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野獣大解放

仮面ライダーウィザード』感想・第28-29話

◆第28話「盗まれたベルト」◆ (監督:中澤祥次郎 脚本:香村純子)
 見所は、使い魔を愛でるコヨミ。
 特になんという事のない日常シーンで“うるさい”×3が不在なのは久々のような気もしますが、静かな夜のひととき、がいい雰囲気でありました。
 そして、前々回で追加投入されるも就労を拒否していた新使い魔のゴーレムは、輪島の工房でお宝ボックスを制作し、基本は追加玩具要素なのでしょうが、劇中で何か役に立つのかどうか。
 前回ラスト、史上空前レベルの雑さで主人公にベルトを投げつけたのでお馴染み、白い魔法使いが真由と共に姿を消し、そもそもあの白いの何……? と両サイドで話題になるが、ワイズマンはあくまで「ファントムを増やし、再びサバトを開く」事を至上命題としてメデューサに引き続きゲート捜しを命令。
 ゲートとして狙われていたメガネの娘は海外の親戚の元に避難した事にされ、勿論、命を奪われるよりは良いに決まっているのですが、未成年の人生としては波瀾万丈ぐっちゃぐちゃで、「それなら良かった」で良いのやら……。
 そこはもう、一ヒーローにはどうする事もできない領域という観点もあるのでしょうが、昭和の昔から存在する“ままある穴”を埋めようとして、別のご都合主義が目立つ形で発生してしまっているのは、今作の悩ましいところです(穴を埋めるのに別の穴を掘っているので、トータルでの意味が薄い)。
 一方、海外の遺跡からビーストの装備に似た謎の装飾品が発見され、詳しい調査の為に帰国した研究員・中本に話を聞きに向かう仁藤だが、その仁藤がゲートだった事から、状況は錯綜。
 表の顔は警備員(或いはただの警備員コスプレ)のファントム・スプリガン(原典では確か宝の番人なので、番人繋がりでしょうか)に襲われる中本、ビーストのベルトと指輪を調査する中本、ぐでんぐでんに酔っ払っている内にベルトと指輪を盗まれる仁藤……がドタバタ多めで展開し、前回-前々回が重めだった為なのか、全体的に軽めの演出。
 後ちょっと、演出サイドで時間を潰す、みたいな場面が目立って、事情はわかりませんが脚本が練りきれなかった雰囲気も感じます。
 久々に液体サブミッションが炸裂するが、変身不能で生身の仁藤はグレムリンに追い詰められ、仁藤を助けながら戦うウィザードはファントムを押し切れないでいる内に、逃げそびれた中本はグールに囲まれ、あっちもこっちも大ピンチ!
 「古の魔法使いも、魔法が使えなきゃただのお荷物だねェ」
 グレムリンは嘲笑し、このピンチを打破できるのは……やはり赤い仮面の魔法使いV3なのか?! 次回――野獣輝く。

