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ヒーローは王に翼を捧ぐ

『ひろがるスカイ! プリキュア』感想・第9話

◆第9話「勇気の翼、飛べキュアウイング!!」◆
(脚本:金月龍之介 演出:篠原花奈 作画監督:松浦仁美)
 アイ・キャン・ノット・フラーーイ!
 エルを救う為、勇躍飛び立とうとしたツバサが見事に墜落するのは案の定でしたが、そこから即座にOPに繋げる事で

 (Sky-High-Fly)
 天高く羽ばたいて 最上よりも高く

 の先に「さぁ行こう! ひろがる世界」がある今作の主題が強調されて、ツバサが“飛ぶ”意味が補強されるのが、鮮やか。
 「Fly」の位置づけはキャラそれぞれで違うのですが、“想いを後押しする翼”としてのプリキュアの力もわかりやすく示されて、コア要素に絡んで上手い背景設定を組み立てたなと。
 「やっぱり、駄目なのかな……プニバード族の僕が、空を、飛ぶなんて。メソメソしてる場合じゃない! エルちゃんを、連れ戻さないと」
 地面にべちゃっとダイブしていたツバサは即座に立ち直り、友人知人の笑いものになりながらも飛ぼうとする事を諦めず、一人飛ばされた異世界で「素晴らしい! 素晴らしいぞ! このソラシド人類の科学で私は空を飛び、私を裏切り嘲ったものたちに復讐の鉄槌を下すのだ!!
 「人間を神に近づけようとした私のどこが悪い! 科学者として当然ではないか。どこが悪い、どこが悪いと云うんだ!!」
 そう、Dr.ヒネラーも言っていた!
 ……ではなく、航空力学を学び、あくまでも自らの肉体で空を飛ぼうとする姿勢を崩さないメンタルの強さを発揮すると、モーフボールと化して市街地へと坂を駆け下りていく。
 一方、スカイとプリズムはプリキュアブースタージャンプをナチュラルに用いるも空中のUFOボーグを捉える事ができず、飛行系の敵に苦戦する一種のセオリーといえますが、落下するスカイがレーザー光線に追われると、光弾を足場として配置するプリズムさん、柔軟。
 踏むと消えるので、どうやら威力を限界まで抑えた上で空中に固定したようですが……これ、威力を上手く調整すると、物凄くえげつないトラップに使えるのでは(三雲修的発想)。
 「ねぇ……なんかヤバそうな予感がしてるの、私だけかな?」
 「いいえ。ヤバヤバです!」
 スカイとプリズムは、攻撃の届かない距離から放たれるUFOボーグの極太スペースレーザーに灼かれ……意外と底が知れないぞ、カバトン(笑)
 「いやーはっはっはは! お・れ、TUEEEE! と、言いたいところだが、プリキュアもまあまあつえーし、ここで油断するから負けるのねん」
 今回は冷静に立ち回るカバトンは、レーダーを操作して倒れたプリキュアを発見するが、追い打ちを放つ前に、現場に飛んできたプリンセス・エルを発見。更にそこに転がってきたツバサが到着して格好良く啖呵を切るが、焼き鳥にされそうになって慌てて逃げているとエルが飛来してツバサに手を伸ばし、臣民を助ける為に自ら命を張るプリンセスが、やたらめったら格好いい!
