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タイムリミット殺人事件

『バトルフィーバーJ』感想・第45-46話

◆第45話「心臓停止五分前!」◆ (監督:竹本弘一 脚本:江連卓)
 今回は、
 心臓に持病を患う少年を引率も無しに学外ランニングに放り出す小学校!
 エゴスの追跡舞台から夜通し一人で逃げ回る心臓外科の権威!
 セーラー服をまとって女子高生を主張する汀マリア!
 の無理筋3連発をお送りします。
 「子供が走る姿ってのは、活気があっていいなぁ。俺も走りたくなってきたぜ」
 パトロール中にテンション上がって、小学生のランニングに混ざって走り出す曙だが、心臓に持病を抱えたマサルの級友が倒れてしまい、急ぎ病院へ。少年を助ける為には緊急手術が必要だが、それを執刀できるのは、 ドクターK 心臓外科の権威・オオサワ博士のみ。
 ところが、山中湖の別荘で静養中だった博士はエゴスに拉致されており、御子への強化心臓の移植手術を強制されていた。博士の別荘へ向かった曙と誠は、エゴスの監視下におかれる博士を救出し、曙は華麗な潜入アクション、誠は華麗なトランペット演奏を披露。
 神誠役の伴直弥(大介)さんがかつて演じたキカイダー/ジローの兄・イチローがトランペットを吹き鳴らす登場シーンのパロディでありましょうが、エゴスのあるところ必ず現れ、エゴスの悪の行われるところ必ずゆく、国防戦士、バトルフィーバー!
 誠が見張りを引きつけている間に、別荘内部に突入した曙は事情を説明して博士を連れ出し、エゴスから救出する代わりに突発的な手術を強制される、これはこれで超法規的拉致(笑)
 だが、完成した心臓怪人が逃げるジープの後を猛スピードで追い、またも炸裂する口裂けダッシュ
 心臓モチーフと虫の口吻のような組み合わせの怪人の顔もあって、ほとんど、新たな怪異と化しています。
 「行け、コサック!」
 「……ケニア、死ぬなよ」
 妻子の存在を脅迫材料に使われている博士が心臓怪人の弱点を伝えられぬまま、博士を誠に任せた曙が怪人を水中に引きずり込んで溺死させようとするが、肺活量勝負に完敗を喫して、見事な川流れ。
 誠もまたフィーバーして怪人との一騎打ちに挑むが敗北し、立て続けの川ダイブ。
 結果的には誠が曙を回収する事に成功し、博士は一人でエゴスの追撃から逃げ回る事になり、いつまで経っても博士が到着しない事に焦れたマリアが、京介と共に山中湖まで援軍に駆けつけるとすっかり夜になっており、「心臓停止五分前!」とは。
 更にマリアは、博士の妻子が狙われるかもしれないと取って返すと博士の家族をBF隊で保護し、「手術を待つ少年の元へ博士を急いで届けろバトルフィーバー!」が主題だった筈なのに、少年が危篤状態に陥ってから半日は経過している間にメンバーの一人は山中湖~東京(多分)間を往復する、イムリミットサスペンスさん失血死事件。
 臆面もなくセーラー服に着替えたマリアが「私はどこからどう見ても女子高生です」を主張してエゴスに捕まっている間に一夜が明けると(マリアの新しいヘアスタイル、今日目線で見ると全く若く見えないのが苦しいのですが、演者さん自身は当時19歳だったとの事)、突然、馬で突っ込んできたジャパンが、とうとうエゴスに捕まってしまった博士を救出。だが心臓怪人の銃撃を受けてジャパンと博士は共に馬から転落し、雑な展開の目白押しはともかく心臓怪人は普通に優秀。
 「御子の秘密を口外すれば、娘の命は無いぞ」
