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ダブルタイフーン命のベルト

仮面ライダーV3』感想・第2話

◆第2話「ダブルライダーの遺言状」◆ (監督:山田稔 脚本:伊上勝
 ナレーション「仮面ライダーV3・風見志郎は改造人間である。謎の秘密組織デストロンに重傷を追わされたが、仮面ライダー1号2号によって改造手術を受け、仮面ライダーV3として甦った」
 名調子のナレーション(けっこう早口なのが特徴的)により、前作に倣う形で基本設定が語られ、カメバズーカの凄まじい砲撃を受ける仮面ライダー1号と2号の元に姿を見せた、新たな仮面ライダー、その名をV3!
 V3はダブルライダーから、デストロンの標的とされた少年ライダー隊本部を守るように指示を受け、導入をスムーズにする為に風見志郎を本郷猛の後輩とした人間関係が変身後にもそのまま引き継がれた事により、その後のシリーズ作品にも受け継がれていく、昭和ライダーの体育会系縦社会の伝統がここに誕生。
 専用バイク・ハリケーンを走らせるV3だが、既に本部は藤兵衛と共に地の底へ沈もうとしており、更にそこに、床を突き破ってハサミジャガーが出現。
 「立花藤兵衛! 逃げ道もなく、また助けに来る者もない。ゆっくりと、ハサミジャガーが、なぶり殺しにしてやる」
 ……凄い恨まれてるな、藤兵衛(笑)
 「ふざけるな! ライダー1号2号が必ず来る!」
 「おまえがアテにしているダブルライダーの姿を見せてやる」
 砲撃から逃げ回るダブルライダーの姿が、何故か事務所のTV画面に映って、???、となっていると、
 「デストロン通信衛星からの生中継だ。よーく見ろ」
 説明が入った(笑)
 そしてダブルライダーは爆炎に飲み込まれ、勝ち誇るハサミジャガー
 「ライダーもやられたぞ。観念しろ! 立花藤兵衛」
 「殺したければ殺せ! だが正義は不滅だ。仮面ライダーがいつか貴様を倒す!」
 「ふん、仮面ライダーなど居るものか」
 「ははははははははは」
 だがその時、高笑いを響かせると、天井を破ってすたっと降り立つV3!
 「貴様はいったい、誰なんだ?!」
 仮面ライダーV3!」
 今作世界における、善意の一般人、の象徴的存在としての立花藤兵衛を介して、
 〔他者の尊厳を踏みつけにする悪意が突きつけてくる絶望 → それに対するただの人間の抵抗 → ヒーローなど居ない → いや、ヒーローは居る!〕
 を、シンプルかつ劇的に示して、非常に気持ちのいい場面。
 またその場面を、悪と人間の対決を描いた上で、その意志と力が及ばない時、世界にはびこる不条理な悪意に立ち向かう者としての、V3改めての誕生宣言の場としたのも効いています。
 勿論、これらがいずれ形骸化や行き詰まりに至るのは歴史が証明しており、試行錯誤の末にある“今”は尊重したいのですが、物語の謎・扱うテーゼ・人間関係の複雑化などを重視するあまり、近作がここに示されたようなヒーロー作品の原初的な快感構造を見失っている(ないし懐疑的に扱いすぎる)のではないかとしばしば思うのもまた事実で、第一に私がそれをこそ求めていて好きだというのはありますが、今日的な物語の解像度と、ヒーローフィクションとしての“気持ちよさ”の高いレベルでの両立はもっと見てみたいな、と。
 それは無い物ねだりではない、と思いたいところです。
 つまるところ私はできれば毎週、


 ゴーオンジャー。まさに、気持ちの良いヒーロー達でしたなぁ」

(日下部彦馬/『侍戦隊シンケンジャーvsゴーオンジャー銀幕BANG!!』(監督:中澤祥次郎 脚本:小林靖子)より)

