東映特撮に踊らされる駄目人間の日々のよしなし。 はてなダイアリーのサービス終了にともない、引っ越してきました。
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仮面ライダーガッチャード』感想・第1話

◆第1話「ガッチャ! ホッパー1!」◆ (監督:田崎竜太 脚本:長谷川圭一/内田裕基)
 「やっぱり完成してたんだね、暗黒の扉を開く鍵」
 「違うな……これは生と死を司る、希望の鍵だ」
 古代エジプト×ゴスロリ風の衣装に、邪悪なぬいぐるみの顔を想起させるフードを被った不気味な女たちが謎の男を襲い、悪役のデザインはまず、掴みで面白かったです。
 特に、3人のリーダー格を思わせる中央の少女が、小学生ぐらいの容姿・毒々しい化粧・派手な黄金のティアラ、がそれぞれ引き起こす不協和音により、生理的嫌悪感を引き出される気持ち悪さ。
 謎の男は、カードから精霊のようなものを召喚して女たちに抵抗し、あまり凝ったデザインにすると動かすのが大変な為か、召喚獣は全体的にポップな感じとなっており、アバンタイトルの印象は、肉弾《遊戯王》。
 「探せ……運命に導かれし者を、探し出せ」
 スモッグジョーキーもとい機関車を召喚して別の世界に逃走した男がバッタと機関車をいずこかへと放つと、場面変わって前髪もっさり系の主人公が登場。
 ガッチャ! を求めて創作料理に励む、キッチンいちのせの一人息子・一ノ瀬宝太郎は、授業中に人の事をポエム野郎呼ばわりしたあのクール系美少女気取りに一言云ってやらねば気がすまん、と後を追うと、少女がまるで魔法のようなものを使う光景と、喋るバッタの妖精を目撃。
 そこで入ったCM明け、宝太郎友人のオカルト好きが駅のホームで愚痴るシーンでサブタイトルが入るのですが……いったいどうして、このタイミングでサブタイトルを入れたのか。エピソードの真ん中手前ぐらいの半端なタイミングにしては、特に面白みも劇的さもなく、これならまだ、CM前に入れた方が良かったように思えるのですが。
 拾ったバッタの餌付けに失敗した主人公は、喚くバッタをナップザックに詰め込んで、誘拐。
 したところを魔法少女に見とがめられ……何故この少女は、どこかの部屋に入った後に、また制服と通学鞄で外をうろついているの……?
 「今の鳴き声……まさか、君」
 通報寸前、そこにやかましい機関車が走ってくると、少女は指輪を人差し指に嵌めかえてマント付きのコスチュームを身に纏い、本当に魔法少女でしたが、魔法の文言を凝ったタイポグラフィで画面上に乗せるのは、面白いアプローチ。
 「離して! ケミーを止めないと!」
 「無理だろ!」
 「無理でもやらなきゃ! それが私の、錬金術師の使命だから!」
 迫り来る機関車から宝太郎は少女をかばって轢かれ……かけて、辛くも脱出(……余談ですが、「ほうたろう」という音はどうしても、米澤穂信の《古典部》シリーズを思い出してしまいます)。
 「こんな事してなんのつもり!?」
 「使命だかなんだかしんないけど! 九堂だけおいて逃げるわけにはいかねぇだろ」
 「……君、名前は?!」
 「一ノ瀬宝太郎だ!」
 前作が、n度目の異世界転生で俺だけLVアップしながら攻略本を持っている系主人公だった事との差別化もあってか、わけあり風ヒロインにからんで非日常に首と足を突っ込んでいく現代バトルファンジーにおける伝統的正攻法な作りと主人公といった感。
 それなり以上に高い身体能力を見せ、ようやくヒロインに名前を認識してもらえた直後、機関車にぱっくりされた宝太郎は、バッタと機関車に導かれるようにして、空に色とりどりの液体が入ったフラスコと、尻尾を加えた蛇――永遠の円環ウロボロス、そして数多のカードが並んで浮かぶ不思議な世界に辿り着き、姿を見せる冒頭の男。
 「感じるか、ケミーの魂を。ここに来たという事は、ホッパー1とスチームライダーが、おまえを認めたという事だ」
 傷だらけの男は一方的に語り始め、あ、なんかこの人、凄く、駄目な人なんじゃないかな……。
 「このドライバーを……お前に託す!」
 傷だらけの男は、オレンジ色の箱を一方的に差し出し、うん、多分この人、凄く、駄目な人だな……。
 「……なんですか、これ?」
 「それは、未来への、希望だ!」
 「――いや。今あるのは、絶望だよ」
 説明しない男の抽象的なポエムをさえぎって現れたのは、黒服三人娘。
 「そのドライバーが、こいつらの手に渡れば、世界は滅ぶ!」
 男は宝太郎、というかドライバーを守って三人娘と死闘を繰り広げ、アバンとここでそれなりにアクションに尺を割くのですが、1話限定という事だからなのか、男の振るう剣があまりに簡素な作りだったのは、雰囲気出してとしては少々残念だったところ。
 いよいよ追い詰められた男は、ドライバーを手にした宝太郎の方を振り向き――
 「少年、今よりおまえの字(あざな)は、“仮面ライダー”だ!」
 ……わぁお、半強制で巻き込んで、問答無用で呪物を手渡して、強制的に“名付け”で縛ったぞ!
