東映特撮に踊らされる駄目人間の日々のよしなし。 はてなダイアリーのサービス終了にともない、引っ越してきました。
旧ダイアリー保管用→ 〔ものかきの倉庫〕
特撮作品の感想は、順次こちらにHTML形式でまとめています→ 〔特撮感想まとめ部屋〕 (※移転しました)
HP→〔ものかきの荒野〕   Twitter→〔Twitter/gms02〕

2023年を振り返る:読書編

超動くしあわせの書

 年末恒例振り返り企画。
 どんな具合に書いていたのか参考にしようと思って去年の振り返り記事を確認したら、


初・連城三紀彦! 初・泡坂妻夫! 初・山田正紀! 初・辻真先! 初・都筑道夫! 初・鮎川哲也! 初・山田風太郎

 ……なんだか、えらい濃い事をしていましたね、去年。
 今年は、下半期に壊滅的に読書スイッチが入らなくなる事態が発生し、ろくに読書していないこの半年……翻訳小説ならどうだ、と最近ようやく、話題作だった『カササギ殺人事件』(アンソニーホロヴィッツ)を読み終えたのですが、凝りに凝った仕掛けの贅沢な作品で読み応えはあったものの、「おおお」とか「ぐわっ」みたいなものはあまりなくて、世評ほどに感銘は受けず。
 著者がオマージュを捧げているアガサ・クリスティは学生時代にしか読んでいないので、特に思い入れが強くない(クイーンやドイルよりも、クリスティが読みやすくて数はそれなりに読みましたが)点でピントが合いきらない部分や、評判を聞いて事前にハードル上げすぎたところもあったかとは思いますが。
 とはいえ、キャラの描写や話運びは巧みで久々にぐいぐいと読めた作品であったので、同著者の別作品も読んでみたいところです。
 で、今年一番、「おおお」とか「ぐわっ」があった作品はなんだったろうか、と思い返すと、長編では、『しあわせの書 迷探偵ヨギ ガンジーの心霊術』(泡坂妻夫)。
 巨大な新興宗教団体の絡んだ行方不明事件に関わる事になる謎の行者ヨギガンジー。手品その他の知識を活用してインチキ心霊術の裏を暴く主人公の前で繰り広げられるのは、次々と甦る死者、教団内部の後継者争い、そして謎を秘めた「しあわせの書」……。
 《亜愛一郎》シリーズなどが有名な著者の長編ミステリで、手品師でもある著者の知識を生かしつつ、まさに“紙の上のマジック”とでも呼べるような、奇術師・泡坂妻夫のテクニックを堪能できる、驚愕のトリックでした。「驚愕のトリック」とは極めてポピュラーな惹句でありますが、今作は、本当に驚愕しました。傑作。
 短篇では、「エターナル・レガシー」(宮内悠介)。
 対コンピューター棋戦に敗れ、失意の日々を送る若手プロ棋士の前に現れた、古くさいマイクロプロセッサを名乗る妖精もとい中年男。その勢いに押されて始まった共同生活の中で若手棋士は再び囲碁と向かい合い……テンポの良いやり取りで展開し、ある種の青春小説としての構造と、人とテクノロジーの在り方を描くSF的な視点が見事に繋がり、これまた、傑作。
 短篇としては、ここ数年レベルでベストの一つ。
 また、今作を収めた短編集『超動く家にて』が秀作揃いで、お薦め。同作者の連作短編集『彼女がエスパーだったころ』も面白く、今年の当たり作家。
 今年は意識的に、ジャンルの境界線といった作家を読んでみようキャンペーンを行い、面白い出会いもありましたが(宮内悠介もその一人)、最近また、「そもそも自分の読みたいものはなんだ……?」病(定期的に表に出てくる持病)が発症しており、来年はダメ元で、最近摂取していないジャンルを手にとってみようかな、とも思うところ。
 ……まあそもそもジャンルとは何かといえば、「指標」であり「安心感」みたいなもので、こだわりすぎるのもよろしくないものなのでありましょうが。
 とりあえず現在、『メインテーマは殺人』(アンソニーホロヴィッツ)に手を付けたところ。……ええハイ、ガチガチの犯人当てミステリです(笑)