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『王様戦隊キングオージャー』感想・第6話

◆第6話「王子の帰還」◆ (監督:山口恭平 脚本:高野水登
 ラクレス野郎の事務所にカチコミじゃぁとシュゴッダムに戻ったギラが、王弟として市民から熱烈な歓迎を受けて困惑していると、電波ジャックを行ったデズナラク様が「我々は全世界を人質に取った」と宣言。
 バグナラクは、地底帝国から各国の地下へと(多分、人海戦術で)トンネルを繋げると、そこに巨大怪獣の眠る繭を設置。時間経過によって繭から怪獣が目覚めれば街はドカーン! その前に破壊しようとすれば繭が大爆発して街はボカーン! と、ようやく悪の組織らしい大規模な侵略作戦を仕掛けると、何故かギラの身柄を差し出せと要求し、その頃、リタ・カニスカは部屋の床を転がっていた。
 「どうしよう……秘宝盗まれちゃったよ」
 毎度毎度、約束を守る気には見えない取引を持ちかけてくるのが好きなバグナラクの要求を聞き、一人クワガタの元へ向かおうとするギラの前には、つい先刻までパソコン国の王城に居たはずのヤンマが何故か現れ……ま、まあ、キングオージャー合体時を見るに、各シュゴッド、ワープ機能の一つや二つぐらいはついていそうですしね!
 「バグナラクが狙ってるのはてめぇの力だ」
 「……力?」
 「言え。……どうやってシュゴッドをコントロールした」
 「シュゴッドは仲間だ。僕はただ、仲間に力を貸してもらってるだ――」
 「んな事はありえねぇ!」
 そもそもシュゴッドと意思疎通が出来るのはギラの特異体質であり、ギラと王様たちの、シュゴッドに対する認識が違う事が判明し、やはり、CTスキャンすると胴体が空洞で皮膚の下にキチン質の層があり脇腹に複数の脚が収納されている、改造ジュルリラ人間第0号なのでしょうか。
 ……大丈夫、あさりよしとお先生のマンガだと思えば、そこまでおかしくない。
 ヤンマの問いかけに対してバグナラクにもラクレスにも与する気は無いと答えたギラが、王城を前に「僕の過去はここにはない」と断言する姿は悪くなかったのですが、どうにもこうにもこの、デジタル書き割りを背景にした芝居に乗れないまま第6話。
 異例の開幕5話連続となった上堀内監督から山口監督へとバトンが渡り、演出の基本的方向性は踏襲される事となりましたが、そこに“面白さ”を見いだせずに居るのは今作の辛いところの一つで、1クール見てこのまま乗れないようだったら、恐らく視聴リタイアする事にはなるかと思います。
 以前書いたように、貫けば今作の作風になるかとは思いますが、その作風が“合わない”のなら、それはもう仕方ないな、と思うので。
 ギラがヤンマに連れられて辿り着いた、なんだか凄く変形しそうな王城には既に各国の王が揃っており、
 「ラクレぇス!」
 「歓迎しよう、我が弟よ」
 笑顔で両手を広げて見せたラクレスに向け、レインボージュルリラのかたきじゃぁぁぁぁぁと斬りかかるギラだったが、その刃はカグラギとリタに止められ、クーデター、あえなく失敗。
 やはり、クワゴンの全身にダイナマイトを巻き付けて、ノンストップで王城に突っ込むぐらいの勢いが必要でした。
 「王子と呼ぶな! 僕を、この男と一緒にするなぁ!」
 「ギラ、君は幼い頃に誘拐されたんだ」
 事件が明るみになると国の不名誉になるから王子ギラの存在ごとシュゴッダムの歴史から抹消しちゃった、てへっ、と説明してギラの懐柔を図るラクレスであったが、その欺瞞に満ちた笑みに、ギラひたすら怒りの視線を向ける。
 「民は道具。私が国だ。……おまえの言葉だ! 僕は忘れない。子供達を犠牲にするおまえを! 僕は許さない!」
 カグラギとリタが手を緩めるとラクレスに斬りかかるギラだが侍従Aにあっさりと取り押さえられ、バグナラクの繭ドッカン大作戦に対して会議を始めたラクレスが、いきなり五王国同盟の破棄を宣言。
 「キングオージャーはシュゴッダムが独占する。国を守りたいなら私に忠誠を誓え。そうすれば、守護神の力を分け与えよう」
 ラクレスはもはや隠す素振りもなく、全世界の危機を利用したキングオージャーによる世界征服の野心を剥き出しにし……個人的に、第1話からずっとボタンの掛け違いになっているのが、
 ラクレスがどうしてこんなに強気なのかがさっぱりわからない
 点で、今回に関しては何らかの仕掛けをしてシュゴッドのコントロール能力を奪ったという根拠があるのでしょうが……大目標、「バグナラク復活にかこつけて国際的危機を名目にキングオージャーの制御権を握り他国を属国化する」については、一体どんな目算が立っているのか甚だ疑問の為、その後の言行全てが(多少、意図するところはあるでしょうが)誇大妄想の類にしか見えずに首をひねります。