◆第29話「進化する野獣」◆ (監督:中澤祥次郎 脚本:香村純子)
 「手が足りない時は、これだ!」
 猫の手みたいな扱いを受ける増殖ウィザードにより魔法使い一同は窮地を脱し、ビーストベルトセット盗難の事情を中本に聞く凛子さん、その道のプロの手管と観察力により、あっという間に中本が怪しいと感づき、り、りりり凛子さんが、刑事らしい活躍を!
 消えるの?! 次回辺りに南樺太署辺りに異動になって番組から消えるの?!
 ……まあ一応これまでも、警察手帳を取り出す事で一般市民に話を聞かせる体勢を取らせるとか、公権力を振るえる立場は活用してきましたが、如何にも刑事らしい冴えを見せたのは、ほぼ初めてのような(笑)
 …………いやまあ、平成ライダー》最初の刑事キャラは、特技:無謀な突撃と射撃だったとか、そもそも初代『仮面ライダー』の刑事レギュラーは滝、とかの歴史もありますが、凛子さんも総合的に少しずつ刑事として成長している様子です……となると瞬平は一体どこへ進みたいのか、との格差がどうも大きくなってきますが。
 「認められたかったんだ……私だって」
 ダミー(ゴーレム制作)を見せて本物の元へ誘導する古典的なトリックに引っかかった中本は、かつて発見者の栄誉を上司に横取りされた過去から、ソラにそそのかされてビーストセットを盗んだ事を認め、やや過剰気味なリアクションが演技・演出ともにあまり好きなゲストではありませんでしたが、栄誉と命、問題の程度は違いますが、「仁藤の前にぶら下がる誘惑」の擬人化ともいえる存在であり、道を誤った仁藤のカリカチュアとして大袈裟に表現した部分もあったのかもしれません。
 そんな中本の「気持ちはわかる」と一貫して擁護する仁藤は魔力不足でとうとう倒れるが、晴人によるキマイラ退治は頑として拒絶。
 「おまえん中にキマイラが居る限り、苦しみ続けるんだぞ!」
 「それがどうした!! ……確かに、遺跡でキマイラに取り憑かれた時、やばいと思ったよ。でも俺、同時にワクワクしたんだ」
 仁藤の中で悪霊みたいな扱いになっているキマイラは、命を賭けた暴食の扉であると共に、かつてない未知への扉であり、この力とは何か? そこにある謎を解き明かす事に、仁藤は恐怖だけでなく、夢を感じている事を明かし、それは仁藤にとって、スリルとロマンが裏表となった「希望」でもあるのだった。
 「俺にとってキマイラは……でかいチャンスなんだ」
 仁藤お得意の「ピンチはチャンス」にも繋げて、命を賭けたリスクは大きいが、だからこそ、これまで見た事もないものに手を伸ばせている、と仁藤が語ると、そこに警備員ファントムが闖入。
 「大事な大事な心の支えは、金庫にでもしまっておかないと」
 シールド魔法でファントムの飛び道具をガードした晴人は、ダミーベルトを手にしてスプリガンを誘導。
 「仁藤! こいつは俺が下ごしらえして待ってる。だから必ず喰いに来い!」
 ……どうもこれまで仁藤の事を、悪い奴ではないが、呪いのベルトに手を出して死の宣告が頭でカウントされっぱなしな割にはどこか危機感の足りない奴、ぐらいに捉えていたとおぼしい晴人は、仁藤がキマイラという自身の抱えるリスクと向き合った上で、その絶望(ピンチ)を希望(チャンス)に変えて突き進もうとしている男、と認識を改める事で自身に通じるものも感じたのか、距離感がちょっと変化。
 また、仁藤の言葉を聞いた中本は、かつて自分が受けた仕打ちと同じ事を仁藤にしていたと気付くと、謎の発掘品と指輪を仁藤に託し、仁藤の抱える葛藤の擬人化ともいえる中本が“自分の目的の為に他者を害さない”事をもって、かつての仁藤の選択について補強。
 だが、装備一式を手に外へ飛び出した仁藤はビースト変身するも魔力不足でグールにさえ苦戦し、一か八か、中本の見つけた指輪を用いると、インナースペースでキマイラと対面する。
 「俺は危険な賭けには乗る主義なんだ。ピンチはチャンス。必ず勝つ。だからキマイラ! おまえも付き合え!」
 「…………ハッ、いいだろう。口を開けて待っているぞ!」
 ビーストは新たな指輪を解放する事により現実世界でキマイラの力を発動し、蒼い炎をまとうスーパーライブディメンションにより新たな姿・ハイパービーストへと変身!
 「ワオ! ……派手!」
 「さあ一気に食い尽くすぜ!」
 青地に金アーマー、瞳と胴体のラインが赤、とウィザードの感想通りにド派手な色彩のHビースト、胸アーマーが正面向きのキマイラの顔を模しているようなので、胴体の赤いラインは舌ないし口の中で、まさしく大口開けて待っているフォームでありましょうか。
 ビーストがハイパー化すると、石化していた謎の発掘物もキンキラキンのど派手な銃の姿を取り戻し、連射攻撃でグールを蹴散らすと、回転&ヒラヒラ成分は前腕部から垂れ下がるフリンジで確保され、俺が福井のプレスリー
 「古の魔法使いも進化した! これでもファントムを増やし続けようとするのかなぁ……ワイズマンは」
 「そろそろメインディッシュだ」
 戦いを見つめるソラがワイズマンの名を出したところで視線を鋭くする中、必殺攻撃を放とうとするHビーストはキンキラ銃に上手く指輪がはまらずに困惑し、説明書はWEBで!
 反撃を受けるHビーストだが、指輪の変形ギミックに気付いてようやくフィニッシュ可能になると、銃の鏡部分にキマイラの姿が浮かび、大口キマイラキャノンでスプリガンを消し飛ばして、ごっつあん。
 新たな進化を遂げたHビースト、今後、見慣れてくる可能性もあるのでデザインについては一旦保留するとして(青と金は相性がいいにしても、色の組み合わせが前作のメテオストームと同じなのは、流行りの傾向があったのでしょうか……?)、戦闘スタイルが全く変わってしまった点はだいぶ困惑。
 元々マントの差別化が(特にウィザードに比べると)今ひとつ弱かったビーストですが、思い切ったモデルチェンジの結果、クラス特性ごと全く違うライダーになってしまい、一体なにがどうしてこうなったのか。……倒したのも、それなりに強かったとはいえ一般ファントムですし、新フォームのお披露目としては、やや劇的さに欠けるデビュー戦となりました。
 仁藤の“若さ”に打たれた中本(仁藤にとっての中本がそうであるように、中本にとっての仁藤も自身の幻影なので)は、誰かを見返したり、誰かの賞賛を浴びる為ではない、追い求めていた夢を取り戻すと遺跡の発掘へ戻る事になり、それを見送る晴人たち。
 「思い出したんだ。私の夢は、世間に認められる事じゃない。未知の遺跡の謎を、解き明かす事だったと」
 そこでアップになった晴人の視線が泳ぐので、んん……? と思ったら、
 「あの、晴人さんの夢ってなんですか?」
 「……今は…………ファントムを倒す事」
 瞬平の問いかけに素っ気なく応えた晴人は、表情を消すとくるりと背を向けて足早に去っていき、真由編で白い魔法使いの胡散臭いムーヴに焦点を当てたのに続いて、これまでほとんど語られてこなかった“魔法使いになる前の晴人”の姿が浮上する気配を見せてつづ……く前に、薄暗い洞穴の中、鎖で拘束された男――ナイトウさん――の前で薄笑いを浮かべるソラ。
 「僕は全てを知りたいのさ。サバトの事、魔法使いの事、ワイズマンの知ってる事、全てをね。くふふふふふふ」
 果たしてソラが求めるものとは何か、ナイトウさんとは何者か、次回――凄まじく不気味な影が現れると共に、晴人に危機が迫る?!