 そこに京介・曙・誠も合流すると、サロメは人質を見せつけ、「少年の手術は間に合うのか」というタイムリミットサスペンス(既に崩壊)に、心ならずもエゴスに協力する事になった博士が、「見知らぬ少年の命」と「妻子の命」を天秤に乗せる事になった苦悩が組み込まれるのですが、その苦悩と葛藤がBF隊には一切伝わっていないので、ゲスト博士の中だけで処理されても特に面白さにはならず、おまけに途中から「博士自身の身の安全」の方が脅かされる為に、天秤に乗せるものまでコロコロ入れ替わってしまう事に。
 加えてBF隊、御子の心臓を撃ったり頭を撃ったら倒せた実績も無いので、急所を銃で攻撃したら倒せる気がするのは概ね誠の思い込みであり(貴方それで、セミキラー怪人に殺されかけたのでは……?)、博士が秘密を明かすかどうかが発揮するサスペンス性も弱く、盛り込んだ要素のほぼ全てが機能していない、一種仰天のエピソード。
 下っ端までは知らないとするにしても、サロメの元へ連れてこられるまでマリアの偽装にエゴスが気付かないのも、顔割れ後の今作としては無理がある(劇中ルールに則らない)展開となり、妻子の無事を確約された博士が心臓怪人の弱点を明かし、主題歌バトルでBFが名乗りを上げると、心臓ロボットが出現。
 悪魔ロボットが背後で舞い踊る中、BFはバトルヌンチャクを振り回し、投げたヌンチャクが手元に戻ってくるヌンチャクブーメランの映像は格好良かったです。
 今回の悪魔ロボットは
 「回転するとガスが出るぞ」
 と、爆発に追われるBF隊はバトルシャークを要請し、ジャパンが単独搭乗。BFロボも地上の4人も、敵の素早い動きに翻弄されて大苦戦に陥るが、フィーバー流スクラム四面の陣で反撃すると、
 「後頭部にペンタフォースだ!」
 により大爆発。
 心臓ロボットは、真剣白刃下りからの電光剣で成敗し、鉄山流の戦闘モーションの前に敵は無い。
 博士の手術を受けて少年は一命を取り留め、では博士、別室でエゴスへの協力について詳しく話を待ってくれ私は拉致されて仕方なまあまあ博士、そう慌てなくても我々にも人の心はありますし、お約束した通り、ご家族は丁重に「保護」させていただいているので、邪魔が入らないところでじっくりとうわぁぁぁぁぁ……(バタン)。
 次回――なんかまた、凄いの出てきた。

◆第46話「呪いのワラ人形」◆ (監督:広田茂穂 脚本:曽田博久)
 「いでよぉ我が子! 我が愛しの息子よ!」
 怪人製造カプセルから飛び出したのは、巨大なワラ人形。
 「我が息子は呪いを受けてこの世に生まれ、この世に呪いをもたらす」
 サタンエゴス様の命令を受けたサロメが、一心不乱に人型に釘を打ち込んでいた少年に、御子の素と五寸釘を渡すと、少年の込めた呪いの力により、ワラ人形の体に真っ赤な鬼面、自ら巨大な金槌と釘を手にした呪い怪人が誕生。
 「怖がる事は無い。俺は呪い怪人。おまえの呪いをかなえてやろう」
 少年が呪おうとしていた相手は、BF隊の連絡員トモコと、その妹ユキであり、呪い怪人はその体を貫く五寸釘を戦闘員に叩かせる事により己の苦痛を呪いに変えて標的へと飛ばす、数多くのヒーロー達のお株を奪うとんだMパワーの使い手であった。
 「トモコ、仕事休んで一体どうしたの?」
 「呪われてるの」
 「ええ?!」
 欠勤を心配したケイコとマリアがトモコの家を訪れると、不気味な電話についての話を聞き、曙がそれを逆探知。呪いに加えて毎日のように悪戯電話をかけていた少年をふん捕まえる事に成功するが、少年は曙・母親・担任教師へと呪いの矛先を向け、放たれる呪い怪人のMパワー!