 メタ設定はあれこれあるのでしょうが、現在、劇中情報で明確になっているシュゴッダムの位置づけって、せいぜい「五王国の中で最も歴史が古い(から伝統的に中心的扱いを受けてきた?)」ぐらいのものであり、“ラクレスがやたら自信満々で他国の王に対しても偉そう”だからシュゴッダムの優位性を見るのは情報を行間に頼りすぎに思いますし(ラクレスが色々と“迂闊な人”だと捉えても全体の筋が通るので……)、映像面からのシュゴッダムの印象は正直、ハウステンボス志摩スペイン村
 各国紹介ターンで、青の国はどうやら赤の国の下請け工場みたいな扱いだった事や、紫の国は実質的に冥王星刑務所なので国力は恐らく小さい(鉱山ぐらい領有していそうですが)事は示唆されましたが、それにしても成り上がり後の青の国は、その気になれば各国の情報網を潰した上で、大規模インフラテロぐらい仕掛けられそうな勢力ではありますし……。
 その辺りをスムーズに見せる為には、ラクレスの自信の根拠として序盤の内に、「他国を圧倒するシュゴッダムの国力」と「自国民のみならず他国民からも敬意を払われるようなラクレスのカリスマ性」を明確に示しておき、「国力」と「支持」の2点をもって、説得力の土台を固めてほしかったな、と。
 前者に関してはまだ後付けでどうにかできる範囲とはいえ、後者を強調する間もなく悪役でございと描写してしまったのが最初のつまづきだったと思うのですが、世間からは“王の規範”の如く思われていたラクレスが実は下劣な悪党で、それぞれ奇抜に見えるヤンマ達の方がむしろ民を想う王であった、とする表と裏の逆転の構図をもっと明確にした方が、メンバーの「ヒーロー性」も鮮烈に打ち出せたように思えます。
 その対比構造が弱いので、ラクレスはチープな悪役になるし、王様メンバーはなんとなく許された感で進むし、ギラの“邪悪な王”ロールプレイもいまいち面白くなっていない印象。
 突き詰めると今作、「これは、平和を守る王たちの物語。そして、王になる男の物語である」を謳っている割には、その中心軸となる「王」の姿が曖昧なのかな、と。
 この世界なりに広く国民から信頼を得る存在として、一番最初に「“王”とは何か」のロールモデル(表ラクレス)を出した上で、それが裏切られた(裏ラクレス)時に王に対する問いかけが始まり、そこで常に表ラクレスとの対比が存在しながら進めば、もう少し軸がしっかりしたように思うのですが、虚飾を前提として“理想の王様”像を一つも描く事なく、最初から「お国柄に合わせて色々な王が居るよね」と出してしまった事で、現代的とはいえるのかもしれませんが、王を巡る物語としては構造が散漫になってしまった気がします。
 一年物としては、〔単純 → 複雑〕のルートで良かったのではないかな、というか。
 合わせて、各国の王は王としてあくまで“国家の利益第一”に動いており、そんなミクロなヒーローとしての「王」たちが、世界の敵に対するマクロな「ヒーロー」になっていく過程を描く意図も見えるのですが、その中途の段階が続く構造の結果として、画面の派手なバトルで目くらましするみたいな展開が続いているのも、ヒーローフィクションとしては個人的に物足りない点。
 せめてギラだけでも、愚直にマクロなヒーローをやろうとしているなら印象は違ったのですが、むしろそのギラこそが、ミクロなヒーロー(打倒ラクレス)に強くこだわっている存在ですし。
 勿論、ギラにとっては打倒ラクレスも決して目の前の小さな問題ではなく、当人意識の中では恐らくマクロなヒーローであり、「キャラクターの視点」と「視聴者の視点」において、ミクロの敵(国家の敵)とマクロの敵(世界の敵)が、「どこまでをその人物の“世界”とするのか」において、意図的にずらされているのですが、どうしてもそこにはストレスも発生します。
 特に前作が、ミクロなヒーローとマクロなヒーローが地続きである点を主題の一つとしていた事もあり(子供のボールを拾うのも鬼を退治するのもドンブラの中では一緒の行い)、今作におけるミクロなヒーローとマクロなヒーローの分断は、見ていてなかなか、気持ちの良くならないところ(「ヒーロー」が“気持ちいい”存在であるのは大事だと思うわけなのです)。
 各国の王に義侠心めいたものがあるのは描かれていますし(逆にこれが、そこだけ半端に「ヒーロー」な言い訳めいたものにもなっているのですが……)、今回、ラクレスが五王国同盟の書類をぶった切った事でその辺りに少し変化が起きてくるかもですが、国際会議の真っ最中にラクレスがほぼほぼ宣戦布告を口にしたタイミングで巨大戦闘員が城下を強襲。
 ここで躊躇なく出撃しようとする王様たちに焦点を絞り込めばヒーローフィクションとしてはスッキリした図式になるのに敢えてそれをしないのは、やはり意図的なずらしとは思うのですが、そこに生み出そうとする“面白さ”が個人的に響いてこない状況が続きます。
 ところが、何故か王者の剣が反応せずにヤンマ達は王鎧武装できず、不敵に笑うラクレスの根拠の一端が示される中、ギラの叫び応えてクワガタバイクが飛び込んでくるのは、ギラの特異性を示しつつ劇的な場面にはなりました。
 (ギラ、本当に……シュゴッドと話せるの?)
