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罰金なんて怖くない

『バトルフィーバーJ』感想・第9-10話

◆第9話「氷の国の女」◆ (監督:竹本弘一 脚本:高久進
 銃砲店に「バトルフィーバー」を名乗るバイクの三人組が押し入る刑事ドラマ風の冒頭から、BF基地では伝の遅刻を指摘した九官鳥元帥が遅刻に対する罰金制度の導入を宣言し、こちらもいわゆる刑事部屋の日常的な見せ方。
 「おいおいおいおい、あんまり調子に乗るなよ、ロボット九官鳥め」
 九官鳥元帥は登場3話目にして曙からロボットであると断定を受け、まだ特にバスターやファイヤーやサンダーは放っていない筈ですが、曙は自称“動物の言葉がわかる男”なので、何かピンと来る所があったのでしょうか。
 そんな曙に対して、我が言葉は鉄山の言葉、と九官鳥元帥が命令違反のかどで微笑みを捨てた罰金刑を命じるが、そこに本物の鉄山が現れると、バトルフィーバーを名乗る強盗を追え、と指令。
 地上では、BF強盗団を追跡していたパトカーが、春だというのに突如として凍結していた路面にスリップして追跡に失敗し、事故現場を取り巻く群衆の誰も、多分「バトルフィーバー」が何かはよくわかっていないが、
 「「バトルフィーバーがやったんだってよ」」
 「殺せ殺せバトルフィーバーなんか殺せ」
 と声があがるのが、とっても70年代。
 男たちはまたも雑に銃砲店を襲うと、バイクで追跡した曙も道路凍結によりスリップし、霜に覆われたフロントガラスの隙間から、謎の女の顔だけが見える演出が格好いい。
 女の正体はサタンエゴスの御子・氷柱怪人であり、コウモリ傘の女に未来道場の女、デスマスク怪人に氷柱怪人と、メインの工作員ポジションも含めて、エゴスサイドに女性エネミーが多めなのは、今作ここまでのちょっと特徴的なところ。
 基地で治療を受ける曙は、氷柱怪人の乗り込んでいた乗用車のナンバーに不審を覚えて記憶しており、更に、銃砲店の監視カメラから強盗トリオの面が割れるが、その一人はなんと、伝の高校時代の友人。
 「こいつを引っ捕らえて吐かせるんだ!」
 「畜生……俺をこんな目に遭わせやがって! 思い知らせてやる!」
 京介と曙が「殺せ殺せエゴスなんか殺せ」と殺意のボルテージを高め、このままでは旧友が、BF隊名物「なあおまえ、この特別深海取り調べ室から、減圧しないで人間を急速に海面に浮上させるとどうなるか、知ってるか?」にかけられてしまう、と危ぶんだ伝は、カタヤマの行方を追って、その妹に接触
 弟の入院費を工面しようとしていたカタヤマが、この数日、勤め先の修理工場にも出勤せずに行方不明になっている事が判明するが、サタンエゴス様はその卓抜した予知能力によって、迫り来る捜査の手を察知。
 「ヘッダーよ、儂の予知能力が危険を告げている」
 サタンエゴス様が本当に予知能力を持っているのか、スパイからの情報を神秘性を引き立てる為にそういう事にしているのか、当初からの予定をヘッダーと示し合わせたパフォーマンスとして演出しているのかは現時点ではハッキリしませんが、首領自ら作戦に迫る小さなトラブルを感じ取って手を打つのが、妙に面白い事に(笑)
 エゴスに繋がる手がかりとなったバイク強盗2名は口封じの為に抹殺されるが、カタヤマに迫った工作員は、その身辺を探っていた日仏ケニアが迎撃。
 「どうして薄汚い犯罪者に成り下がったんだ……カタヤマ?!」
 伝は逃げたカタヤマを追って問い詰め、言い回しがストレートで、いっそ気持ちがいい(笑)
 入院費の工面に悩んで酒に逃げていたカタヤマは、他の男2人と共にエゴス怪人の接触を受けて簡易的な洗脳を受けており、そもそも勤め先の修理工場がエゴスの関連施設だった事が発覚すると、氷柱女の乗った車の情報を得る為に、工場へとBF隊を案内。
 「せめてものお詫びだ。俺にやらせてくれ、伝」
 心の隙間につけ込まれ、エゴスの手先にされていた事を悔いたカタヤマは、自ら死亡フラグを立てると先行するが、氷柱女の乗った車に敢えなく轢かれ、あくまでも助手席に座った謎の女、という見せ方が格好いい。
 「あの札束を、必ず、叩き返して、くれ……」
