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新人類帝国チェストでごわす

イナズマン』感想・第25話

◆第25話「壮烈! 帝王バンバの最期!!」◆ (監督:塚田正煕 脚本:上原正三
 新人類帝国の基地を無慈悲に蹂躙していくイナズ……ではなく、ロボット戦士と、D印のファントム兵団。謎の第三勢力は、捕虜にした帝国兵を前に、踏みバンバを要求し……踏めずに無残に始末される帝国兵、割と、忠誠心、あった(笑)
 危険手当が足りてねぇ! とバンバのマスクを踏みにじれた兵士は、ベルトとワッペンを取り替えて晴れてD軍団入りし、謎の第三勢力によって新人類帝国は崩壊の一途を辿っていた……
 ナレーション「謎のロボット戦士は、帝王バンバの率いる、ファントム軍団を征服しようとしている。そのやり口は、冷酷無比、そのものであった」
 そして、渡五郎にかかってくる、新人類からの身の上相談。
 「帝王バンバ……貴様が俺をここへ呼び出したのか」
 「折り入って相談がある」
 開始間もなく、落ち目になった悪の総帥が宿敵に身の振り方を相談してくる衝撃の展開で、ここまでの組み立てをほぼ全て更地にする予定だからこそ出来る爆破解体めいた面白さですが、捨て身の大技を連発してくる帝王バンバの姿が、まさに壮烈にして葬列(竹バンバラ回がこんな布石だったとは……)。
 「ほぅ……悪魔の帝王が、俺に相談とはな」
 陽光の下が滅茶苦茶似合わない帝王バンバは、一応話を聞く姿勢になった五郎に対し(渡五郎、表面上は平静を装っていますが、さすがに気が動転しているのか、今回だいぶ対応がおかしい)、あくまで尊大に新コンビ結成を提案。
 「手を組む? おまえと?」
 「さよう。俺とおまえが手を組めば、まさに天下無敵。この世に恐れるものはなくなる。どうだ、俺と手を握らんか?」
 「冗談も休み休み言え!」
 「いや冗談ではない。俺は心底そう思っている」
 「だったらハッキリ言う。俺の使命は、おまえと戦い、おまえを倒す事だ! それを忘れるな」
 「おまえが俺の相棒にならぬのなら、この日本列島は沈没するぞ!」
 愛執が高じて心を病んだ人みたいな事を言い出すバンバだが、そこにD印のファントム兵が姿を見せると、超能力消滅リングによりまとめてバンバと五郎を拘束。
 「おのれ……お前達までも裏切りおったのか」
 「バンバ、あんたが手を組もうと言ってた理由がわかったよ」
 宿敵の窮状を知った五郎からの呼びかけが「おまえ」→「あんた」に変化して微妙に距離感が縮まるちょっと面白いシーンなのですが、帝王バンバはあくまで“新人類帝国の象徴”であって、五郎との間に発生していたのは個人的因縁とは少し違うものだっただけに、跳ねきれずに惜しい。
 ……いやそこ、跳ねてどうするのかはさておき。
 五郎・バンバ・バンバ親衛隊(マーク一つで所属の変わるファントム兵と区別しやすくする為か、黒ずくめのフルフェイス姿)はD軍団の準備した処刑場にまとめて引っ立てられ、刑場で磔にされる悪の総帥は、多分、私史上で初めて見ました。
 「殺すなら殺せ……どうせ間もなく日本列島は海の底へ沈む。はははは……はははははは、貴様らも地獄へ道連れになるのだ」
 銃口を向けられたバンバは開き直り、火山帯の活断層地殻変動装置を仕掛けていた新人類帝国は、もはや、自暴自棄になっていた(ところで、サブマシンガンで死ぬのバンバ?!)。
 ロボット戦士はバンバの煽りを華麗にスルーし、ヒーローと並んで銃殺される悪の総帥という歴史に名を残す偉業を帝王バンバが達成しかけたその時、完全にバンバの巻き添えを食らっていた五郎を救おうと同志カツミが物陰から飛び出し、場が混乱。
 「よし! 今だ!」
 銃撃を受けたカツミを守ろうと丸目が手を広げた事により、ヒロインスキルが自動発動。丸目の危機を救うべく火事場の馬鹿力を発揮した五郎はロープとリングを引きちぎって剛力招来し、たとえ超能力は封じられても、物事の基本は筋肉……!
 鍛えた肉体が超能力消滅リングを打ち破ると、サナギマンとバイク軍団の戦いになり、バイクにぶつかられてMゲージを高めたサナギマンは超力招来。
 「自由の戦士! イナズマン!」
 「おのれイナズマン、よくも邪魔したな……くそ!」
 「貴様はいったい何者だ!」
 「ふふふ、今にわかる」
 ヒーロー反撃のBGMも軽快で、完全に名乗る流れだったのですが、勢いで口を滑らせてはくれませんでした(笑)
 イナズマンと一当たりしたロボット戦士が逃走する一方、同志諸君は、何故かバンバたちと一緒に逃げていた。
 な・ん・で。
 戦闘能力皆無の状態でレギュラー一般人と一緒に逃走する悪の総帥、が再び射殺の危機に陥った時、俺のヒロインは誰なんだ?! とイナズマンが駆けつけチェスト!
