東映特撮に踊らされる駄目人間の日々のよしなし。 はてなダイアリーのサービス終了にともない、引っ越してきました。
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力と技の指輪が回る

仮面ライダーウィザード』感想・第27話

◆第27話「姉と妹」◆ (監督:諸田敏 脚本:きだつよし)
 悪の幹部のピンチで引っ張る逆セオリーから、後編の冒頭であっさり危機を脱するのはセオリー通り(笑)で、指輪の魔法使いのお株を奪うローリング頭髪アタックで増殖ウィザードを蹴散らしたメデューサは、敢えて人間の姿になると、真由へと近づいていく。
 「会えて嬉しかったわ、真由」
 「美紗ちゃん……やっぱり美紗お姉ちゃんなの?!」
 ユウゴ事件を経ている凛子が必死に止める中、ミサは真由に背を向けて去って行くとゲートの担当をソラに譲り、この動きで事の真相がだいたい判明すると、残りはメデューサ一人三役の熱演を中心に進み、「ライバルポジション」とか「後に仮面ライダーになる予定」とか抜きで、純然たる敵幹部の存在感をじんわりと出していって、芝居の幅も広げさせてみるのは、今作の好きなところ。
 仁藤と瞬平がゲートである真由友人のガードにつく事になると、晴人らは面影堂で真由と互いの情報を交換し、真由が海外留学中に、両親と姉・美紗が行方不明となり、少なくとも美紗はファントムとなっていた時系列を整理。
 帰国した真由は、いつか家族と再会できる日を希望に寮暮らしをしていたのだが無情な真実を突きつけられ、翌日――真由友人に向けて放たれたグールを相手に、「ブレックファストタイムだ!」と変身するビーストの前に、グレムリンも登場。
 「今日のメインディッシュは、おまえだ!」
 「食べてみれば~」
 言い回しとポーズが、仁藤ならずとも腹立たしい(笑)
 連絡を受けた晴人も救援に向かうが、さらっと物質透過能力を用いるグレムリンが二刀を取り出すとウィザードもビーストもまとめて叩き伏せられ、
 「心配ご無用だって?!」
 「うるせぇよ!」
 と言い合いながら、両者が指輪を用いる動作がシンクロするのは、今回の地味に面白かったポイント。
 緑ザードと牛ビーストの、気が合っているのかどうかよくわからないけどなんちゃって連携攻撃を受けたグレムリンは、状況を引っかき回す為にメデューサが隠していた一つの真実を告げ、晴人に嘘をついて真由が向かっていたのは、美紗を演じるミサが待つ稲森家。
 「美紗ちゃんなのね……やっぱり……」
 「そ、あなたのお姉さんよ」
 失われた家族の時間を示す真っ白な部屋において、映画監督回では「ゲートの知り合いが既にファントムである(死んでいる)事を隠す」、フェニックス回では「フェニックスユウゴに生前の人格を重ねてしまう」と来て、今回は「ファントム素体に近しい人間が怪物から人間に戻せると考えてしまう」合わせ技。
 ミサの巧みな誘導によって真由は、留学前に美紗から貰った、家族を象った飾りが心の支えになっている事を明かし……
 「あたしも嬉しいわ……あなたの心の支えがわかって」
 「え?」
 「――これであなたを絶望させられる」
 ……使っていた、頭ーーーーーー!!


