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弁解する鬼

仮面ライダー響鬼』感想・第3-4話

◆三之巻「落ちる声」◆ (監督:諸田敏 脚本:きだつよし/大石真司
 今回も、日常の生活音でリズムを取って音楽を奏で踊りと歌に至る演出でスタートし、明日夢少年は、屋久島で出会った変なおじさんの影響を受けまくってしまうお年頃であった。
 ……そうだね、中学生だからね。
 変なおじさん(明日夢が歌唱)ことヒビキは、6年ぶり4匹目の山彦退治の途上にあり、組織的活動や、巨大妖怪は繰り返し発生するなど、前回に続いて、大きな枠組みの説明はせずに、断片的な情報で物語の背景やキャラクターの事情を明かしながら全体像を少しずつ見せていく(視聴者に構築させていく)スタイル。
 山の中では、猿のような動きを見せる怪異が人間の喉から琥珀のごとき石を奪っており、役者は共通、衣装と化粧を替えた童子と姫のコンビが暗躍する、魔パートの描写は雰囲気が出て面白い。
 屋久島で明日夢少年に響鬼の姿を見られた件は隠していたヒビキだが、タクシー運転手である明日夢母と偶然再会した事で仕事の同行者(運転担当)・香須実に感づかれてしまい、定期的に会話や映像を忙しなくちゃかちゃかさせる見せ方は、ユーモアの意図としても、あまり好みではない部分。
 「でもなんでそうちょくちょく、人にばらしちゃうわけ~?」
 「物事にはさ、成り行きってもんがあるからさ」
 ヒビキはかっこよくいってみた!
 「あれ? 反省してない?」
 「……いやあの……すいません」
 香須実のカウンターアタック
 ヒビキはぜんしんからひやあせをながしている!
 ヒビキと香須実は奥多摩の山中にテントを張って活動拠点とし、明日夢の一件に関するやり取りをしながらも作業を進めていく事で、会話の間も画面に動きをつけつつ、二人にとっての“慣れた作業”である事を表現したのは、上手い見せ方。
 また、明日夢視点では“頼れる大人の男”な感じだったヒビキさんが、同僚の目からすると、大雑把で割と言い訳がましい男としてやりこめられるのは、物語の掴みにおいて第2話の運転シーンに続いての愛嬌となり、やり取り自体の面白さも含めて、ここは非常に良いシーンでありました。
 「え、ちょっと待って? 受験て事は、もうすぐ受験なのに、ヒビキさん対ツチグモとか見せちゃったわけ?!」
 「いやあの、見せちゃったというか……見ちゃった?」
 まあ少年、人の忠告を全く聞かなかったので、多少は少年にも責任があったと思う、とする被告の弁解は正当なものであると、当法廷は認めます。
 「ちゃんとフォローしたんですか」
 「一応」
 「てことはしてないでしょ」
 香須実のカウンターアタック
 ヒビキはかえすことばをうしなっている!
 「……落ちるよその子、試験に」
 「うぇ?!」
 香須実のついげき!
 こうかはばつぐんだ!
 ヒビキはぜんしんのふるえがとまらない!
 受験を控えた思春期の少年のメンタルを妖怪退治アスリートと一緒にするな、とお叱りを受けたヒビキは少年へのアフターケアを約束させられ、香須実さんに、人の心があって良かった。
 深く反省したヒビキは、マッピングした山中各地にディスク軍団を放って広域で探索活動をスタートし、拠点との電話で、「魔化魍」の名称が初出。
 ジュブナイル要素を加えて立ち上がり比較的陽性なチームものである今作(2005年1月~)と、ダークでバイオレンスな菊池秀行的アクションである『牙狼』(2005年10月~)、それぞれアプローチは違いますが、同じ年に特撮ヒーロー物で退魔系伝奇アクションが志向された作品が出てきているのは、ちょっと面白いところ。
 ディスク使い魔が童子と姫を発見すると、フライング変化しての戦いとなり、今回も凄くキラメンタル。
 バチを盗み取った猿姫は鬼火で焼き尽くし、不意打ちをかけてきた猿童子に対しては、拳から伸ばした爪で慌てず騒がず零距離から急所を貫き、手慣れた戦いぶりと“鬼”らしさをアピール。
 ここまでのところ、雰囲気の出し方は面白い一方で“怪人”としての存在感は薄い童子&姫に加えて、薄暗い山中でキラキラボディを強調する響鬼の見せ方により戦闘の視認性がかなり悪く、パイロット版に引き続き、アクションシーンの楽しさは物足りないところ。
 ただパイロット版を踏まえた上で、妖怪退治物がベースにある事はハッキリしてきて、その点ではグッと見やすくなりました。また、上述したキャンプシーンのやり取りは、秀逸で面白かったです。

◆四之巻「駆ける勢地郎」◆ (監督:諸田敏 脚本:きだつよし/大石真司
 受験を控える明日夢と、魔化魍を探して山中を走るヒビキ、両者のパートが交互に描かれ、どうやって場面を繋ぐ(切り替える)かに演出の工夫が見えるのは面白いところ。
 ヒビキたちは、蓄積したデータを元に魔化魍の出現地点の予測を立てるなどしながら戦っており、手法としては《ウルトラ》シリーズ寄り、ともいえるでしょうか。
 一方の明日夢少年は、書店の前で疾風のごとく駆ける中年男性を目撃して目を瞠り……君は、急に出てきて子供を助ける男に、心奪われる病気なの……?
 明日夢がヒビキに懐いているのは、(なりたい自身の投影を含めて)強い男性性への憧れがあり、そこには父子家庭育ちが影響を及ぼしている節も匂わされてはいますが、デリケートな要素でもあるので、今後どう描かれていくのかは、ちょっと気にかかる部分。
 里に向かう山彦を追って駆ける響鬼と、中学生二人の尾行から駆ける謎の中年男性がオーバーラップされ……そこはもっと普通にライダーのアクションを見せてほしいなとなりますが、響鬼の戦いは今回もやたらとキラキラ(巨大魔化魍の映像を嘘っぽくしない為もありそうですが)。
 山中では響鬼が巨大な山彦をドンドコ撃破し、第2話の際、音で鎮めて封印でもするかのと思って見ていたら、どかーんと爆発するのは、衝撃でした(笑)
 響鬼らが拠点である甘味処たちばなに帰還すると、そこには謎のおじさんにとっ捕まった明日夢くん&同級生少女が、でつづく。
 第3話までは会議の為に出張していた元締めが帰還し、ヒビキからは「おやっさん」と呼ばれ、苗字は「たちばな」で、物凄く直球。
 ……ところで明日夢少年は、ビジュアルや劇中ここまでの見せ方からすると、突発的にアクティブな一面を見せる(ほぼ、暴発する)事はあるが、学校では地味で目立たないタイプの想定なのかと思われるのですが、(フィクションの都合とはいえ)よくわからないがクラスの美少女と妙に親しげな様子が、全てを吹き飛ばしていくので、設計よりも捉えどころのわからない少年になっているのでは感(笑)