『イナズマンF』感想・第1話
◆第1話「恐怖のガイゼル総統と謎のデスパー軍団!」◆ (監督:塚田正煕 脚本:上原正三)
今回から、番組タイトル・戦う敵・OPが変更されて、直接の続編にして大きくリニューアルされた新章スタートの形となり、原作:石森章太郎のクレジットが見えづらい勢いで焚かれたストロボで、フラッシュ! フラッシュ! フラッシュ!
(※以下、『イナズマン』を「前作」とします)
個人的には前作よりも印象の強い主題歌に乗せて、イナズマンとデスパー戦闘員の格闘アクションが強調されるOP映像で、継続出演となった雷神号の活躍はなぜ、前作の岩をどけるシーンなのでしょうか(笑)
自動操縦~♪
OP終了直後、前回ラストの巨大バンバ爆発芸とガイゼル総統登場が描かれて、長いサブタイトルからそのままシームレスに本編へと突入。
「消えた……不気味な軍団……」
と呟く五郎を銃弾が襲い、ガスマスクモチーフの仮面デザインは継承されつつ赤黒縞タイツ+プロテクター装着のデスパー戦闘員を引きつれ、ウデスパーが登場。
てっきり、D印のマイナーチェンジでお茶を濁されるのかと思っていた戦闘員がフルモデルチェンジするとやはり新たな敵と戦っている感が増し、小型の槍を操るデスパー戦闘員を相手に、五郎は剛力招来!
反撃に出るサナギマンだが、そこに金槌デスパーが合流すると、袋だたきの刺激が全身を駆け巡り、急速に高まるゲージで超力招来!
前作のミュータンロボは、「奇形」をコンセプトに置いたと思われる生物的なモチーフが多かったですが、その差別化なのか、デスパー怪人は今のところ、機械的で無機質、色彩も灰色主体のモノトーンで、ウデスパーは顔も完全に鉄仮面なのですが、金槌デスパーは……鬼瓦みたいな顔が、ついていた(笑)
早くもちょっと、愉快成分が侵食を。
なお今回、ウデスパーは他のデスパー怪人よりも格上らしき事が示され、接近戦では右手に強化アームを取り付ける事から、右デスパーにして腕スパーであり、合わせて総統の右腕(多分)スパーである、というのは大変洒落たネーミングセンス。
フライング蟹挟みからウデスパーを投げ落とし、気合いの入ったアクションを見せるイナズマンであったが、帝王バンバとの死闘もとい帝王バンバの奇天烈な言行に振り回された精神的消耗が激しく、2対1の戦闘で苦戦を強いられ、崖っぷちに追い詰められる。
しかしその時、物陰でこの戦いを見つめていたテンガロンハットの男が構えたライフル銃が火を噴くと、足下が崩れたイナズマンは転落。果たしてそれは、更なる敵か思わぬ助力か……辛うじてデスパー怪人から逃げおおせた五郎は、通りすがりの親切な新婚夫婦に助けられるが、それを目にする二つの影。
「奴は怪我をしている。もうこっちのものだ。おぉ?!」
五郎抹殺に近づくデスパーの脅威だが、手柄を独り占めしようとする金槌デスパーの不意打ちで右デスパーは転がり落ち、もう3話目の登場ですし、死因:内輪揉めによる後頭部への鈍器の一撃にならないかドキドキしましたが、幸い頑丈な作りでした。
「私たち……昨日結婚したんです」
「このリョウコとは、小学校時代からの友達でしてね……長い間の夢がかなって、やっと結婚に漕ぎ着けたんですよ」
一方、五郎を乗せた車内では、凄い勢いでフラグが!
(幸せな二人を巻き込んではいかん)と傷の手当てだけ受けて早々に下車する五郎であったが、なんたる運命の悪戯か、ほんの僅か進んだ先で、夫婦の車は中をよく確認せずに突っ込んできた金槌デスパーの体当たりを受けて崖から転落大爆発し、崖下に二人の死体が無惨に転がる、新展開スタート早々の強烈な右ストレート。
「デスパー! 許さん!」
怒りを燃やす五郎の前に、テンガロンハットを被った謎のウェスタン中年が姿を見せ、その挑発に乗った五郎の背後で起こる、遺体と車を消し飛ばす大爆発。
「君をあの餌食にしないためにやったのさ。冷酷で無残なデスパー軍団の手口。渡五郎、城南大学3年」
……卒業、していなかった。
「おまえはいったい何者だ?!」
「……知りたいのか」
謎の男はニヒルに呟き、本人の責任ではありませんが、登場時から流れ出す哀愁漂うBGMが、物凄くロールプレイ感を引き上げます(笑)
男の後を追う五郎だが、今度は戦闘機からの銃撃が通りすがりの工事現場の作業員を虐殺していき、これは完全に前作第12話のリフレインでありますが、デスパー軍団の苛烈な姿勢を掴みとして印象付け。
劇画タッチで格好いいアイキャッチを挟み、ウェスタン中年に案内された秘密のアジトに五郎が辿り着くと、隠し扉の奥から取り出した拳銃の銃口を、一度わざわざ五郎に向けてから外す男、入ってる、入ってるな……。
「国際刑事警察機構の秘密捜査官、荒井誠。新人類の動向を調査中なんだ」
男はバッジを見せて身分を明かすのですが、実在の人物なのかどうか、ちゃんと照会した方がいいのでは……?!
自分をドク・ホリデイかワイアット・アープの生まれ変わりだと信じている資産家の道楽三代目の疑いが拭いきれず、秘密の地下アジトぐらい、ちょっと親の遺産があれば、作れますからね!