 重傷を負ったカタヤマに救急車を呼んだ伝は、京介・曙と共に車を追うが、路面凍結に阻まれるとフィーバーし、怪人の能力を繰り返しアピール。
 雪の女王を自称する氷柱女は、ブリザードで日仏ケニアを襲い、トライアングルフィーバーを受けると氷柱怪人へと変身。
 ここでED曲がイントロからかかってボーカル入りで構成員との戦闘に突入するのは、幾らなんでも、盛り上がるには無理が……諸事情により、勇者、3人しか居ませんし(笑)
 俺もおまえもおまえも俺も、なところで、ようやくコサックとアメリカが参戦すると狙撃部隊を撃破し、ふんだんに銃火器を使用してくる工作員との戦いが繰り広げられると、逃げた氷柱怪人を取り囲んでの名乗りから、
 「「「「「バトル・フィーバー!」」」」」
 ……あ、Jが消えた。
 氷柱怪人は、氷柱ロボット(妹)を呼び出し、コンビナートで大暴れ。
 「カタヤマに預けた汚い金を、返すぜ!」
 友の想いに応えてジャパンは怪人の顔面に札束を叩きつけると、氷柱ミサイル攻撃を受けるもペンタフォースを発動し……一応ジャパンメイン回だったのに、アメリカがセンターで、旧フォーメーションで撃ちました(笑)
 どうもこの辺り、まだ落ち着かない様子ですが、暴れ回る氷柱ロボにはBFロボが出動してOPが流れ出し、楽曲のやり繰りも如何にも苦しさを感じさせます。
 猛吹雪を浴びるBFロボだが、武器を持ち替えると反撃に転じ、バトルマサカリからクロス・フィーバー!
 勇壮なBGMでロボが帰還すると、一命を取り留めたカタヤマは、エゴスの関与が認められた事で不起訴処分の見込みとなり、今作のカラーだと、国防を揺るがした者は、死刑! とアイアンクローが飛んでくる代わりに氷柱怪人に轢き殺された扱いになるかと思いましたが回避され、刑務所行きも免れる甘めの裁定に。
 ……ただ、カタヤマが病院に顔を出さない事についての「入院費を稼ぐ為に外国へ行ったんだ」という伝の説明が完全にしばらく娑婆に出てこられない時の言い訳になっており、若干の矛盾は感じます(笑)
 或いは、氷柱怪人に轢かれて瀕死の重傷を負っていたカタヤマは国防省の手による緊急手術を受けて体組織の30%を機械化され、「君にはこれから、君の望んだ通りに「バトルフィーバー」の一員として国防の狗になってもらう。なに、君が国家に忠実である限り、弟さんは悪いようにはしない……」と、強盗事件を不問に付す代わりの司法取引として、本当に海外に派遣される手筈なのかもしれません。
 カタヤマ弟の入院費の足しにしてくれ、と伝にカンパを渡す京介が、不在の謙作とダイアンの分も入っている、と言及したのは良い目配りで、曙からは、鉄山将軍より預かった厚みの違う封筒が手渡され……関係者の背景事情などで設定された「病気の子供」に、ヒーローがどこまで特別な便宜を図るのか、はバランスの難しい問題ですが(個人的には、できる限り便宜を避ける方が良いと考えています)、ヒーロー以前の人間関係に基づいた金銭の提供はストレート故に呑み込みやすい形に。……鉄山の封筒についていえばこれ、実質的に組織に対する伝の(精神的)借金みたいなものですし。
 また仮に改造されていなくても、カタヤマは今後ずっと“民間の一協力者”として、ちょっとした情報工作(罪も無い噂話を広めるだけの簡単なお仕事)や、ちょっとした荷物の運搬(指定の場所に置いてくるだけで隙間時間にピッタリ!)や、ちょっとした名義貸し(なに別に違法な事はしないさ)をダルマや三角コーンから指示されるであろう事は想像に難くなく、四角四面に法を行使するよりも、よほど有用な人間の使い方げふんげふん。
 序盤のスパイ物文脈から徐々に離れつつある今作、強盗事件の犯人が旧知の友人だった! は完全に刑事ドラマの作りですが(普通に出てくる「面が割れる」とかも刑事ドラマ用語に近いですし)、高久先生の引き出しの中身が使いやすいジャンルの事もあり、そこに悪の組織と怪人を絡めての展開が、比較的綺麗にまとまりました。
 なお、今回から伝と京介の衣装がチェンジされ、伝は背広姿の方が断然格好いい。

◆第10話「ナウマン象を見た」◆ (監督:竹本弘一 脚本:上原正三
 化石エネルギーにより強化されていくナウマン怪人の為に質の良いナウマン象の化石を求めるエゴスは、理科の教師と教え子たちが掘り出したマンモスの牙を横から掠め取り、