 「仮面ライダー」名称の劇中持ち込みとしてはかなりえげつない部類というか、魔術名を与える事によって受け取り書に同意のサインを貰わないまま英雄の宿業を背負わせたようにしか見えませんが、男の指が光り輝くと、ドライバーを強制装着させられた宝太郎は変身モーションをインストールされ、名前も知らない初対面の少年に未来を託した男が三神官ファイヤーに消えるとカードの絵柄も次々と消滅していき、ドライバーを手にしたまま宝太郎は元の世界に帰還。
 「……俺…………“仮面ライダー”らしい」
 「へ?」
 「凄くでっかいもの、託されちゃったみたいだ」
 同級生の奇天烈魔術も、巨大なバッタの妖精も、どこでも走る機関車も、不思議な異世界も、託された未来も、割と鷹揚に全てを受け止めていく宝太郎がおもむろにドライバーを腰にはめると、空間の亀裂から妖精さんたちがこの世界へと飛来。
 「嘘でしょ?! ……失われていた、101体のケミーが、全て解放された……」
 街に妖精パニックが巻き起こる中、三神官が姿を見せると宝太郎に襲いかかり、衣装は古代エジプト風ですが名前がギリシャ神話の運命の女神由来なのは、後々、ヘルメス・トリスメギストス――「三重に偉大なヘルメス」の名を持つ、エジプトのトート神とギリシャのヘルメス神を合成して創造された神人にして偉大な魔術師――辺りをキーに背景が繋がる予定?
 三姉妹の一人クロトーは、カマキリの妖精を飲み込んで異形の怪人へと変貌し、巨大なカマキリアームと、胸の前で組んだ人間の腕が別々にあるのは好みのデザイン。
 近年の路線からすると、ミイラモチーフ(?)の素体に、ケミーの外装を被せる形の怪人になっていくのでしょうか。
 「ケミーの掟! 人の悪意に触れさせてはならない!」
 「悪意……確かに感じる。最悪にどす黒い」
 クロトーさんが「人」なのかどうかはさておき、ここで“悪意”が強調されるのは脚本の長谷川さん好みを感じさせますが、人の悪意をどう描き、それに“主人公がどう向き合うのか”(こちらこそが大事)を描くのは割と鬼門なところがあるので、スポットを当てるならば巧く捌いていってほしい要素です。
 「渡すか! これは俺に託された! ……そう――ガッチャードライバーだ! そして俺は! 仮面ライダーガッチャードだ!!」
 少年は、図らずもそれに“名前を付ける”事でドライバーを自らの力とし、一種のリアリティ付加として、「ブランドタイトルを劇中の固有名詞として持ち込む」手法は、作品ごとの工夫が面白さになる一方で「それそのものが目的化してしまう」きらいもあった中で、“名前を付ける”――“固有の名詞を与える”事そのものに世界観と繋げた物語上の意味を乗せてきた(と思われる)のは、好きなアプローチ。
 果たしてそれは、烙印なのか聖痕なのか、「仮面ライダー」の名が呪いになるのか祝福になるのかはこれからの主人公次第、というニュアンスもありそうですが、2枚のカードをベルトに収めて悪魔合体させる事によりスチームホッパーが生み出されると、主人公もそれに融合して怪奇バッタ生物が誕生…………安易な魔法の実験、良くない。
 ある日、カードを使うと私は、バッタになっていた――にまで適応してみせた宝太郎が再び危機に陥ると、改めて人型にアーマーを装着する形で、蛍光ブルーの色鮮やかな、仮面ライダーガッチャード:スチームホッパーが誕生し、胸に機関車、頭にバッタ、はスッキリしたモチーフの取り入れ方がバランスの良いデザイン。
