東映特撮に踊らされる駄目人間の日々のよしなし。 はてなダイアリーのサービス終了にともない、引っ越してきました。
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自転車ははがねのつるぎ

『JUDGE EYES』クリア

 む、村瀬ぇぇぇぇぇぇぇぇっ?!
 ↑今作で、一番衝撃的だったシーン。
 (元)弁護士を主人公にしているだけあって、基本的には「法治」を意識しているというか、“正しさ”と「法治」をどう繋げるのか、が一つのテーマではある作品なのですが、《龍が如く》シリーズの派生作品だけあって、ヤクザのやる事については“どっちもどっち”が緩く適用されがち(笑)
 私としては駆け足気味のプレイで、プレイ時間は約50時間。フレンドは47人。クリアしたサイドケースは48件でフィニッシュとなりました。
 好きなキャラは、1番が東で、2番がさおりさん。
 好きなポイントは、八神の雑すぎる変装と尾行。
 なぜ八神さんは、尾行の最中に隠れようと思ったサイネージを思い切り飛び越えるのー?!
 八神、特定の障害物は格好良く飛び越える機能がついているのですが、いまひとつ、基準がわかりません。
 一度、どこまで越えてゆけるのか色々なところにぶつかってみたら、釣り堀の中に無表情で突っ込んでいったのは、面白かったです。
 ドンキで買ったコスプレ衣装で変装する探偵・八神を主人公に複雑な利権が入り交じった事件を追う今作、非常にテンポ良く進行するメインストーリーと、合間に詰め込まれた膨大な“遊び”の要素をプレイヤーが自身でバランスを取りながら進めていくゲームデザインはよく出来ており、特にメインストーリー側の導線として、「○○に行く」とか「○○と話す」とか、ストーリー上の小さな目標を達成するだけでドンドン花丸が貰える「お遣いポイント」制度は上手かったなと。
 序盤はアクションの癖が掴めなくて苦労しましたが、スキル強化が進み、EXアクションのリソース配分のコツが掴めてきてからは戦闘も楽しくなってきて面白かったです。
 チンピラを大人げなく自転車で殴り続ける八神さん35歳も、好きなポイントの一つ。
 物語は、かなり重い社会的テーマを扱いつつ、最後はアクションアドベンチャーとして気持ちよく殴り合いで収束させる事にこだわった作りになっており、無理に無理を重ねたらそれが道理になる、みたいな組み立ての部分もありますが、それを貫く事で作品世界を成立させていて、ゲーム面でもシナリオ面でも最終的な満足度の高い一作でした。
 以下、最終盤のネタバレ含めてストーリーについての雑感。
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 華々しい成功を収めた若手弁護士が、一つの事件で心に深い傷を負い、失意の中でもがき続けるところから始まる今作、徐々にその経歴が明かされていった八神が、最終盤でようやく自らの「罪」と向き合ってくれたのは安心したところで、ずっと微妙な違和感のあった杉浦の正体にも納得。
 真の敵は法や権力のサイドに存在しており、法を守る側に居ると思った人間が法をねじ曲げ、強大な権力の前に真実が踏み潰されそうになったその時、共に戦ってきた仲間ばかりではなく、かつての敵が逆に手助けをしてくれるのは定跡ですが、最初に殴り合った競馬好きの男を皮切りに、泉田検事、村瀬のカシラ……と、敵対的な行動や厭味を飛ばしてきた相手が順々に手を貸してくれるという、順番が非常に効果的な組み立てでした。
 “実は真っ当”枠は誰になるのかな……とは思っていたのですが、八神はもう少し、泉田検事に対する内心の態度を反省した方がいいと思います。
 正直、主人公の八神はそんなに好きではないのですが、海藤さんを始め、東、杉原、星野くん、と周囲を取り巻く(事になる)メンバーが、それぞれいい味を出していたのは、良かったところ。
 星野くんとか最初に見た時は絶対、表向きはニコニコしながら内心では(このクズ弁護士が、いつまでも身内気取りで事務所に顔出してんじゃねぇよ。俺の背広にその負け犬臭がつくだろうがよぉぉ)みたいに裏アカで呟いていて、後半に入った辺りで「まさか元弁護士が不法侵入で現行犯逮捕とか、笑っちゃいますね八神さーん……今、どういう気分ですか? ぷぷぷ」みたいな感じで手ひどく裏切ってくる奴だ……! と思って心理的に距離を取っていたのですが、まさか、あんな方向に面白くなるとは(笑)
 意外と根性の太かった星野くんが、切羽詰まった状況で脆さを見せた後に、最後は論戦より暴力に向かった八神に後を託されて殻を破るのも、目配りがあって良かったところ。
 ……にしても、変にキャラ付けしたり真っ当に口を挟ませるとノイズになるというシナリオ上の判断は正しかったと思いますが、あの滅茶苦茶な進行の裁判を淡々とこなす裁判長、何者。
 OP時点から期待していた、木村拓哉谷原章介の殴り合いがあって満足でしたが、《如く》だし、無闇に脱ぐと信じていたのに……!
