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赤い翼をブンブン

イナズマン』感想・第20話

◆第20話「星円盤を追え! ライジンゴー!!」◆ (監督:塚田正煕 脚本:曽田博久)
 大学でサッカーに興じる五郎は、ボールをヘディングしようとした瞬間、迫り来る隕石の気配を感じ、咄嗟に回避。
 ボールが隕石となってまたボールに戻る怪奇現象に一同首をひねる中、水晶玉を手にグラウンド脇に佇む謎めいた女を目にする五郎だが、その水晶玉が輝く時、再び五郎を隕石が襲い、更に謎の円盤まで出現してヒートアップ。
 夜の街を、オレンジ色に光り輝くUFOに追われる渡五郎の姿はちょっとシュールで、なんとなく、今作序盤に気配のあった円谷テイストを感じます。
 (……このままでは精神的に参ってしまう)
 日常を脅かす予測不能の襲撃に疲弊しながらもUFOの爆撃から辛うじて逃げ切った五郎を見つめる水晶玉の女は、裏で糸引く星バンバラの命令を受けており、水晶玉の光を五郎に当てる事で星バンバラからの攻撃を誘導するスポッター(観測手)であると判明。
 神秘的な水晶玉×謎の美女(今回はゲストの美人度が高い)に星バンバラの遠隔攻撃を組み合わせ、五郎にプレッシャーを与え続ける不穏な影、でサスペンスと五郎を追い詰める説得力を持たせようとする狙いだったのでしょうが、「謎の光に照らされた五郎をどこからともなく隕石が襲う!」という状況を映像に落とし込むのが難しかったのか、出来上がったのは「ボールが隕石になる怪奇現象」や「不審者を追って外に出たらUFOに襲われる」などで、脚本・演出・特撮班の意思疎通が上手く噛み合っていない感あり。
 挙げ句、水晶玉の女が、男子寮の五郎の寝室に扉を開けて入り込むので、大変困惑します(笑)
 この作戦には、致命的な欠陥があるのでは。
 主に映像上の都合とは思われますが寮の部屋が以前と変わっているのは……あ、ツボ事件で燃えたからか。
 丸目を囮にして神経衰弱を装った五郎は女の後を尾行すると、弟を人質に星バンバラの命令に従っている事を知って飛び出していき、なんだか久々に、スカッとヒーローらしいアクションを見たような。
 「話は聞いた! ホシバンバラ! 許せん!」
 「おぉ渡五郎。秘密がバレたか。俺たちほどの新人類となれば、直接手を汚さないで、おまえを殺せると思っていたんだが」
 格闘戦でもなかなか強い星バンバラに踏みつけにされる五郎だが、女が水晶玉のパワーで横槍を入れ、目を潰された星バンバラは一時撤退。
 今作の世界観からすると、女は弱めのミュータントで、代々伝わる水晶玉はその能力の増幅装置といったところなのでしょうが、特にそれ以上の掘り下げはなく、水晶玉関係は超ふんわり。
 なお弟がさらわれたのは前年の夏、花火大会の夜なのですが、そこから半年ほど捕まえっぱなしの無茶な設定にするストーリー上の必要性は全く無い為、諸事情あって女優さんに浴衣を着せたかっただけなのでは……? 疑惑も浮かびます(或いは、七夕を絡めたファンタジーなバックストーリーが予定されていたのが消し飛んだりしたのか)。
 詳しい事情を聞いた五郎は弟の救出に向かうも星バンバラの罠にはまり、隕石と落石の下敷きとなってしまうが、飛んできた雷神号が石を丁寧にどかしていき、そこにかかる初挿入歌が

 自動操縦~

 と高らかに唄って凄まじい説得力を与えてきます(笑)
 割とまともにダメージを受けていたイナズマンは雷神号によって救出されると寮に運ばれ、傷ついた五郎の姿に、もうこれ以上迷惑をかけられない、と自ら水晶玉を叩き割る女。
 「おのれ~水晶玉は割れてしまったかー!」
 何故かそれを察知して興奮する星バンバラは、最後のトラップ、と爆弾を取り付けた少年を解放。姉の元に向かわせると、五郎を含めた3人まとめて人間爆弾で葬り去ろうとするのだが、五郎が近づいてもちっとも起爆しない内に爆弾を解除されてしまい……敗因は、3人まとめて星にする事にこだわった悪のロマン。
 多分、物陰で格好いい締めの台詞を考えていた星バンバラは、作戦失敗すると待機させていた帝国兵を繰り出し、五郎は剛力招来。
 姉弟を逃がす為にに帝国兵の攻撃を受けるサナギマンの姿はヒロイックになり、「もっと痛めつけてやれ~」と全く情報の共有が出来ていない星バンバラの蹴りを顎に受けたサナギマンは、そうだ、それでいいんだ、と超力招来!
 「自由の戦士! イナズマン!」
 高いところで見得を切ると帝国兵をばったばったとなぎ倒し、雷神号vs星バンバラ円盤の空中戦に突入すると、必殺の体当たりにより星バンバラは円盤と共に星になるのであった。
 ここしばらくの『イナズマン』の作風からてっきり、水晶玉の女が五郎をかばって爆死、星バンバラに嘘を吹き込まれた弟が五郎を姉の仇と付け狙った末にキラキラした説得を受けて真実を知り、怒り狂うイナズマンは隕石逆転チェストぉ! みたいな事になるのかと思いきや、姉弟は共に助かって春から小学生だ! と明るい希望を示して終わり、急に正気に戻ったのですが、急に戻りすぎて悪いものでも食べたように見えるエピソードでありました(笑)
 個人的には、こういう路線の方が楽しめますが。
 次回――「村のあぜ道を、五郎の葬式の列がゆく」。
 正気、束の間の幻だった?!