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ホントにホントにイナズマン

イナズマンF』感想・第2話

◆第2話「戦慄のサファリ! 海中大作戦!!」◆ (監督:塚田正煕 脚本:上原正三
 ボクサーや柔道家など、スポーツ選手が誘拐された後に矢の突き刺さった死体で発見される事件が続発し、五郎を連れて死体の捜査に加わっている荒井、思い込み保安官ではない模様。
 五郎は様子を窺っていたノコギリデスパーを発見して殴りかかるが、「一日待ってくれ」と言い出したノコギリは煙玉を投げつけて逃走し、特に陽動でもなんでもない為、序盤に一つアクションシーンを入れようとしたら、怪人がだいぶ間抜けな事に(笑)
 「戦闘員諸君に告ぐ。只今より、ガイゼル総統の、訓辞がある」
 一方、デスパー軍団ではガイゼル総統が帝王バンバとの違いを見せつけようとした。
 「帝王バンバは、ミュータントを仲間にしようとしてことごとく失敗した」
 うぐっっっ。
 「人間どもは家畜同様だ! 奴隷として労役に使い、はたまたサファリとして楽しめばよい」
 ここは前組織と同じく、歪んだ選民意識を高々と掲げるガイゼル総統。
 サファリ、と言われると「ホントにホントにホントにホントにライオンだ!」しか思い浮かばず、???となったのですが、元々「サファリ」とは、アラビア/スワヒリ語で「(小)旅行」の意で、そこから英語では「狩猟・探険の為の旅行」の意味を持つようになったとの事で、発見された死体の状況からも、ここでは「狩猟」の意味で使っていると思っておけば良さそう。
 「つまり! 殺したい時はいつでも殺せる。取るに足らぬ生き物だ。しかるにミュータントはどうか。ミュータントは我が新人類にとって、有害な存在だ。それはイナズマンを見ればわかる。ミュータントの中から第二のイナズマンが出ないという、保証は無い。ミュータントは敵だ! ミュータントは……殲滅すべきである」
 ガイゼル総統は、ミュータントを戦力ではなく潜在的脅威だとみなす、後継悪の組織としての大きな方針転換を明確に打ち出し、デスパー軍団の姿勢を強く印象づける総統の長広舌には、役者への信頼を感じさせます(後、これだけ喋ると、ギルと同じ役者だと納得)。
 「サファリ計画、開始。ミュータントを――殲滅せよ」
 ガイゼルがミュータント狩りを宣言すると、デスパー戦闘員はミュータント反応のある人間を捜し回っては、次々と該当者の家の壁に打ち込まれていく「白羽の矢」。
 人間狩りのモチーフと民俗伝承が重ね合わされる(生贄の家に目印として打ち込まれるのが白羽の矢)のは面白いアイデアで、その矢が死体に突き刺さっていた矢と似ていると気付く五郎と、それを物陰から見ている腕スパー(笑)
 「渡五郎に気付かれてはまずいな。攻撃の時間を早めるか」
 常に現場に出て、作戦の細かい進捗を確認せずにはいられないウデスパーがちょっと面白くなりつつある一方、持ち帰った矢をアジトで分解した五郎は、内部に熱線発射装置を発見。
 だがその正体を突き止め切れない内にデスパー軍団が巨大な熱線誘導装置を起動すると、壁に突き刺さっていた矢に熱線が誘導されて多数の家屋がまとめて吹き飛ぶ大惨事が引き起こされてしまう。
 「ミュータント殲滅作戦の小手調べは、大成功です」
 ヒーローが組織の計画の一旦に気付いても、それを阻止しきれない展開が物語をスリリングにする一方、荒井は、第2話にして早くもデスパー軍団に捕まっていた。
 あっさり、身元もバレていた(笑)
 「これで明日のサファリは、面白い趣向ができそうです」
 捕縛前の荒井が伝えてきた情報に基づきオニガミ峠に向かった渡五郎は、荒井の大事なテンガロンハットと、妻子と一緒に写したとおぼしき写真を発見し、更に、さらわれたスポーツ選手がマンハントの標的とされている、残虐非道の光景を目撃する。
 「サファリを楽しむ為に、わざわざ鍛えた選手をさらったのか!」
 助けに入る五郎だが、計算通りと人質の荒井を突き出した腕スパーは、左手に新装備のガトリングを装着して披露。
 「渡くん、私に構わず戦いなさい。戦うのだ」