 「俺は暴れるしか脳がないんじゃない! 暴れたいだけだ!」
 「だったら見返してやる事ね。ちゃーんと頭を使った作戦で」

 前回、いざ自ら絶望ミッションを担当したら物凄く雑だぞ……とか思っていて、すみませんでしたーーー!!
 太陽のフェニックスに捧げるちゃーんと頭を使った作戦により、真由の心の支えを粉々に砕いたミサは、稲森両親はメデューサの手によって殺害されており、もはや真由の家族は完全に失われている事を告げる。
 「あなたのだーい好きなパパもママもお姉ちゃんも……みんなこの世には居ない。――さあ、絶望してファントムを生み出しなさい?」
 一人二役のシーンがだいぶ長い、凝った撮影で(一役ずつのまとめ撮りでしょうから、役者さんの感情の置き方も大変そうで……)、ファントムはどこまでもファントムでしかない事が改めて示され、素体の「器」とファントムの「中身」は全く別物である事を繰り返し強調するのは、今作の特徴的なところ。
 ファントム=悪の改造人間は、改造された時点で“別の存在”と位置づけられる一方、絶望に耐え抜いた者だけは、魔法使い=仮面ライダーになりうる、という本歌取りには“死と再生”も結びつけられていると考えて良いでしょうが、徹底して“死”を(間接的に)表現する事で、死者としての怪人と死を乗り越えた者としてのヒーロー(恐らく宇都宮P的には『ファイズ』への視線は入っている)が対比されており、この点のこだわりは前後の作品と比較検討してみたいところでもあり。
 『W』『オーズ』『フォーゼ』と続いた路線から一度切り替えたい、というのもあったのでしょうが、「怪人」存在をどう描くのか? について、かなり力の入っている作品ではあるなーと――主題は、その鏡像としての「ヒーロー」にあるとしても。
 グレムリンのリーク情報から、真由がゲートだと知って凛子を道案内役に稲森家に突入したHDウィザードは、メデューサと戦闘開始。既にひび割れの始まっている真由を救わんと増殖を始めようとするウィザードだが、焦りからメデューサの攻撃をまともに受けてしまい、大苦戦。
 「駄目よ、よそ見しちゃ」
 髪の毛拘束で魔力を吸い取られたウィザードの変身が解けると割と凄い顔で晴人が地面に倒れ、迫り来る真由からのゲート誕生の時――
 「駄目だ……絶望しちゃ……!」
 「指輪の魔法使い、新たなファントムの誕生を目に焼き付けなさい。そして、一緒に絶望して、あなたもファントムを生み出すといいわ」
 「貴様……ッ」
 厭味たっぷりのメデューサが最近下降気味った株価を回復させながら歩み寄ると、ひび割れの広がる真由の体からは魔力の放出が始まり……思い出の光景が亀裂に呑み込まれて消滅していこうとしたその時、突如、反転する絶望。
 「?! ……は? 馬鹿な!」
 「……ファントムを押さえ込んだ」
 「晴人くんと同じってこと?」
 「美紗ちゃんが、お姉ちゃんが助けてくれた……」
 姉の言葉を強く思い出した真由は、それを永遠に失った事を絶望するのではなく、その為にこそ生きる意志と希望を取り戻し、太陽と月を寓意とした「裏表」は今作の主要なモチーフですが、“人と人の繋がり”が「絶望」を呼び込む事もあるかもしれないが、裏を返せばそもそもそれは「希望」なのだ、とメデューサの企みを反転。
 「何故だ? 何故そんな事が」
 「美紗ちゃんのフリをしただけのあんたなんかに、私の人生を終わりにさせない!」
 ここで真由が、目の前のメデューサは、美紗の皮を被った化け物にすぎない、ときっちり幻影に訣別を告げるのが“再生”の象徴としてびしっとはまり、そこに出てくる、事態をずっと使い魔で窺っていた胡散臭すぎる白い人。
 …………いや今回の成り行きを考えるとこの人、これまでもずっと、ファントム絶望ミッションで、出るかな出るかなーゲートからファントム出るかなー、をずっと茂みの間から見ていた事になるわけですが。
 「よく希望を捨てずに、生き残ったな。おまえは、魔法使いになる資格を得た。私と来る事が、おまえの家族を奪ったファントムを倒す、ただ一つの道だ。どうする?」
 強烈な爆発魔法でメデューサを吹っ飛ばした白い魔法使いは、真由の復讐心を焚き付けまくり、2月2日、稲森美紗を殺したのはおまえか?! お・ま・えだな?!
 「……おい待て!」
 「決めるのは、彼女自身だ」
 いやそれどうなの、と反射的に止めに入る晴人だが、白い魔法使いに切り返されるとそれ以上の言葉はなく……真由が選んだのは、週刊白ケル編集長の手を取る事。
 「……行きます、私」
 「……真由ちゃん」
 「いいんです。これは……私が決めた、始まりだから」
 二人はテレポートの魔法で姿を消し、オールドラゴン発動時の台詞が、某超有名マンガ(今頃ですが新作『黄泉のツガイ』超面白いですね……!)を思わせた白い魔法使いさん、今度は某アメコミ原作実写ドラマシリーズの某博士みたいなムーヴをしている可能性が浮上してきましたが、アジトの中は監視カメラで一杯なのでは。
 退場したフェニックスに続いてメデューサの素体について掘り下げると共に、フェニックスには切り札の石化光線を破られ、ソラには引っかき回され気味で、このところ背後に控える実力者ポジションの立場が危うくなっていたメデューサの株価を絶望ミッションの成功寸前により回復させると、人の心の持つ強さを描く事で格を落としすぎずに状況を逆転させたところから、そろそろ後半戦へ向けて、白い魔法使いの胡散臭いムーヴに繋げたのは、見事な盛り込みでした。
 また、メデューサのゲート感知がメデューサの専売特許なので、究極、フェイクを仕掛けられると晴人たちにも判断がつかない、というミスディレクションは(真由友人は実際にゲートだったようですが)説得力があり、使いどころも良かったです。
 果たして真由は、ズバッと参上、ズバッと解決する、赤い仮面の魔法使いになってしまうのか……白い宝石頭の思惑は掴めないまま、次回へつづく。