 自前の目とは別にバッタの複眼をおでこにずらしてゴーグルに見立てているのは、どうしてもキラメイシルバーがちらつきますが(笑)
 「今度はこっちの番だ! たっぷりお返しするぜ!」
 俺のターン! となって、カメラが変わると急に画質が落ちすぎるのは気になるところで、没入感が削がれてあまり好きでは無いのですが……あれこれ織り交ぜながら肉弾戦が展開。
 今作、長く《スーパー戦隊》でアクション監督を務めていた福沢博文がアクション監督に起用されており、『ルパパト』の殺陣は近年の東映ヒーロー作品で最高峰だったと思っている身としては、《仮面ライダー》のアクションに新しい切り口を持ち込むのは期待したい部分。
 意外と好戦的だったが戦いは素人のガッチャードに、錬金術師のサポートが入ったのは目配りの良かったところで、銃器を取り出して撃ちまくったガッチャードは、怪奇バッタワープを利用した超高速移動による横っ飛びの必殺キックでカマキリケミーを撃破すると、解放されたカマキリの妖精をブランクカードに回収。
 「いいなお前……たっぷり地獄見せてから、消してやる」
 こちらは如何にもバトルマニアな感じのクロトーは捨て台詞を残して撤収し、今後も幹部クラスが素体となるのか、一般人を素体とする方向になるかは不明ですが、ドラマとしっかり繋がった怪人の存在感も期待したいところです。
 そこかしこで存在を匂わせていた指輪の人物が、黒子フラッシュでケミーに関する目撃情報その他を隠蔽しており、ラストでその正体がダウナー系目隠し教師ミナトだったと判明するのは、変に引っ張らずに良かったところ。
 「人とケミーによる多重錬成……120年ぶりかな」
 衣装チェンジと共におでこオープンした先生(これがマンガだったら超美形の筈)がなにやら不穏な事を言い出して、つづく。
 ……ここ数年、『セイバー』2話、『リバイス』16話、『ギーツ』12話、と前半での脱落が続いていた《仮面ライダー》ですが、ひとまず第1話としては詰め込み過ぎ感の少ないスッキリした作りで、消化しやすかったです。
 九堂さんが細かいルールにこだわるのは恐らく、世界の“法則”に触れる立場の人間である自覚ゆえにであり、一方の主人公が魔改造創作料理により常識的なルール破っていくタイプの人間と示されているのは良い見せ方で、その対比が面白い化学反応を生んでほしい要素。
 そしてそこから、ヒーローの持つブレイクスルー性への接続も期待したくなりますが、現時点では主人公、怪現象への適応力が異常に高い以上のものはまだ弱いので、次回以降で“闘う意志”を巧く見せて、応援したくなるヒーローになってくれると嬉しいなと。
 第1話の脚本は連名となっておりますが、過去作にも複数参加している長谷川さんというと、人間の悪意を痛烈に練り込んだシナリオも書く一方、少年少女を中心に置いたジュブナイルファンタジーの引き出しもある人なので、個人的には『ジオウ』以来となる高校生主人公で、そういう方向性を見てみたいなとは。
 この後に想定される、追加ギミックに次ぐ追加ギミック、次々と放り込まれるフォームチェンジがどう処理されていくのか……が、まずは最初のハードルになりそうですが、空の色のボディにふさわしい、躍動感のあるヒーローへ繋がってくれるのを期待。