 王者の剣も奪い返したギラは城の外へ飛び出すとクワガタ本体と合流するが、そこにサソリソウルを手にしたカメムシが出現。
 「一緒に来ていただければ、渡さなくもなくもなくも……」
 「今ここで渡せ!」
 すっかり、気に入らない奴にはとりあえず剣を抜く体質になったギラが王鎧武装するとカメムシは戦闘員を召喚し、赤の立ち回り……に、いきなり紫も画面に入ってくるのですが……え?!
 続けて黄青黒も参戦するのですが……あれ?!
 キングオージャーは召喚できないが王鎧武装は出来る、という事だったのでしょうか……としても、まず王鎧武装するのが基本の流れなのでおかしな話ではあり、ギラが飛び出した後に王鎧武装だけはラクレスに承認させたのかもしれませんが、なんにせよ、話の流れが戦闘に繋がっていないので、ただ派手なだけのバトルになっていて、心の躍るところが特にない『キングオージャー』バトル。
 戦闘員を蹴散らすオージャー達だが、その間に巨大戦闘員が繭に打撃エネルギーを与えて超力招来を早めようとし、街の書き割りを背景に右往左往する国民・その真ん中に現れるラクレス・端にたつ国王たち・箒の人の芝居の方向性、はやはり舞台劇に寄せた見せ方。
 「俺様が……世界を支配するぅ!」
 黒がカメムシから奪い取り、ラクレスへ渡したサソリソウルを更に奪い取ったギラはゴッドサソリを召喚。サソリが戦闘員を千切り殺すと、それを見ていたラクレスは何故かキングオージャーの召喚に成功し、空中高く放り投げた繭をカブトキャノンで吹き飛ばす事で、宣言通りに王国の危機を回避してみせるのであった。
 ところが今度は、本来ならキングオージャーのコアパーツである筈の赤いクワガタがその場に出現。更にギラのコントロールを脱したサソリがキングオージャー(?)に針を打ち込むと黒いクワガタが姿を現し、赤と黒、2体のゴッドクワガタが存在する不可解な状況が発生するのであった。
 「――機は熟した」
 城を背景に黄金の剣を構えたラクレスの元に、黒いクワガタが飛来して、つづく。
 次回、何か事由が付けられるかもしれませんが、キングオージャーはロックされているが王鎧武装はさせたい都合による奇妙な戦闘の流れ、実質的に自分からサソリソウルを返しにやってくるカメムシ、とカブトムシ回に続いてギミックの都合による不自然な展開が目立ち、表面上の派手さはあるが積み上げの足りないクライマックスバトルに辿り着くのが、悪いパターン化してきた感。
 ブラッククワガタの出現により、ようやくラクレスの根拠の足場は浮上してきたので、上手く言行に説得力が出てきてくれると良いのですが……。
 個人的には引き続き、CG書き割りを背景にした舞台的な演出と、戦闘シーン全般の見せ方が響いてこないのが作風としては辛いところではあり、これだけ舞台劇に寄せた見せ方をしてくると、1クール目の最後に「全て作り物のお芝居でした!」と明らかになり、2クール目から現代学園編に突入するのではなという気さえしてきます(笑)
 演劇部の妄想男子:ギラ
 コンピューター部のIT番長:ヤンマ
 テニス部の女帝:ヒメノ
 相撲部の主将:カグラギ
 不動の風紀委員長:リタ
 裏表の激しい学年主任:ラクレス先生
 みたいな感じで。