 丸目らの危機を救ったイナズマンは、バンバ一同を無視して去ろうとする暴挙に出るが、慌てたバンバに止められる。
 「待て! イナズマン! これをなんとかしてくれ。自由に動く事も出来んのだ」
 「自由にしたら、地殻変動装置のあり場所を教えるか?」
 「なに」
 「やならいい」
 「いや待て! 教える」
 率直に、ヒーローと悪の総帥のやり取りとしては滅茶苦茶ですが、地殻変動装置の存在を一応の理由付けとし、イナズマンにリングを破壊してもらったバンバ一行は同志カツミの治療をじっと見守り、走りながらバラバラに解体されていくようなネジの緩み具合に、もう笑うしかありません。
 その状況で、五郎と同志諸君による、いきなり銃の前に飛び出したりしちゃ駄目じゃないか~それで死んだ戦隊ヒーローだって居るんだぞ~、えへへ思わず……みたいなほのぼの説教タイムが始まり、完全に蚊帳の外に置かれるバンバ一行、デズナラク8世様より扱いが酷い……!
 同志諸君の活躍はここで終了し、五郎はバンバ一行の案内で装置の設置された洞穴へと向かうが、当然バンバは五郎を牢屋に閉じ込め、高笑い。
 「渡五郎! ふふふふふふふ……まんまとひっかかったな。儂は権力が欲しい。帝王の座が欲しいのだ」
 もはや引っかかる方も引っかけたと主張する方も低レベルすぎる争いの末、特別あつらえの牢屋に閉じ込められた五郎は謎のエネルギー波によって体の自由を奪われ、残った全力を振り絞って剛力招来からのマッハ超力招来に成功するが、そのチェストでも牢獄はびくともしない。
 「バーーーラバラバラバラバンバ~。その光が、おまえのエネルギーを吸収しているのだ。いくらイナズマンでも、脱出は無理だ! 儂は、儂は最後の大計画を実行する!」
 バンバが地殻変動装置をスイッチオンし、イナズマンは死の牢獄を突破する最後の手段として、矢印と釣り針を取り出すと、なにやら工作を開始。
 「出来た…………ゼーバー!」
 ナレーション「イナズマンは、自分の体の部分から、超能力を倍増させる装置、ゼーバーを作り出したのだ」
 映像的には、ベルトから矢印を取り出し、角から釣り針が出てきて、カチャカチャやっていると稲妻の意匠が出来上がるなどだいぶ意味不明でしたが、とにもかくにもベーターカプセル型の新装備を自ら作り出したイナズマンは、それを用いて牢獄を脱出。
 地殻変動により日本列島が大海に沈没するまであと5分――イナズマンに袖にされた腹いせに日本列島を道連れに地球規模の心中を図ろうとするバンバとイナズマン、最後の戦いが始まり、指先から炎を出しながらバンバ空間を展開する帝王バンバであったが、ファイヤー返しチェスト-!
 「俺の正体をよく見ろ!」
 毎度お馴染みの返し技で反撃を受けた帝王バンバは、油膜×深海魚、とてもいった火炎ファイターに姿を変え…………火炎ファイター……?
 聞き取り間違いかと思って確認してしまいましたが、火炎ファイターで間違っていない模様。
 「死ね……死ねぇぇぇぇぇっ!」
 これまでの敵と全く違う名称パターンの火炎ファイターはイナズマンに組み付き善戦するが、バンバ空間を打ち破られると新兵器ゼーバーから放たれる稲妻ショックで大ダメージを受け、帝王バンバの姿でよろめく。
 「貴様だけは……命に代えても倒すぞ……イナズマンめ……帝王バンバの、燃える命を見るがよい!」
 次回予告で「突然巨大化した帝王バンバ」扱いを受けていた帝王バンバ、終了間際、水平線の彼方にいきなりの巨大化。
 そして、何もしないまま大爆発。
 命に代えても倒す発言の割に、イナズマンに全くダメージを与えない位置で勝手に弾け飛んでしまったのですが、体内に蓄積していた致命ウィルスでもばらまいたのでしょうか……次作最終盤で五郎がいきなり血を吐いて、(まさかこれは……)とかなったら、物凄く嫌な伏線ですが!
 「……帝王バンバ……まさに地獄の魔王だった」
 なんか死闘だった気がする……! と敗者を讃えたイナズマン地殻変動装置を破壊して列島沈没を食い止めるが、その前に現れるロボット戦士。
 「貴様はいったい何者なんだ?!」
 「ふふ、俺の名は、ウデスパー!」
 ようやく名乗った謎のロボット戦士は、新人類帝国の帝王を称していたバンバは単なる部隊長に過ぎず、その背後にはもっと巨大で強力な組織が存在していた事を五郎へと告げる。
 悪の総帥としてはあまりにあまりだったバンバの言行の数々は、実は一幹部に過ぎなかった事で辻褄が合わされ、一連の暗闘は、組織の母体を裏切り権力に執着したバンバに対する内部粛正であったと位置づけられて、その時点でどんな設定と思惑だったのかは別にして、


