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復讐の味は限りなく甘い

忍者戦隊カクレンジャー』感想・第19話

◆第19話「暗闇の地獄罠!!」◆ (監督:小笠原猛 脚本:杉村升
 前回の悲劇が振り返られ、講釈師ナレーションからも念入りにかき立てられる貴公子ジュニアへの憎悪。
 そう、「復讐の炎」はヒーローの成長を加速させる極上の栄養剤。
 サスケ達が怨念のオーラ力を注ぎ込まれようとしていた頃、荒っぽくクラクションを鳴らしながら車を飛ばし、これがホラー映画だったら2分後に惨殺されること請け合いの殿堂入りカップルがトンネルの闇の中で何者かに襲われ、暗闇に浮かぶ瞳の輝きと不気味な黒い影に続き、部分的に表現される蜘蛛の爪によって車が解体されていくのは、映画『ジュラシック・パーク』(1993年7月日本公開)オマージュ……?
 それを目撃した少年がネコ丸と遭遇してサスケ達をトンネルに連れて行くが、妖怪に破壊された車はすれ違ったトラックに回収されていき、現場に残っていたのは砕けたサングラスや女性の靴ばかり……と、今作にしては正攻法のスリラー演出とサスペンスでスタート。
 車を回収していた修理工の男(まだちょっと余韻はありますが、過度の変態路線は修正され、ジャケットのカラーリングで蜘蛛の正体を示しているのは秀逸)の身辺を探ろうとするカクレンジャーだが、忍者装束でのステルス潜入は既に妖怪に察知されており、今日もいの一番にリタイアするセイカイ、ちょっと可哀想。
 印象としてはゾンビかグールといった不気味な風貌の妖怪ツチグモが正体を現すと、セイカイと目撃者の少年をさらっていき、「ビジュアルや言行で人間体の変態ぶりを強調する」か「悪の妖怪としての活動とその被害者にスポットを当てる」かで、作品の雰囲気が大きく変わるな、と改めて。
 ツチグモを追ったサスケたちはアジトらしい倉庫を突き止めるが、そこにジュニアが真紅のカウンタック(ぽい車)で乗り付け、冷静さを失い飛び出そうとするジライヤだが、サスケは露骨な罠を警戒する。
 「たとえ罠でも、ジュニアを倒す為なら、僕は……!」
 「そうよ、ザシキワラシの事を忘れたの?!」
 冒頭での再確認を理由付けとし、「2月2日、ザシキワラシを殺したのは貴様だな?!」と、鶴姫・サイゾウ・ジライヤは倉庫へ突入していき、一人残ったサスケは、小豆洗い回・酒呑童子回に続き、情に流されすぎずに一歩踏みとどまる判断力の持ち主として描かれ、情に脆い熱血漢のようで案外そうでもない辺りは、後の『ガオレンジャー』獅子走に繋がるものを感じます。
 ツチグモのアジトにカチコミを仕掛けた鶴姫らはあっさり落とし穴にはまり、倉庫の地下に広がるツチグモの巣へとご招待。
 「そこはツチグモの巣なの。おまえたちもツチグモの手で、人間ソーセージになるがいいわ。ははははははは! あーははははははははーっ!(……どこにいるのサスケ)」
 3人を見下ろし天井を閉じたジュニアは姿の見えないサスケに注意を払い、油断ならない敵である事を高笑いからの即座に切り替わる表情で示すと、倉庫の壁に身を隠して状況を窺っていたサスケを発見。
 「ジュニア! 他の連中は騙せても、この俺は騙されん!」
 あ、今さらっと、他のメンバーの知性にケチをつけたぞサスケ。
 「今日こそ決着を付けてやる!」
 「フ……いい度胸してるわ。来い、サスケっ!」
 「――スーパー変化!」
 凄く普通に、ギターを振りかぶりながら突撃していくジュニアがアーミードクロに変化すると、ギターが手持ち武器の剣に変化してタイマン勝負となり、ドクロは赤が抜け身の術を使う間すら与えない戦闘力を発揮。
 一方、地下ダンジョンでツチグモに追われていた白黒青は、ツチグモが誘拐した人間の貯蔵庫に辿り着くも、青黒がリタイア。
 残った白がツチグモに滅多切りされると、床に転がされていたセイカイが怒りのパワーで腹筋! から更に筋力で繭を内側から引き裂き、見せ場が……あった!
 早々のリタイアの分はこれでカバーされましたが、一方の鶴姫様は最近、これといっていいところがありません。
 スーパー変化した黄から怒濤の攻撃を受けたツチグモは巨大化すると背中に鉄の輪を背負い……なんとなく、10年後の『仮面ライダーファイズ』に出てきたカッパもといスパイダーオルフェノクの手持ち武器に似ているのですが、蜘蛛の怪異となんらかの伝承的繋がりがあったりするのでしょうか(単純に、複数の脚を示す意匠とも取れますが)。
 巨大ツチグモは怪光線で赤を攻撃し、赤、俺は自分から罠にはまるような単細胞じゃないぜ、と外で待機していたらドクロに叩きのめされ、ツチグモにも攻撃を受け、「ようすをみる」を選んだ結果、仲間やさらわれた人々の救出には全く役に立たないまま外で棒立ち同然となり、明日から一週間、朝食が目刺し一匹でも文句は言えない(ジュニアを倉庫から引き離したといえば引き離しましたが)。
 糾弾を受ける前に赤がメダルを取り出して挿入歌をバックにファイターでの戦いとなり、適度に打撃を浴びせると、巨大獣将の術から忍者合体して、無敵将軍となる回りくどい必殺剣で、吸い込まれるように突撃してきたツチグモを両断して、南無三。
 冒頭のカップルはじめ、行方不明になっていた人々は無事に救出され、途中で姿を消したジュニアは何故か、気球に乗っていた。
 「今回だけは引き分けにしてあげるわサスケ」
 終始優勢だった筈のジュニアは気球の籠の中でギターを振り回し、飛び去っていく青い気球を5人が見つめる、謎のタイアップみたいなオチで、つづく。