 エルの手を取るツバサだったが二人乗った抱っこひもは重量オーバーでスピードが出ず、まとめて掃除機光線にキャプチャーされていき……これ、プリキュアの必殺技を参考にしたのでは?(笑)
 その頃、レーザーの衝撃に気を失っていたスカイとプリズムはあげはに発見されて人物の動きが接続され、UFOボーグに吸い込まれていくエルとツバサを目撃。
 「エルちゃん!」
 「ツバサくんまで! どうして?!」
 「質問は無し。二人を助けないと」
 相変わらず妙に場慣れしたあげはの立案により、ブーストジャンプ&追加のプリズム光弾によるロケットプリキュア作戦が実行に移されるが、その代償として、空中で光弾を放ったプリズムは思い切りビルの天井に叩きつけられ、一瞬、あげはさんが格好良くキャッチしてしまうのかと思いましたが、衝撃の強さをハッキリ描いて、それを見ているしかないあげはの歯がゆさを表情で示したのは、今作における、一般人とプリキュア(ヒーロー)の身体的な線引きをしっかり示して、良かったところ。
 だが渾身のロケットプリキュア作戦もUFOまでは届かず、スカイも続けて落下ダメージを受けてしまう。
 「…………中止! ごめん! 正直、私の作戦に無理があった……もっと、別の……」 
 「「大丈夫(です)! もう一回!!」」
 二人の姿を見ていられず、筋肉で解決できないこともあった! と止めようとするあげはだが、スカイとプリズムが雄々しく立ち上がる一方、UFOボーグにキャプチャーされたツバサには、キャトルミューティレーションの危機が迫ってた。
 (なにをやっているんだ僕は……助けに来たのに、逆に足を引っ張ってるじゃないか)
 落ち込みながらも、エルを守ろうとするツバサだがカバトンからは嘲弄を浴び、あっさりと敗北。
 「おまえさぁ、なんでそんなに頑張っちゃってるのぉ? あれかぁ、プリンセスに恩売っときゃ、王様から、ご褒美もらえるかもーってかぁ?」
 「……そんなんじゃない」
 「あぁ? じゃなんだよ」
 「こんな小さい子が、知らない世界に放り出されて、助けてあげたいって思うのは、当たり前じゃないか!」
 生まれ故郷の関係者といえば関係者ですが、縁もゆかりも薄い子供の為に命を懸けられる事を、“当たり前”の気持ちとして持っているツバサのヒーロー性が描かれ、今回上手かったのは、ツバサの真っ直ぐな善良さと正義感だけではなく、エルがツバサを助けようとする姿を示す事により相互の関係性が補完され、最終的には、ツバサの“ナイトの忠節”にふさわしい“プリンセス・エルの在り方”が、その双方の説得力を引き上げた事。
 これがツバサだけが一方的に善良さを発揮して、エルがただの“不思議な赤ん坊”のままだと、ツバサが実に都合のいい人物になってしまうのですが、エルが“王たるものの資質”を見せる事で、ツバサの想いに応える存在になっており、蓋を開けてみればツバサ回のみならずツバサ×エル回として、エルの存在を第8話までよりも深い段階まで物語の中に落とし込んだのは、お見事でした。
 「わからん」
 急に冷めた表情になったカバトンは「おまえ、なんか嫌い」とツバサをダストシュート送りにし、弱みを見つけた相手に対しては徹底的に言葉でいたぶるカバトンにしては妙にあっさり興味を失ったのは、カバトンの背景に絡んできたりするのかどうか。
 「さーて、行くとするか、我らが暗黒の世界、アンダーク帝国へ!」
 エルを小脇に抱えたカバトンは、第9話にしてようやく名前の出た本社に通信を送るが、妄想まみれの報酬を並べ立てている隙を突かれて、人間体で戻ってきたツバサにエルを奪還され、UFO内部でドタバタ追いかけっこ。
 エルを外へと逃がすツバサだが、エルはここでも臣民を決して見捨てない姿勢を見せ、なんだか将来は紅蓮の炎で全てを焼き尽くす武闘派プリンセスとかに成長しそうな気配がして参りました。
 「エルちゃん、逃げて」
 一度は抱っこひもに手を掛けるもやはり重量オーバーでスピードが出ず、UFOの追跡を受けるとツバサは自ら手を離し……まあ、ドラマ的にはここは人間体でないと格好つかないのですが、せめて鳥モードになれば良かったのでは、と気になってしまうのは、惜しかったところ。
 (……結局、飛べなかったな……)
