるヒビキさんとか、画としては面白いのですが、合間に呆けた明日夢くんの寝顔とか見せられても若干のなんだかな……感はあり、意図的にやっていない部分だとは思いますが、フィクションの主要人物としては、「少年はいい奴だな……」と思える程度のフックは掴みで欲しかったところ。
 母子家庭で母親は仕事が忙しく、自己の存在と向き合ってくれる相手への飢えみたいなものは感じる少年、たまたまそれが“ちょっと変わった力を持った頼れる年上の男性”であった事が物凄くツボに突き刺さってしまったみたいではありますが、今やっている行動を、褒められたい子犬と見るには好感度が不足していて、どちらかといえば迷惑な追っかけ感が出てしまうなと(笑)
 受験中はそれなりに自分を律していたようではありますし、そこからの解放が、テンション爆上げで鉄道旅行に繰り出してしまう一因ではあるのでしょうが、そうスムーズに捉えるには、切り替えスイッチとなる冒頭の合格発表の描写が軽すぎる為に、暴発へと繋がる因果が巧く連動していない感。
 で、ヒビキさんの方は、少年のそういう“甘え”も受け止めてみせる(そして恐らくは時に厳しい)懐と器の大きい男であり、そこに道しるべとしてのヒーロー像――すなわち方位磁針――を置いた、“憧れの大人”と“まだ何者でもない少年”の構図における、特に後者への重視とこだわりは感じるのですが、その“こだわり”と“凹凸の少なさ”が一体化しているのが、現状今作の悩ましいところだなと。
 その頃、香須実さんにアタックをかけている以外は、こちらも今のところつるっとした感じの早とちり王子ことイブキさんは魔化魍退治のお仕事中で、足をぐにょんと伸ばして人間を捕獲する童子と姫が大変気持ち悪い。
 湖から浮上する巨大な一反木綿のシルエットと鳴き声は完全に怪獣な見せ方で、湖のほとりで帽子の少女を襲う童子と姫を大型バイクで轢いたイブキは、呼子を鳴らすと風をまとって青い面の鬼へと変身し、その名を――威吹鬼
 テーマ曲(?)は、どこかジャズ調な威吹鬼が銃撃で姫を木っ葉微塵に吹き飛ばす一方、駅を一つ乗り過ごしていた明日夢は、2時間待ちを諦めて自身の足で歩き出す事を選び、つづく。
 既に、シフト表で鬼――猛士は複数存在する事が示されている今作ですが、響鬼に続く劇中二人目の鬼戦士が登場し、マッシヴな響鬼と較べると、ややスマートな雰囲気。
 桜吹雪のようなものを周囲に舞い散らしながらの初登場は格好良かったですが、戦闘の方は軽い足技の攻防と、銃撃で姫を吹き飛ばしただけに終わって消化不良感が強く、『クウガ』なんかも前編はアリバイ的な変身だけのエピソードはありましたが、今見るともう少し、アクション/バトルは欲しいところ。

◆八之巻「叫ぶ風」◆ (監督:石田秀範 脚本:きだつよし/大石真司
 帽子の少女は、既に呼子を用いてディスク使い魔を操る事は出来るイブキの弟子・天美あきら。
 威吹鬼に追い詰められた姫は、鳥×マンタ、といった見た目の一反木綿に掴まって逃走し、今回の魔化魍は、融合生物路線。
 一方、軽率に山の中に踏みいった明日夢は、道に迷い、携帯電話の充電は切れ、水も食糧もなく、もはや遭難寸前だった。
 高校受験の合格当日に、魔化魍と全く関係ないところで割とリアルに命を脅かされていたが、幸いにもイブキらのテントを発見して新聞の三面を飾る事は回避され、あきら嬢からの第一印象はめでたく、電車で妊婦に席を譲る度胸も無いくせにヒビキの後を追い回す時だけやたら思い切りのいい甘え果てたもやし野郎、に決定しました。
 「言っておきますけど、あなたがここに居る事って、今の私たちにとってちょっと迷惑なんです」
 あきらの攻撃!
 「道に迷ってきて、ご飯を食べて寝るだけなんて」
 明日夢は真っ二つにぶった切られた!
 「もういいよ、その辺で。そうやって、すぐに自分に引き寄せて考えるのが、あきらの悪い癖だと思うよ」
 あきらは師匠のイブキにたしなめられ、第8話にして、近い年代から明日夢に厳しく当たるキャラが登場しましたが、全く無関係の一般市民なら、守る対象、ないし放り出して終わりですが、お友達感覚で踏み込んでくる割に、お友達としての配慮が足りないのは、現状、明日夢の立場と自意識のだいぶ厄介なところ。
 つまり……
 「ヒビキさん! お友達監督不行届ですよ!」
 キュウリ持ってのこのこ陣中見舞いに訪れた31歳が悪いような気はします。
 ところで今作の鬼は「広く人助け」として、害を為す(ある種の災害としての)怪異は倒すものの、それ以外での直接的な人助けの描写は今のところパイロット版ぐらいにしか存在せず、昭和の昔からモブ市民がざっくり殺害されるのは常ですし、《平成ライダー》初期は特に“ヒーロー不在の場面での怪人被害”は意識的に描写してくる傾向ですが、「主に山野を舞台に人知れず魔化魍を退治する鬼」という基本設定の保持もあって、“目の前”単位の人を助ける場面がほとんど存在しないのは、結果的にかなり特徴的な作劇。
 ヒビキが明日夢の相手をしている間、イブキとあきらは蛇の使い魔軍団で湖中の魔化魍を追い立て、湖畔で待ち構えていたイブキが変身。空飛ぶ一反木綿を飛び道具で攻撃するも童子の奇襲攻撃を受けていた頃、ヒビキは明日夢くんに会社説明を行い、「猛士」は戦士名ではなく、組織名でした。
 ここまで断片的な情報で少しずつ形を見せていたものを、いきなりストレートに説明してきたのですが、それは、戦闘の合間合間に入れるような情報だったのでしょうか(笑)
 童子を音波弾の連射で吹っ飛ばした威吹鬼は、空中の一反木綿に次々と弾丸を撃ち込むと得物の銃をパーツ組み替えでラッパモードに変形させ、ベルトのバックルがラッパの先になるのは、面白いアイデア
 威吹鬼がラッパを吹き鳴らすと、先に撃ち込まれていた銃弾が反応して一反木綿は粉々に吹き飛び、「音」という要素を共有させつつ、響鬼よりもスマートな雰囲気を打ち出してみせた威吹鬼はなかなか格好良かったです。
 ……ここまでの描写からすると、
 イブキ → 香須実 → ヒビキ
 ぽい感じですが、頑張れイブキ。
 多分ヒビキさんは、(俺、年配の人にしかモテないんだよね)ぐらいの自覚だと思うから!
 イブキが戦っている間、当たり前の事として待機しているヒビキと、勝利の帰還を果たすイブキの関係性で、魔化魍の特性に合わせ、それぞれのエキスパートが対応する猛士組織の在り方を示すと共に、ファンキー打撃系とハッピー銃撃系、二人の鬼のバトルスタイルも巧く特徴付けられたのは、今回の良かったところ。
 あきらも別に悪い子ではない、という事で明日夢少年と最低限の和解が描かれての落着となりましたが、それはそれとして少年は、軽挙からリアル遭難寸前だった事について、もっと本格的に反省した方がいいと思います!