 が欲しいわけなのですが、『ギーツ』はそれをほぼ感じられずにリタイアしてしまい、現状『キングオージャー』も凄く不足を感じて視聴が滞りがちであり。……勿論、作品に求められるものとして時代感覚と私の嗜好がズレてきているのならば、それはそれで仕方ないと受け入れて嗜好に合う作品を他に求めるしかないわけでありますが。
 で、これは即座に『V3』面白い! という話に繋がるかといえばまた違うわけなのですが、ただここには、近年の作品に不足しがちに思える成分が確かにあるし、それは決して、当時の作品の持つ荒っぽさや雑さと切り離し不可能なわけではなく、現代の作劇と両立可能なものなのでは? というのは、東映ヒーロー作品への期待と願望となります。
 勿論、近作に限らなくとも、その“気持ちよさ”に意図して背中を向けた作品は色々ありますし、『V3』にしたってこの先全てが“気持ちよさ”で出来てはいないだろうとも思いますが、あくまで、色々な作品があり、色々な好みがあり、その中で私が好きな成分の話、とお受け止め下さい。
 脱線が少し長くなりましたが、V3は藤兵衛を救出して脱出に成功。
 マンホールの中から飛び出してきたデストロン戦闘員に行く手を阻まれて生身でのバトルとなると、砲撃を切り抜けてきた本郷と一文字が合流してハサミジャガー部隊は撤収し、血気に逸って猛然と後を追いかけた志郎は、藪の中から飛び出してきた神父を助けている内にハサミジャガーには逃げられてしまう。
 志郎は家族のちゃんとした墓に、自らの得た力を(正義と平和、大勢の人の為に役立てる)と誓い、親から貰った体を失った……というのは時代を感じる独白です。
 そこに前回助けた女が墓参りに訪れ、デストロンとの戦いに身を投じる決意を固めている志郎は、険しい表情で女性を遠ざけようとするが、女が人質としてデストロンにさらわれ……かけたところで駆けつける。
 「俺に構わず逃げろ!」
 「はい!」
 あ、そこはあっさり逃げるのか(笑)
 連続ハサミ攻撃を受けた志郎は、お堂に跳び上がると、はじめての
 「変身――V3!」
 ダブルタイフーンが光を放ち、空中で一回転した志郎の姿はV3へと変身するが、改造人間1年生として己の能力を把握していない為に腰が引け気味。
 即座にそれを見て取ったジャガーがまずは戦闘員をけしかけてくるが、一旦間合いを取ったV3の脳裏に突如として響く、本郷猛の声(笑)
 ライダー超能力により、本郷&一文字コーチの指示を受けたV3は。ジャンプ一発でいきなりハサミジャガーの目の前に降り立つと連続パンチを浴びせ、キック! 反転! パンチ!
 そして、ものすっごい雑に崖の上から放り投げた!!
 私情と大義の相克は、家族の墓参シーンで既に乗り越えられた扱いなのか(もっといえば、ダブルライダーを助ける為に分解光線の中に飛び込んだ時点で、でしょうか)、なかなか見ないレベルで雑に放り捨てられた復讐の対象、Aパートの内にあっさり爆死。
 「勝った……」
 「惑わされるな。ハサミジャガーは逃げた」
 「腰のV3ホッパーを使え」
 と思ったら偽装爆死で、新ヒーローの未熟さから独自ギミックの使用に繋げ、空中に打ち出したレーダー的装置を用いて、逃走するジャガーの車をキャッチするV3。
 ……よく考えるとこれ、搭載した本人たちによる機能説明なのか(笑)
 ハリケーンを走らせたV3は、ドアにサソリマークの付いた黒塗りの車が乗り捨てられているのを発見し、その付近には見覚えのある教会が。鉤縄を使って教会にこっそり潜り込み、ハサミジャガー追跡時に助けた神父の後を追って地下洞へと入り込む志郎だが、尾行に気付いていた神父の正体こそ、凶悪ハサミジャガーであった!
 「聞け! 風見志郎! デストロンの東京都全滅作戦の準備は、既に完了したのだ。間抜け」
 デストロンは東京の地下でカメバズーカに内蔵した原子爆弾を爆発させようとしており、ハサミジャガーは志郎の目を故意に引きつけて地下へ誘導する事で起爆の阻止を不可能にしていたのだが、さっそくライダーLINE機能を使った志郎は、ハサミジャガーとの会話を1号2号とシェアしていいね。
 「俺を罠にかけたつもりが、逆になったな」
 追い詰めたと思えば罠、から上手く挑発して情報を引き出し、今度は悪の側が足下をすくわれる逆転劇は伊上さんらしい切り返しに次ぐ切り返しで、都心へ向かった1号2号は、爆発待ちのカメバズーカを発見。