 ただ、飛びたかった少年が、誰かを救う為に飛ばない事を選んで墜ちていく画は印象的となり、過去に浴びた嘲笑を思い起こしながら真っ逆さまに落下していくツバサだが、謎のプリンセスパワーにより、空中停止。
 「エルちゃん! 僕の事はいいから!」
 「えぅ! ぇぁぁぃ!」
 ツバサの命に懸命に手を伸ばすエルだがその頭上にはUFOが近づき、ツバサに対して淡泊だった分、ここぞとばかりにエルを罵り倒すカバトンさん、異世界に孤軍奮闘する中、執拗な精神攻撃で二人のプリキュアを生み出し、今また、赤ん坊さえ容赦なく嘲り嗤うその姿勢には、感動さえ覚えます(笑)
 「ぶわぁーか! そんな脇役ほっといて、一人でさっさと逃げときゃ良かったのによ~。ぎゃーっはははははは……!」
 「……やめろ。エルちゃんを……笑うなぁぁぁぁぁ!!」
 再び放たれたキャプチャー光線でドナドナされていくエルがこぼした涙が頬に触れた時、絶叫したツバサの胸に宿る、プリキュアの光。
 「う、嘘だろ……あんな脇役が……プリキュアになるってのか?!」
 心理的に追い詰めた末に3人目のプリキュアを生み出したカバトンさんはおののくが、
 「子供の為に戦うのが、超人だからだ」
 そう、爾朗センパイも言っていた。
 「もし、僕に最期が訪れたとして……その時に思い出すのは、僕を嗤った人たちの顔じゃない。プリンセス、僕を守ろうとしてくれた、あなたの顔です。……でも、それは今じゃない。だってこれからは、僕があなたを守るんだから!」
 ツバサの宣言に応えて魔法のペンが具現化し、慌てて十六連打でエルを吸い込もうとするカバトンだが、キュアスカイの垂直上昇式ロケットパンチがUFOボーグに突き刺さって、その動きを止める。
 「届いたぁ!」
 「よぉし!」
 は、スカイ・プリズム(&あげは)組にもしっかり役割を与えた上で、点滴穿石を地で行くヒーローであるキュアスカイが、この世界で得た友達の力を借りて、チャレンジを繰り返した末に、これまで以上に高いところまで羽ばたき手を伸ばしてみせるのもバッチリ決まって良かったところ。
 そう、育てた筋肉に、解決できない事はありません!
 「エルちゃん! 今です!」
 「プリンセス・エル! あなたのナイトが参ります!」
 エルの叫びにより新たなメダルが生じると、それをキャッチしたツバサはひろがるチェンジを発動し、毎度ながら、誰でも少しはっちゃけてしまう、プリキュアの力、恐るべし。
 「天高く広がる勇気――キュアウイング!」
 ツバサはオレンジ系の空飛ぶプリキュアに変身し、色こそ緑ではありませんが、裾のデザインや飛行ポーズからすると、核になるモチーフはピーター・パンでありましょうか。
 飛べないプニはただのプニ、と華麗に空を舞うウイングは空中でエルちゃんを助け、その勇姿を、UFOに拳をめり込ませたまま見つめるキュアスカイは、今回最高に面白い絵でした(笑)
 「認めねぇぇぇぇぇぇ! 空が飛べたからってなんだってんだ! つぇぇのは、この、俺だぁ!!」
 逆襲のスペースビームを放とうとするカバトンだったが、その背に勇気の翼を得たキュアウイングはヒーローの心得を胸に飛び上がると、プリンセスを守る騎士として、航空力学的に許せないチェストぉ! を叩き込み、尻に火が付いたカバトンは撤収。
 残ったUFOボーグはスカイとプリズムの合体技に吸い込まれ、UFOにアブダクションされるUFO(笑)
 かくしてプリキュアに新たな仲間、プリンセス・エルをテロリストから守る翼の騎士が加わり、上述したように、これまでほぼマジックアイテム扱いだったエルが、一方的に庇護されるだけの存在ではなしに王たる者の片鱗を見せ始めるのが意外性もあって面白く、その姿と繋げる事で、翼を得る少年――新たなプリキュアの誕生――に説得力を加えるのは、鮮やかでした。
 これでようやくOPに登場している4プリキュアの内3人が揃い、OPのバトルシーンは各プリキュアのバトルスタイルをストレートに示していた事が明確になってきましたが、打撃系のスカイ、射撃系のプリズム、飛行系のウイング、と来て……キュアあげは(仮)は
 「跪け」
 みたいに見えるので、重力制御系……?
 つまり、「虚空に広がる重力の女王――キュアグラビティ!」なのか。
 次回――新メンバーの歓迎会といえばこれ。焼き……とり……?