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簡易レビュー企画5:『世界忍者戦ジライヤ』

 全話視聴済みの作品を、簡便に一つずつまとめてみようという、手探り気味の企画です。

ファイティング忍者ジライヤ

◆『世界忍者戦ジライヤ (1988年1月24日~1989年1月22日) 全50話

演出〔三ツ村鐵治:21本 辻理:10本 岡本明久:10本 折田至:4本 新井清:3本 宮坂清彦:2本〕
脚本〔高久進:23本 藤井邦夫:10本 扇澤延男:5本 寺田憲史:4本 小池剛:3本 九鬼隆:2本 杉村升:2本 中原朗:2本 藤井康浩:1本〕

 ――飛び越えろよ きのうのおまえを あしたはもっと広いのさ
 超古代に地球へと飛来した宇宙の秘宝パコ。その在処を示すボードを、悪の手から守る使命を帯びた戸隠流の第34代宗家・山地一家が、宿敵・妖魔一族や、奇天烈な世界忍者たちとボードを巡る戦いを繰り広げる、痛快忍者活劇。
 《メタルヒーロー》シリーズ7作目にして、シリーズの象徴といえるメタリックで煌びやかなアーマーではなく、黒地のスーツに赤い胴丸、肩プロテクターに目出しのマスク(後にバイザー追加)を身につけた「忍者」を主人公に据え、ガラリと雰囲気を変えた異色作。
 忍法帖フォーマートをベースに置いた東映お得意の忍者物に、「宇宙から来た秘宝」や「おもむろに青白く光る日本刀」といった《メタルヒーロー》的要素を強引に混合し、奇っ怪な忍者装束に身を包んだ世界の精鋭変質者もとい世界忍者を敵にする、と一見して色物感が強く、実際に柳生忍者とか色物的な側面は否定しきれないのですが、好感の持てる主人公とそれを支えるヒーローファミリー、複数勢力の入り乱れる活劇といった要素を取り入れて、一風変わった面白さを確立。
 個人的には「火忍・チャンカンフー」が登場したしばらく後に、「火忍・チャンカンフーの息子(というクレジット)」を出してみせたりするところが、凄く好きです(笑)
 作風としては、娯楽×活劇を重視し、縦軸のドラマ性よりも1話1話のバラエティ豊かな楽しさに力が注がれた一方、そこに一年間の物語として芯を通したのが、「家族」「師弟」そして「世界忍者」。
 少々とっぽいところもある2.5枚目だが、家族思いでやる時はやる主人公・山地闘破は、忍者としての腕はまだ未熟だが、家計と家事の両面で家庭を支える爽やかな好青年として描かれ、その闘破の父にして師であるニンジャマスター・山地哲山は、今作を代表する傑作キャラクター。
 2人と共に戦いに赴く事もある妹と弟を加えた忍者ファミリー山地一家の「家族の物語」にして、若く未熟な忍者が成長していく過程を描いた「師弟の物語」でもあり、この二つを両立させつつ成功させたのはが、大きな魅力となりました。
 特に哲山は、劇中最強の存在にして何でも知っている典型的なジョーカーキャラながら、“闘破のスパルタ師匠、しかし父”という立ち位置を巧く利用して、闘破の成長の為に敢えて手を出さず、 しかしいざとなればどこまでもえげつない姿勢が物語の中に絶妙に収まったのが、ジョーカーキャラの扱いとしてお見事。
 また、工夫を凝らした生身アクションが質・量ともに目を引いたのに加えて、長い得物でまず足を潰しにいく・刀の間合いの内側に入り込む、など他作品ではあまり見られない殺陣も特徴的で、“忍者アクション”へのこだわりが、光る部分。
 そして、個性豊かな「世界忍者」達は通年の敵組織に該当する妖魔一族の配下というわけではなく、一時的に妖魔一族と手を組んでいたり、全く独自に行動していたり、と悪の組織vsヒーロー、という構図の繰り返しから離れた存在として扱われたのも、作品を貫いた特徴。
 東映ヒーロー作品全体を見回しても珍しい立ち位置の「怪人」といえ、繰り返しの登場や、三つ巴の争奪戦などは、今作独自の持ち味となりました。
 その結果、悪の組織としては非常に小粒となった妖魔一族も、プライドよりも命と金を優先し、逃げ足の速さを最大の武器とする、独特の味わいを出す事に(笑)
 劇中における善玉も悪玉も、広義でいえば皆「怪人」というのが、ならではの世界観となり、主人公は時に世界忍者と刃を交え、時に友誼を結び……この世界における命のルールは、卑怯な者は殺って良し! です。
 秘宝パコを巡る長編としては弱い部分もありましたが、一話一話の楽しさを重視した娯楽活劇のスタイルを堅持し、「忍者」「家族」「師弟」「複数勢力」といった、作品の個性を最後まで大事に使い切ったのが、魅力的な秀作。

一番好きなエピソード:
 ●第7話「ジャングルのハンター 獣忍マクンバ」◆ (監督:三ツ村鐵治 脚本:高久進

印象深いポイント:
 ●えげつない山地哲山えげつない。
 ●ジョーカーキャラ(哲山)の使い方の巧さは、東映ヒーロー作品でも屈指。
 ●もはや愛おしくさえなってくるレベルの小物ボスキャラ・毒斎様(CV:飯塚昭三)。
 ●挿入歌の使い方の巧さ(特に三ツ村監督回)。
 ●特撮主題歌の魅力はイントロにあり!
 ●モテパワー高めの主人公と、予想外すぎる真ヒロイン。
 ●えげつない山地哲山えげつない。

口に出して読みたい名台詞:
 ●「アイアムにせものなどノーサンキュー」
 ●「如何に名刀があろうとも、使い手の心に隙間風が吹いていれば、その刀は、単なる棒きれにすぎんのだ」
 ●「敵を欺くにはまず味方を欺け」
 ●「ジライヤはカラス天狗を見つけると必ず追ってくる」
 ●「俺には……これがある、徒手空拳」