 と考えて、ヤクザバトルは入れ墨を見せる為に上着を脱ぐ必然性が生じるので、非常にスマートに決戦フォームを持ち出せるのだな、と納得。
 惜しむらくは、やたら体格がいいので、てっきり終盤に殴り合いになると思っていた一ノ瀬事務次官との決着は法廷で付いてしまった事ですが……
 「こう見えて私、学生時代はアメフト部で主将を務めていましてね……お望み通り見せてあげますよ、厚労省で同期全てをねじ伏せてここまで上り詰めた私の本当のパワー……これが、高級官僚にのみ許された特権、いや、秘拳だ八神ぃ!」
 (どうなってるんだ厚労省?!)
 は、見たかったです。
 シナリオについてちょっと引っかかった部分を二つ挙げておくと、一つは、最終盤にちゃぶ台をひっくり返した森田検事正の存在が、フェードアウト気味に終わってしまった事。
 終盤、全体のテーマを掘り下げながら八神を徹底的に追い詰める為の仕掛けの一つでありますが、予想がついた上でやや繰り返しがくどくなってくる状況だっただけに、森田検事正とはもう少し劇的な決着は欲しかったなと。
 それこそ、序盤に真冬を狙う暴漢と勘違いされた八神が腕をねじり上げられるシーンがあったので……
 「いいでしょう……君とは腹を割って、拳で語り合うしかないようだ。見せてあげますよ、東京地検に代々伝わる容疑者制圧術……拳殺の構えをね」
 (どうなってるんだ検察庁?!)
 はちょっぴり期待していたのですが、殴り合いに至る理由が無くなってしまったなと……勿論、ラスバトルはvs黒岩で納得ではありますし、これはこれで、法の執行機関の側にもしっかりと正道が機能している事を示す意味はあったのでしょうが。
 もう一つは特に最終盤、3年前の事件の被害者について八神が「女の子」「女の子」を連発する点で、これは今作に限った話ではないですし、八神としてはそこまで不自然ではないものの、歴とした社会人女性を「女の子」と呼ぶ事で、悲劇性その他の効果をより高めようとする話法そのものが好きではないので、少々残念だったところです。
 八神さん、基本的に女性への対応は色々アレな部分はあるのですが、特にここは全体のテーマとも関わる部分だったので勿体なく感じた点……ただ総合的には上述したように満足度は高く、ラスト、「探偵だから」真実に辿り着けたのだと八神が受け止めるのは美しい着地で、そこからEDクレジットの猫探し騒動は、気持ち良い画でありました。
 後、古典的な推理アドベンチャーの要素を取り込もうとする節が見えた作品として、「死体から持ち去されたものには意味がある」ミステリの常道をきちっと守ってくれたのは、良かったところ。
 《如く》ベースのアクションアドベンチャーに、やや面倒なところはありつつも探偵要素をどう組み合わせるかの工夫もあって、面白かったです!