 「カゼバンバラ、新人類帝国を作り上げる計画は、遅々として進まん!」
 冒頭から帝王バンバが力強く宣言し、第5話にして明らかになる、「新人類帝国」は努力目標だったという衝撃の真実。

第5話「大空中戦! かみつくライジンゴー!!」(監督:山田稔 脚本:高久進

 が回収。バンバのイナズマンへの執着、コンビ結成の持ちかけ、帝王になりたい宣言なども一応の筋道が付けられ、本当に自称帝王だったバンバの夢が破れた後、青空を覆う戦闘機部隊と共に姿を現したのは、恐怖のデスパー軍団を率いるガイゼル総統!
 肩書きといい軍人スタイルといい、ナチスドイツ感がますます強まる真の敵の出現に、戦いの激化を予感させながら、「つづく」(ただし、次回予告は無し)。
 帝王バンバはデスパー軍団の尖兵に過ぎなかった! と、第1部・完の趣向となり、1話まるまる次作への繋ぎともいえる今回、バンバの乱痴気騒ぎは面白かったですが、最初に書いたようにほぼ全て更地にする予定だからこそ出来る爆破解体めいた面白さなので、『イナズマン』としては、なんとも生煮えの形で幕を閉じる事に。
 個人的には、初期の軽快な路線が割と好きだったのですが、割と好きな目線でも、“少年同盟を活躍させる為にはシティアドベンチャーの要素を取り入れたいが、そこで存在感を明確にする為には奇抜なコスチュームを着せざるをえず、しかし奇抜なコスチュームはシティアドベンチャーに致命的に向かない”設計の問題は、厳しかったところです。
 次週から『F』の配信が始まってくれるようで、一安心(笑)