 「プレシャスは早いもん勝ちじゃないもん!」
 「そうよね~、強いもん勝ちだもんねぇ!」
 と、後輩たちも言っています。
 高い身体能力で樹上に寝そべり、生まれ育ったアフリカの大地に思いを馳せていた曙は、悲鳴を聞きつけてエゴス怪人の活動を知ると、この日本にも巨象の居た時代があったという太古のロマンにいたく感動し、教師たちのボディガードを買って出る。
 バイト先を変えたのか、連絡員のケイコはスナック(現在で言うところの喫茶店みたいなもの)ケニヤで働いており、BF隊基地へと繋がる秘密の通路の存在を知らない店長(?)はレンタカー屋店員と同じ顔のような気がしますが、数話おきにキャスト同じで舞台だけが変わるコントのような仕立てになるのでしょうか。
 エゴスの動きらしきものを将軍に報告した曙は他のメンバーに協力を求めるが、
 「日焼けは、美容に悪いわ」
 「戦士にも、休息が必要です」
 と、屋内プールで遊んでいる米仏コンビにはサボタージュを決め込まれ、本気で仕事しないなダイアン……。
 まあ、日本国内での囮捜査に失敗し、高度に政治的な取引によってBF隊に出向扱いとなると、上司であった父の死亡後も本国への帰還命令が出ないまま日本に取り残され、レオタードまがいの正気を疑う衣装で悪の組織と戦わされる日々を過ごしていれば、クビに出来るものならクビにしてみろという勤務態度になるのも一定の理解はできます。
 仕方なしに曙は一人で教師たちの護衛につき、エゴスに襲われた現場で子供たちと再び発掘をしようとする先生も、何故か土の中で化石のフリをしてそれを待ち伏せている怪人も、どちらもどうかと思います!
 フィーバーした曙は、土中に半分埋まったコミカルな名乗りから鞭を振るって戦うが、ナウマン怪人にパワー負け。
 「見たかナウマンパワー! ははははは!」
 ケニアはたまらず逃走し、前回に続いて、負傷して帰ってきた仲間の手当はしてくれるダイアン。
 曙は臭いから断固拒否、とかされたらどうしようかと思っていましたが、嫌いなのは曙ではなく動物のようで、ホッと一安心。
 先々代が爆発のプロフェッショナル、先代が復讐の為にサイボーグ手術を志願しいざという時は相手の目を狙う女だったのと比べると大人しめのダイアンですが、どうやら役者さんの仕事が忙しくて撮影にかなり制約があったようなので、仲間の治療シーンぐらいしか好感度を稼げる場面が無い都合があったのかもしれません。
 ナウマン象の化石を大量に必要とするエゴスは化石発掘ブームを作り出そうとするがそれが元で足が付き、巻き込まれた子供たちを救う為に曙が鋭敏嗅覚を発揮すると、ケニアがアジトへとカチコミ。
 エゴスの部隊が外へ飛び出したところで、BF隊が高い所から出てくるいつものパターン(ケニアの壁走り登場が格好いい)で、
 「「「「「バトル・フィーバー!」」」」」
 ナウマンロボットが繰り出されるが、後ろで大暴れしている内に「よし! 兄貴の方からやっつけよう!」と当然の判断が下されるだけなので、戦略性に欠ける運用が続いており、そろそろ、悪魔ロボットを有効活用した作戦展開も見たいところです。
 5人がかりでもナウマン怪人のパワーに苦戦するBFだったが、無慈悲なペンタフォースが今回も旧フォーメーションで炸裂し、前回今回は、7-8話の新フォーメーションを知らずに竹本監督がバンク映像で処理した感じでしょうか。
 BFロボはナウマンビームを浴びて槍を失うが、シールド防御からバトルマサカリが宙を舞うとクロスフィーバーがナウマンロボットに突き刺さり、5人が乗り込んでから爆発まで約45秒、バンク映像の盛り合わせのような形で戦闘に決着が付いて連絡員の二人がコックピットに出たり消えたりし、国防の為には時にイリュージョンも必要なのだ!
 戦いの跡には巨大なナウマン象の化石が発見され、太古のロマンが語られて、つづく。
 ここまで、高久・上原の二人が交互に脚本を担当している今作、前回の高久脚本が思い切り刑事ドラマの要素を取り込んできたのに対して、上原脚本はまだスパイ物の文脈にこだわりつつ、子供の好きな鉄板要素(恐竜)をそこに組み合わせる形にしてきましたが、果たして今後はどう進んでいくのか……次回――ペット大作戦にフィーバー!(フランスのメイン回はいつ……?)