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アイツは空のどこから来たのか

 本日2本目。

ウルトラマンブレーザー』感想・第14話

◆第14話「月下の記憶」◆ (監督:田口清隆 脚本:小柳啓伍
 パイロット版の監督×脚本に戻って、2クール目。
 OP映像の大幅変更を期待していたのですがそれはなく、ガラモンソードの映像が入ったぐらいだったのは、ちょっと残念。
 衝撃波で市街地に複数の被害をもたらしている未確認航空現象が飛行怪獣デルタンダルと認定され、出撃準備が急ピッチで進められる中、
 「ゲバルガ戦以降、上層部がぴりついている」
 とさらっと言わせておくのが、今作の上手い所。
 情報収集の為に司令部へ向かったエミは……サーバールームの隙間にはまりこんで、明らかに不正な処理で機密情報にアクセスしていた(笑)
 宇宙怪獣に関係する情報を探っていたエミは機密資料V99に辿り着き、3年前――第66実験施設で発生した爆発事故と、その施設管理者・土橋祐(どばし・ゆう)の名前が浮かび上がる。
 一方、飛行怪獣にアースガロンで挑むスカードだが、マッハ9で空中を飛び回る怪獣を相手に空中戦で太刀打ちできないまま帰投を余儀なくされると、参謀長には今日も感じ悪く怒鳴り散らされ、スカード解体の危機は、まだ去っていなかった。
 ……スカードが敢えなく解体され、スクラップにされたアースガロンが、宇宙怪獣由来の素材と融合する事で怨念と共に復活してラスボスと化す展開は、ちょっと見てみたい気はしなくもなく。
 デルタンダルの出現地点の分析から、怪獣が世界各地の積乱雲から積乱雲を移動している事が判明する一方、V99を調べるエミは、3年前の事故現場にゲントが居た事と、行方不明者リストの中に父親の名前を発見し、スカードによる対怪獣作戦とエミ主体のスパイサスペンスが同時進行していく趣向。
 ゲントとブレーザーの接点として、これまでも触れられてきた“3年前の事件”に、後半戦のスタートからぐぐっと迫り、「第66実験施設」の名称は、いかにも「エリア55」を想起させますが、ミスディレクションの可能性も含め、ブレーザーさん、迷子になったところを地球人に確保されて研究されていた……?
 参謀長の忠告を無視し、かつて防衛軍日本支部の長官を務めていた土橋について調べ続けるエミは、黒服の男に連れられて、土橋と接触
 ジムでトレーニングをしながら、表面上は鷹揚に、しかし明らかに正面から向き合うほどの価値は無い相手、と暗に示す土橋は、その隠然たる権力と余裕をエミに見せつけ、ちょっと懐かしい感じも漂う政治的黒幕感満載。
 「ま、好きに調べ回ったらいい。君は優秀だから、きっと、真実に、辿り着くだろう。あの実験に関して何かわかったら、私にも教えてくれ。いや~、アレに関しては、私もよくわかってなくてねぇ」
 「あの実験の主任研究員が、行方不明になっている私の父でした」
 「優秀だが、反抗的。父親そっくりだ」
 何を知っていて、何を知らないのか、徹底的にエミを煙に巻いたまま土橋が立ち上がると、周囲でトレーニングしていた人々が全てその関係者で一緒にゾロゾロ去っていく、のはオーソドックスにして効果的な大物ヤクザムーヴ。
 恫喝手前の警告を受けたエミが、過去の真実を覆うベールの厚さを見せつけられていた頃、デルタンダルを待ち伏せしたアースガロンは再度の空中戦を展開。扁平なステルス戦闘機体型の飛行怪獣との夜間の空戦が今回の見せ場なのですが、個人的に画面が暗いのがあまり得意ではない為、映像的にはいまいち楽しめず。
 アースガロンがヤスノブの隠し球・有線式誘導ミサイルを命中させると、速力の落ちた怪獣にブレーザーさんは機動予測から虹輪をぶつけ、続けてガラモンソードをセットアップ。
 空中で怪獣に組み付くと、首根っこを押さえ込んで柄で頭部を打撃する辺りには、やはり怪獣ハンターとして、赤い赤いアイツとの血の繋がりを感じさせます。
 最後はソードからの電撃で怪獣を仕留めたブレーザーは、勝利の舞いを納めると飛び去っていき……特に戦闘不能になったわけでもミサイルが通用しなかったわけでもないので、今回に関しては適度に痛めつけて地上に墜としてから、アースガロンにトドメを譲る組織を守る上司ムーヴがあっても良かったのでは……?
 参謀長は実は、全てを把握していてゲント隊長にそれとなく出来レースを要求しているのでは……?!
 真意はさておき、「モッピーのアンテナを直していたらウルトラマンに鷲掴みにされ気がついたら山中に取り残されていました。大変反省しています……」と隊長が居残りして報告書を書いていたところにエミが姿を見せ、ゲントが土橋の息のかかった人間かどうか、それとなく探りが入れられると、父親に関してエミが強い思い入れを持っている様子を掘り下げ。
 ゲントの許可を得て、深い闇を探り出そうとするエミは、現在も厳重な監視体制の元にある最高機密エリア・第66実験施設を直接調べようとするが、その前に姿を見せたのは、参謀長。
 「本来なら……スカードは解散。おまえは懲罰房行きだ」
 ハルノ参謀長はエミ父の親友で、エミからは「おじさん」と呼ばれる旧知の関係と明らかになり、エミが防衛軍から更にスカードに引っ張られたのはどうやら、参謀長の口添えがあった模様。
 「エミ……これ以上は危険だ」
 参謀長の立ち位置の一部が明らかになると、その言葉の持つニュアンスも変わり、エミをエリア66から遠ざけようとする参謀長だが、エミはこの地で一体何が起こり、父はなぜ姿を消したのか、その真実を見つけるまでは引き下がらないと宣言。
 「……下がれ」
 「絶対に見つけます」
 果たして、闇の奥底へ月の光は届くのか――これまで、振る舞いは陽気だが本心を掴ませないクールさのあったエミが肉親について感情を剥き出しにすると共に、立ち回りの真意が見えづらい参謀長の抱えた、秘めた思いと目論見があるらしき事が示唆されたのは、2クール目に入ったところでキャラクターの情念が見えてきて良かったところ。
 元々、スカード設立の経緯には裏がありそうでしたが、組織の暗部が物語の背景と密接に繋がっている可能性が濃厚となり……なんというか、明るい『ネクサス』ぽさが浮上(笑)
 陰謀劇は陰謀劇の面白さがある一方、あまり焦点をそちらに合わせすぎると(裏の動きが気になって目前の勝利がスッキリしない展開が続くなど)怪獣退治物としての面白さを削いでしまう本末転倒に陥りかねないので、上手くバランスを取っていってほしい要素です。
 ここまで、“謎の超存在と共生する事になった人間”の立場を通して、シリーズでもやや珍しい形――宿主とウルトラマンの意思疎通は不明瞭かつ、ウルトラマンの目的意識がとにかく不明――で「ウルトラマンと人間」の安定しているのか不安定なのかさえわからない関係性を描いてきた今作ですが、「地球人類のウルトラマン化」について、人為的工作が施されていた可能性も出てきて、ここからどんな形で「ウルトラマンと人類」を書き進めていくのか、楽しみにしたいと思います。