「ガイゼル総統のデスパー軍団は、ファントム軍団より冷酷非情だ。お互いに協力しあって戦おうじゃないか」
自称帝王の次は自称インターポールなのではないか、と危惧も浮かぶ男は五郎に協力を持ちかけ、この物言いだと、デスパー軍団(ガイゼル総統)がファントム軍団(帝王バンバ)の上部組織というわけではなく、双方が所属する新人類組織Xにおける軍団同士の内部抗争であった、とも取れそうですが、その辺りはおいおい煮詰められていきそうでしょうか。
「ふふふふふ……少年同盟もまた、新人類X計画の一環に過ぎないのだよ、渡五郎くん」「き……貴様は、キャプテン・サラー!」
荒井は五郎に、ファントム軍団よりも予算が潤沢なデスパー軍団は、五郎抹殺の為なら平気で無差別攻撃を仕掛けてくるので、周囲の人間を巻き込まない為にと秘密基地への引っ越しを勧め、「悪の組織がヒーローの身内(関係者)を徹底的に標的としない」問題について、「ヒーロー自らが距離を置く」事で一つの解を与えると共に、物語全体のトーンを切り替え。
……元来は、少年同盟も、秘密組織・秘密主義・秘密基地と三拍子揃っていた筈だったのですが……『仮面ライダー』の路線継承作の色が強く始まった『イナズマン』が、母との別れを大きな転機として、少年同盟を切り捨ててインターポールの協力者を得る形で、初期『仮面ライダー』への回帰に近づいているのは、面白い紆余曲折です(『仮面ライダー』の変遷が把握できていないので、認識がだいぶ雑ですが……)。
荒井の提案に納得した五郎は、ミサイルを撃ち込まれる前に、と寮の部屋を引き払い、ヒ、ヒロイン(丸目)との別れの場面は?!
……まあ、この流れで登場すると、「恐怖のデスパー軍団! 非情の銃弾!!」とかに倒れそうなので、このままフェードアウトした方が幸せのような気がしないでもないでもないのが複雑ですが。
五郎と荒井の同棲が始まる一方、ガイゼル総統はアジトでお洒落に一人チェスに興じており、そこに引っ立てられてくるハンマーデスパー(笑)
オヤジにどう申し開きするんじゃこらと詰められたハンマーデスパーが、ガイゼル総統の杖の一振りで小指、じゃなかった頭部が切断される衝撃映像に続き、若頭の右デスパーから制裁を受けると、ケジメとして今日中に渡五郎のタマ取ってこいやと厳命され、いきなり崩れかけた組織の鉄の規律を再アピール。
荒井の情報によりデスパー軍団の手がかりを追っていた五郎は、東京湾行きの瀬戸際に立たされた金槌デスパーの仕掛けた罠にはまり、いきなり偽情報を掴まされた荒井の株が落ちる中、クレーン鉄球の連打を浴びたサナギマンは重力の軛から超力招来!
……最近、Mゲージの存在が半ば公式化していて、ちょっと反応に困っています。
反撃に出るイナズマンだったが、こんな事もあろうかと幼稚園バスを人質に取っていたウデスパーが戦いに介入。
「ははははは、けぇっ!」
前作の事からからそうでしたが、ウデスパーさんは何故、跳んだり跳ねたりする時だけ、声が高くなるのか(笑)
実は心優しい上官だったのか、ハンマーデスパーに黙ってフォローを入れたウデスパーが姿を消すと、さすがに幼稚園児は「私の事は構わない!」と言ってくれないぜ、と無抵抗のイナズマンは一方的なハンマー責めに合うが、そこに情報の精度は危ういが照準の精度はバッチリな荒井が助けに入って戦力として役に立つところを見せると、勇壮な音楽に切り替わって今度こそ反撃のターン!
イナズマンの打撃で首を飛ばされたハンマーデスパーは、ゼーバーイナズマンフラッシュを浴びて弱ったところを空中に放り投げられると木っ葉微塵に吹き飛び…………地味。
OPにも唄われ、新生イナズマンを象徴する装備の(筈の)ゼーバーですが、前回今回と、「掲げると稲妻がピカピカ放出されて敵が苦しむ謎の装置」にしかなっておらず、もう少し見栄えのする必殺技の登場を期待したいところ。
一方、デスパー基地には新たな怪人・ノコギリデスパーが登場し、ガイゼル総統がサファリ計画の実行を指示して、つづく。
『キカイダー』でプロフェッサー・ギル役だった安藤三男さん演じるガイゼル総統、ヒーローvs首領の配役が『キカイダー』と同じという事になりましたが、もしかして、加藤保憲/嶋田久作の先祖って、ガイゼル総統/安藤三男、だったりするのでしょうか。
ED……EDに……懐かしのコスチュームに身を包んだ同志諸君の姿があり、駄目だみんな! こっちに来たら駄目だ!!
「悪魔のデスパー! 非情の自転車爆弾!!」とかしか想像できないのですが、果たして少年同盟は、責任を持って壊滅させられてしまうのか。
新展開第1話、新たなる敵・デスパー軍団の非道を強調し、新たなる仲間・ロールプレイ中年もとい荒井誠と共に新たな戦いの舞台に立つ休学ミュータント・渡五郎、がわかりやすくまとまって、まずは入りやすい開幕でした。
前作との目立つ相違点というと、前作の売りだった大がかりな超能力(妖術)バトルの要素が見当たらなくなったところですが、このまま全体として格闘アクション路線に進むのかどうか、とりあえず雷神号は引き続きプッシュされるようですが。
とりあえず今心配なのは、荒井誠は本当にインターポールの捜査官なのか? ガイゼル総統は本当に「総統」なのか? の2点です!