 「カメバズーカ、貴様にこの東京の平和を乱させん!」
 「それが私たちの任務だ!」
 地下洞穴の中では、戦闘員と斬った張ったを繰り広げていた志郎が炎の中でV3へと変身して二つの戦いが同時進行で描かれ、砲撃を浴び続けるダブルライダーは、最後の手段を決意。
 「ライダー、東京はあと1分で爆発する。ズーーカーー!」
 「カメバズーカを倒さん限り、東京を救う方法は無い」
 「2号、私たちの良い後継者が出来た。行くぞ!」
 デストロンとの戦いをV3に託すと決めたダブルライダーは、カメバズーカの前に躍り出ると、互いの腕をクロス。
 「仮面ライダーの全エネルギーを出す時だ!」
 「「おう!!」」
 二人を中心にピカピカとエネルギーが放出され、同期の『キカイダー01』で基地破壊ブラザーズが行ったのとほぼ同様の技なのですが、自然なポーズそのものは限られるとはいえ、何か、この頃の定番だったのでしょうか(笑)
 謎のライダーエネルギーでカメバズーカの動きを封じたダブルライダーは、怪人の両脇を抱えて高々とライダージャンプ。
 一方、V3は主題歌インストに乗せて戦闘員を蹴散らしながらハサミジャガーを追うもハサミ攻撃で吊り橋から落とされるが、そこに再び響くダブル先輩の声。
 「ライダーV3、最後のコーチをする!」
 「ダブルタイフーンを全開しろ!」
 エネルギーを上昇させたV3は吊り橋の上まで一気に跳び上がると、連続パンチからV3回転ダブルキックを決め、ハサミジャガーは今度こそ大爆死。
 だが、勝利を手にしたV3が目にしたのは、体内で破滅のカウントダウンを刻むカメバズーカを抱えて海上へと飛んでいくダブルライダーの姿であり、原爆による東京壊滅を阻止したダブルライダーは、カメバズーカと共に巨大な爆発の中にその姿を消す……。
 ここで、「ダブルライダーが抗い食い止めたもの」として「原爆による東京爆破」を天秤の片方に乗せたのは、ダブルライダー退場に納得できる重みを与える為の配慮だとは思われますが、それをどこまで人類悪の象徴として受け止めていいのかに関しては、近い時期の『イナズマンF』で気軽に「水爆500発!」とかやっているので、少々悩ましいところもあり。
 「本郷さーん! 一文字さーん!」
 二人の消えた海の彼方に向け、叫ぶV3に応える者はなく既読も付かないかと思われたが、水面に浮かび上がる本郷と一文字のイメージ映像。
 「風見志郎、いや、仮面ライダーV3よ」
 「俺たちは死なない。いつの日か、必ず帰ってくる」
 「3人の仮面ライダーが揃って戦う日まで、全ては君の力にかかっている!」
 「頑張れ、仮面ライダーV3!」
 「俺たちは、君を見守ってるぞ!」
 ダブル先輩から、若干メタも感じるエールがニューヒーローに送られ、重い、遺言状が、思っていたのと別の意味で重いです……! 本郷先輩! 一文字先輩!
 ……まあ、2年間戦ってきたヒーローが、続編冒頭でいきなり凄絶な爆死はあんまりなので、自己犠牲で海の彼方に消えたけど、このぐらいで死ぬ気は全く無い! と、いつでも平気な顔で戻ってきそうにしてくれた方が、受け止めやすくはありますが(笑)
 果たしてそれは、ライダー能力による確かな二人の言葉だったのか、或いは願望が見せた夢幻だったのか……或いはこれもしかして、本郷と一文字に不慮の事態が発生した時に自動再生するように仕込まれていた、身内の隠していたビデオメッセージ的なアレなのでは?!と、先輩2人に対して若干の疑念がわき上がりつつ、ただ波だけがV3の足下を洗い流して、つづく。
 サブタイトルからてっきり、個人の復讐に引きずられる風見志郎が、ダブルライダーの遺言状をきっかけに名実ともに「仮面ライダー3号」になる話なのかと思ったら、“復讐者・風見志郎”と、“戦う正義の仮面ライダーV3”の相克が全く描かれなかったのは拍子抜けで、ここは近作とは逆で、作品としての軽視が今日見ると物足りないところになりました。
 次回――「恐怖の暗黒組織デストロン、第三の計画は……」
 て……第二の計画、は……?
 第1-2話で示された計画、「東京都全滅作戦」だけだったと思うのですが、果たして、ナレーションさんには何が見えていたのか、次回もダブル怪人で、頑張れ、仮面ライダーV3!