 呪い怪人が縄で縛られ、鞭で打たれると、曙は金縛りにあって地面にひっくり返り、背中に「呪」と書かれた白装束にドクロの飾りを身につけ、頭に蝋燭を差してそこに走ってくる少年のぶっ飛びぶりが物凄い(笑)
 メンバーの一人が呪いのMパワーを体感した事により、エゴスの関与を疑ってBF隊が動き出す一方、白装束の呪い少年は人々から呪いの依頼を集めて回り、それが子供たちどころか大人たちの間にも広まっていく、今作第2話の系譜。
 「サタンエゴス様、呪いの注文が、殺到しておりますぅ!」
 「うむ! 素晴らしいぞ。人間どもの呪いをもっともっと掘り起こせ!この世は更に醜くなるぞ」
 第42話に続き、上原正三テイストを曽田先生がアレンジし、子供コミュニティを発端にして仕立て直したといった感じで、母や教師も再び呪ってやるぞと脅す少年だが、ユキの美少女アタックに狼狽すると逃走。
 「イガワくん、私のこと好きだったと思うの……」
 ……この子は、自覚も自信も余裕もあるな!
 …………まあ思えば、初恋をエゴスに弄ばれた上、BF隊の汚れた大人たちに追い打ちで踏みにじられた苦い経験があるので、男性観などが多少歪んでしまっても責められません(後トモコが完全にとばっちりなのですが、妹をつけ回す少年に向けて、「この×××××」みたいな罵声でも浴びせたのでしょうか)。
 少年がサロメに呪いの依頼を引き渡している現場に踏み込むとAパートから主題歌バトルとなるが、怪人の呪い攻撃が炸裂し、もがき苦しむBF隊。
 「おまえ達は三日後に死ぬのだ!」
 サロメと怪人は、三日殺しの呪いをかけたと言い残して走り去り、絶体絶命に陥るBF隊だが、バトルフィーバーが呪われたと喧伝してまわった事で、少年の立場が悪化。
 袋だたきにされかけたところでBF隊がそれを止めに入ると、子供達に勝利を約束して場を収め、急に別の番組が始まったような違和感が甚だしいのですが、例えるなら、『イナズマン』『イナズマンF』で、定期的に渡五郎が、純粋な子供と通じ合えるヒーローをアピールし始めた時のような空虚感。
 BF隊が変身後の姿で子供たちの前に現れる状況自体が珍しすぎて、作り物のショーめいてしまったのも、更に追い打ち。
 ひとまず私刑は回避されるが、呪い少年の心を救おうとしたケニアの「友達になってほしい」発言は、「BFの願いでもそれは無理」とすげなく拒絶され、少年自身の悔恨や反省はこれといって描かれていないので、それは無理ではと見ていて思うところですが、救いの手を差し伸べたのはユキ。
 ユキちゃんには後でBF隊の特別機密費から、幾ばくかの協力金が支払われる予定です。
 Aパートでたっぷり描かれていた人間の邪心が、Bパートで雑にクリーニングに出されてしまったのが大変残念でしたが、少年から呪い怪人との出会いを聞き出したジャパンは、五寸釘こそが怪人のパワーの根源であると推測。
 怪人との再戦に挑むも呪いのMパワーに苦戦するBF隊だが、ケニアがロープをひっかけると怪人の釘を引き抜く事に成功し、Mパワーを失った呪い怪人にペンタフォース!
 呪いロボットは釘での殴打から電光剣唐竹割りで成敗し、人の悪意を利用したエゴスの作戦は拡大前に食い止められて、つづく。
 インパクトの強い怪人といい、人の心の闇を描いた主題といい、ぶっ飛んだ画の連発といい、巧く噛み合えばもっと弾けそうな要素は満載だったのですが、後半急に、“綺麗なBF隊”が大岡裁きを発動して中途半端に丸く収めたのが、残念な一本でした。