 二人が視線を交わし合うとロールプレイのテーマが流れ出し、戦いを躊躇う五郎をなじった荒井は、自ら狩りの獲物となると宣言。
 「ガイゼル総統、私を的にしろ」
 「荒井さん!」
 「うるさい! さあ、私を早く野獣にしろ。サファリを楽しむがいい」
 70年代のサブキャラとしてはそこまでインパクトのある行動ではないのですが、私は野獣、私こそ野獣と徹底的なロールプレイスタイルで新レギュラーとしての存在感を打ち出していく荒井は、サファリの獲物として手錠を外される。
 「……渡くん、後を頼む」
 「荒井さん! ……俺が走る。デスパー! 計算通り、俺が獲物になってやる!」
 「馬鹿者ぉ!」
 周囲のデスパー軍団そっちのけで男と男の魂がぶつかり合うと取っ組み合いが始まり、追われていた選手と逃げて下さい、と言いながら、荒井の鳩尾にパンチを叩き込んで気絶させる五郎(笑)
 うん、荒井さん、それ、そのまま殺されるんじゃないかな……と思ったら、走り出した五郎を追ってガイゼルの乗ったジープとウデスパーのまたがるバイクが走り去った後に荒井はすぐに体を起こし、残ってしっかりと槍を向けてくるデスパー戦闘員をインターポール仕込みのバリツで制圧し、全部、男と男の茶番劇だった。
 「ふふ、変転したければいつでもいいぞ」
 「またしてもサナギマンの弱点を突くつもりか」
 ……なんか、ありましたっけ。
 外部からのダメージは全て超力招来のエネルギーに変換されるし、放置したら放置したで時限式で超力招来するし、実質不死身の時限爆弾として、実際のところ物凄くタチが悪いのですがサナギマン。
 追われる五郎の肩にガイゼルの矢が突き刺さると、茂みに潜んでいたノコギリデスパーが姿を現し、本日のストレス解消を終えた総統とウデスパーは後を任せて帰還。
 五郎は気合いで矢を引き抜くと剛力招来し、デスパー軍団に囲まれると、さくっと超力招来。
 ノコギリデスパーが乗り込んだ大型戦闘機とイナズマンが召喚した雷神号が潜水モードで水中戦に突入し、サブタイトル通りではあるのですが、ここまでの展開に海は一切関係なく、サブタイトルの前半「戦慄のサファリ!」と、後半「海中大作戦!!」が、本編内で全く接続されませんでした!
 人間を家畜呼ばわりし、ミュータントを殲滅すべき敵と見なし、歪んだ選民思想から他者の自由と尊厳を踏みにじる事を当然とするデスパーの「悪」。
 それをサファリの矢を持ってして、ミクロではガイゼル総統のマンハント、マクロではデスパー軍団によるミュータント殲滅作戦と重ねて象徴付けし、前作後半では対イナズマンに偏りすぎて規模が小さくなっていた物語に、再び旧人類vs新人類の世界規模の視座を与えたのは良かったのですが…………ガイゼル総統が引き揚げるとその前後が全く連動せず、ノコギリデスパーも特にそういう怪人である事の意味が無く終わったのは、残念。
 激しく火花を放射する大型戦闘機(形状からすると恐らく、熱線誘導装置を搭載していたのでしょうが、時間が無かったのか何も言及されず)だが、雷神号とイナズマンの能力を合わせた返し技・逆転ジェットスクリューによって攻撃を跳ね返されて大爆発し、今作でも猛威を振るうディダーンなリターン。
 一緒に海の藻屑と消えずに地上へ脱出し、バンバラ怪人とはひと味違うところを見せるノコギリデスパーだったが、そうそうこれを使っておかないと、と振り上げたゼーバーからの放電攻撃で木っ葉微塵に弾け飛び、ゼーバーは今のところ、「トラップカード:ゼーバーを発動! 相手は死ぬ」みたいな扱い。
 だが勝利の余韻に浸る間もなく、五郎は矢の突き立てられたイナズマンの模造マスクを海岸で発見し、多分これ置いたのウデスパーさんなのですが、作戦の仕上げが雑な割に、手の込んだ嫌がらせは忘れないデスパー軍団であった!
 「俺は決して負けないぞ……ガイゼル……デスパー……」
 ……前作の頃から、ライジンゴー! 回は後半がどさくさ紛れになりがちなのですが、やりたい事をやって新レギュラー陣ともども『F』の方向性を示した前半~中盤と、やらなければならない事を惰性で片付けた終盤とのギャップが激しいエピソードでありました。
 次回は地底だ!