『イナズマン』感想・第21話
◆第21話「渡五郎イナズマン死す!?」◆ (監督:塚田正煕 脚本:上原正三)
150年に一度、サカサダケの花が咲く時、不吉な事が起きる――言い伝えに怯える村に赤い雪というかもう完全に血の雨が降り注ぎ、住人が忽然と消失。
この大量失踪事件の調査に向かった五郎はサカサダケの花を発見するが、その正体は割っても割っても中から出てくる竹バンバラであり、不意打ちの毒矢に倒れた五郎は、途中で立ち寄った牧場の一家に助けられる。
「相当頑丈なお体ですのね。あれだけの毒が回れば、普通の人なら即死です」
「毒矢のようでしたが」
親切で品の良い中年夫婦が表情一つ変えずに問いかけ、
「タケバンバラにやられたんです」
までが正気のやり取りとして繰り出されるのが、これだ! 上原大先生だ!!
九死に一生を得た筈の五郎だったが、解毒の煎じ薬を飲み干したところぐったりと倒れて意識を失ってしまい、なにやら民俗ホラー風味になったところで、牧場の一家は新人類帝国の手先と判明。これに気づいて雷神号で逃走しようとする五郎だが、エンジンをふかすも走り出さない車の背後で牧場娘がにっこり笑顔を見せるのが、絶妙に怖い演出。
「故障ですか?」
「何処にいらっしゃるんですか? その体じゃまだ無理ですよ」
直接的な映像ではなく、異常な状況で自然に振る舞う歯車の狂い方が恐怖を浮き上がらせる、今作ここまでには無かった手法で、牧場父娘に縛り上げられた五郎は生きたまま死ねるという赤い雪の薬を無理矢理に口から注がれ、完全に、何も知らない旅人がサカサダケ様を鎮める生贄にされる展開(笑)
(俺を生きたまま埋葬するつもりだ。だがどうにもならない。俺の体は死体同様にされてしまっている)
翌日、薬湯の影響で意識を保ったまま仮死状態となった五郎の姿は葬列の中心にあり、土気色の無表情で白い菊の花とともに棺に詰まった渡五郎の凄まじい姿をピークに置くと『イナズマン』後半に顕著な露悪性が強まってしまったように思うのですが、Aパートの内にここまで来てしまうハイテンポにより、これからどうするの?! が生まれたのが今回の良かったところ。
また、牧場父役の中山昭二さんの存在感もあって、あくまで平々凡々にして淡々と葬儀を進めていく牧場一家が非常にいい味を出しています。
連絡の取れなくなった五郎を心配して村にやってきた丸目らは、埋葬寸前の棺を目撃。
「五郎さんが死ぬわけないよ。絶対死ぬもんか!」
(そうだ。薬草で仮死状態にされているだけだ。心臓は止まっても、俺の意識は明確なんだ。サトコ、カツミ、豪作! 助けてくれ!)
「肩の傷からばい菌が入ったらしく、医者を呼んだ時には手遅れでした」
(嘘だ! 騙されるな!)
意識のある死体、というのはラヴクラフトの有名短篇を思い出すところですが、ホラーの手法をあれこれ散りばめ、五郎の死体を東京に連れ帰りたいという同志サトコの希望は、村の習わしによりバリケード。
(やめろ! サトコ! 豪作! カツミ!)
心の叫び虚しく、教会の鐘が鳴り響く中、五郎の入った棺は冷たく固い土の下に埋められていき……五郎の絶叫に重ねて土を被せられていく棺主観の映像でAパートが終了するのも、良い切れ味。
――BAD END 27
……残念ながら、五郎と同志諸君の友好度が低すぎてテレパシーが通じず、第12話ぐらいまで戻りますか?
「夢のようじゃ……あの五郎が死んでしもうたなんて。とても信じられんばい」
「そうでしょうねぇ。でももうすぐあんた達も、彼のところに行けますよ」
「はぁ……は?! 今なんと?!」
バス停まで送る、と丸目らを車に乗せた牧場の男は、満面の笑みを浮かべながら帝国兵の正体を現し、サイコキラーめいた中山昭二が、大変いい感じ。
同志SとKが久々に同盟の戦士らしいところを見せて帝国兵に肉弾戦で立ち向かうと、丸目の打撃が後頭部に入って帝国兵は気絶。
五郎と3人の友好度を見誤り、放っておけばそのまま流されたであろう、余計な敗者復活イベントを発生させてしまった帝国兵の大不覚でありました(一応、同志Sは不自然さを気にしていた事にはなっているのですが、積み重ねが無いので説得力は薄く、結局は諦めて帰るという……)。
新人類の暗躍が発覚した事で五郎がまだ生きている可能性を強く意識した同志Sの指示により、ゾンビ五郎を掘り出す3人の前に現れた牧場の娘が竹バンバラの正体を現し、竹の怪人の顔を鎧兜風味にしたのは、強敵感が上手く出て面白いデザイン。
五郎を背負いながら逃げ込んだ小屋に外から火をかけられて全滅寸前、丸焼きの興奮にMゲージを蓄積した五郎が復活し、剛力招来!
サナギマンとなると3人を救出して竹バンバラへと立ち向かい、胸板貫く竹槍の一撃に大興奮。
「同じ毒がいつまでも効くと思うか愚か者!」
若干、仮面ライダー風味な発言から超力招来すると奪った槍での立ち回りを見せたイナズマンは、植物操作の能力を使う竹バンバラにより悪魔の竹藪に引きずり込まれるが、拘束を破ると空間離脱チェストからの稲妻落としを放ち、新人類チェストでごわす。
ここ最近のイナズマンだと、土葬にされて絶体絶命の渡五郎がなんか適当に超力招来! してしまいそうなところを、五郎生き埋めをAパートのクライマックスまで早め、Bパート前半を同志諸君の活躍に割いて五郎の協力者として存在感を出し、そこから改めてヒーロー復活! としたのは組み立ての良かった部分。
……まあ、今頃、大木姉弟の存在感を出しても、あまりにも遅きに失したのが残念ですが……。
「助かったなどと思うなよ渡五郎。今度こそ、貴様を地獄へ送り込んでやるぞ」
明るく東京に戻っていく五郎たちだが、久方ぶりの遠吠えタイムで帝王バンバが飽くなき殺意の炎を燃やし、つづく。
ゲストの存在も大きかったですが、参加3本目にしてようやく『イナズマン』に上原大先生が“入った”感じで、今回はなかなか面白かったです。